- 批判から学ぶ。 批判が見当違いなこともあるが、ほとんどの場合、相手の主張にはなんらかの真理が含まれているものだ。まずは批判をどう役立てることができるか、よく考えてみよう。
- 批判好きな人は相手にしない。絶えず他人を批判する人がいる。批判をするのが好きな人は他人のあら探しをするばかりで、ほめることはめったにない。そういう人に批判されても、気にする必要はない。
- 自尊心を高める。しょっちゅう批判されるのは、自分の自尊心が足りないからかもしれない。あなた自身にも責任があるのだ。私たちは自分の自尊心のレベルに合致した人たちを引き寄せる。たとえば、自分が価値のある人間だと思っているなら、敬意を持って接してくれる人と緑ができるが、自分が価値のない人間だと思っているなら、無礼な扱いしかしてくれない人と緑ができる。自尊心を高め、もっといい扱いをされる価値が自分にはあると確信することによって、自分を批判する人よりも支援してくれる人を引き寄せることができるのである。
2010年6月30日水曜日
批判を恐れない
ときには、他の人に批判されることもある。たしかに批判されることは愉快ではない。では、批判されたときは、どういう心構えで対処すればいいのだろうか。次の三つのことを覚えておこう。
2010年6月29日火曜日
教員養成系大学・学部の存在意義
1 教員の資質能力向上に関する中央教育審議会への諮問
去る6月3日、文部科学大臣は中央教育審議会に対し、「教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策について」の諮問を行いました。
諮問理由は、次のように要約されると思います。
中央教育審議会答申「今後の教員養成・免許制度の在り方について」(平成18年7月)を踏まえ、教職大学院制度の創設、教員免許更新制の導入等が実現しているが、学校現場の抱える課題に必ずしも十分に対応できていないといった指摘もあり、教員一人一人が教職生活の各段階を通じてより高度な専門性と実践的な指導力を身に付けられるよう更なる改革が求められる。
(参考) 「今後の教員養成・免許制度の在り方について」(平成18年7月中央教育審議会答申)(抄)
今後、中央教育審議会総会の下に設置された「教員の資質能力向上特別部会」において、以下の3つの審議事項についての検討が進められることになっています。
教員の資質能力向上については、日頃の教育実践や教員自身の研鑽を基本としつつ、大学等における「養成」、都道府県・指定都市教育委員会等における「採用」、そして教員になってからの「研修」という各段階を通じて、様々な施策が体系的に行われていますが、中でも「大学における養成」が原則と言われています。
このため、国立の教員養成大学・学部の存在価値は極めて大きく、これまで以上にカリキュラムや教育組織の見直しなどの改革に邁進していく必要があります。
(参考) 教員養成の課題(文部科学省)
現在、国立の教員養成大学(11大学)及び教員養成学部(33学部)を対象に、財務省による「予算執行調査」が行われ、既に全機関に対する書面調査と、4つの教員養成大学(京都教育大学・奈良教育大学・大阪教育大学:5月17日~18日、愛知教育大学:6月10日)に対する実地調査が行われています。
教員養成大学・学部にメス-財務省予算執行調査 (2010年5月23日 大学サラリーマン日記)
関西3大学に対する実地調査における財務省からの質問等については、既に日本教育大学協会のサイトで公表されていますが、3大学とも概ね共通しており、財務省の問題意識は次の点にまとめられるのではないかと思います。
財務省による予算執行調査は、今年度から通年化されました。現地調査を含め、年末(予算査定ぎりぎり)まで続くことが予想されます。財務省から直接関係大学の学長、役員にメールも送られているようですし、したたかな戦略に対して油断は禁物です。
上記の財務省が持つ問題意識に、ある教育関係者の方は次のようにおっしゃっていました。
教育が国家100年の大計であること、その中核は「教師・教員」であることは言を待つまでもありません。「誰に代わることもできない、真のプロ教師とは」「その養成如何?」等々は、権力行使の主体機関が言うのみならず、一人ひとりの教員が真摯に考える問題です。しかし、このことが希薄になっている現状を憂えます。
なぜ、「主要5科目(国数英理社)・・・」と言うことが、こともなげに使われるのでしょうか。「学校は塾にあらず」です。いわゆる「主要5教科」はいずれも「認識教科」です。「認識」は、確かに教育の中核に位置します。しかし、「知徳体」「真善美正」と伝統的に語られてきた教育の真髄は何処に行ったのでしょうか。「感性の教育は?」「心身の健全教育は?」「技術の教育は?」・・・。教育における国際競争への着眼・動機からなのでしょうか。
また、教員として求められる4つの事項*1。私の○○大学での授業体験から言えば、この4項目以前に、学生たちの「社会通念上の常識の欠如」は目を覆うものがありました。対峙には勇気と時間を要しました。
示唆に富むお話だと思います。財務省の経済原理主義が、いかに国を滅ぼす危険極まりないものか、国民の皆さんは知っておかなければなりません。
去る6月3日、文部科学大臣は中央教育審議会に対し、「教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策について」の諮問を行いました。
諮問理由は、次のように要約されると思います。
中央教育審議会答申「今後の教員養成・免許制度の在り方について」(平成18年7月)を踏まえ、教職大学院制度の創設、教員免許更新制の導入等が実現しているが、学校現場の抱える課題に必ずしも十分に対応できていないといった指摘もあり、教員一人一人が教職生活の各段階を通じてより高度な専門性と実践的な指導力を身に付けられるよう更なる改革が求められる。
(参考) 「今後の教員養成・免許制度の在り方について」(平成18年7月中央教育審議会答申)(抄)
- 教員養成に対する明確な理念(養成する教員像)の追求・確立がなされていない大学があるなど、教職課程の履修を通じて、学生に身に付けさせるべき最小限必要な資質能力についての理解が必ずしも十分でないこと。
- 教職課程が専門職業人たる教員の養成を目的とするものであるという認識が必ずしも大学の教員の間に共有されておらず、講義概要の作成が十分でなかったり、科目間の内容の整合性・連続性が図られていないなど、教職課程の組織編制やカリキュラム編成が、必ずしも十分整備されていないこと。
- 大学の教員の研究領域の専門性に偏した授業が多く、学校現場が抱える課題に必ずしも十分に対応していないこと。また、指導方法が講義中心で、演習や実験、 実習等が十分でないほか、教職経験者が授業に当たっている例も少ないなど、実践的指導力の育成が必ずしも十分でないこと。特に修士課程にこれらの課題が見られること。
今後、中央教育審議会総会の下に設置された「教員の資質能力向上特別部会」において、以下の3つの審議事項についての検討が進められることになっています。
- 教職生活の各段階で求められる専門性の基盤となる資質能力を着実に身に付けられるような新たな教員養成・教員免許制度の在り方について(教職課程の期間・内容等の充実、教職大学院の在り方の検討、課程認定の厳格化など)
- 新たな教員養成の在り方を踏まえ、教職生活の全体を通じて教員の資質能力の向上を保証するしくみの構築について(教員免許制度の見直し、現職研修の充実、免許更新制の検証と在り方の検討など)
- 教育委員会や大学をはじめとする関係機関や地域社会との組織的・継続的な連携・協働のしくみづくりについて(関係機関や地域が一体となって教員を育て支援する環境づくり、多様な人材の登用など)
教員の資質能力向上については、日頃の教育実践や教員自身の研鑽を基本としつつ、大学等における「養成」、都道府県・指定都市教育委員会等における「採用」、そして教員になってからの「研修」という各段階を通じて、様々な施策が体系的に行われていますが、中でも「大学における養成」が原則と言われています。
このため、国立の教員養成大学・学部の存在価値は極めて大きく、これまで以上にカリキュラムや教育組織の見直しなどの改革に邁進していく必要があります。
(参考) 教員養成の課題(文部科学省)
2 財務省による予算執行調査
現在、国立の教員養成大学(11大学)及び教員養成学部(33学部)を対象に、財務省による「予算執行調査」が行われ、既に全機関に対する書面調査と、4つの教員養成大学(京都教育大学・奈良教育大学・大阪教育大学:5月17日~18日、愛知教育大学:6月10日)に対する実地調査が行われています。
教員養成大学・学部にメス-財務省予算執行調査 (2010年5月23日 大学サラリーマン日記)
関西3大学に対する実地調査における財務省からの質問等については、既に日本教育大学協会のサイトで公表されていますが、3大学とも概ね共通しており、財務省の問題意識は次の点にまとめられるのではないかと思います。
- 国立教員養成系大学・学部出身者の公立学校教員採用者に占めるシェア(占有率)は年々低下(小学校6割、中学校3割、高等学校1割)してきており、そもそもの存在意義、必要性は変わってきているのではないか。役割は終わったのではないか。
- 教員養成系大学の存在意義、使命・役割は何か。”小学校教員の養成”に特化すべきではないか。
- 全ての教員養成系大学・学部で、全ての科目の教員を養成する必要はないのではないか。(例えば、国数英社理の主要5科目以外の科目の教員は、教員養成系大学・学部で養成しなくてもいいのではないか。)
- 全ての教員養成系大学・学部に、教員免許を取得するために履修が必要な全科目の教員を配置する必要はないのではないか。(例えば、小学校教諭第一種免許取得に必要な「その他の科目(日本国憲法、情報等)」については、各大学に教員を置かず、他大学と連携(教員を共有)すればいいのではないか。)
- 免許取得を目的としない「新課程」を維持する意義は何か、不要ではないか。将来の採用増に向けて教員養成にシフトすべ きではないか。
財務省による予算執行調査は、今年度から通年化されました。現地調査を含め、年末(予算査定ぎりぎり)まで続くことが予想されます。財務省から直接関係大学の学長、役員にメールも送られているようですし、したたかな戦略に対して油断は禁物です。
上記の財務省が持つ問題意識に、ある教育関係者の方は次のようにおっしゃっていました。
教育が国家100年の大計であること、その中核は「教師・教員」であることは言を待つまでもありません。「誰に代わることもできない、真のプロ教師とは」「その養成如何?」等々は、権力行使の主体機関が言うのみならず、一人ひとりの教員が真摯に考える問題です。しかし、このことが希薄になっている現状を憂えます。
なぜ、「主要5科目(国数英理社)・・・」と言うことが、こともなげに使われるのでしょうか。「学校は塾にあらず」です。いわゆる「主要5教科」はいずれも「認識教科」です。「認識」は、確かに教育の中核に位置します。しかし、「知徳体」「真善美正」と伝統的に語られてきた教育の真髄は何処に行ったのでしょうか。「感性の教育は?」「心身の健全教育は?」「技術の教育は?」・・・。教育における国際競争への着眼・動機からなのでしょうか。
また、教員として求められる4つの事項*1。私の○○大学での授業体験から言えば、この4項目以前に、学生たちの「社会通念上の常識の欠如」は目を覆うものがありました。対峙には勇気と時間を要しました。
示唆に富むお話だと思います。財務省の経済原理主義が、いかに国を滅ぼす危険極まりないものか、国民の皆さんは知っておかなければなりません。
2010年6月28日月曜日
法人化はその目的を達したか、国立大学を良くしたか
文部科学省によって今年1月から進められてきた「国立大学法人の在り方に係る検証」の「中間まとめ(案)」が既に公表され、去る6月17日まで意見募集が行われるなど、現在様々な場所で「法人化」に関する検証作業が行われています。
文科省が国立大学法人の在り方に係る検証結果を公表 (2010年5月29日 大学サラリーマン日記)
「文部科学教育通信」に掲載された記事から、広島大学教授・高等教育研究開発センター長の山本眞一さんの論考「国立大学の法人化について-検証の視点」を抜粋してご紹介します。
法人化はその目的を達したか
第一に、国立大学の法人化がその当初の目的を達成したかどうかの視点である。周知のことであるが、国立大学法人は政府の行財政改革と大学改革の両方の側面を持つ。前者は政府の支出と人員の削減を通じて、少ない資源で多くのことを成そうとする「効率化」がその中心にあり、後者は国立大学の自律性を確保することにより、大学経営の「柔軟化」と教育研究の「活性化」を目指すところにその意図するものがある。(途中略)
その国の業務を政府直営ではなく、独立行政法人に実施させるところに、法人化の特色がある。中期目標の設定や法人の長の任命などを通じ「司令塔」としての機能を担保した政府が、独立行政法人を「実行部隊」として使うことによって、かつ運営費交付金や事業評価などの手段を活用することによって、効率的な事業の実施が図られる仕組みになっている。しかし、本来自律的な組織であり、既存の価値観にとらわれない創造性が求められる大学に、政府事業の実行部隊となることを要求するような性急な改革はいかがなものであろうか。さまざまな駆け引きが政府部内でもあったことは間違いがない。そこで大学の特性に配慮して設計されたものが国立大学法人であった。ある意味で、国立大学法人は独立行政法人の直裁性を緩和した政治的産物であるとも言えるだろう。
効率化と柔軟化・活性化
さて、国立大学法人化が「効率化」という面で目的を達成したのであろうか。確かに運営費交付金は効率化の名の下に毎年確実に削減され、またそれにつれて各国立大学の教職員数はその増加が抑制され、かつ学長を中心とする大学経営の仕組みが強化されたという点で、行財政的改革という見地からは成功であったと考えることができるだろう。もっとも効率的な業務がこれによって実現したかどうかは、なお、さまざまな具体的業務の実態を精査する必要がある。なぜなら、法人化によっては、従来のような「国の一部局」であった時代には不要であった業務も増えているからである。教育研究は、競争的環境の中で確かにアウトプットは増えたかもしれないが、その中身が充実したものであるかどうかも、同様に何らかの方法で確かめる必要がある。
一方、大学経営の「柔軟化」と教育研究の「活性化」という大学改革の視点で考えると法人化はどうであったであろうか。多くの識者が指摘するように、国立大学法人制度には国準拠の多くの制約が残っており、また大学に配られる資源も十分とは言えない。これらは、学長の立場が強化されたとはいえ、その意思決定の手足を縛る役割を果たしている。「国の一部局」から離れることによって、国立大学の経営の自由度が広がったのかどうかについては、なお疑念の余地がある。同様のことは教育研究の活性化についても言えて、制度的な自由度が増したはずであるにもかかわらず、法人化以前の国立大学運営の慣行が残っていたり、あるいは資源制約の観点からその自由度が事実上制約されてしまったりというのが、現場の教員の実感ではあるまいか。
法人化は国立大学を良くしたか
その第二の視点は、法人化が国立大学を良くしたのか、ということである。つまり、法人化によって、その経営は大学の目的を達成するのにふさわしいものになり、かつ教育研究は活性化し、学生サービスは充実したであろうか。この点についても、事実に即して検証が行われるべきであろうが、ただ、私の実感から言えば、法人化という大きな衝撃によって、大学の教育研究活動は世の中の人々の関心事となり、また大学の経営陣や教員にとっても、自らの活動を社会に対して説明していかなければならないという意識は、確かに高まったように思う。この点だけでも、法人化は、国立大学の体質改善に大きく寄与したものと、私は確信している。しかし、問題はその体質改善の度合いと、裏腹の問題として、依然として残る国準拠の制度および教職員の一部に見られる公務員的体質であろう。
もっとも、国立大学を大きく変えることになった要因は、必ずしも法人化だけではない。つまり現在の大学改革の流れは、グローバル化の知識社会化の進展や18歳人口の減少、わが国の経済・社会の変動という大きな要因に求めるべきであり、法人化はその大きな要因の中で生じた重要だが一つの要素に過ぎないのである。要は、法人化にかかわらず国立大学が変わらざるを得なかった側面と、法人化が直接に作用した側面とに分けて考える必要があり、多くの側面は前者に関わるものではなかったかと思う。
国立大学の役割やそれに対する世論の期待は、時代とともに変わっており、また今後も変わっていくであろう。国立大学の将来をどのようなものとして考えるか、法人化の検証を機会に、さらに議論が深まることを期待したい。(文部科学教育通信 No245 2010.6.14)
おまけですが、ちょうど1年前、第一期中期目標期間の検証と将来展望に関する記事を書いていましたのでご紹介します。
新たな中期目標・計画への展望-1 (2009年6月22日 大学サラリーマン日記)
新たな中期目標・計画への展望-2 (2009年6月23日 大学サラリーマン日記)
文科省が国立大学法人の在り方に係る検証結果を公表 (2010年5月29日 大学サラリーマン日記)
「文部科学教育通信」に掲載された記事から、広島大学教授・高等教育研究開発センター長の山本眞一さんの論考「国立大学の法人化について-検証の視点」を抜粋してご紹介します。
法人化はその目的を達したか
第一に、国立大学の法人化がその当初の目的を達成したかどうかの視点である。周知のことであるが、国立大学法人は政府の行財政改革と大学改革の両方の側面を持つ。前者は政府の支出と人員の削減を通じて、少ない資源で多くのことを成そうとする「効率化」がその中心にあり、後者は国立大学の自律性を確保することにより、大学経営の「柔軟化」と教育研究の「活性化」を目指すところにその意図するものがある。(途中略)
その国の業務を政府直営ではなく、独立行政法人に実施させるところに、法人化の特色がある。中期目標の設定や法人の長の任命などを通じ「司令塔」としての機能を担保した政府が、独立行政法人を「実行部隊」として使うことによって、かつ運営費交付金や事業評価などの手段を活用することによって、効率的な事業の実施が図られる仕組みになっている。しかし、本来自律的な組織であり、既存の価値観にとらわれない創造性が求められる大学に、政府事業の実行部隊となることを要求するような性急な改革はいかがなものであろうか。さまざまな駆け引きが政府部内でもあったことは間違いがない。そこで大学の特性に配慮して設計されたものが国立大学法人であった。ある意味で、国立大学法人は独立行政法人の直裁性を緩和した政治的産物であるとも言えるだろう。
効率化と柔軟化・活性化
さて、国立大学法人化が「効率化」という面で目的を達成したのであろうか。確かに運営費交付金は効率化の名の下に毎年確実に削減され、またそれにつれて各国立大学の教職員数はその増加が抑制され、かつ学長を中心とする大学経営の仕組みが強化されたという点で、行財政的改革という見地からは成功であったと考えることができるだろう。もっとも効率的な業務がこれによって実現したかどうかは、なお、さまざまな具体的業務の実態を精査する必要がある。なぜなら、法人化によっては、従来のような「国の一部局」であった時代には不要であった業務も増えているからである。教育研究は、競争的環境の中で確かにアウトプットは増えたかもしれないが、その中身が充実したものであるかどうかも、同様に何らかの方法で確かめる必要がある。
一方、大学経営の「柔軟化」と教育研究の「活性化」という大学改革の視点で考えると法人化はどうであったであろうか。多くの識者が指摘するように、国立大学法人制度には国準拠の多くの制約が残っており、また大学に配られる資源も十分とは言えない。これらは、学長の立場が強化されたとはいえ、その意思決定の手足を縛る役割を果たしている。「国の一部局」から離れることによって、国立大学の経営の自由度が広がったのかどうかについては、なお疑念の余地がある。同様のことは教育研究の活性化についても言えて、制度的な自由度が増したはずであるにもかかわらず、法人化以前の国立大学運営の慣行が残っていたり、あるいは資源制約の観点からその自由度が事実上制約されてしまったりというのが、現場の教員の実感ではあるまいか。
法人化は国立大学を良くしたか
その第二の視点は、法人化が国立大学を良くしたのか、ということである。つまり、法人化によって、その経営は大学の目的を達成するのにふさわしいものになり、かつ教育研究は活性化し、学生サービスは充実したであろうか。この点についても、事実に即して検証が行われるべきであろうが、ただ、私の実感から言えば、法人化という大きな衝撃によって、大学の教育研究活動は世の中の人々の関心事となり、また大学の経営陣や教員にとっても、自らの活動を社会に対して説明していかなければならないという意識は、確かに高まったように思う。この点だけでも、法人化は、国立大学の体質改善に大きく寄与したものと、私は確信している。しかし、問題はその体質改善の度合いと、裏腹の問題として、依然として残る国準拠の制度および教職員の一部に見られる公務員的体質であろう。
もっとも、国立大学を大きく変えることになった要因は、必ずしも法人化だけではない。つまり現在の大学改革の流れは、グローバル化の知識社会化の進展や18歳人口の減少、わが国の経済・社会の変動という大きな要因に求めるべきであり、法人化はその大きな要因の中で生じた重要だが一つの要素に過ぎないのである。要は、法人化にかかわらず国立大学が変わらざるを得なかった側面と、法人化が直接に作用した側面とに分けて考える必要があり、多くの側面は前者に関わるものではなかったかと思う。
国立大学の役割やそれに対する世論の期待は、時代とともに変わっており、また今後も変わっていくであろう。国立大学の将来をどのようなものとして考えるか、法人化の検証を機会に、さらに議論が深まることを期待したい。(文部科学教育通信 No245 2010.6.14)
おまけですが、ちょうど1年前、第一期中期目標期間の検証と将来展望に関する記事を書いていましたのでご紹介します。
新たな中期目標・計画への展望-1 (2009年6月22日 大学サラリーマン日記)
新たな中期目標・計画への展望-2 (2009年6月23日 大学サラリーマン日記)
2010年6月26日土曜日
効果的な研究支援に向けて
先日、文部科学省の予算監視・効率化特命チーム実務グループから、「研究費・プロジェクト系教育経費の効果的予算措置に向けた現状分析の実施に関するアンケートについて」と題する依頼が各国立大学法人に届きました。
依頼の趣旨は次のようなものです。
文部科学省においては、鈴木副大臣を主査とする予算監視・効率化チームの特命事項として、研究費・プロジェクト系教育経費の効果的予算措置の在り方について検討を深め、今夏の概算要求と併せて「予算制度改革要求」として、関係省庁に働きかけを行うこととしております。
この検討に当たり、本年6月3日から6月30日まで、文部科学省HP上の「熟議カケアイ」において「研究費を使いにくくしている問題点は何か」をテーマとして、熟議をスタートしております。これまでの熟議の中で、各研究機関(大学含む)の研究者の方々から、「研究機関では無駄な事務手続きや書類作成が多い」「クレジットカードが使えない」「各大学の旅費規程が国の規定を準用しており、国際会議等で必要な資金を支出できない」等の問題点が指摘されております。
文部科学省では、熟議上でご指摘いただいた問題点について、国の制度上の課題として現状分析を行うと同時に、各研究機関(大学含む)における現状の把握及びこうした制度を採用している理由について把握させていただくため、今回のアンケート調査を実施させていただくこととしております。
なお、今回の調査については、我が国の研究機関の中核をなす機関としての国立大学法人及び研究開発法人を対象として、アンケートを実施させていただいております。
アンケートは大きく次の4つから構成されています。
1 研究機関におけるクレジットカードの導入について
問題意識
研究機関におけるクレジットカード導入を望む研究者等からの指摘が数多く寄せられている(書籍の購入でクレジットカードを使用できない等)。既に国内外の一部の研究機関ではシステムの導入が進んでいるところ、その他の機関では何故導入が進まないのか疑問の声が挙がっている。
確認したいこと
問題意識
熟議上では、「各大学における旅費規程が国の規定を準用しており、国際会議等で必要な資金(ランチ代・バンケット代)を支出できない」との指摘がなされている。
確認したいこと
問題意識
熟議上では、「研究機関においては、無駄な書類作成や事務手続きが多い」等の指摘がなされています。こうした意見は、国の法令・各研究機関の制度・研究資金の使用ルール等の様々な要因が積み重なり、研究者の実感として当該意見が顕在化するものであると考えられる。
確認したいこと
問題意識
熟議上では、「国・配分機関で自由度が制度上担保されているものの、各研究機関の規定によって使用制限がなされている」「こうした制度を変えようにも、多忙のため教授会等を経た正式な手続きを踏みようがない」「正式な手続きを踏んだとしても、会計・経理担当との関係が薄い」等の指摘がなされている。文部科学省としては、国の制度上の予算の柔軟性が担保されている一方、各研究機関における規則において自由度を認めない場合が存在している場合の対応について、苦慮しているところ。
確認したいこと
大学における研究の更なる高度化を図っていくためには、効率的・効果的な「研究支援」が必要です。そのためには、コンプライアンス(法令遵守)や内部統制の確保を前提とした上で、裁量権にある程度の幅を持たせることが肝要であり、制度面の規制改革(研究費の柔軟かつ弾力的な執行)は重要だと思います。
ただ、そのことが単なる「研究者支援」になってはならず、研究者の利便性向上が、研究者の倫理感の欠如や事務職員の負担増を促すことにならないよう、様々な立場の方々の意見に耳を傾け制度設計されることをお願いしたと思います。
依頼の趣旨は次のようなものです。
文部科学省においては、鈴木副大臣を主査とする予算監視・効率化チームの特命事項として、研究費・プロジェクト系教育経費の効果的予算措置の在り方について検討を深め、今夏の概算要求と併せて「予算制度改革要求」として、関係省庁に働きかけを行うこととしております。
この検討に当たり、本年6月3日から6月30日まで、文部科学省HP上の「熟議カケアイ」において「研究費を使いにくくしている問題点は何か」をテーマとして、熟議をスタートしております。これまでの熟議の中で、各研究機関(大学含む)の研究者の方々から、「研究機関では無駄な事務手続きや書類作成が多い」「クレジットカードが使えない」「各大学の旅費規程が国の規定を準用しており、国際会議等で必要な資金を支出できない」等の問題点が指摘されております。
文部科学省では、熟議上でご指摘いただいた問題点について、国の制度上の課題として現状分析を行うと同時に、各研究機関(大学含む)における現状の把握及びこうした制度を採用している理由について把握させていただくため、今回のアンケート調査を実施させていただくこととしております。
なお、今回の調査については、我が国の研究機関の中核をなす機関としての国立大学法人及び研究開発法人を対象として、アンケートを実施させていただいております。
アンケートは大きく次の4つから構成されています。
1 研究機関におけるクレジットカードの導入について
問題意識
研究機関におけるクレジットカード導入を望む研究者等からの指摘が数多く寄せられている(書籍の購入でクレジットカードを使用できない等)。既に国内外の一部の研究機関ではシステムの導入が進んでいるところ、その他の機関では何故導入が進まないのか疑問の声が挙がっている。
確認したいこと
- あなたの法人では、研究資金の使用にあたり、クレジットカードを導入していますか?
- クレジットカードを導入していない法人にお聞きします。すでに一部の研究機関でクレジットカードが導入されており、技術的には当該システム導入が可能であると考えますが、導入がなされていないその他の理由をご教示ください。
- 研究機関における効率的な予算の管理・運営の観点から、今後、研究機関におけるクレジットカード導入(若しくはシステムの改善)は推進すべきであると考えますか?
- また、研究機関へのクレジットカード導入にあたって、どういった点に留意する必要があると考えますか?
問題意識
熟議上では、「各大学における旅費規程が国の規定を準用しており、国際会議等で必要な資金(ランチ代・バンケット代)を支出できない」との指摘がなされている。
確認したいこと
- あなたの法人では、国際会議等に係る旅費の規程について、どのような規定を設けていますか?
- 上記で回答された規定を採用している理由をご教示ください。
- 今後、各研究機関における旅費の規程について、どのような方向性で検討がなされるべきであると考えますか?
問題意識
熟議上では、「研究機関においては、無駄な書類作成や事務手続きが多い」等の指摘がなされています。こうした意見は、国の法令・各研究機関の制度・研究資金の使用ルール等の様々な要因が積み重なり、研究者の実感として当該意見が顕在化するものであると考えられる。
確認したいこと
- 上述の問題点を引き起こす原因として、国の制度(法令・予算制度・評価等)に係る手続きについて、改善すべき点をご意見ください(複数回答可)
- 自らの研究機関における手続き(内部の規定等)を省みた上で、今後改善すべき点についてご意見ください(複数回答可)。
問題意識
熟議上では、「国・配分機関で自由度が制度上担保されているものの、各研究機関の規定によって使用制限がなされている」「こうした制度を変えようにも、多忙のため教授会等を経た正式な手続きを踏みようがない」「正式な手続きを踏んだとしても、会計・経理担当との関係が薄い」等の指摘がなされている。文部科学省としては、国の制度上の予算の柔軟性が担保されている一方、各研究機関における規則において自由度を認めない場合が存在している場合の対応について、苦慮しているところ。
確認したいこと
- 文部科学省及びファンディング・エージェンシー(JST・JSPS等)における研究資金に係る規定では自由度が認められているものの、各研究機関内における規定を理由としてそれを認めない事例はありますか?
- 認めない場合が存在する場合、その理由をご教示ください。
- これまでの質問にあったような研究資金の効果的な運用の在り方に限れば、各研究機関が決定すべき事項であったとしても、文部科学省及びファンディング・エージェンシー等が、各研究機関に期待する点を提示することが効果的であると考えますか?
大学における研究の更なる高度化を図っていくためには、効率的・効果的な「研究支援」が必要です。そのためには、コンプライアンス(法令遵守)や内部統制の確保を前提とした上で、裁量権にある程度の幅を持たせることが肝要であり、制度面の規制改革(研究費の柔軟かつ弾力的な執行)は重要だと思います。
ただ、そのことが単なる「研究者支援」になってはならず、研究者の利便性向上が、研究者の倫理感の欠如や事務職員の負担増を促すことにならないよう、様々な立場の方々の意見に耳を傾け制度設計されることをお願いしたと思います。
2010年6月25日金曜日
大学の教育情報の公開(2)
先日、大学の教育情報の公表を義務付ける学校教育法施行規則等の改正が、今月中にも公布されることについてご紹介しましたが、去る6月16日付で、文部科学省から、各国公私立大学長ほか関係諸機関長宛に、改正の内容等についての正式な通知がありました。
以下、抜粋し(必要に応じ注釈を加え)ご紹介します。
改正の趣旨
大学等が公的な教育機関として、社会に対する説明責任を果たすとともに、その教育の質を向上させる観点から、公表すべき情報を法令上明確にし、教育情報の一層の公表を促進すること。
改正の概要及び留意すべき事項等
第一 学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)の改正の概要と留意点
1 大学(短期大学、大学院を含む。)は、次の教育研究活動等の状況についての情報を公表するものとすること。(第172条の2第1項関係)
(1)大学の教育研究上の目的に関すること。(第1号関係)
3 1による教育情報の公表は、そのための適切な体制を整えた上で、刊行物への掲載、インターネットの利用その他広く周知を図ることができる方法によって行うものとすること。(第172条の2第3項関係)
4 大学の教育情報の公表に関する1~3について、高等専門学校に準用すること。(第179条関係)
第二 大学設置基準、高等専門学校設置基準(昭和36年文部省令第23号)、大学院設置基準(昭和49年文部省令第28号)及び短期大学設置基準(昭和50年文部省令第21号)の改正の概要
(関連報道)
社説:大学情報公開 地域との連携の礎に(2010年6月21日毎日新聞)
以下、抜粋し(必要に応じ注釈を加え)ご紹介します。
改正の趣旨
大学等が公的な教育機関として、社会に対する説明責任を果たすとともに、その教育の質を向上させる観点から、公表すべき情報を法令上明確にし、教育情報の一層の公表を促進すること。
改正の概要及び留意すべき事項等
第一 学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)の改正の概要と留意点
1 大学(短期大学、大学院を含む。)は、次の教育研究活動等の状況についての情報を公表するものとすること。(第172条の2第1項関係)
(1)大学の教育研究上の目的に関すること。(第1号関係)
これは、大学設置基準(昭和31年文部省令第28号)第2条(本省令による改正前の第2条の2)等*1に規定されているものであること。その際、大学であれば学部、学科又は課程等ごとに、大学院であれば研究科又は専攻ごとに、短期大学であれば学科又は専攻課程ごとに、それぞれ定めた目的を公表することや、平成19年7月31日付け文部科学省高等教育局長通知「大学設置基準等の一部を改正する省令等の施行について」で示した事項に留意すること。(2)教育研究上の基本組織に関すること。(第2号関係)
その際、大学であれば学部、学科又は課程等の、大学院であれば研究科又は専攻等の、短期大学であれば学科又は専攻課程等の名称を明らかにすることに留意すること。(3)教員組織、教員の数並びに各教員が有する学位及び業績に関すること。(第3号関係)
その際、教員組織に関する情報については、組織内の役割分担や年齢構成等を明らかにし、効果的な教育を行うため組織的な連携を図っていることを積極的に明らかにすることに留意すること。(4)入学者に関する受入方針及び入学者の数、収容定員及び在学する学生の数、卒業又は修了した者の数並びに進学者数及び就職者数その他進学及び就職等の状況に関すること。(第4号関係)
教員の数については、学校基本調査における大学の回答に準じて公表することが考えられること。また、法令上必要な専任教員数を確保していることや、男女別、職別の人数等の詳細をできるだけ明らかにすることに留意すること。
各教員の業績については、研究業績等にとどまらず、各教員の多様な業績を積極的に明らかにすることにより、教育上の能力に関する事項や職務上の実績に関する事項など、当該教員の専門性と提供できる教育内容に関することを確認できるという点に留意すること。
その際、これらの情報は、学校基本調査における大学の回答に準じて公表することが考えられること。(5)授業科目、授業の方法及び内容並びに年間の授業の計画に関すること。(第5号関係)
就職状況については、働き方が多様となっている状況を踏まえた公表を、各大学の判断で行うことも考えられること。編入学を実施している場合には、大学設置基準第18条第1項*2の規定を踏まえつつ、編入学定員や実際の編入学者数を明らかにすることに留意すること。
これらは、大学設置基準第25条の2第1項等*3において、学生に明示することとされているものであること。その際、教育課程の体系性を明らかにする観点に留意すること。年間の授業計画については、シラバスや年間授業計画の概要を活用することが考えられること。(6)学修の成果に係る評価及び卒業又は修了の認定に当たっての基準に関すること。(第6号関係)
これらは、大学設置基準第25条の2第2項等*4において、学生に明示することとされているものであること。その際、必修科目、選択科目及び自由科目の別の必要単位修得数を明らかにし、取得可能な学位に関する情報を明らかにすることに留意すること。(7)校地、校舎等の施設及び設備その他の学生の教育研究環境に関すること。(第7号関係)
その際、学生生活の中心であるキャンパスの概要のほか、運動施設の概要、課外活動の状況及びそのために用いる施設、休息を行う環境その他の学習環境、主な交通手段等の状況をできるだけ明らかにすることに留意すること。(8)授業料、入学料その他の大学が徴収する費用に関すること。(第8号関係)
その際、寄宿舎や学生寮等の宿舎に関する費用、教材購入費、施設利用料等の費用に関することをできるだけ明らかにすることに留意すること。(9)大学が行う学生の修学、進路選択及び心身の健康等に係る支援に関すること。(第9号関係)
その際、留学生支援や障害者支援など大学が取り組む様々な学生支援の状況をできるだけ明らかにすることに留意すること。2 大学は、教育上の目的に応じ学生が修得すべき知識及び能力に関する情報を積極的に公表するよう努めるものとすること。その際、大学の教育力の向上の観点から、学生がどのようなカリキュラムに基づき、何を学ぶことができるのかという観点が明確になるよう留意すること。(第172条の2第2項関係)
3 1による教育情報の公表は、そのための適切な体制を整えた上で、刊行物への掲載、インターネットの利用その他広く周知を図ることができる方法によって行うものとすること。(第172条の2第3項関係)
4 大学の教育情報の公表に関する1~3について、高等専門学校に準用すること。(第179条関係)
第二 大学設置基準、高等専門学校設置基準(昭和36年文部省令第23号)、大学院設置基準(昭和49年文部省令第28号)及び短期大学設置基準(昭和50年文部省令第21号)の改正の概要
教育情報の公表に関する規定が学校教育法施行規則上整備されることに伴い、情報の積極的な提供に関する規定の削除など、所要の整理を行うこと。第三 学校教育法第110条第2項に規定する基準を適用するに際して必要な細目を定める省令(平成16年文部科学省令第7号)の改正の概要
大学の総合的な状況に係る認証評価の大学評価基準に、教育研究活動等の状況に係る情報の公表に関することが含まれるものとすること。その際、上記第一の改正を踏まえ、大学評価基準が学校教育法施行規則に適合することとすること。(第1条第1項第1号及び同条第2項関係)第四 施行について
平成23年4月1日施行とすること。
(関連報道)
社説:大学情報公開 地域との連携の礎に(2010年6月21日毎日新聞)
大学など高等教育機関が来年4月から授業内容や入学、就職状況などの情報を公開するよう義務づけられる。当然のことだ。この徹底をバネに、地域に開かれ、連携する大学へ脱皮を図ってほしい。
私立では4割以上の大学で定員割れがあるといい、一部で募集停止も行われるなど少子化の中で経営環境は厳しい。国公立も財政難は深刻だ。現在770を超える大学の多くは、入学者を選ぶ側から選ばれる側に移りつつあるといえるだろう。
公開対象は、入学者数、卒業者数、進学・就職の進路状況、教員数やその学位と業績、年間の授業計画と方法、内容など9項目が挙げられた。これらが容易に分かるよう、ホームページや刊行物などで広く知らせることを求めている。これまで入試の合格者数しか公にせず、実際の入学者が定員を満たしているのか判然としにくい例もあったという。
授業内容の公開はどこまでという規定はないが、抽象的な項目を並べたものではなく、どのような方法で何を目的にした授業か、具体的に示さなければ公表する意味はない。
就職状況には経済環境で差異がある。構造的な不況と雇用不安がある地域と、就業機会に比較的恵まれた地域で有利不利が生じる、と大学側には公開に二の足を踏む声もある。
しかし、大学で学んだことを将来どう生かせるかと考える志願者側には絶対必要な情報であり、実態を開示するのは当然だ。
これは大学と地域社会の密接な連携という、これからの大学運営に不可欠の課題にかかわってくる。大学が高度な教育研究機関として超然と存在しておればよかった時代はとうに過ぎた。今や5割を超す進学率ながら、少子化で大幅な学生数増は見込めず、数字の上では「全入時代」と呼ばれる状況になった。全体的な学力低下傾向も指摘されて久しい。
「大学の存廃は淘汰(とうた)に任せよう」という意見もある。だが、その前に大学と地域や産業界が人材育成についてどれほど意見を交わし、議論しているだろう。また生涯学習や「学び直し」の機会を提供する地域の教育機関としても活用できるはずだ。
地域も大学をもったいない公共の財産として生かすべく知恵を絞ろう。実際、卒業生や社会人に再教育の機会を継続的に提供し、成功している大学は少なくない。
今「キャリア教育」の必要性が盛んにいわれる。まだその体系は整っていないが、自分にマッチした職業の選択、そこに生きがいを見いだし創造していく意欲や力の育成といったものだ。開放された大学と地域の密接な協力、交流、活用はその大きな支えにもなるはずである。
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20100621k0000m070086000c.html
*1:第2条:大学は、当該大学における教育研究活動等の状況について、刊行物への掲載その他広く周知を図ることができる方法によって、積極的に情報を提供するものとする。第2条の2:大学は、学部、学科又は課程ごとに、人材の養成に関する目的その他の教育研究上の目的を学則等に定め、公表するものとする。
*2:第18条第1項:収容定員は、学科又は課程を単位とし、学部ごとに学則で定めるものとする。この場合において、第26条の規定による昼夜開講制を実施するときはこれに係る収容定員を、第50条の規定により外国に学部、学科その他の組織を設けるときはこれに係る収容定員を、編入学定員を設けるときは入学定員及び編入学定員を、それぞれ明示するものとする。
*3:第25条の2第1項:大学は、学生に対して、授業の方法及び内容並びに一年間の授業の計画をあらかじめ明示するものとする。
*4:第25条の2第2項:大学は、学修の成果に係る評価及び卒業の認定に当たつては、客観性及び厳格性を確保するため、学生に対してその基準をあらかじめ明示するとともに、当該基準にしたがつて適切に行うものとする。
2010年6月23日水曜日
終わらぬ戦世、まだ見ぬ平和
地上戦で多くの住民が巻き込まれた沖縄戦から65年。沖縄は今日(23日)、犠牲者を悼む「慰霊の日」を迎えました。65年前の沖縄戦で日本軍の司令官が自決し、組織的戦闘が終わった日、とされています。
最後の激戦地となった沖縄県糸満市摩文仁(まぶに)の丘・平和祈念公園には早朝から遺族らが次々と訪れ、沖縄戦の犠牲者らの名を刻んだ「平和の礎(いしじ)」に手を合わせ、「平和の鐘」が鳴り響きました。
本土を守るために、沖縄はずっと犠牲になってきました。今でも本土のための犠牲は続いています。本土の人々が戦争の心配もなく安心して暮らせているのは、故郷を基地に消された沖縄の人々のおかげです。
私達は、日本軍と一体となって戦ってきたのに”捨て石”にされてしまった沖縄の人々の苦しみと平和を求める声を、他人事のように無視する”愚か者”であってはいけません。
昨年も同様の日記を書いていました。
命どぅ宝-沖縄戦を忘れない(2009年6月24日大学サラリーマン日記)
今日の戦没者追悼式典では、普天間高校3年の名嘉司央里(なか・しおり)さん(17)が「変えてゆ く」と題した平和の詩を朗読しました。
米軍普天間飛行場を抱える宜野湾市に生まれ育った名嘉さんが5月末に書き上げ、県内の小中高校生の1851点から選ばれたそうです。
今日もまたはじまる
いつもの日常
当たり前に食事をして
当たり前に好きなことを学んで
当たり前に安心して眠りにつく
そんな普通の一日
今日もまたはじまる
いつもの日常
当たり前に基地があって
当たり前にヘリが飛んでいて
当たり前に爆弾実験が行われている
そんな普通の一日
一見「平和」に思えるこの小さな島
そこにいつの間にか当たり前ではない
当たり前であってはならないものが
入り込んでしまっていた
普通なら受け入れられない現実を
当たり前に受け入れてしまっていた
これで本当にいいのだろうか
平凡な幸せを感じなが ら
ただただ「平和」を望む今
簡単にこの違和感を
無視していいのだろうか
黒いたくさんの礎
刻まれるたくさんの名前
そこで思い知る
戦争が残した傷跡の大きさ深さ
何も幸せなど生まれなかった
何も手に入れたものなど無かった
すべて失ったものばかりだった
忘れてはならない
この島であった悲しい記憶
目を背けてはならない
悲しい負の遺産
それを負から正に変えてゆく
それがこの遺産を背負い生きてゆく
私たちにできること
変えてゆくのは難しい
しかし一人一人が心から
負である「戦争」を忌み嫌い
正である「平和」を深く愛する
そんな世界になれば
きっ と正の連鎖がはじまるはずだ
6月23日 慰霊の日
あの黒いたくさんの礎には
たくさんの人々が訪れる
そして その一つ一つの名前に触れ
涙を浮かべながら語りかける
「今年も会いに来たよ」と
手を合わせ目を瞑(つむ)り祈りを捧(ささ)げる
その訪れた人々に
「平和」を願わないものはいない
「一度あった事は二度ある」
そんな言葉を聞いたことがある
しかし こんな悲惨な出来事は
もう繰り返してはならない
だから・・・
「一度あった事は二度とない」に
変えてゆこう 平和で塗りつぶしていこう
その想いはきっと届いているはずだから
(関連報道)
首相慰霊の地へ―沖縄の民意に耳を澄ませ(2010年6月22日朝日新聞)
鳩山由紀夫前首相が辞任したからといって、何ひとつ解決していない。沖縄県の米海兵隊普天間飛行場の移設問題は振り出しに戻ったにすぎない。
菅直人首相は「沖縄慰霊の日」のあす、沖縄県を訪れ、戦没者追悼式に出席する。前首相が「最低でも県外」の公約を果たせず、深く傷ついた政府と沖縄の関係を再構築する出発点にしなければならない。
太平洋戦争末期、沖縄は本土防衛の「捨て石」とされ、住民を含む20万人超が犠牲となった。米軍による占領・統治は本土の独立後も20年間続いた。
なぜ沖縄に在日米軍基地の75%が集中するのか。なぜ沖縄県民が前首相の公約違反を「沖縄差別」と怒るのか。その原点に向き合うことから始めたいという菅首相の姿勢は正しい。
政府に対する信頼の回復は極めて厳しい。しかし、この壁を乗り越えない限り、現行の日米合意を基礎にして移設を進めようとしても、出発点にすら立てない。
菅首相は就任早々、名護市辺野古への移設を確認した鳩山政権時代の日米合意を履行する方針を明らかにした。民主党の参院選マニフェストにも、日米合意の踏襲が明記された。
前政権下できしみ続けた日米関係の足場をようやく固め直そうかというところである。首相には、前政権の副総理として閣議決定に署名をした責任もある。
しかし、名護市長は受け入れ反対を崩しておらず、仲井真弘多知事も「実現は極めて厳しい」と明言している。日米合意は滑走路の場所や工法の検討を8月末までに終えるとしているが、地元の理解を得ない頭越しの決定は事態をこじれさせるだけだろう。
辺野古移設を「強行」するようなことは決してあってはならない。それが大原則である。時間がかかっても県民の声を丁寧に聞き直し、最低限の納得は得られる打開策を探るべきだ。
菅首相は、沖縄の負担軽減に力を尽くす考えを強調している。しかし、口先だけでは地元の信用は得られない。訓練の移転でも、訓練海域の返還でもいい。まずは先行して負担軽減の話し合いを米国政府と始めるべきだ。
首相はカナダでのサミット時に、オバマ大統領と会談する。日米安保体制を安定的に維持するためにも、沖縄の負担軽減が欠かせない事情を、正面から大統領に伝えてほしい。
首脳外交をみずから機能不全に陥らせた鳩山氏の轍(てつ)を踏んではいけない。
同時に、沖縄の問題を日本全体の問題として受け止め、同盟とそのコストをどう調和させるか。せっかく生まれた議論の芽を大切にしたい。一政権の崩壊という代償を払った課題である。政治の取り組みも、国民の関心も、ここで失速させてはなるまい。
最後の激戦地となった沖縄県糸満市摩文仁(まぶに)の丘・平和祈念公園には早朝から遺族らが次々と訪れ、沖縄戦の犠牲者らの名を刻んだ「平和の礎(いしじ)」に手を合わせ、「平和の鐘」が鳴り響きました。
本土を守るために、沖縄はずっと犠牲になってきました。今でも本土のための犠牲は続いています。本土の人々が戦争の心配もなく安心して暮らせているのは、故郷を基地に消された沖縄の人々のおかげです。
私達は、日本軍と一体となって戦ってきたのに”捨て石”にされてしまった沖縄の人々の苦しみと平和を求める声を、他人事のように無視する”愚か者”であってはいけません。
昨年も同様の日記を書いていました。
命どぅ宝-沖縄戦を忘れない(2009年6月24日大学サラリーマン日記)
今日の戦没者追悼式典では、普天間高校3年の名嘉司央里(なか・しおり)さん(17)が「変えてゆ く」と題した平和の詩を朗読しました。
米軍普天間飛行場を抱える宜野湾市に生まれ育った名嘉さんが5月末に書き上げ、県内の小中高校生の1851点から選ばれたそうです。
今日もまたはじまる
いつもの日常
当たり前に食事をして
当たり前に好きなことを学んで
当たり前に安心して眠りにつく
そんな普通の一日
今日もまたはじまる
いつもの日常
当たり前に基地があって
当たり前にヘリが飛んでいて
当たり前に爆弾実験が行われている
そんな普通の一日
一見「平和」に思えるこの小さな島
そこにいつの間にか当たり前ではない
当たり前であってはならないものが
入り込んでしまっていた
普通なら受け入れられない現実を
当たり前に受け入れてしまっていた
これで本当にいいのだろうか
平凡な幸せを感じなが ら
ただただ「平和」を望む今
簡単にこの違和感を
無視していいのだろうか
黒いたくさんの礎
刻まれるたくさんの名前
そこで思い知る
戦争が残した傷跡の大きさ深さ
何も幸せなど生まれなかった
何も手に入れたものなど無かった
すべて失ったものばかりだった
忘れてはならない
この島であった悲しい記憶
目を背けてはならない
悲しい負の遺産
それを負から正に変えてゆく
それがこの遺産を背負い生きてゆく
私たちにできること
変えてゆくのは難しい
しかし一人一人が心から
負である「戦争」を忌み嫌い
正である「平和」を深く愛する
そんな世界になれば
きっ と正の連鎖がはじまるはずだ
6月23日 慰霊の日
あの黒いたくさんの礎には
たくさんの人々が訪れる
そして その一つ一つの名前に触れ
涙を浮かべながら語りかける
「今年も会いに来たよ」と
手を合わせ目を瞑(つむ)り祈りを捧(ささ)げる
その訪れた人々に
「平和」を願わないものはいない
「一度あった事は二度ある」
そんな言葉を聞いたことがある
しかし こんな悲惨な出来事は
もう繰り返してはならない
だから・・・
「一度あった事は二度とない」に
変えてゆこう 平和で塗りつぶしていこう
その想いはきっと届いているはずだから
(関連報道)
首相慰霊の地へ―沖縄の民意に耳を澄ませ(2010年6月22日朝日新聞)
鳩山由紀夫前首相が辞任したからといって、何ひとつ解決していない。沖縄県の米海兵隊普天間飛行場の移設問題は振り出しに戻ったにすぎない。
菅直人首相は「沖縄慰霊の日」のあす、沖縄県を訪れ、戦没者追悼式に出席する。前首相が「最低でも県外」の公約を果たせず、深く傷ついた政府と沖縄の関係を再構築する出発点にしなければならない。
太平洋戦争末期、沖縄は本土防衛の「捨て石」とされ、住民を含む20万人超が犠牲となった。米軍による占領・統治は本土の独立後も20年間続いた。
なぜ沖縄に在日米軍基地の75%が集中するのか。なぜ沖縄県民が前首相の公約違反を「沖縄差別」と怒るのか。その原点に向き合うことから始めたいという菅首相の姿勢は正しい。
政府に対する信頼の回復は極めて厳しい。しかし、この壁を乗り越えない限り、現行の日米合意を基礎にして移設を進めようとしても、出発点にすら立てない。
菅首相は就任早々、名護市辺野古への移設を確認した鳩山政権時代の日米合意を履行する方針を明らかにした。民主党の参院選マニフェストにも、日米合意の踏襲が明記された。
前政権下できしみ続けた日米関係の足場をようやく固め直そうかというところである。首相には、前政権の副総理として閣議決定に署名をした責任もある。
しかし、名護市長は受け入れ反対を崩しておらず、仲井真弘多知事も「実現は極めて厳しい」と明言している。日米合意は滑走路の場所や工法の検討を8月末までに終えるとしているが、地元の理解を得ない頭越しの決定は事態をこじれさせるだけだろう。
辺野古移設を「強行」するようなことは決してあってはならない。それが大原則である。時間がかかっても県民の声を丁寧に聞き直し、最低限の納得は得られる打開策を探るべきだ。
菅首相は、沖縄の負担軽減に力を尽くす考えを強調している。しかし、口先だけでは地元の信用は得られない。訓練の移転でも、訓練海域の返還でもいい。まずは先行して負担軽減の話し合いを米国政府と始めるべきだ。
首相はカナダでのサミット時に、オバマ大統領と会談する。日米安保体制を安定的に維持するためにも、沖縄の負担軽減が欠かせない事情を、正面から大統領に伝えてほしい。
首脳外交をみずから機能不全に陥らせた鳩山氏の轍(てつ)を踏んではいけない。
同時に、沖縄の問題を日本全体の問題として受け止め、同盟とそのコストをどう調和させるか。せっかく生まれた議論の芽を大切にしたい。一政権の崩壊という代償を払った課題である。政治の取り組みも、国民の関心も、ここで失速させてはなるまい。
2010年6月22日火曜日
国立大学法人評価が大幅簡素化
今年度から始まる第二期中期目標期間における国立大学法人評価(以下「法人評価」)が大幅に簡素化されるようです。
文部科学省は、去る6月17日(木曜日)に、全国立大学法人の評価実務担当者を召集し、第二期中期目標期間における法人評価の改善点について説明を行いました。
本来であれば、第二期中期目標期間開始前の3月には、評価の実施要領を定める予定だったようですが、折りしも、文部科学省で「国立大学法人の在り方に関する検証」作業を進めていたこともあり、評価の在り方を含む検証の結果を踏まえることとし、実施要領の確定がこの時期になったようです。正式には、来る6月28日(月曜日)開催の国立大学法人評価委員会総会において決定されるようです。
法人評価の改善については、これまでの第一期中期目標期間(以下「第一期」)を通じ、国立大学法人や担当者から”評価負担が重い”など、評価方法等の改善を求める多くの声が文部科学省や国立大学協会に寄せられていました。
文部科学省は、今回の見直しに当たり、このような評価実施現場からの声を重視することともに、各法人において、評価の実施体制がほぼ整備され自己・点検評価が実施されていることを踏まえ、法人の自主性・自律性を尊重しつつ、教育研究の特性や評価負担の軽減に配慮し、より効率的な評価とするため大幅な簡素化を図ることにしたようです。
一方、文部科学省は、このような大幅な簡素化により、各法人において、評価の重要性の否定や後退につながることがないよう、改善の趣旨を踏まえた着実な自己点検・評価の取組みを行うよう求めています。
このたびの改善のポイントについて、文部科学省が作成した資料に沿ってご紹介します。
1 「暫定評価」は実施しない。
2 教育研究の中期目標期間評価を効率的に実施する。
3 「教育研究等の質の向上の状況」は大幅に簡素化し、中期目標期間評価のみ実施する。
4 「業務運営・財務内容等の状況」は大幅に簡素化し、3年目終了時のみ詳細に記述する。
5 「共通の観点」等を大幅に精選する。
6 大学の個性・特色を明確化するため様式を整理する。
文部科学省は、去る6月17日(木曜日)に、全国立大学法人の評価実務担当者を召集し、第二期中期目標期間における法人評価の改善点について説明を行いました。
本来であれば、第二期中期目標期間開始前の3月には、評価の実施要領を定める予定だったようですが、折りしも、文部科学省で「国立大学法人の在り方に関する検証」作業を進めていたこともあり、評価の在り方を含む検証の結果を踏まえることとし、実施要領の確定がこの時期になったようです。正式には、来る6月28日(月曜日)開催の国立大学法人評価委員会総会において決定されるようです。
法人評価の改善については、これまでの第一期中期目標期間(以下「第一期」)を通じ、国立大学法人や担当者から”評価負担が重い”など、評価方法等の改善を求める多くの声が文部科学省や国立大学協会に寄せられていました。
文部科学省は、今回の見直しに当たり、このような評価実施現場からの声を重視することともに、各法人において、評価の実施体制がほぼ整備され自己・点検評価が実施されていることを踏まえ、法人の自主性・自律性を尊重しつつ、教育研究の特性や評価負担の軽減に配慮し、より効率的な評価とするため大幅な簡素化を図ることにしたようです。
一方、文部科学省は、このような大幅な簡素化により、各法人において、評価の重要性の否定や後退につながることがないよう、改善の趣旨を踏まえた着実な自己点検・評価の取組みを行うよう求めています。
このたびの改善のポイントについて、文部科学省が作成した資料に沿ってご紹介します。
1 「暫定評価」は実施しない。
- 第一期のように、いわゆる「暫定評価」は実施せず、中期目標期間終了時(平成28年度)のみ中期目標期間評価を実施する。
- これにより、第一期において実施した「暫定評価結果の運営費交付金への反映」はできなくなるため、3年目終了時の評価(平成25年度実施)の結果を活用する。
- 国立大学法人の総意として国立大学協会等から「暫定評価」の復活要望があれば検討する。
2 教育研究の中期目標期間評価を効率的に実施する。
- 学部・研究科等の現況分析は大幅に簡素化し、現況分析の結果を中期目標の達成度評価に十分に活用する。
- 質の向上度は、第一期終了時と第二期終了時とを比較参照して評価する。さらに、大学情報データベース(大学評価・学位授与機構)や認証評価資料を活用する。
- なお、大学評価・学位授与機構による法人評価や認証評価は、事業仕分けにより見直し対象となっているため、実施機関については今後検討する。
3 「教育研究等の質の向上の状況」は大幅に簡素化し、中期目標期間評価のみ実施する。
- 年度評価では、第一期のように事項ごとの進捗状況の記載を求めず、「全体的状況」欄に学長が総括して記載することとする。
4 「業務運営・財務内容等の状況」は大幅に簡素化し、3年目終了時のみ詳細に記述する。
- 年度評価では、第一期のように事項ごとの進捗状況の詳細な記載を求めず、進捗度を表す「4段階」の記号のみを記載することとする。
- 各年度計画の達成状況については、毎年実施するヒアリングの時間を増やし、自己点検・評価の体制、進捗度(4段階)の判断理由、任意の個別事項の進捗状況等について確認を行う。
- なお、3年目終了時(平成25年度)に実施する平成24年度評価については、全ての事項について進捗状況の詳細(平成24年度分)を記載することとする。
5 「共通の観点」等を大幅に精選する。
- 法人の自主性を尊重し、共通の観点の項目を、政策評価・独立行政法人評価委員会(総務省)による2次評価の指摘事項に限定し、3年目終了時(平成25年度)及び中期目標期間終了時(平成28年度)に実施(エビデンス資料は、平成22~24年度の3年分をまとめて提出)する。
- 3年目終了時(平成25年度)に実施する平成24年度評価では、「特記事項」欄に、「平成24年度に係る特記事項」とともに、「『共通の観点』に係る3年分の取組状況を観点ごとに総括的に記載」することとする。
- 「情報公開の促進が図られているか」については、平成23年度からの施行が予定されている学校教育法施行規則の改正(大学の教育情報の公表)への対応状況も対象とする。
6 大学の個性・特色を明確化するため様式を整理する。
- 「全体的な状況」欄に、大学の基本的な目標等を踏まえ、学長のリーダーシップの下、取り組んだ成果を学長が総括して記載する。
2010年6月21日月曜日
事業仕分けがもたらす国立大学法人への影響
独立行政法人国立大学財務・経営センターは、先の「事業仕分け」(第二弾)において、国立大学法人への施設費貸し付け業務や調査研究など主要事業全てについて「廃止」と結論づけられました。
このことにより、各国立大学法人にはどのような影響があるのでしょうか。
去る5月24日・25日に開催された「国立大学法人等財務管理等に関する協議会」において、文部科学省高等教育局の永山賀久国立大学法人支援課長は次のように語ったようです(文部科学教育通信 No245 2010.6.14から抜粋)。
国立大学財務・経営センターは、国立大学が法人化した後の病院の施設整備や医療機器の資金調達などを代行してきたが、貸し付け事業が廃止されると、各大学が個別に資金調達することになる。
その場合、財政資金を借りられるか否かが大きな問題だ。財政資金の利率は国債と同じだが、これがもし借りられず民間から資金調達するとなると利率は上がり、仮に1%上がったとすると、施設費負担は全体で年間65億ほどアップすると試算される。
当然ながら、大学間の体力差が直接資金調達に影響してくるし、大学の事務負担も増えることになる。
また、国立大学等が移転などの時の土地の売却益の一部を同センターに集め、全国の国立大学等に交付している施設費交付事業について見ると、附属病院のあるなしに関係なく各大学に平成21年度で総額55億円、平均すると6000万円ほど交付されている。
この「施設費交付金」がなくなると、国立大学の建物を改修して維持するための費用が不足する状況になりかねないなど、少なからぬ影響が出てくる。
これらは現段階では最終決定ということではなく、今後、事業仕分けの結果を受け文科省で時間をかけて検討することになるのだが、各大学関係者はこの動向を注意して見守る必要があるだろう。
このほか、国立大学協会では、去る6月3日に「国立大学財務・経営センター事業の廃止は、国立大学法人の運営に甚大な影響。格別のご配慮を。」と題する声明を発しています。
http://www.janu.jp/active/txt5/kenkyuu100603.pdf
これまで国立大学財務・経営センターが、国立大学法人全体の発展に果たしてきた役割は、事業仕分けによっていとも簡単に切り捨てられるようなものではありません。
今後政府は、センター機能の代替措置を含め、国立大学法人の業務運営に支障を来たさないよう、文部科学省だけでなく、現場サイドからの意見も十分に聴いた上で政策決定していただきたいと思います。
国立大学財務・経営センターが行う業務の一端を、センターが発行するメルマガ(第49号 平成22年6月15日)から拾ってみました。こういったことを今後誰がやっていくことになるのでしょうか。
■事務職員にとっての国立大学法人化(国立大学財務・経営センター研究部長 金子元久)
■平成22年度国立大学法人等の財産管理に関する研究協議会資料(平成22年6月7日開催)
■国立大学法人等財務管理等に関する協議会資料(平成22年5月24・25日開催)
■国立大学法人等の財務及び経営の改善に資するための参考事例
1 財務・会計関係
2 人事・組織関係
3 法人運営関係
4 附属病院
■国立大学法人財務・経営に関する取組事例
■大学訪問調査による「取組事例」
■財務経営支援研究会の活動(国立大学若手職員勉強会、係長クラス勉強会の成果報告など)
■病院経営支援研究会の活動(国立大学附属病院若手職員勉強会、人事労務ワークショップなど各種ワークショップの成果報告など)
■財務レポート&環境報告書ポータルサイト
■財産処分等に関する協力・助言
このことにより、各国立大学法人にはどのような影響があるのでしょうか。
去る5月24日・25日に開催された「国立大学法人等財務管理等に関する協議会」において、文部科学省高等教育局の永山賀久国立大学法人支援課長は次のように語ったようです(文部科学教育通信 No245 2010.6.14から抜粋)。
◇
国立大学財務・経営センターは、国立大学が法人化した後の病院の施設整備や医療機器の資金調達などを代行してきたが、貸し付け事業が廃止されると、各大学が個別に資金調達することになる。
その場合、財政資金を借りられるか否かが大きな問題だ。財政資金の利率は国債と同じだが、これがもし借りられず民間から資金調達するとなると利率は上がり、仮に1%上がったとすると、施設費負担は全体で年間65億ほどアップすると試算される。
当然ながら、大学間の体力差が直接資金調達に影響してくるし、大学の事務負担も増えることになる。
また、国立大学等が移転などの時の土地の売却益の一部を同センターに集め、全国の国立大学等に交付している施設費交付事業について見ると、附属病院のあるなしに関係なく各大学に平成21年度で総額55億円、平均すると6000万円ほど交付されている。
この「施設費交付金」がなくなると、国立大学の建物を改修して維持するための費用が不足する状況になりかねないなど、少なからぬ影響が出てくる。
これらは現段階では最終決定ということではなく、今後、事業仕分けの結果を受け文科省で時間をかけて検討することになるのだが、各大学関係者はこの動向を注意して見守る必要があるだろう。
◇
このほか、国立大学協会では、去る6月3日に「国立大学財務・経営センター事業の廃止は、国立大学法人の運営に甚大な影響。格別のご配慮を。」と題する声明を発しています。
http://www.janu.jp/active/txt5/kenkyuu100603.pdf
これまで国立大学財務・経営センターが、国立大学法人全体の発展に果たしてきた役割は、事業仕分けによっていとも簡単に切り捨てられるようなものではありません。
今後政府は、センター機能の代替措置を含め、国立大学法人の業務運営に支障を来たさないよう、文部科学省だけでなく、現場サイドからの意見も十分に聴いた上で政策決定していただきたいと思います。
国立大学財務・経営センターが行う業務の一端を、センターが発行するメルマガ(第49号 平成22年6月15日)から拾ってみました。こういったことを今後誰がやっていくことになるのでしょうか。
■事務職員にとっての国立大学法人化(国立大学財務・経営センター研究部長 金子元久)
■平成22年度国立大学法人等の財産管理に関する研究協議会資料(平成22年6月7日開催)
■国立大学法人等財務管理等に関する協議会資料(平成22年5月24・25日開催)
■国立大学法人等の財務及び経営の改善に資するための参考事例
1 財務・会計関係
- 予算管理の実践(平成18年度マネージメントセミナー資料) 北海道大学理事 遠藤 啓
- 予算管理の実践(平成18年度マネージメントセミナー資料) 山形大学理事 田村幸男
- 「早稲田大学財政改革推進本部(財革本部)の活動」
- 旅費業務のアウトソーシング(国立大学法人北海道大学)
- 給与関係事務のアウトソーシング(国立大学法人北海道大学)
- 業務改善について(国立大学法人九州大学)
- 管理会計導入に向けてのコスト分析プロジェクト(国立大学法人宮崎大学)
- 学外からの財務実務者の任用について(国立大学法人群馬大学)
2 人事・組織関係
- 事務機構改革の実践(平成18年度マネージメントセミナー資料) 東京大学理事 上杉道世
- 「事務支援センター」の概要(国立大学法人熊本大学)
3 法人運営関係
- 「法人化のメリットを最大限に引き出すためには」(平成18年度マネージメントセミナー資料) 北海道大学長 中村睦男
- 「法人化のメリットを最大限に引き出すためには」(平成18年度マネージメントセミナー資料) 岩手大学長 平山健一
- 「法人化のメリットを最大限に引き出すためには」(平成18年度マネージメントセミナー資料) 熊本大学長 﨑元達郎
- 内部統制(平成18年度マネージメントセミナー資料) 東北大学理事 高田敏文
4 附属病院
- 東大病院の運営体制の改革-病院システムという新しい考え方の導入-
- 滋賀医科大学における経営改革
■国立大学法人財務・経営に関する取組事例
■大学訪問調査による「取組事例」
■財務経営支援研究会の活動(国立大学若手職員勉強会、係長クラス勉強会の成果報告など)
■病院経営支援研究会の活動(国立大学附属病院若手職員勉強会、人事労務ワークショップなど各種ワークショップの成果報告など)
■財務レポート&環境報告書ポータルサイト
■財産処分等に関する協力・助言
2010年6月19日土曜日
大学と新成長戦略
政府は、昨日(6月18日)、今後10年間の経済運営の指針となる「新成長戦略」を閣議決定しました。絵に描いた餅にならないよう、政治の実行力が求められます。
大学関連部分を抜粋します。
科学・技術力による成長力の強化
人類を人類たらしめたのは科学・技術の進歩に他ならない。地球温暖化、感染症対策、防災などの人類共通の課題を抱える中、未来に向けて世界の繁栄を切り拓くのも科学・技術である。
我が国は、世界有数の科学・技術力、そして国民の教育水準の高さによって高度成長を成し遂げた。しかし、世界第二の経済大国になるとともに、科学・技術への期待と尊敬は薄れ、更なる高みを目指した人材育成と研究機関改革を怠ってきた。我が国は、今改めて、優れた人材を育成し、研究環境改善と産業化推進の取組を一体として進めることにより、イノベーションとソフトパワーを持続的に生み出し、成長の源となる新たな技術及び産業のフロンティアを開拓していかなければならない。
研究環境・イノベーション創出条件の整備、推進体制の強化
このため、大学・公的研究機関改革を加速して、若者が希望を持って科学の道を選べるように、自立的研究環境と多様なキャリアパスを整備し、また、研究資金、研究支援体制、生活条件などを含め、世界中から優れた研究者を惹きつける魅力的な環境を用意する。基礎研究の振興と宇宙・海洋分野など新フロンティアの開拓を進めるとともに、シーズ研究から産業化に至る円滑な資金・支援の供給や実証試験を容易にする規制の合理的見直しなど、イノベーション創出のための制度・規制改革と知的財産の適切な保護・活用を行う。科学・技術力を核とするベンチャー創出や、産学連携など大学・研究機関における研究成果を地域の活性化につなげる取組を進める。
科学・技術は、未来への先行投資として極めて重要であることから、2020年度までに、官民合わせた研究開発投資をGDP比の4%以上にする。他国の追従を許さない先端的研究開発とイノベーションを強力かつ効率的に推進していくため、科学・技術政策推進体制を抜本的に見直す。また、国際共同研究の推進や途上国への科学・技術協力など、科学・技術外交を推進する。
これらの取組を総合的に実施することにより、2020年までに、世界をリードするグリーン・イノベーション(環境エネルギー分野革新)やライフ・イノベーション(医療・介護分野革新)等を推進し、独自の分野で世界トップに立つ大学・研究機関の数を増やすとともに、理工系博士課程修了者の完全雇用を達成することを目指す。また、中小企業の知財活用を促進する。
質の高い教育による厚い人材層
成長の原動力として何より重要なことは、国民全員に質の高い教育を受ける機会を保障し、様々な分野において厚みのある人材層を形成することである。すべての子どもが希望する教育を受け、人生の基盤となる力を蓄えるとともに、将来の日本、世界を支える人材となるよう育てていく。
このため、初等・中等教育においては、教員の資質向上や民間人の活用を含めた地域での教育支援体制の強化等による教育の質の向上とともに、高校の実質無償化により、社会全体のサポートの下、すべての子どもが後期中等教育を受けられるようにする。その結果、国際的な学習到達度調査において日本が世界トップレベルの順位となることを目指す。
また、高等教育においては、奨学金制度の充実、大学の質の保証や国際化、大学院教育の充実・強化、学生の起業力の育成を含めた職業教育の推進など、進学の機会拡大と高等教育の充実のための取組を進め、未来に挑戦する心を持って国際的に活躍できる人材を育成する。
さらに、教育に対する需要を作り出し、これを成長分野としていくため、外国人学生の積極的受入れとともに、民間の教育サービスの健全な発展を図る。
http://www.kantei.go.jp/jp/sinseichousenryaku/sinseichou01.pdf
関連報道を抜粋します。
社説:「新成長戦略」 人材育成を最優先に(2010年6月19日毎日新聞)
日本経済の活力を高めるという意味では、人材の育成に最も力を入れるべきだろう。人が変わらない限り、経済も変わらない。グーグルやアップルが成功したのは、米政府が「成長分野」に指定し、支援したからではない。まだ誰もやっていないことに挑戦する精神やそれを後押しする教育、経営、金融が米国にはある。
政府は「グローバル人材の育成と高度人材の(海外からの)受け入れ拡大」を戦略の一つに位置づけた。具体的には、外国語教育や高等教育の国際化の支援、外国人学生の日本企業への就職支援などを挙げている。迅速に、大胆に、実行してもらいたい。初等教育から、自由な発想を奨励することも大切だ。
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/archive/news/20100619ddm005070003000c.html
クローズアップ2010:新成長戦略決定 「強い経済」実現掲げ 財源確保、道険しく(2010年6月19日毎日新聞)
力を入れるのが「科学・技術立国」だ。日本の競争力を今後も維持するため、「特定分野で世界トップ50に入る研究・教育拠点を100以上構築する」との目標を定め、各国の主力研究機関と研究者の交流を進める「トップレベル頭脳循環システム」、一部の拠点に資金を重点化する「リーディング大学院」などを今後1、2年以内に始める。
特に、「若者が希望を持って科学の道を選べるよう」改革を加速するとし、就職難が続く博士課程修了者の完全雇用実現や「特別奨励研究員(仮称)」制度の創設を掲げた。
「世界トップ50を100拠点」の目標については、現行の科学技術基本計画に「世界トップクラスの研究拠点を30程度形成」との目標があり、今回は「上位50位」とハードルを下げつつ、拠点数を拡大する。文部科学省内には「急に出てきた数字」といぶかる声もある。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20100619ddm003010069000c.html
大学関連部分を抜粋します。
科学・技術力による成長力の強化
人類を人類たらしめたのは科学・技術の進歩に他ならない。地球温暖化、感染症対策、防災などの人類共通の課題を抱える中、未来に向けて世界の繁栄を切り拓くのも科学・技術である。
我が国は、世界有数の科学・技術力、そして国民の教育水準の高さによって高度成長を成し遂げた。しかし、世界第二の経済大国になるとともに、科学・技術への期待と尊敬は薄れ、更なる高みを目指した人材育成と研究機関改革を怠ってきた。我が国は、今改めて、優れた人材を育成し、研究環境改善と産業化推進の取組を一体として進めることにより、イノベーションとソフトパワーを持続的に生み出し、成長の源となる新たな技術及び産業のフロンティアを開拓していかなければならない。
研究環境・イノベーション創出条件の整備、推進体制の強化
このため、大学・公的研究機関改革を加速して、若者が希望を持って科学の道を選べるように、自立的研究環境と多様なキャリアパスを整備し、また、研究資金、研究支援体制、生活条件などを含め、世界中から優れた研究者を惹きつける魅力的な環境を用意する。基礎研究の振興と宇宙・海洋分野など新フロンティアの開拓を進めるとともに、シーズ研究から産業化に至る円滑な資金・支援の供給や実証試験を容易にする規制の合理的見直しなど、イノベーション創出のための制度・規制改革と知的財産の適切な保護・活用を行う。科学・技術力を核とするベンチャー創出や、産学連携など大学・研究機関における研究成果を地域の活性化につなげる取組を進める。
科学・技術は、未来への先行投資として極めて重要であることから、2020年度までに、官民合わせた研究開発投資をGDP比の4%以上にする。他国の追従を許さない先端的研究開発とイノベーションを強力かつ効率的に推進していくため、科学・技術政策推進体制を抜本的に見直す。また、国際共同研究の推進や途上国への科学・技術協力など、科学・技術外交を推進する。
これらの取組を総合的に実施することにより、2020年までに、世界をリードするグリーン・イノベーション(環境エネルギー分野革新)やライフ・イノベーション(医療・介護分野革新)等を推進し、独自の分野で世界トップに立つ大学・研究機関の数を増やすとともに、理工系博士課程修了者の完全雇用を達成することを目指す。また、中小企業の知財活用を促進する。
質の高い教育による厚い人材層
成長の原動力として何より重要なことは、国民全員に質の高い教育を受ける機会を保障し、様々な分野において厚みのある人材層を形成することである。すべての子どもが希望する教育を受け、人生の基盤となる力を蓄えるとともに、将来の日本、世界を支える人材となるよう育てていく。
このため、初等・中等教育においては、教員の資質向上や民間人の活用を含めた地域での教育支援体制の強化等による教育の質の向上とともに、高校の実質無償化により、社会全体のサポートの下、すべての子どもが後期中等教育を受けられるようにする。その結果、国際的な学習到達度調査において日本が世界トップレベルの順位となることを目指す。
また、高等教育においては、奨学金制度の充実、大学の質の保証や国際化、大学院教育の充実・強化、学生の起業力の育成を含めた職業教育の推進など、進学の機会拡大と高等教育の充実のための取組を進め、未来に挑戦する心を持って国際的に活躍できる人材を育成する。
さらに、教育に対する需要を作り出し、これを成長分野としていくため、外国人学生の積極的受入れとともに、民間の教育サービスの健全な発展を図る。
http://www.kantei.go.jp/jp/sinseichousenryaku/sinseichou01.pdf
関連報道を抜粋します。
社説:「新成長戦略」 人材育成を最優先に(2010年6月19日毎日新聞)
日本経済の活力を高めるという意味では、人材の育成に最も力を入れるべきだろう。人が変わらない限り、経済も変わらない。グーグルやアップルが成功したのは、米政府が「成長分野」に指定し、支援したからではない。まだ誰もやっていないことに挑戦する精神やそれを後押しする教育、経営、金融が米国にはある。
政府は「グローバル人材の育成と高度人材の(海外からの)受け入れ拡大」を戦略の一つに位置づけた。具体的には、外国語教育や高等教育の国際化の支援、外国人学生の日本企業への就職支援などを挙げている。迅速に、大胆に、実行してもらいたい。初等教育から、自由な発想を奨励することも大切だ。
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/archive/news/20100619ddm005070003000c.html
クローズアップ2010:新成長戦略決定 「強い経済」実現掲げ 財源確保、道険しく(2010年6月19日毎日新聞)
力を入れるのが「科学・技術立国」だ。日本の競争力を今後も維持するため、「特定分野で世界トップ50に入る研究・教育拠点を100以上構築する」との目標を定め、各国の主力研究機関と研究者の交流を進める「トップレベル頭脳循環システム」、一部の拠点に資金を重点化する「リーディング大学院」などを今後1、2年以内に始める。
特に、「若者が希望を持って科学の道を選べるよう」改革を加速するとし、就職難が続く博士課程修了者の完全雇用実現や「特別奨励研究員(仮称)」制度の創設を掲げた。
「世界トップ50を100拠点」の目標については、現行の科学技術基本計画に「世界トップクラスの研究拠点を30程度形成」との目標があり、今回は「上位50位」とハードルを下げつつ、拠点数を拡大する。文部科学省内には「急に出てきた数字」といぶかる声もある。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20100619ddm003010069000c.html
2010年6月16日水曜日
うまくいかないやり方を改める
前項ではポジティブに思考することの重要さを述べたが、では、ポジティブな思考をするためにはどうしたらいいのだろうか。
朝起きたらポジティブな本を読むようにしよう。また、人とつきあうときも、あなたを失望させるような人ではなく、あなたを励まして勇気づけてくれる人を選ぼう。
次に、目標を達成するための方法論を検証する必要がある。製品やサ~ビスを売り出すためにひとつのやり方を試してみたが、3か月たっても結果が出ず、売上が改善する見込みがない。その場合、なぜそのやり方がうまくいかないのかを検証し、新しいやり方に切り替える必要がある。それは当然のことのように思えるかもしれないが、そうでもない。多くの人はうまくいかないやり方に固執するものだ。
変化を起こすことは、最初のうちは心地よくないかもしれない。しかし、成功をおさめたいなら、うまくいかないやり方をやめて改善することが大切だ。
朝起きたらポジティブな本を読むようにしよう。また、人とつきあうときも、あなたを失望させるような人ではなく、あなたを励まして勇気づけてくれる人を選ぼう。
次に、目標を達成するための方法論を検証する必要がある。製品やサ~ビスを売り出すためにひとつのやり方を試してみたが、3か月たっても結果が出ず、売上が改善する見込みがない。その場合、なぜそのやり方がうまくいかないのかを検証し、新しいやり方に切り替える必要がある。それは当然のことのように思えるかもしれないが、そうでもない。多くの人はうまくいかないやり方に固執するものだ。
変化を起こすことは、最初のうちは心地よくないかもしれない。しかし、成功をおさめたいなら、うまくいかないやり方をやめて改善することが大切だ。
2010年6月15日火曜日
大学の教育情報の公開(1)
この日記でも既にご紹介していますが、大学が公的な機関として、社会に対する説明責任を果たすために、教育情報の公表を義務付ける学校教育法施行規則等の改正が、今月中にも公布されることになっています。
施行は、来年の4月からのようですが、大学は、これから、公表すべきとされた情報の整備や公開体制の準備に忙しくなりそうです。
情報公開の促進に向けた体制整備を(2009年10月17日 大学サラリーマン日記)
学校教育法施行規則(文部科学省令)の一部改正の概要について、文部科学省が作成した資料から抜粋してご紹介します。
1 改正の趣旨
現在、学校教育法及び大学設置基準等において、大学等の教育研究活動等の状況について、積極的に情報を公表することが規定されているところであるが、大学等が公的な教育機関として、社会に対する説明責任を果たすとともに、その教育の質を向上させる観点から、公表すべき事項を法令上明確にすることが求められる。
このため、中央教育審議会大学分科会の審議を踏まえつつ、学校教育法施行規則等の一部を改正し、教育情報の公表の一層の促進を図ることとする。
2 改正の内容
(1)大学は、次に掲げる教育研究活動等の状況についての情報を公表するものとする(学校教育法施行規則第172条の2を新設)。
※これらの規定は大学院、短期大学についても適用される。また、高等専門学校にも準用する。
(2)認証評価において、上記の情報の公表の取組状況が確認されるよう、必要な規定を追加する(学校教育法第110条第2項に規定する基準を適用するに際して必要な細目を定める省令第1条の改正)。
(3)(1)に伴い、大学設置基準等の法令について、所要の整理を行う。
3 公布・施行
公布:平成22年6月項 施行:平成23年4月1日
参考までに報道された記事を二つほどご紹介します。
学生数の公開義務付け=大学・短大に、来年から-文科省(2010年5月26日 時事通信)
中央教育審議会大学分科会は26日、全国の大学と短大、大学院に学生数や教員数などの情報公開を義務付ける学校教育法施行規則改正を了承した。文部科学省が改正規則を制定し、来年4月に施行する。
大学の経営悪化につながる可能性がある定員割れなどの重要情報は、これまで実質的には公表義務がなかったが今後は明らかにされる。
改正規則では、定員や入学者数、在学者数、就職者数など学生に関する情報のほか、教員数や教員の学位・業績などをインターネット上や機関誌に掲載することを義務付ける。
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2010052601070
情報公開:「入学者数公開」大学に義務付け・・・中教審了承(2010年5月26日 毎日新聞)
文部科学相の諮問機関「中央教育審議会」大学分科会は26日、入学者数や就職者数の情報公開を11年4月から大学や短大、大学院、高等専門学校に義務付ける大学設置基準等の改正を諮問通り了承した。
情報公開が義務付けられるのは、入学者数や在学生数、定員、卒業・修了者数のほか、進学・就職者数といった進学就職状況。教員の数や教員の持つ学位や業績、年間の授業計画など9項目にわたる教育研究情報も含まれる。パンフレットなどの刊行物やホームページなど広く周知できる方法で公表しなければならない。
同省によると、私立大学の中には、合格者数だけしか公表せず、定員割れかどうかの実態が分かりにくいところもある。
また、就職率は、大学による差が明確になってしまうため、大学側は公表には消極的だ。審議の過程でも、就職率は大学だけの責任とは限らず、地域の求人率なども関連するとの声が上がったが、「就職も大学教育の成果」として盛り込まれることが決まった。
同省は「教育の質を向上させ、進学を希望する生徒や保護者の利益を図るため」と説明している。義務化後、情報公開について、各大学の状況を見ながら、大学側が説明責任を果たしているかどうかを点検する。私学助成や競争的資金の配分・選定などの際、評価ポイントにすることも検討する。
http://mainichi.jp/life/edu/news/20100527k0000m040048000c.html
追記
社説:大学情報公開 地域との連携の礎に(2010年6月21日毎日新聞)
大学など高等教育機関が来年4月から授業内容や入学、就職状況などの情報を公開するよう義務づけられる。当然のことだ。この徹底をバネに、地域に開かれ、連携する大学へ脱皮を図ってほしい。
私立では4割以上の大学で定員割れがあるといい、一部で募集停止も行われるなど少子化の中で経営環境は厳しい。国公立も財政難は深刻だ。現在770を超える大学の多くは、入学者を選ぶ側から選ばれる側に移りつつあるといえるだろう。
公開対象は、入学者数、卒業者数、進学・就職の進路状況、教員数やその学位と業績、年間の授業計画と方法、内容など9項目が挙げられた。これらが容易に分かるよう、ホームページや刊行物などで広く知らせることを求めている。これまで入試の合格者数しか公にせず、実際の入学者が定員を満たしているのか判然としにくい例もあったという。
授業内容の公開はどこまでという規定はないが、抽象的な項目を並べたものではなく、どのような方法で何を目的にした授業か、具体的に示さなければ公表する意味はない。
就職状況には経済環境で差異がある。構造的な不況と雇用不安がある地域と、就業機会に比較的恵まれた地域で有利不利が生じる、と大学側には公開に二の足を踏む声もある。
しかし、大学で学んだことを将来どう生かせるかと考える志願者側には絶対必要な情報であり、実態を開示するのは当然だ。
これは大学と地域社会の密接な連携という、これからの大学運営に不可欠の課題にかかわってくる。大学が高度な教育研究機関として超然と存在しておればよかった時代はとうに過ぎた。今や5割を超す進学率ながら、少子化で大幅な学生数増は見込めず、数字の上では「全入時代」と呼ばれる状況になった。全体的な学力低下傾向も指摘されて久しい。
「大学の存廃は淘汰(とうた)に任せよう」という意見もある。だが、その前に大学と地域や産業界が人材育成についてどれほど意見を交わし、議論しているだろう。また生涯学習や「学び直し」の機会を提供する地域の教育機関としても活用できるはずだ。
地域も大学をもったいない公共の財産として生かすべく知恵を絞ろう。実際、卒業生や社会人に再教育の機会を継続的に提供し、成功している大学は少なくない。
今「キャリア教育」の必要性が盛んにいわれる。まだその体系は整っていないが、自分にマッチした職業の選択、そこに生きがいを見いだし創造していく意欲や力の育成といったものだ。開放された大学と地域の密接な協力、交流、活用はその大きな支えにもなるはずである。
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20100621k0000m070086000c.html
施行は、来年の4月からのようですが、大学は、これから、公表すべきとされた情報の整備や公開体制の準備に忙しくなりそうです。
情報公開の促進に向けた体制整備を(2009年10月17日 大学サラリーマン日記)
学校教育法施行規則(文部科学省令)の一部改正の概要について、文部科学省が作成した資料から抜粋してご紹介します。
1 改正の趣旨
現在、学校教育法及び大学設置基準等において、大学等の教育研究活動等の状況について、積極的に情報を公表することが規定されているところであるが、大学等が公的な教育機関として、社会に対する説明責任を果たすとともに、その教育の質を向上させる観点から、公表すべき事項を法令上明確にすることが求められる。
このため、中央教育審議会大学分科会の審議を踏まえつつ、学校教育法施行規則等の一部を改正し、教育情報の公表の一層の促進を図ることとする。
2 改正の内容
(1)大学は、次に掲げる教育研究活動等の状況についての情報を公表するものとする(学校教育法施行規則第172条の2を新設)。
- 大学の教育 研究上の目的に関すること
- 教育研究上の基本組織に関すること
- 教員組織及び教員の数並びに各教員が有する学位及び業績に関すること
- 入学者の選抜に関する方針及び入学者の数、収容定員及び在学する学生の数、卒業又は終了した者の数並びに進学者数及び就職者数その他進学及び就職等の状 況に関すること
- 授業科目、授業の方法及び内容並びに年間の授業の計画に関すること
- 学修の成果に係る評価及び卒業又は修了の認定に当たっての基準に関すること
- 校地、校舎等の施設及び設備その他の学生の教育研究環境に関すること
- 授業料、入学料その他の大学が徴収する費用に関すること
- 大学が行う学生の修学、進路選択及び心身の健康等に係る支援に関すること
※これらの規定は大学院、短期大学についても適用される。また、高等専門学校にも準用する。
(2)認証評価において、上記の情報の公表の取組状況が確認されるよう、必要な規定を追加する(学校教育法第110条第2項に規定する基準を適用するに際して必要な細目を定める省令第1条の改正)。
(3)(1)に伴い、大学設置基準等の法令について、所要の整理を行う。
3 公布・施行
公布:平成22年6月項 施行:平成23年4月1日
参考までに報道された記事を二つほどご紹介します。
学生数の公開義務付け=大学・短大に、来年から-文科省(2010年5月26日 時事通信)
中央教育審議会大学分科会は26日、全国の大学と短大、大学院に学生数や教員数などの情報公開を義務付ける学校教育法施行規則改正を了承した。文部科学省が改正規則を制定し、来年4月に施行する。
大学の経営悪化につながる可能性がある定員割れなどの重要情報は、これまで実質的には公表義務がなかったが今後は明らかにされる。
改正規則では、定員や入学者数、在学者数、就職者数など学生に関する情報のほか、教員数や教員の学位・業績などをインターネット上や機関誌に掲載することを義務付ける。
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2010052601070
情報公開:「入学者数公開」大学に義務付け・・・中教審了承(2010年5月26日 毎日新聞)
文部科学相の諮問機関「中央教育審議会」大学分科会は26日、入学者数や就職者数の情報公開を11年4月から大学や短大、大学院、高等専門学校に義務付ける大学設置基準等の改正を諮問通り了承した。
情報公開が義務付けられるのは、入学者数や在学生数、定員、卒業・修了者数のほか、進学・就職者数といった進学就職状況。教員の数や教員の持つ学位や業績、年間の授業計画など9項目にわたる教育研究情報も含まれる。パンフレットなどの刊行物やホームページなど広く周知できる方法で公表しなければならない。
同省によると、私立大学の中には、合格者数だけしか公表せず、定員割れかどうかの実態が分かりにくいところもある。
また、就職率は、大学による差が明確になってしまうため、大学側は公表には消極的だ。審議の過程でも、就職率は大学だけの責任とは限らず、地域の求人率なども関連するとの声が上がったが、「就職も大学教育の成果」として盛り込まれることが決まった。
同省は「教育の質を向上させ、進学を希望する生徒や保護者の利益を図るため」と説明している。義務化後、情報公開について、各大学の状況を見ながら、大学側が説明責任を果たしているかどうかを点検する。私学助成や競争的資金の配分・選定などの際、評価ポイントにすることも検討する。
http://mainichi.jp/life/edu/news/20100527k0000m040048000c.html
追記
社説:大学情報公開 地域との連携の礎に(2010年6月21日毎日新聞)
大学など高等教育機関が来年4月から授業内容や入学、就職状況などの情報を公開するよう義務づけられる。当然のことだ。この徹底をバネに、地域に開かれ、連携する大学へ脱皮を図ってほしい。
私立では4割以上の大学で定員割れがあるといい、一部で募集停止も行われるなど少子化の中で経営環境は厳しい。国公立も財政難は深刻だ。現在770を超える大学の多くは、入学者を選ぶ側から選ばれる側に移りつつあるといえるだろう。
公開対象は、入学者数、卒業者数、進学・就職の進路状況、教員数やその学位と業績、年間の授業計画と方法、内容など9項目が挙げられた。これらが容易に分かるよう、ホームページや刊行物などで広く知らせることを求めている。これまで入試の合格者数しか公にせず、実際の入学者が定員を満たしているのか判然としにくい例もあったという。
授業内容の公開はどこまでという規定はないが、抽象的な項目を並べたものではなく、どのような方法で何を目的にした授業か、具体的に示さなければ公表する意味はない。
就職状況には経済環境で差異がある。構造的な不況と雇用不安がある地域と、就業機会に比較的恵まれた地域で有利不利が生じる、と大学側には公開に二の足を踏む声もある。
しかし、大学で学んだことを将来どう生かせるかと考える志願者側には絶対必要な情報であり、実態を開示するのは当然だ。
これは大学と地域社会の密接な連携という、これからの大学運営に不可欠の課題にかかわってくる。大学が高度な教育研究機関として超然と存在しておればよかった時代はとうに過ぎた。今や5割を超す進学率ながら、少子化で大幅な学生数増は見込めず、数字の上では「全入時代」と呼ばれる状況になった。全体的な学力低下傾向も指摘されて久しい。
「大学の存廃は淘汰(とうた)に任せよう」という意見もある。だが、その前に大学と地域や産業界が人材育成についてどれほど意見を交わし、議論しているだろう。また生涯学習や「学び直し」の機会を提供する地域の教育機関としても活用できるはずだ。
地域も大学をもったいない公共の財産として生かすべく知恵を絞ろう。実際、卒業生や社会人に再教育の機会を継続的に提供し、成功している大学は少なくない。
今「キャリア教育」の必要性が盛んにいわれる。まだその体系は整っていないが、自分にマッチした職業の選択、そこに生きがいを見いだし創造していく意欲や力の育成といったものだ。開放された大学と地域の密接な協力、交流、活用はその大きな支えにもなるはずである。
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20100621k0000m070086000c.html
2010年6月13日日曜日
必読! 熟議カケアイ:文科省からの出向人事の問題点
文科省政策創造エンジン”熟議カケアイ”のうち、「国立大学法人の課題やその改善方策は?」を読んでみました。
このうち、興味を持ったのは、「文部科学省から国立大学法人への出向人事」に関する議論。
”熟議”には文部科学省の方も参加されていますが、現場の実態がよくわかっておられない点、現行制度をなんとか守ろうとするお役所意識から抜け切れていない点において、私の判定では負け。
意見のやりとりを読む限りにおいては、制度と実態の乖離(国立大学法人の人事への文部科学省による介入が、国立大学法人の運営に支障をきたしていること)についての自覚が不足しているような気がします。
現に、法人化後、国立大学の幹部事務職員(転勤族)の人事権が各学長に委譲されたにもかかわらず、未だにその人事は、文科省の意向に沿って(というより実際は文科省が配置計画を作成し各学長に打診し了解を得る方法によって)行われています。
また、文科省出身者(課長補佐経験者)が、国立大学法人の業務・運営に資する能力ややる気を有するか否かとは無関係に、将来の理事・事務局長候補者として、給与面を含めて優遇されるしくみが残ったままであり、”熟議”における議論を読んでおわかりのように、国立大学法人(現場)には、大きな不満や反発が蓄積しています。
今、国立大学法人という現場で何が起こっていて、何が問題で、その原因は何で、どうすれば組織や業務の活力につながるのか・・・、文部科学省は、”熟議”に参加した方々(特に、個人的には、kenq.infoさん)の素晴らしい提案に真摯に耳を傾ける必要があります。
国立大学法人は、国民のための高等教育機関です。文部科学省のためにあるのではありません。
”熟議”のうち共感したコメントを時系列に抜粋してご紹介します。
まとめ(案)についての指摘事項
freudeさん
SHARK(文部科学省)さん
管理職の多くはもともと大学の職員だったわけですが、現場の職員に比べて、若くして管理職として大学に着任するのですから、政府やそれに伴う高等教育政策の動向、大学制度については文部科学省から出向してきていれば当然熟知していると現場の人間は考えます。
しかしながら「郷に入れば郷に従え」の精神が希薄、2-3年の期間なので、何も起こさないで実質的な任期を全うしたいという役人的発想の人が多い、逆に2-3年しかいないことをいいことに、現場をかき回す、文部科学省や会計検査院の方向を見て仕事をするために大学現場について否定的な発言をする者も多い、などという不満の声があがっていることも事実です。
実際は文部科学省から大学へ出向するのは高等教育を専門とした行政に携わった人間がそう多くはないのも事実でしょう。しかしそれを責めても仕方ありません。ともかく中央で文部行政に携わった経験を少しでも活かして、赴任先の現場の教職員とともに、そこの大学を良くしていこうと本気で業務に臨む姿勢を崩さないようにすることを、出向者そして文部科学省としても啓発することが必要ではないでしょうか。
当事者である管理職は年功序列のために、努力をしても報われないためやる気が起こらなくなるという現実もあるようです。現場、管理職それぞれの立場で悩みを抱えているのが実態ではないかと思います。
ひでまるさん
freudeさんのご意見に賛同します。
以前、文科省からの出向者の方に「文科省での経験(キャリアパス)が必ずしも各国立大学法人での業務に活かされないケースは多々あり、そういった場合に各大学の職員さんが不満を抱くケースが生じるのでは。」というお話を伺いました。また、他の方も指摘されていましたが、学内コミュニケーションがあまり上手でない出向者にお会いするケースもございます。
SHARK(文部科学省)さんから「出向者向けの研修の強化等も行っている。」ことについてご紹介がありましたが、出向前の研修もご検討いただきたいと考えております。
具体的には、1)高等教育を取り巻く環境、政策・制度的枠組みの動向、2)大学の歴史、制度・関係法令、諸外国の大学事情に関する理解といった「高等教育の知識」と、3)組織の効率的な運営、活力のある職場づくり、人材の効果的な育成等に資する組織マネジメントの考え方・方法論、4)問題解決、組織内・組織間の連携・協働、コミュニケーションを促進するための考え方・方法論などの「マネジメントスキル」をパッケージとして組み込むと良いと考えます。
もちろん、前提として、赴任先の教職員とともに、愛学心を持つことが最も重要なことだと考えております。
きのみさん
ひでまるさんの意見に賛成です。
研修も必要ですし、最近は文科省で行われている研修の成果も現れていると思います。
ただ、ひでまるさんが言われている「愛学心」を育ててもらうには、2年という異動サイクルはあまりに短いと思います。
場合によっては1人も知り合いのいない組織に放り込まれ、特別な訓練を受けたわけでもないのに、2年で目に見える成果を出せというのは、あんまりだと思います(それでも成果を出される方がおられるので頭が下がります)。
大学の中で和を大事にすれば、「事なかれ主義」と批判され、積極的になろうとするとfreudeさんが指摘されているように「現場をかき回す」と非難される・・・。
自ら変わろうとしている大学に、知識と経験のある方が赴任するのに、本当の意味で心を1つしないままで終わってしまうケースが多いのは勿体無いと思います。
例えばの話ですが、あまり元気とは言えない地方の大学が起死回生をねらって、
○いくつかのミッションを提示
○文科省の係長又は45才までの課長が対象
○部長又は副理事クラスの給料
○任期は10年
○ミッションに関する進捗管理を毎年行う
という条件で管理職を公募したとします。
制度として成立するかどうかは別として、対象者の方は、どのような印象を持たれるでしょうか?
「我こそは」と思われる方はおられるでしょうか?
それとも、2年で異動する方がよいでしょうか?
kenq.infoさん
きのみさん、はじめまして。
わたしとしては、わざわざ文科省の職員のみを対象にする必要はないと思います。
現状の人事交流の仕組みは文科省からの出向者が優秀かつ、その優秀な能力を発揮できることを大前提としています。しかし、そもそも優秀と思われない方もおり、かつひでまるさんらがおっしゃっているように大学の業務は多岐に渡るようになり、優秀といえどもその優秀な能力を生かすことができるとは限らない場合も増えてきています。それを研修などにより補強するというのはひとつの手ですが、それ以外の方にも門戸を開くというのもひとつの手ではないでしょうか。
たとえば、独立行政法人では折からの天下り批判を受けて役員の公募を今年度から行いはじめ、結果として募集した50ポスト中の38を民間経験者が占めました(官僚OBは6)(http://bit.ly/bk29dQ)。
実際にどういう結果を生むかは今後の検証が必要とはいえ、この事実は入り口の時点では優秀と思われる人材が民間に多数存在したということを証明しています。
独法と同様のことを、今後国立大学法人が事務局長ポストに対して行ったとしてもまったく違和感はないかと思います。現状として(大学側からの要請とのことですが)ほぼすべての事務局長ポストが文科省出向者で占められているということは世間的に問題になってはいませんが、それが問題として表面化するのも時間の問題でしょう。組織の自浄能力が試されていると言えます。
今まで職にありついていた方をどう処遇するかという問題はたしかに存在しますが、それが直接的な理由となって大学として、そして国家として有効な選択肢を取らないというのはナンセンスではないかと思います。大学は役人の雇用安定装置ではありません。
きのみさん
私が幹部職員の公募の例を出しましたが、民間からの登用を否定したわけではなく、今大学で働いておられる課長職の方又はこれから大学の課長になられる方が、現状をどう感じておられるのか、率直なご意見をお聞きしたいと思い、そういう条件にしてみました。
実際に公募をかけるのであれば、当然門戸は広く開放すべきだと思います。ただ、民間に門戸を開放してもしなくても、公募等の管理職採用方法について、その方向に文科省が舵を切りにくいことに変わりはありません。そのため、大学が一方的にそれを主張しても、どこかで規制がかけられてしまうのではないかと思います。
管理職への登用を自分のこととして想像しますと、関係業務について多少の研修を受けただけで、行ったこともない大学に赴任させられ、2年経ったら自動的に次の大学、という制度では、やってみたいという気になれません。
課題を抱えていて解決のための人材を募集している大学があり、その課題が自分の得意分野であれば、心が動きます。その大学に採用してもらえるのであれば、自分の力を試してみたいと感じると思います。結果として期待に応えるだけの成果が得られれば、それに勝るやりがいはないと思います。
公募や長期雇用の制度は、大学が期待しているだけではなく、もしかすると文科省の係長さんや課長になられたばかりに方にも共感していただけるのではないか、と淡い期待を込めて書き込みました。
議論している問題と直接関係ないかもしれませんが、管理職になられる方は年齢的にも子育て等で忙しい時期ですので、腰を落ち着けて仕事をしたいという気持ちもお持ちではないかと思います。
SHARK(文部科学省)さん
公募や長期雇用ということについては、現状においても十分大学の判断で実施することが可能です。任期についても2年というように決まっているわけではなく、実態上、その期間が多いということだと思います。おっしゃるとおり、職員のやる気を高めるという観点から、長期間雇用で公募するということも手法の一つとして有用ではないかと思います。
kenq.infoさん
SHARK(文部科学省)さん
話を戻すようで大変恐縮ですが、もうしばし人事の話にお付き合いください。
さて、この熟議のテーマは「国立大学法人の課題やその改善方法」で、先ほどの議論の中心は職員の人事制度でした。つまり、現状の国立大学法人の人事制度にどのような課題があり、その改善方法はどうあるべきかを熟議するべき場であったかと思います。この目的を定めた場合、仕組みとして大学が主体的な人事を行うことが可能であるかということを確認するだけでは不十分で、結果としてそれが機能しているのか、そして、そうでないとすればどのように改善するべきかという点をもっと掘り下げるべきではないでしょうか。
現状として、今の人事制度が「文科省の意向に依存しがちな法人経営につながる」との指摘はすでに中間まとめ(案)の中にも記述があります。また、これまでの熟議の中でも同様の主張が繰り返し出てきています。これらを鑑みると、うまく機能していない、すなわち現状の制度によって各法人の自主的な人事が阻害されている部分があるというのは否定できない事実と思われます。とすれば、それをどのように改善していくべきかという部分について熟議を深め、意見を集約していく必要があります。今の「この熟議のまとめ」の内容はずいぶんとあいまいな表現で、具体的にどうするべきかという内容が含まれておりません。これでは不十分であると思います。
法人化以降の仕組みはもちろん制度的に強制性のあるものではないとのことですが、実際にはひでまるさんから提示いただいたデータを見ると明らかであるように、法人化以前とほぼ変わらない規模と内容での出向が行われているというのが現状です。つまり、現状の仕組みをそのまま維持するということは意図せざる結果であるにしても、実質上各法人の自主的な人事を阻害していると言えるのではないでしょうか。
これはきっと文科省としての本意ではないのでしょうから、であるとすれば文科省の側から率先して出向人事を自粛して、原則公募とするべき旨を通達してはいかがでしょうか。すべての異動官職に適用するのは大変な負担になるでしょうから、まずは人数的にインパクトが少なく、独法で実績もある理事(事務局長)ポストから始めるということで良いかと思います。
これはあくまで大学がより効率的かつ効果的な組織運営を行っていくための方策であって、文科省からの出向を一概に禁止しようというわけではありません。当然に今の出向者の中にも優秀な方は多数いらっしゃるので、そういった方を排除してしまうのは双方にとって得策でありません。ただし、いかに優秀であろうとも自らの能力と与えられる職との乖離の可能性は免れません。公募とすることにより、法人化以前と大差ない、ある種機械的な人事異動により生まれるミスマッチを未然に防ぐことが可能になります。
一方、大学側としては、組織にとって必要な人材をより広い対象から選択できるようになります。民間出身者を採用しやすくなることはもちろんのこと、同じ出向者についても現状では旧帝大とそれ以外では国家一種採用者来るか否かという序列があるようですが、高額な給与、もしくは魅力的な職務によってそういった人材を地方国立大が惹きつけることも公募とすることによって可能になるでしょう。
このように、出向人事を原則公募制とすることは出向している方にとっても、受け入れ側である大学にとっても、そして大学のさらなる発展を願う文科省としても望ましい策であるように思います。重大な問題があるとすればもちろん再検討すべきかと思われますが、今のところ特に反対意見があるわけでもなく、まとめ(案)の内容との齟齬もありません(文科省との人事交流の重要性はあっても、現状の仕組みを肯定しているわけではない。かつ、その大半、そして管理職ポストが文科省の職員であるべきという主張はどこにもない)。
是非、文科省としてはこの問題を各法人任せにするのではなく、文科省としてどうあるべきという姿勢を明確にすべきではないでしょうか。それが各法人の自主的な取り組みを促進させることにつながるのではないかと思います。
SHARK(文部科学省)さん
人事関係について、若干の誤解があるようですので、現状についてまとめておきます。
まず、誰を理事、部課長にするかについては法人化以降、学長の権限となっており、文部科学省から人を押付けるというようなことは行われていません。現状、文部科学省から職員が出向する場合も法人から申出があり、それに則って行われているものです。出向の期間については、文部科学省の都合、法人の都合等もありますので、要請があった時点で個別調整をするものであり、必ず2年となっているわけではありません。
一方で、文部科学省からの出向者について様々な意見があることは当方も承知しており、今回の検証でも賛否両論があったということを中間まとめ(案)に記述しております。そのような状況を踏まえて中間まとめ(案)では、改善方策として、各法人における経営能力の重視、専門家の登用促進、国大協の検討結果を踏まえた人事交流の改善を進めていくこととしております。
ですので、理事などを各法人が原則公募とすることについては全く問題はありません。今回の熟議においてもそういう意見を多くいただいており、現在のまとめエリアにも公募をすべきという意見を掲載させていただいております。
ところで、出向人事を公募にすべきというのは、大学から要請があった場合に、文部科学省内で出向者を公募すべきということでしょうか?
kenq.infoさん
SHARK(文部科学省)さん、こんばんわ。3点ございます。
まず、若干の誤解があるようですので、主張について再度まとめておきます。
現行制度では学長の権限で人事を行えるのはこれまでの議論でわたしも認識しております。ただ、わたしが問題としているのは、それにもかかわらず、法人化以前とほぼ質的にも量的にも変わらない人事が行われていると思われる点です。そして、その状態が必ずしも望ましくないと文科省の側でも認識があるのであれば、たとえ大学から希望があったとしても安易に出向を認めるのではなく、民間人も含めた公募という形を取るように積極的に文科省の側から薦めてはいかがかと提案しているわけです。この点に関してはいかがお考えでしょうか。
2点目に、各国立大学法人における事務局長ポストの中での文科省出向者の割合と人数についての情報はありますでしょうか。法人化前とそれ以後のような形で比較が可能なもの、そして、現時点のものがあればお教えください。これまで印象の話しかできていませんでしたので、具体的な数字があれば議論もより具体的になるかと思います。
最後に質問について。「出向人事を公募にすべき」というのは各法人が現在出向人事に割り当てているポストを法人の側が公募すべき、という意味です。その枠に対しては当然公募ですから、民間人はもちろん、文科省の方も生え抜きの職員の方も応募できるようにすれば良いと思います。その応募にあたって文科省内でのふるい分けがあると希望する方も萎縮してしまうでしょうから、できる限りそういったものはない方が良いでしょう。
SHARK(文部科学省)
まず、kenq.infoさんからの質問についてですが、法人化後、事務局長というポストは一部の単科大学を除いてなくなっております。法人化後はご存知のとおり、理事等の役員が各法人におかれております。また、法人化前は国立大学の職員=文部科学省職員ですので、全ての事務局長が文部科学省の職員であったと考えていただいて問題ありません。
こういう状況ですので、法人化前後の単純比較はできませんが、昨年の行政刷新会議で提出した資料にもありますとおり、全国立大学法人の役員(学長、理事、監事)679人に占める官庁OBは15人、現役出向者数は69人になっております。なお、この官庁OBには文部科学省以外の官庁も当然含まれます。詳細はこちらをごらんください。
http://www.cao.go.jp/sasshin/oshirase/pdf/nov25-am-shiryo/3-51.pdf
kuyouさんの提案ですが、現状既に学長からの要請に基づいて行っているわけですので、学長が文部科学省に出向者を求め、文部科学省が案を提示する場合に、その人の過去の経歴等を詳しく聞けるようにするということでしょうか。なお、要請がない場合は当然、文部科学省職員が出向することはないということになります。
kenq.infoさん
SHARK(文部科学省)さん
データのご提示ありがとうございます。質問への回答もよろしくお願いいたします。
さて、データを見る限り、およそ90%近くの文科省出向者の方が各国立大学法人に役員(理事)として在籍しておられるわけですね。興味深いデータです。ただ、この全体数は研究職も含めた形でのデータであるかと思います。これらの数字を除くとどのようになりますでしょうか。また、いわゆる生え抜き職員からの登用、民間人登用はどの程度ありますでしょうか。
もう一点。提示いただいたデータを以前見たときにも気になったのですが、職員数のうちの国家公務員出向者数はどういった方を対象としているのでしょうか。わたし自身でおおよそ想定していた数字とは大きな開きがあります。邪推かもしれませんが、たとえば異動官職の方で文科省→A大学→B大学と異動された場合に、A大学としては対象となるが、B大学としてはA大学からの出向、ということで対象外となるようなことはないでしょうか。推測で話をしてはいけないので、手元のデータで確認してみます。
きのみさん
きのみです。
やりとりをお聞きして、少し疑問に感じていることがあります。
「出向人事は学長の要請に基づいて行われている」のであれば、出向人事はOKなのでしょうか?
文科省と国立大学という対立軸を設定すると、少なくとも国立大学のためになっていると言えるのですが、国の予算がほしくて、又は国からの予算をカットされるのが怖くて等々の理由で出向者を受け入れているのであれば、国民の目線からすれば、それは天下りの構図だと思います。
私もこれまで幹部職員の公募制を主張しておりまして、それは人材確保という観点から大学とってよい制度だと思うのですが、どんな方法であっても、監督官庁の職員が、その監督下にある大学に幹部として出向するという制度に関して、もたれあいの関係がない、と納税者に主張するのは難しいと思います。
昨年の事業仕分けでもそのような指摘がありましたが、そのような疑念に対して、どのような反論が存在するのでしょうか? その答えが、人事の問題を解決する糸口になるような気がしています。
私個人は文科省の職員と大学の職員が供に大学のために働くことは必要なことだと考えております。そのために、上述のような疑念は払拭したいのですが・・
詳しくはこちらをどうぞ
http://jukugi.mext.go.jp/jukugi_tree?comment_id=5275#5275
文科省からの出向者の問題
kenq.infoさん
「国立大学の法人化により、各国立大学は、国の内部機関であった時と比べて、組織の見直し、人事、財務会計などの面で大きな裁量を獲得」とは至るところで聞く話ではありますが、目に見えるような形での変化はほとんどありません。理由は簡単で、それを実際に行っている事務職員とその仕組みが法人化以前と変わっていないためです。
大半の大学における事務組織の上位部分は、法人化以後もほぼすべて文科省からの出向者で占められています(事務局長と部長の全員、課長のおよそ半数)。彼らが大学に来るのは実質的に「人事異動」としてであり、大学側は法人化以前通りに文科省出向者用の席を設け、それを粛々と受け入れているというのが現状です。「人事異動」であるため、彼らがひとつの大学に腰を据えるということはありません。基本的に任期は2年程度であり、2年経てば別の大学へと「人事異動」するというのが通例です。(文科省幹部名鑑を参照のこと)
はっきり申し上げて、このような人材を組織の中心に抱え込んでいては大学の自主的な取り組みなど生まれようがありません。彼らはあくまで文科省の人間であり、大学と文科省の利害が食い違う場合には文科省側に付かざるを得ないためです(彼らの2年後の行き先を決めるのは文科省)。また、まともに何かをやろうにも2年という任期はあまりにも短く、各大学の現状を把握できないままに何もできずに終わるか、把握できないままに何かをやってしまって現場を混乱させるかのいずれかが大半です。
個々の大学が自主性、自立性を高めていくことで教育研究をいっそう発展させていくことができるという意見にはわたしも賛成です。ただ、であるとすれば何よりもまずこういった現状を改めていくことが不可欠とわたしは考えます。具体的な策としては、出向は認めるにしても公募として大学側が自主的に採用できるようにすること(同時に、不採用にできるようにもすること)、もしくは2年の任期を延長させることで個々の大学の現状を理解できるような機会を提供することを提案いたします。
Minさん
kenq.infoさんこんにちは。
文部科学省職員との「人事交流」はまさにその通りです。文部科学省は地方の教育委員会とも同様の人事交流を行っています。若いときに「現場」体験をさせるのではなく、本省人事のバッファとして使用されることも多いようです。
ただし大学も「もちつもたれつ」という認識でいるのは確かで、政策の重点や解釈や判断に迷う問題について精度の高い情報がとれる、という側面もあります。「出向」してきた職員も、筋や使命感などによっては大学のために大変骨を折ってくれるのも事実ですし、それは彼ら彼女らの一般的な「能力」の証明でもあります。
問題の本質は、個々の大学や文部科学省にとってメリットがあるというようなことではなく、国立大学業界の体質が「競争」といっていて実は裏で「談合」になっているということか、あるいは、実はそれはそれで歓迎される(談合ではなく、協調になりますが)ことで、正解なのか、というところにあるようです。
kenq.infoさん
Minさんこんにちは。
文科省と大学が持ちつ持たれつの関係にあることはご指摘のとおりです。また、現状として大学の生え抜き職員よりも文科省出向者の能力の方が高いというのも事実です。よって、わたしとしても完全に出向を廃止する必要があるとは思いません。いわば、「協調」という部分はたしかに存在するのでしょう。
ただ問題はその過程であって、何の過程を経ることもなく一方的に人材を押しつけられているという現状は早急に改められるべきと思います。もちろん中には優秀な方もいますが、あっちこっちで問題を起こしてたらい回しにされているような人材を回されるということも当然ながらあります。(付け加えて言えば、誰が来るかについてもまったくのランダムではなく、旧帝大には国家一種、地方大にはそれ以外といった明確な序列も存在します)
出向者が多くの大学を渡り歩くという仕組み自体は変えないにしても、各大学が出向者をこれまでの実績、経験などで審査し、受け入れるか否かを決められるようになれば、大学側にとっては必要な人材を確保できるようになるでしょう。出向者にとっても、(文科省ではなく)大学に対していかに貢献したかという尺度で今後の将来が決まるとすれば各大学で頑張る動機となり、より「能力」を発揮していただけるのではないかと思います。
kenq.infoさん
seriさん
関心を寄せていただきありがとうございます。
まったくご指摘のとおりで、この仕組みが今の今まで何の指摘もなしに生き長らえていることがわたしにとっては不思議で仕方がありません。若干本筋の話とはずれますが、鈴木副大臣はこの件についてそもそも認識がおありなのかお聞きしたいところです。
若干古いものの、おおよその人数としては以下のようなまとめがあります。事務職員のトップである事務局長(理事)はほぼ全員が文科省からの出向者と考えて問題ないかと思います。
文科省官僚、国立大学法人理事への出向状況 特集その1(http://bit.ly/bL7KkW)
詳しくはこちらをどうぞ
http://jukugi.mext.go.jp/jukugi_tree?comment_id=4847#48
このうち、興味を持ったのは、「文部科学省から国立大学法人への出向人事」に関する議論。
”熟議”には文部科学省の方も参加されていますが、現場の実態がよくわかっておられない点、現行制度をなんとか守ろうとするお役所意識から抜け切れていない点において、私の判定では負け。
意見のやりとりを読む限りにおいては、制度と実態の乖離(国立大学法人の人事への文部科学省による介入が、国立大学法人の運営に支障をきたしていること)についての自覚が不足しているような気がします。
現に、法人化後、国立大学の幹部事務職員(転勤族)の人事権が各学長に委譲されたにもかかわらず、未だにその人事は、文科省の意向に沿って(というより実際は文科省が配置計画を作成し各学長に打診し了解を得る方法によって)行われています。
また、文科省出身者(課長補佐経験者)が、国立大学法人の業務・運営に資する能力ややる気を有するか否かとは無関係に、将来の理事・事務局長候補者として、給与面を含めて優遇されるしくみが残ったままであり、”熟議”における議論を読んでおわかりのように、国立大学法人(現場)には、大きな不満や反発が蓄積しています。
今、国立大学法人という現場で何が起こっていて、何が問題で、その原因は何で、どうすれば組織や業務の活力につながるのか・・・、文部科学省は、”熟議”に参加した方々(特に、個人的には、kenq.infoさん)の素晴らしい提案に真摯に耳を傾ける必要があります。
国立大学法人は、国民のための高等教育機関です。文部科学省のためにあるのではありません。
”熟議”のうち共感したコメントを時系列に抜粋してご紹介します。
まとめ(案)についての指摘事項
freudeさん
SHARK(文部科学省)さん
管理職の多くはもともと大学の職員だったわけですが、現場の職員に比べて、若くして管理職として大学に着任するのですから、政府やそれに伴う高等教育政策の動向、大学制度については文部科学省から出向してきていれば当然熟知していると現場の人間は考えます。
しかしながら「郷に入れば郷に従え」の精神が希薄、2-3年の期間なので、何も起こさないで実質的な任期を全うしたいという役人的発想の人が多い、逆に2-3年しかいないことをいいことに、現場をかき回す、文部科学省や会計検査院の方向を見て仕事をするために大学現場について否定的な発言をする者も多い、などという不満の声があがっていることも事実です。
実際は文部科学省から大学へ出向するのは高等教育を専門とした行政に携わった人間がそう多くはないのも事実でしょう。しかしそれを責めても仕方ありません。ともかく中央で文部行政に携わった経験を少しでも活かして、赴任先の現場の教職員とともに、そこの大学を良くしていこうと本気で業務に臨む姿勢を崩さないようにすることを、出向者そして文部科学省としても啓発することが必要ではないでしょうか。
当事者である管理職は年功序列のために、努力をしても報われないためやる気が起こらなくなるという現実もあるようです。現場、管理職それぞれの立場で悩みを抱えているのが実態ではないかと思います。
ひでまるさん
freudeさんのご意見に賛同します。
以前、文科省からの出向者の方に「文科省での経験(キャリアパス)が必ずしも各国立大学法人での業務に活かされないケースは多々あり、そういった場合に各大学の職員さんが不満を抱くケースが生じるのでは。」というお話を伺いました。また、他の方も指摘されていましたが、学内コミュニケーションがあまり上手でない出向者にお会いするケースもございます。
SHARK(文部科学省)さんから「出向者向けの研修の強化等も行っている。」ことについてご紹介がありましたが、出向前の研修もご検討いただきたいと考えております。
具体的には、1)高等教育を取り巻く環境、政策・制度的枠組みの動向、2)大学の歴史、制度・関係法令、諸外国の大学事情に関する理解といった「高等教育の知識」と、3)組織の効率的な運営、活力のある職場づくり、人材の効果的な育成等に資する組織マネジメントの考え方・方法論、4)問題解決、組織内・組織間の連携・協働、コミュニケーションを促進するための考え方・方法論などの「マネジメントスキル」をパッケージとして組み込むと良いと考えます。
もちろん、前提として、赴任先の教職員とともに、愛学心を持つことが最も重要なことだと考えております。
きのみさん
ひでまるさんの意見に賛成です。
研修も必要ですし、最近は文科省で行われている研修の成果も現れていると思います。
ただ、ひでまるさんが言われている「愛学心」を育ててもらうには、2年という異動サイクルはあまりに短いと思います。
場合によっては1人も知り合いのいない組織に放り込まれ、特別な訓練を受けたわけでもないのに、2年で目に見える成果を出せというのは、あんまりだと思います(それでも成果を出される方がおられるので頭が下がります)。
大学の中で和を大事にすれば、「事なかれ主義」と批判され、積極的になろうとするとfreudeさんが指摘されているように「現場をかき回す」と非難される・・・。
自ら変わろうとしている大学に、知識と経験のある方が赴任するのに、本当の意味で心を1つしないままで終わってしまうケースが多いのは勿体無いと思います。
例えばの話ですが、あまり元気とは言えない地方の大学が起死回生をねらって、
○いくつかのミッションを提示
○文科省の係長又は45才までの課長が対象
○部長又は副理事クラスの給料
○任期は10年
○ミッションに関する進捗管理を毎年行う
という条件で管理職を公募したとします。
制度として成立するかどうかは別として、対象者の方は、どのような印象を持たれるでしょうか?
「我こそは」と思われる方はおられるでしょうか?
それとも、2年で異動する方がよいでしょうか?
kenq.infoさん
きのみさん、はじめまして。
わたしとしては、わざわざ文科省の職員のみを対象にする必要はないと思います。
現状の人事交流の仕組みは文科省からの出向者が優秀かつ、その優秀な能力を発揮できることを大前提としています。しかし、そもそも優秀と思われない方もおり、かつひでまるさんらがおっしゃっているように大学の業務は多岐に渡るようになり、優秀といえどもその優秀な能力を生かすことができるとは限らない場合も増えてきています。それを研修などにより補強するというのはひとつの手ですが、それ以外の方にも門戸を開くというのもひとつの手ではないでしょうか。
たとえば、独立行政法人では折からの天下り批判を受けて役員の公募を今年度から行いはじめ、結果として募集した50ポスト中の38を民間経験者が占めました(官僚OBは6)(http://bit.ly/bk29dQ)。
実際にどういう結果を生むかは今後の検証が必要とはいえ、この事実は入り口の時点では優秀と思われる人材が民間に多数存在したということを証明しています。
独法と同様のことを、今後国立大学法人が事務局長ポストに対して行ったとしてもまったく違和感はないかと思います。現状として(大学側からの要請とのことですが)ほぼすべての事務局長ポストが文科省出向者で占められているということは世間的に問題になってはいませんが、それが問題として表面化するのも時間の問題でしょう。組織の自浄能力が試されていると言えます。
今まで職にありついていた方をどう処遇するかという問題はたしかに存在しますが、それが直接的な理由となって大学として、そして国家として有効な選択肢を取らないというのはナンセンスではないかと思います。大学は役人の雇用安定装置ではありません。
きのみさん
私が幹部職員の公募の例を出しましたが、民間からの登用を否定したわけではなく、今大学で働いておられる課長職の方又はこれから大学の課長になられる方が、現状をどう感じておられるのか、率直なご意見をお聞きしたいと思い、そういう条件にしてみました。
実際に公募をかけるのであれば、当然門戸は広く開放すべきだと思います。ただ、民間に門戸を開放してもしなくても、公募等の管理職採用方法について、その方向に文科省が舵を切りにくいことに変わりはありません。そのため、大学が一方的にそれを主張しても、どこかで規制がかけられてしまうのではないかと思います。
管理職への登用を自分のこととして想像しますと、関係業務について多少の研修を受けただけで、行ったこともない大学に赴任させられ、2年経ったら自動的に次の大学、という制度では、やってみたいという気になれません。
課題を抱えていて解決のための人材を募集している大学があり、その課題が自分の得意分野であれば、心が動きます。その大学に採用してもらえるのであれば、自分の力を試してみたいと感じると思います。結果として期待に応えるだけの成果が得られれば、それに勝るやりがいはないと思います。
公募や長期雇用の制度は、大学が期待しているだけではなく、もしかすると文科省の係長さんや課長になられたばかりに方にも共感していただけるのではないか、と淡い期待を込めて書き込みました。
議論している問題と直接関係ないかもしれませんが、管理職になられる方は年齢的にも子育て等で忙しい時期ですので、腰を落ち着けて仕事をしたいという気持ちもお持ちではないかと思います。
SHARK(文部科学省)さん
公募や長期雇用ということについては、現状においても十分大学の判断で実施することが可能です。任期についても2年というように決まっているわけではなく、実態上、その期間が多いということだと思います。おっしゃるとおり、職員のやる気を高めるという観点から、長期間雇用で公募するということも手法の一つとして有用ではないかと思います。
kenq.infoさん
SHARK(文部科学省)さん
話を戻すようで大変恐縮ですが、もうしばし人事の話にお付き合いください。
さて、この熟議のテーマは「国立大学法人の課題やその改善方法」で、先ほどの議論の中心は職員の人事制度でした。つまり、現状の国立大学法人の人事制度にどのような課題があり、その改善方法はどうあるべきかを熟議するべき場であったかと思います。この目的を定めた場合、仕組みとして大学が主体的な人事を行うことが可能であるかということを確認するだけでは不十分で、結果としてそれが機能しているのか、そして、そうでないとすればどのように改善するべきかという点をもっと掘り下げるべきではないでしょうか。
現状として、今の人事制度が「文科省の意向に依存しがちな法人経営につながる」との指摘はすでに中間まとめ(案)の中にも記述があります。また、これまでの熟議の中でも同様の主張が繰り返し出てきています。これらを鑑みると、うまく機能していない、すなわち現状の制度によって各法人の自主的な人事が阻害されている部分があるというのは否定できない事実と思われます。とすれば、それをどのように改善していくべきかという部分について熟議を深め、意見を集約していく必要があります。今の「この熟議のまとめ」の内容はずいぶんとあいまいな表現で、具体的にどうするべきかという内容が含まれておりません。これでは不十分であると思います。
法人化以降の仕組みはもちろん制度的に強制性のあるものではないとのことですが、実際にはひでまるさんから提示いただいたデータを見ると明らかであるように、法人化以前とほぼ変わらない規模と内容での出向が行われているというのが現状です。つまり、現状の仕組みをそのまま維持するということは意図せざる結果であるにしても、実質上各法人の自主的な人事を阻害していると言えるのではないでしょうか。
これはきっと文科省としての本意ではないのでしょうから、であるとすれば文科省の側から率先して出向人事を自粛して、原則公募とするべき旨を通達してはいかがでしょうか。すべての異動官職に適用するのは大変な負担になるでしょうから、まずは人数的にインパクトが少なく、独法で実績もある理事(事務局長)ポストから始めるということで良いかと思います。
これはあくまで大学がより効率的かつ効果的な組織運営を行っていくための方策であって、文科省からの出向を一概に禁止しようというわけではありません。当然に今の出向者の中にも優秀な方は多数いらっしゃるので、そういった方を排除してしまうのは双方にとって得策でありません。ただし、いかに優秀であろうとも自らの能力と与えられる職との乖離の可能性は免れません。公募とすることにより、法人化以前と大差ない、ある種機械的な人事異動により生まれるミスマッチを未然に防ぐことが可能になります。
一方、大学側としては、組織にとって必要な人材をより広い対象から選択できるようになります。民間出身者を採用しやすくなることはもちろんのこと、同じ出向者についても現状では旧帝大とそれ以外では国家一種採用者来るか否かという序列があるようですが、高額な給与、もしくは魅力的な職務によってそういった人材を地方国立大が惹きつけることも公募とすることによって可能になるでしょう。
このように、出向人事を原則公募制とすることは出向している方にとっても、受け入れ側である大学にとっても、そして大学のさらなる発展を願う文科省としても望ましい策であるように思います。重大な問題があるとすればもちろん再検討すべきかと思われますが、今のところ特に反対意見があるわけでもなく、まとめ(案)の内容との齟齬もありません(文科省との人事交流の重要性はあっても、現状の仕組みを肯定しているわけではない。かつ、その大半、そして管理職ポストが文科省の職員であるべきという主張はどこにもない)。
是非、文科省としてはこの問題を各法人任せにするのではなく、文科省としてどうあるべきという姿勢を明確にすべきではないでしょうか。それが各法人の自主的な取り組みを促進させることにつながるのではないかと思います。
SHARK(文部科学省)さん
人事関係について、若干の誤解があるようですので、現状についてまとめておきます。
まず、誰を理事、部課長にするかについては法人化以降、学長の権限となっており、文部科学省から人を押付けるというようなことは行われていません。現状、文部科学省から職員が出向する場合も法人から申出があり、それに則って行われているものです。出向の期間については、文部科学省の都合、法人の都合等もありますので、要請があった時点で個別調整をするものであり、必ず2年となっているわけではありません。
一方で、文部科学省からの出向者について様々な意見があることは当方も承知しており、今回の検証でも賛否両論があったということを中間まとめ(案)に記述しております。そのような状況を踏まえて中間まとめ(案)では、改善方策として、各法人における経営能力の重視、専門家の登用促進、国大協の検討結果を踏まえた人事交流の改善を進めていくこととしております。
ですので、理事などを各法人が原則公募とすることについては全く問題はありません。今回の熟議においてもそういう意見を多くいただいており、現在のまとめエリアにも公募をすべきという意見を掲載させていただいております。
ところで、出向人事を公募にすべきというのは、大学から要請があった場合に、文部科学省内で出向者を公募すべきということでしょうか?
kenq.infoさん
SHARK(文部科学省)さん、こんばんわ。3点ございます。
まず、若干の誤解があるようですので、主張について再度まとめておきます。
現行制度では学長の権限で人事を行えるのはこれまでの議論でわたしも認識しております。ただ、わたしが問題としているのは、それにもかかわらず、法人化以前とほぼ質的にも量的にも変わらない人事が行われていると思われる点です。そして、その状態が必ずしも望ましくないと文科省の側でも認識があるのであれば、たとえ大学から希望があったとしても安易に出向を認めるのではなく、民間人も含めた公募という形を取るように積極的に文科省の側から薦めてはいかがかと提案しているわけです。この点に関してはいかがお考えでしょうか。
2点目に、各国立大学法人における事務局長ポストの中での文科省出向者の割合と人数についての情報はありますでしょうか。法人化前とそれ以後のような形で比較が可能なもの、そして、現時点のものがあればお教えください。これまで印象の話しかできていませんでしたので、具体的な数字があれば議論もより具体的になるかと思います。
最後に質問について。「出向人事を公募にすべき」というのは各法人が現在出向人事に割り当てているポストを法人の側が公募すべき、という意味です。その枠に対しては当然公募ですから、民間人はもちろん、文科省の方も生え抜きの職員の方も応募できるようにすれば良いと思います。その応募にあたって文科省内でのふるい分けがあると希望する方も萎縮してしまうでしょうから、できる限りそういったものはない方が良いでしょう。
SHARK(文部科学省)
まず、kenq.infoさんからの質問についてですが、法人化後、事務局長というポストは一部の単科大学を除いてなくなっております。法人化後はご存知のとおり、理事等の役員が各法人におかれております。また、法人化前は国立大学の職員=文部科学省職員ですので、全ての事務局長が文部科学省の職員であったと考えていただいて問題ありません。
こういう状況ですので、法人化前後の単純比較はできませんが、昨年の行政刷新会議で提出した資料にもありますとおり、全国立大学法人の役員(学長、理事、監事)679人に占める官庁OBは15人、現役出向者数は69人になっております。なお、この官庁OBには文部科学省以外の官庁も当然含まれます。詳細はこちらをごらんください。
http://www.cao.go.jp/sasshin/oshirase/pdf/nov25-am-shiryo/3-51.pdf
kuyouさんの提案ですが、現状既に学長からの要請に基づいて行っているわけですので、学長が文部科学省に出向者を求め、文部科学省が案を提示する場合に、その人の過去の経歴等を詳しく聞けるようにするということでしょうか。なお、要請がない場合は当然、文部科学省職員が出向することはないということになります。
kenq.infoさん
SHARK(文部科学省)さん
データのご提示ありがとうございます。質問への回答もよろしくお願いいたします。
さて、データを見る限り、およそ90%近くの文科省出向者の方が各国立大学法人に役員(理事)として在籍しておられるわけですね。興味深いデータです。ただ、この全体数は研究職も含めた形でのデータであるかと思います。これらの数字を除くとどのようになりますでしょうか。また、いわゆる生え抜き職員からの登用、民間人登用はどの程度ありますでしょうか。
もう一点。提示いただいたデータを以前見たときにも気になったのですが、職員数のうちの国家公務員出向者数はどういった方を対象としているのでしょうか。わたし自身でおおよそ想定していた数字とは大きな開きがあります。邪推かもしれませんが、たとえば異動官職の方で文科省→A大学→B大学と異動された場合に、A大学としては対象となるが、B大学としてはA大学からの出向、ということで対象外となるようなことはないでしょうか。推測で話をしてはいけないので、手元のデータで確認してみます。
きのみさん
きのみです。
やりとりをお聞きして、少し疑問に感じていることがあります。
「出向人事は学長の要請に基づいて行われている」のであれば、出向人事はOKなのでしょうか?
文科省と国立大学という対立軸を設定すると、少なくとも国立大学のためになっていると言えるのですが、国の予算がほしくて、又は国からの予算をカットされるのが怖くて等々の理由で出向者を受け入れているのであれば、国民の目線からすれば、それは天下りの構図だと思います。
私もこれまで幹部職員の公募制を主張しておりまして、それは人材確保という観点から大学とってよい制度だと思うのですが、どんな方法であっても、監督官庁の職員が、その監督下にある大学に幹部として出向するという制度に関して、もたれあいの関係がない、と納税者に主張するのは難しいと思います。
昨年の事業仕分けでもそのような指摘がありましたが、そのような疑念に対して、どのような反論が存在するのでしょうか? その答えが、人事の問題を解決する糸口になるような気がしています。
私個人は文科省の職員と大学の職員が供に大学のために働くことは必要なことだと考えております。そのために、上述のような疑念は払拭したいのですが・・
詳しくはこちらをどうぞ
http://jukugi.mext.go.jp/jukugi_tree?comment_id=5275#5275
文科省からの出向者の問題
kenq.infoさん
「国立大学の法人化により、各国立大学は、国の内部機関であった時と比べて、組織の見直し、人事、財務会計などの面で大きな裁量を獲得」とは至るところで聞く話ではありますが、目に見えるような形での変化はほとんどありません。理由は簡単で、それを実際に行っている事務職員とその仕組みが法人化以前と変わっていないためです。
大半の大学における事務組織の上位部分は、法人化以後もほぼすべて文科省からの出向者で占められています(事務局長と部長の全員、課長のおよそ半数)。彼らが大学に来るのは実質的に「人事異動」としてであり、大学側は法人化以前通りに文科省出向者用の席を設け、それを粛々と受け入れているというのが現状です。「人事異動」であるため、彼らがひとつの大学に腰を据えるということはありません。基本的に任期は2年程度であり、2年経てば別の大学へと「人事異動」するというのが通例です。(文科省幹部名鑑を参照のこと)
はっきり申し上げて、このような人材を組織の中心に抱え込んでいては大学の自主的な取り組みなど生まれようがありません。彼らはあくまで文科省の人間であり、大学と文科省の利害が食い違う場合には文科省側に付かざるを得ないためです(彼らの2年後の行き先を決めるのは文科省)。また、まともに何かをやろうにも2年という任期はあまりにも短く、各大学の現状を把握できないままに何もできずに終わるか、把握できないままに何かをやってしまって現場を混乱させるかのいずれかが大半です。
個々の大学が自主性、自立性を高めていくことで教育研究をいっそう発展させていくことができるという意見にはわたしも賛成です。ただ、であるとすれば何よりもまずこういった現状を改めていくことが不可欠とわたしは考えます。具体的な策としては、出向は認めるにしても公募として大学側が自主的に採用できるようにすること(同時に、不採用にできるようにもすること)、もしくは2年の任期を延長させることで個々の大学の現状を理解できるような機会を提供することを提案いたします。
Minさん
kenq.infoさんこんにちは。
文部科学省職員との「人事交流」はまさにその通りです。文部科学省は地方の教育委員会とも同様の人事交流を行っています。若いときに「現場」体験をさせるのではなく、本省人事のバッファとして使用されることも多いようです。
ただし大学も「もちつもたれつ」という認識でいるのは確かで、政策の重点や解釈や判断に迷う問題について精度の高い情報がとれる、という側面もあります。「出向」してきた職員も、筋や使命感などによっては大学のために大変骨を折ってくれるのも事実ですし、それは彼ら彼女らの一般的な「能力」の証明でもあります。
問題の本質は、個々の大学や文部科学省にとってメリットがあるというようなことではなく、国立大学業界の体質が「競争」といっていて実は裏で「談合」になっているということか、あるいは、実はそれはそれで歓迎される(談合ではなく、協調になりますが)ことで、正解なのか、というところにあるようです。
kenq.infoさん
Minさんこんにちは。
文科省と大学が持ちつ持たれつの関係にあることはご指摘のとおりです。また、現状として大学の生え抜き職員よりも文科省出向者の能力の方が高いというのも事実です。よって、わたしとしても完全に出向を廃止する必要があるとは思いません。いわば、「協調」という部分はたしかに存在するのでしょう。
ただ問題はその過程であって、何の過程を経ることもなく一方的に人材を押しつけられているという現状は早急に改められるべきと思います。もちろん中には優秀な方もいますが、あっちこっちで問題を起こしてたらい回しにされているような人材を回されるということも当然ながらあります。(付け加えて言えば、誰が来るかについてもまったくのランダムではなく、旧帝大には国家一種、地方大にはそれ以外といった明確な序列も存在します)
出向者が多くの大学を渡り歩くという仕組み自体は変えないにしても、各大学が出向者をこれまでの実績、経験などで審査し、受け入れるか否かを決められるようになれば、大学側にとっては必要な人材を確保できるようになるでしょう。出向者にとっても、(文科省ではなく)大学に対していかに貢献したかという尺度で今後の将来が決まるとすれば各大学で頑張る動機となり、より「能力」を発揮していただけるのではないかと思います。
kenq.infoさん
seriさん
関心を寄せていただきありがとうございます。
まったくご指摘のとおりで、この仕組みが今の今まで何の指摘もなしに生き長らえていることがわたしにとっては不思議で仕方がありません。若干本筋の話とはずれますが、鈴木副大臣はこの件についてそもそも認識がおありなのかお聞きしたいところです。
若干古いものの、おおよその人数としては以下のようなまとめがあります。事務職員のトップである事務局長(理事)はほぼ全員が文科省からの出向者と考えて問題ないかと思います。
文科省官僚、国立大学法人理事への出向状況 特集その1(http://bit.ly/bL7KkW)
詳しくはこちらをどうぞ
http://jukugi.mext.go.jp/jukugi_tree?comment_id=4847#48
2010年6月11日金曜日
菅首相の所信表明演説
菅直人首相は、本日午後、衆参両院本会議で、就任後初の所信表明演説を行いました。人材育成関係を抜粋します。
3 閉塞状況の打破―経済・財政・社会保障の一体的建て直し
【「強い経済」の実現】
まず「強い経済」の実現です。一昨年の金融危機は外需に過度に依存していた我が国経済を直撃し、他の国以上に深刻なダメージを与えました。強い経済を実現するためには安定した内需と外需を創造し、富が広く循環する経済構造を築く必要があります。
では、どのように需要をつくり出すのか。その鍵が「課題解決型」の国家戦略です。現在の経済社会には、新たな課題が山積しています。それぞれの課題に正面から向き合い、その処方せんを提示することにより、新たな需要と雇用の創造を目指します。
この考え方に立ち、昨年来、私が責任者となって検討を進めている「新成長戦略」では、「グリーン・イノベーション」「ライフ・イノベーション」「アジア経済」「観光・地域」を成長分野に掲げ、これらを支える基盤として「科学・技術」と「雇用・人材」に関する戦略を実施することとしています。
これらの成長分野を支えるため、第5の「科学・技術立国戦略」の下で、我が国が培ってきた科学・技術力を増強します。効果的・効率的な技術開発を促進するための規制改革や支援体制の見直しを進めます。我が国の未来を担う若者が夢を抱いて科学の道を選べるような教育環境を整備するとともに、世界中から優れた研究者をひきつける研究環境の整備を進めます。イノベーション促進の基盤となる知的財産や情報通信技術の利活用も促進します。
第6の「雇用・人材戦略」により、成長分野を担う人材の育成を推進します。少子高齢化に伴う労働人口の減少という制約をはね返すため、若者や女性、高齢者の就業率向上を目指します。
さらに非正規労働者の正規雇用化を含めた雇用の安定確保、産業構造の変化に対応した成長分野を中心とする実践的な能力育成の推進、ディーセント・ワーク、すなわち人間らしい働きがいのある仕事の実現を目指します。女性の能力を発揮する機会を増やす環境を抜本的に整備し、「男女共同参画社会」の実現を推進します。
人材は成長の原動力です。教育、スポーツ、文化など様々な分野で国民一人ひとりの能力を高めることにより、厚みのある人材層を形成します。
3 閉塞状況の打破―経済・財政・社会保障の一体的建て直し
【「強い経済」の実現】
まず「強い経済」の実現です。一昨年の金融危機は外需に過度に依存していた我が国経済を直撃し、他の国以上に深刻なダメージを与えました。強い経済を実現するためには安定した内需と外需を創造し、富が広く循環する経済構造を築く必要があります。
では、どのように需要をつくり出すのか。その鍵が「課題解決型」の国家戦略です。現在の経済社会には、新たな課題が山積しています。それぞれの課題に正面から向き合い、その処方せんを提示することにより、新たな需要と雇用の創造を目指します。
この考え方に立ち、昨年来、私が責任者となって検討を進めている「新成長戦略」では、「グリーン・イノベーション」「ライフ・イノベーション」「アジア経済」「観光・地域」を成長分野に掲げ、これらを支える基盤として「科学・技術」と「雇用・人材」に関する戦略を実施することとしています。
これらの成長分野を支えるため、第5の「科学・技術立国戦略」の下で、我が国が培ってきた科学・技術力を増強します。効果的・効率的な技術開発を促進するための規制改革や支援体制の見直しを進めます。我が国の未来を担う若者が夢を抱いて科学の道を選べるような教育環境を整備するとともに、世界中から優れた研究者をひきつける研究環境の整備を進めます。イノベーション促進の基盤となる知的財産や情報通信技術の利活用も促進します。
第6の「雇用・人材戦略」により、成長分野を担う人材の育成を推進します。少子高齢化に伴う労働人口の減少という制約をはね返すため、若者や女性、高齢者の就業率向上を目指します。
さらに非正規労働者の正規雇用化を含めた雇用の安定確保、産業構造の変化に対応した成長分野を中心とする実践的な能力育成の推進、ディーセント・ワーク、すなわち人間らしい働きがいのある仕事の実現を目指します。女性の能力を発揮する機会を増やす環境を抜本的に整備し、「男女共同参画社会」の実現を推進します。
人材は成長の原動力です。教育、スポーツ、文化など様々な分野で国民一人ひとりの能力を高めることにより、厚みのある人材層を形成します。
2010年6月9日水曜日
リスクを自分からとる
大成功をおさめている人たちは、たいていリスクを自分からとる。彼らはプロジェクトに取り組む前にリスクを計算し、十分に準備をするのである。もちろん最初からうまくいくとはかぎらない。たとえばウオルト・ディズニーは夢を追い求めてリスクをとった。失敗を繰り返して何度も倒産を経験しているが、それでもリスクをとることをやめなかった。
成功しようとするなら、絶えずリスクをとる必要がある。新しい仕事を始める、新しい会社を興す、新しい地域に引っ越す。これらのことは、大なり小なり、すべてリスクを伴う。未知の領域に挑めばリスクをとることになるが、多くの場合、そうすることによって人生は向上する。
リスクをとることを拒んでいるかぎり、現状を維持するのが関の山だ。それはエキサイティングではない。人間は学習し成長していくのが本来の姿である。伝統を守ることは大切だが、リスクをとって新しいことに挑戦すれば、その恩恵は必ず得られる。恩恵とは、自分に何ができるかがわかることだ。リスクをとることへの許容度は人によって異なる。リスクをとることに不安を感じるなら、あまり大きなリスクはとらないほうがいい。しかし、まったくリスクをとらないというのは、じつは最も大きなリスクだということは覚えておいたほうがいい。
科学技術は日進月歩の勢いで進歩し、ビジネスの世界は急激に変化している。学習し成長することを拒むなら、あなたのスキルは時代遅れになりかねない。自分ではリスクを避けているつもりでも、市場価値のあるスキルを持っていないという点でたいへん大きなリスクを背負っていることになる。柔軟性を持ち、新しいことに心を開くことが、現代社会では価値のある資質だ。
成功しようとするなら、絶えずリスクをとる必要がある。新しい仕事を始める、新しい会社を興す、新しい地域に引っ越す。これらのことは、大なり小なり、すべてリスクを伴う。未知の領域に挑めばリスクをとることになるが、多くの場合、そうすることによって人生は向上する。
リスクをとることを拒んでいるかぎり、現状を維持するのが関の山だ。それはエキサイティングではない。人間は学習し成長していくのが本来の姿である。伝統を守ることは大切だが、リスクをとって新しいことに挑戦すれば、その恩恵は必ず得られる。恩恵とは、自分に何ができるかがわかることだ。リスクをとることへの許容度は人によって異なる。リスクをとることに不安を感じるなら、あまり大きなリスクはとらないほうがいい。しかし、まったくリスクをとらないというのは、じつは最も大きなリスクだということは覚えておいたほうがいい。
科学技術は日進月歩の勢いで進歩し、ビジネスの世界は急激に変化している。学習し成長することを拒むなら、あなたのスキルは時代遅れになりかねない。自分ではリスクを避けているつもりでも、市場価値のあるスキルを持っていないという点でたいへん大きなリスクを背負っていることになる。柔軟性を持ち、新しいことに心を開くことが、現代社会では価値のある資質だ。
2010年6月8日火曜日
国立大学法人の概算要求
国立大学法人から文部科学省に提出される概算要求作業もいよいよ大詰めを迎えています。各大学とも6月17日(木曜日)の提出期限に向けて、調書の最終調整や学内の意思決定等で担当者の方は多忙な日々を送られていることでしょう。
平成23年度の概算要求については、風の便りによれば、政府が取りまとめる「新成長戦略」がその柱となるようですが、今後も税収が伸びるとは思えませんし、国際経済の落ち込みもあり、客観的な情勢は極めて厳しいようです。
このような中、各大学は、国の政策課題や地域の知の拠点として係わる課題等を踏まえ、他大学との差別化をいかに図れるかなど要求事項の更なる精選が求められています。
民主党政権の国立大学法人や高等教育重視の考え方に期待したいと思います。
さて、概算要求に当たって、文部科学省が、国立大学法人評価委員会等の意見を参考としつつ取りまとめ、各国立大学法人に示した「平成23年度の国立大学法人運営費交付金による支援に係る留意点」(平成22年4月20日各国立大学法人学長宛、文部科学省高等教育局長・研究振興局長連名通知)を抜粋してご紹介します。
平成23年度の国立大学法人運営費交付金による支援に係る留意点について
■支援の基本的な考え方■
平成23年度の国立大学法人運営費交付金による支援の基本的な考え方を以下のとおり示す。
1 教育研究事業に対する支援
各国立大学法人における教育研究活動は、各法人の個性や特色に応じて意欲的かつ重点的に取り組まれるものであるが、同時に、社会経済の変化や学術研究の進展等を踏まえた我が国の高等教育政策、学術政策の推進の観点からも、その中核を担う重要な活動であり、次の(1)から(6)までに掲げる事業について必要な支援を行うことが求められる。
その際には、中期目標・中期計画や国の各種政策との関連性・整合性も勘案した上で、各法人の自助努力を求めつつ、各法人における事業の優先度を尊重した適切な支援となるようにすることが必要である。
(1)国立大学法人の個性・特色を生かした教育研究事業への支援
各法人としての役割や使命を果たすため、その個性特色を生かした先導的・萌芽的な取組、各種の社会的な要請、学問バランス等を踏まえた取組を支援
(2)国の政策課題等を踏まえて自主的に取り組まれる教育研究事業への支援
「新成長戦略」(世界的に魅力ある大学院、理工系博士課程修了者の完全雇用、新しい公共を担う高度な人材養成など)、「東アジア共同体構想」(域内の人的交流の拡充や各国言語・文化の専門家育成など)等の国の政策課題や地域の知の拠点として関わる課題等を踏まえて各法人が自主的に取り組む教育研究活動を支援
(3)大学間の連携・協力に基づく取組への支援
文部科学大臣が認定する「共同利用・共同研究拠点」及び「教育関係共同利用拠点」を含め、大学同士の連携・協力に基づき、各大学単独では不可能であっだ教育や研究等の抜本的な改革・発展につながる取組を支援
(4)教育・研究・診療基盤設備の老朽化対応への支援
各法人が保有する教育・研究・診療用の基盤的な設備の更新等を支援
(5)学生に係る教育研究環境の充実等への支援
教育機会確保のための授業料減免措置の取組、留学生や障害のある学生のための教育環境の整備等の学生に係る教育研究環境の充実に資する取組、学部・大学院における授業や研究指導の内容・方法の改善を図るための組織的な研修・研究の取組等を支援
(6)附属病院の機能強化・医療の向上の取組等への支援
地域医療のセーフティネット構築のための体制等整備、医師・看護師をサポートするコメディカルスタッフの配置等の取組、健康対策のための革新的な医療技術の研究開発や実用化の取組、感染症等の疾病に対応するための国際的な教育研究の取組等を支援
2 教育研究組織の整備に対する支援
教育研究組織の整備については、中期目標・中期計画に沿い、「新成長戦略」(世界的に魅力ある大学院、理工系博士課程修了者の完全雇用、新しい公共を担う高度な人材養成など)、「東アジア共同体構想」(域内の人的交流の拡充や各国言語・文化の専門家育成など)等の国の政策課題や各法人が地域の知の拠点として関わる課題等も踏まえた整備が求められる。
基本的には既存組織の見直しにより対応することになるが、新領域等に係る教員の配置に必要となる経費の増額など既存組織からの財源捻出だけでは対応が困難な場合には、必要に応じて、国としての積極的な支援が求められる。
その際、「国立大学法人の組織及び業務全般の見直しについて」(平成21年6月5日文部科学大臣決定)の趣旨に沿った取組を促すことが重要である。
なお、同決定への対応が適切になされていない法人については、その状況に応じ、支援の見直しを行うことが必要である。
■各国立大学法人における留意点■
平成23年度の国立大学法人運営費交付金による支援に関して、各国立大学法人における留意点を以下のとおり示す。
1 数育研究事業に係る留意点
(1)各事業区分(プロジェクト分、全国共同利用・共同実施分、基盤的設備等整備分)に共通する留意点
1)事業区分との適合性等
1)プロジェクト分
<国際的に卓越した教育研究拠点機能の充実>
継続事業については、当該事業の進捗状況を把握し、事業計画の有効かつ効率的な推進が図られているか。
【進捗状況の把握の観点(例)】
教育研究組織については、以下に示す点に留意しつつ、学内における資源の再配分の努力を十分に行いながら、新たな学問分野の発展や社会ニーズに適切に対応するために必要な組織整備を行うことが求められる。
平成23年度の概算要求については、風の便りによれば、政府が取りまとめる「新成長戦略」がその柱となるようですが、今後も税収が伸びるとは思えませんし、国際経済の落ち込みもあり、客観的な情勢は極めて厳しいようです。
このような中、各大学は、国の政策課題や地域の知の拠点として係わる課題等を踏まえ、他大学との差別化をいかに図れるかなど要求事項の更なる精選が求められています。
民主党政権の国立大学法人や高等教育重視の考え方に期待したいと思います。
さて、概算要求に当たって、文部科学省が、国立大学法人評価委員会等の意見を参考としつつ取りまとめ、各国立大学法人に示した「平成23年度の国立大学法人運営費交付金による支援に係る留意点」(平成22年4月20日各国立大学法人学長宛、文部科学省高等教育局長・研究振興局長連名通知)を抜粋してご紹介します。
◇
平成23年度の国立大学法人運営費交付金による支援に係る留意点について
■支援の基本的な考え方■
平成23年度の国立大学法人運営費交付金による支援の基本的な考え方を以下のとおり示す。
1 教育研究事業に対する支援
各国立大学法人における教育研究活動は、各法人の個性や特色に応じて意欲的かつ重点的に取り組まれるものであるが、同時に、社会経済の変化や学術研究の進展等を踏まえた我が国の高等教育政策、学術政策の推進の観点からも、その中核を担う重要な活動であり、次の(1)から(6)までに掲げる事業について必要な支援を行うことが求められる。
その際には、中期目標・中期計画や国の各種政策との関連性・整合性も勘案した上で、各法人の自助努力を求めつつ、各法人における事業の優先度を尊重した適切な支援となるようにすることが必要である。
(1)国立大学法人の個性・特色を生かした教育研究事業への支援
各法人としての役割や使命を果たすため、その個性特色を生かした先導的・萌芽的な取組、各種の社会的な要請、学問バランス等を踏まえた取組を支援
(2)国の政策課題等を踏まえて自主的に取り組まれる教育研究事業への支援
「新成長戦略」(世界的に魅力ある大学院、理工系博士課程修了者の完全雇用、新しい公共を担う高度な人材養成など)、「東アジア共同体構想」(域内の人的交流の拡充や各国言語・文化の専門家育成など)等の国の政策課題や地域の知の拠点として関わる課題等を踏まえて各法人が自主的に取り組む教育研究活動を支援
(3)大学間の連携・協力に基づく取組への支援
文部科学大臣が認定する「共同利用・共同研究拠点」及び「教育関係共同利用拠点」を含め、大学同士の連携・協力に基づき、各大学単独では不可能であっだ教育や研究等の抜本的な改革・発展につながる取組を支援
(4)教育・研究・診療基盤設備の老朽化対応への支援
各法人が保有する教育・研究・診療用の基盤的な設備の更新等を支援
(5)学生に係る教育研究環境の充実等への支援
教育機会確保のための授業料減免措置の取組、留学生や障害のある学生のための教育環境の整備等の学生に係る教育研究環境の充実に資する取組、学部・大学院における授業や研究指導の内容・方法の改善を図るための組織的な研修・研究の取組等を支援
(6)附属病院の機能強化・医療の向上の取組等への支援
地域医療のセーフティネット構築のための体制等整備、医師・看護師をサポートするコメディカルスタッフの配置等の取組、健康対策のための革新的な医療技術の研究開発や実用化の取組、感染症等の疾病に対応するための国際的な教育研究の取組等を支援
2 教育研究組織の整備に対する支援
教育研究組織の整備については、中期目標・中期計画に沿い、「新成長戦略」(世界的に魅力ある大学院、理工系博士課程修了者の完全雇用、新しい公共を担う高度な人材養成など)、「東アジア共同体構想」(域内の人的交流の拡充や各国言語・文化の専門家育成など)等の国の政策課題や各法人が地域の知の拠点として関わる課題等も踏まえた整備が求められる。
基本的には既存組織の見直しにより対応することになるが、新領域等に係る教員の配置に必要となる経費の増額など既存組織からの財源捻出だけでは対応が困難な場合には、必要に応じて、国としての積極的な支援が求められる。
その際、「国立大学法人の組織及び業務全般の見直しについて」(平成21年6月5日文部科学大臣決定)の趣旨に沿った取組を促すことが重要である。
なお、同決定への対応が適切になされていない法人については、その状況に応じ、支援の見直しを行うことが必要である。
■各国立大学法人における留意点■
平成23年度の国立大学法人運営費交付金による支援に関して、各国立大学法人における留意点を以下のとおり示す。
1 数育研究事業に係る留意点
(1)各事業区分(プロジェクト分、全国共同利用・共同実施分、基盤的設備等整備分)に共通する留意点
1)事業区分との適合性等
- 事業区分に対応した取組として具体的かつ明確に事業内容が設定され、社会ニーズや学問の進展を踏まえたものとなっているか。
- 事業内容が中期目標及び中期計画の記載事項と関連性のあるものとなっているか。
- 各種の競争的資金による事業との違いが明確となっているか。
- 事業の目的、目標が具体的かつ明確に設定され、かつ実現可能な内容となっているか。
- 組織、経費、実施体制等について、事業の推進にふさわしい計画となっているか。
- 事業を確実に実現するため、学内外の協力体制の構築等の具体的な工夫が行われているか。
- 他大学等の諸機関との連携により推進する事業については、a)連携先との調整や役割分担の明確化が図られ、連携による事業効果が期待できるものとなっているか、b)それぞれが分担する経費の内容が明確になっているか、c)法人の主体性が確保されているか。
- 事業成果の具体的な活用方策や、事業成果による波及効果が十分に期待できるものとなっているか。
- 事業が教育研究活動の改善をもたらすものとなっているか。
1)プロジェクト分
<国際的に卓越した教育研究拠点機能の充実>
- 客観的な指標等により、推進する事業が国際的に卓越していることの検証が十分に行われているか。
- 全学的な取組として充分な実施体制が確保されるなど、拠点機能を発揮することが確実に見込まれるものとなっているか。
- 国内外の大学や教育研究機関との連携がなされているか。
- 高度な専門職業人の養成に関する事業については、教育方法の開発や教育内容の質の向上が見込まれるものとなっているか。
- 専門教育機能の充実に関する事業については、高い専門性や実践的な能力を培うための教育内容・方法の改善が見込まれるものとなっているか。
- 教育目標の明確化とこれに伴う教育課程の改善、成績評価の在り方の改善、学生の就職活動等に係る学生支援体制の抜本的充実に向けた取組など、教育効果の創出が期待できるものとなっているか。
- 推進する事業の当該研究分野における位置付けや意義についての検証が十分に行われているか。
- 長年取り組んできた分野の更なる発展を図ろうとする取組、当該法人の利点を生かした新たな研究分野・領域への挑戦など、各法人の特性を生かした取組となっているか。
- 事業内容全体と連携内容との整合性や、連携先との調整、役割分担の明確化が図られており、連携による事業効果が期待できるものとなっているか。
- 地域において当該法人に期待される役割を発揮しようとする取組となっているか。
- 共同利用・共同研究拠点における研究活動は、拠点としての機能発揮を存分に期待できるものであり、関係分野のニーズを的確に反映した内容を有しているか。
- 教育関係共同利用拠点における教育活動は、拠点としての機能発揮を存分に期待できるものであり、かつ、利用する全ての大学の教育の改善に資するものであるか。
- 設備マスタープランにおいて現有設備の状況を分析し、更新等が予定される設備の範囲を把握するとともに、継続的に設備整備に充てる学内資源の額等を明示しているか。
- 設備マスタープランにおいて具体的な設備整備(設備名、金額、財源等)についての年次計画が設定されているか。
継続事業については、当該事業の進捗状況を把握し、事業計画の有効かつ効率的な推進が図られているか。
【進捗状況の把握の観点(例)】
- 当初の目的・目標に沿って計画が進展しているか。
- 事業を確実に実施するための学内外の協力体制があるか。
- 事業の実施により社会的課題や教育研究活動に改善効果をもたらしてきているか。
- 経費が効率的・効果的に使用されてきているか。
- 事業の実施上の課題に対して適切に改善策を検討し、改善を講じているか。
- 事業計画に沿って事業が進展していない場合の解決策や、計画で見込まれた以上の成果が得られた場合の対応策について検討しているか。
- 事業計画を変更する場合には、変更内容や変更理由が合理的であるか。
- 事業の実施状況、事業の成果、外部からの評価を客観的な指標等をもって的確に把握しているか。
教育研究組織については、以下に示す点に留意しつつ、学内における資源の再配分の努力を十分に行いながら、新たな学問分野の発展や社会ニーズに適切に対応するために必要な組織整備を行うことが求められる。
- 学部については、18歳人口の減少を踏まえつつ、社会ニーズ、志願者や就職等の状況及び将来見通し等の検討が十分に行われているか。
- 大学院については、課程ごとの学位授与の実績や見込みの検証、大学院教育の質の維持・確保、定員の充足状況等の検討が十分に行われているか。
- 研究所やセンター等については、新たな学問分野の発展や社会ニーズの変化等と当該組織整備との関係・必然性についての検討が十分に行われているか。
- 各法人の置かれた状況や、その個性・特色を生かし、また、必要に応じて、地域社会の特性や要請を踏まえたものとなっているか。
- 当該組織が、中央教育審議会答申等を踏まえるなど、我が国の高等教育政策、学術政策の方向性を反映した位置付けとなっているか。
2010年6月6日日曜日
時代錯誤
先日気になる記事を見かけました。日本共産党が6月3日付けで機関紙しんぶん赤旗に載せた「大学の危機打開へ、『学問の府』にふさわしい改革をすすめる日本共産党の提案」というものです。
気なる箇所を引用します。
2 大学の自主性を弱めた国立大学法人制度をみなおし、大学の「生命」といえる“自治と民主主義”を保障します
<学長・理事長の独断専行をうまない民主的な大学運営制度を確立する>
学長・理事長が大学経営に責任をもち、リーダーシップを発揮することは、実行力ある大学運営に必要です。しかし、それが独断専行となればかえって教職員の意欲をそぎ、大学の活力は低下します。国立大学法人制度には、それを防ぐ機能が欠けています。私立大学では、理事長のワンマンによる乱脈な経営によって、財政困難に陥った大学もあります。
こうした独断専行をうまない大学制度の確立が必要です。国立大学法人法、私立学校法を改正して、「大学の重要事項を審議する」(学校教育法)教授会の権限を明確にし、学長の選考にあたって教職員の選挙を尊重する制度を導入しま す。さらに私立大学について、財政を全面的に公開し、監事を評議員会が選任するなど、財政のチェック機能を強めます。
「自治」「民主主義」「学長・理事長の独断専行」「ワンマンによる乱脈な経営」「教授会の権限」「教職員の学長選挙を尊重」・・・驚くべき言葉の羅列に個人的には少々嫌悪感すら覚えます。
大学は、今、学長のリーダーシップの下で自主的・自律的な大学経営に努め、魅力ある教育研究や活力ある大学運営を目指した改革を進めていかなければなりませんし、現に懸命に取り組んでいる大学も多く、その実現に向かって汗を流している教職員は大勢います。
そのような中、自ら改革の先頭に立つわけでもない、批判・評論だけで責任を負うこともしない、大学の改革を阻むような行動をとる一部大学人たちが必ずいます。このような人たちが、大学の中で普段発している言葉を肯定するかような提言を常識ある公の政党が国民の前に示していることに大きな疑問をいだきます。
国民から愛される政党にはなるためには、このような現実を見誤った時代錯誤的・退廃的な発想は勇気をもって捨て去るべきではないかと思います。
気なる箇所を引用します。
◇
2 大学の自主性を弱めた国立大学法人制度をみなおし、大学の「生命」といえる“自治と民主主義”を保障します
<学長・理事長の独断専行をうまない民主的な大学運営制度を確立する>
学長・理事長が大学経営に責任をもち、リーダーシップを発揮することは、実行力ある大学運営に必要です。しかし、それが独断専行となればかえって教職員の意欲をそぎ、大学の活力は低下します。国立大学法人制度には、それを防ぐ機能が欠けています。私立大学では、理事長のワンマンによる乱脈な経営によって、財政困難に陥った大学もあります。
こうした独断専行をうまない大学制度の確立が必要です。国立大学法人法、私立学校法を改正して、「大学の重要事項を審議する」(学校教育法)教授会の権限を明確にし、学長の選考にあたって教職員の選挙を尊重する制度を導入しま す。さらに私立大学について、財政を全面的に公開し、監事を評議員会が選任するなど、財政のチェック機能を強めます。
◇
「自治」「民主主義」「学長・理事長の独断専行」「ワンマンによる乱脈な経営」「教授会の権限」「教職員の学長選挙を尊重」・・・驚くべき言葉の羅列に個人的には少々嫌悪感すら覚えます。
大学は、今、学長のリーダーシップの下で自主的・自律的な大学経営に努め、魅力ある教育研究や活力ある大学運営を目指した改革を進めていかなければなりませんし、現に懸命に取り組んでいる大学も多く、その実現に向かって汗を流している教職員は大勢います。
そのような中、自ら改革の先頭に立つわけでもない、批判・評論だけで責任を負うこともしない、大学の改革を阻むような行動をとる一部大学人たちが必ずいます。このような人たちが、大学の中で普段発している言葉を肯定するかような提言を常識ある公の政党が国民の前に示していることに大きな疑問をいだきます。
国民から愛される政党にはなるためには、このような現実を見誤った時代錯誤的・退廃的な発想は勇気をもって捨て去るべきではないかと思います。
2010年6月3日木曜日
毎日の時間を最大限に生かす
成功しようと思ったら、時間の使い方は非常に重要だ。仕事の状況を尋ねると、「すごく忙しい」とか「バタバタしている」と答える人がよくいる。忙しいことを自慢しているかのようだ。
しかし、忙しいからといって成功するとはかぎらない。大切なのは、どれほど忙しく働くかではなく、結果が出るような生産的なことをするかどうかだ。
毎日、すべきことをリストアップしてその日の計画を立て、照準を定めるといい。あなたがそれを実行しているとしたら素晴らしいことだが、それだけでは十分ではない。リストアップした課題が最も有効な時間の使い方かどうかが重要だ。
たとえ生産的でなくても、自分にとって楽だったり気分がよかったりすることに流れてしまいがちなのが人間だ。だから、自分を律しなければならない。あなたはその日の中で優先順位の最も高いことからしていくように、常に心がける必要がある。
時間をとって明日の活動のリストを作成しよう。明日すべき最も重要なことは何か。ひとつかもしれないし、複数かもしれない。しかし、どんなに多くても5つ以内にすることだ。その中にはあまりしたくないことも含まれているかもしれないが、それは目標達成に役立つはずだ。課題を重要度の順番に紙に書いてみよう。
明日の朝、最も重要な課題から取りかかり、重要度の順に次々と課題を終えていこう。仕事をするときは、一つひとつの課題に集中することが大切だ。そして一日が終わったら、翌日のための新しいリストを作成しよう。
しかし、忙しいからといって成功するとはかぎらない。大切なのは、どれほど忙しく働くかではなく、結果が出るような生産的なことをするかどうかだ。
毎日、すべきことをリストアップしてその日の計画を立て、照準を定めるといい。あなたがそれを実行しているとしたら素晴らしいことだが、それだけでは十分ではない。リストアップした課題が最も有効な時間の使い方かどうかが重要だ。
たとえ生産的でなくても、自分にとって楽だったり気分がよかったりすることに流れてしまいがちなのが人間だ。だから、自分を律しなければならない。あなたはその日の中で優先順位の最も高いことからしていくように、常に心がける必要がある。
時間をとって明日の活動のリストを作成しよう。明日すべき最も重要なことは何か。ひとつかもしれないし、複数かもしれない。しかし、どんなに多くても5つ以内にすることだ。その中にはあまりしたくないことも含まれているかもしれないが、それは目標達成に役立つはずだ。課題を重要度の順番に紙に書いてみよう。
明日の朝、最も重要な課題から取りかかり、重要度の順に次々と課題を終えていこう。仕事をするときは、一つひとつの課題に集中することが大切だ。そして一日が終わったら、翌日のための新しいリストを作成しよう。
2010年6月2日水曜日
SDの体系化と実践(3)
スタッフ・デイベロップメント(SD)の体系化と実践 (続き)
吉武博通 筑波大学大学研究センター長・大学院ビジネス科学研究科教授著 (リクルート・カレッジマネジメント161 Mar-Apr.2010号掲載)
職員が自らを成長させるための5つの条件
大学職員に求められる能力について述べてきたが、職員がそれらを身につけながら自らを成長させるためには、目的意識、質の高い職務、良き指導・助言者(メンター)、健全な職場環境、評価・処遇の5つの条件が整っていることが望ましい。
目的意識については、経営の一翼を担う気概を有する職員、ルーティン業務を着実に処理することで信頼を得たいと考える職員、学生に接することに喜びを感じながら親身に相談や質問に応じる職員など、様々であろう。大切なことはそれぞれの生き方や価値観に基づき、自分の持ち味を生かして大学に貢献する、そのような意識をもち続けることである。
職員に仕事を与えるに際しては、質の高い職務を適切に課すことを大学として常に心がけておかなければならない。仕事の目的や進め方に疑問を感じながら担当業務を処理している職員は決して少なくない。仕事の目的を明確にし、効率的に処理できる仕組みを整え、適切に職務を配分する。その役目を担うのはマネジャーである。
手本については前述したが、仕事の仕方や働き万の手本となる存在、必要な時に良き指導・助言を与えてくれる上司・先輩・同僚がいることは成長を強く後押しする。メンターと呼ばれる存在であるが、思考・行動特性を含む広義のスキルは彼らから学ぶことが多いし、どのような知識を身につけるべきかについても彼らの影響を強く受ける。
これと関連するが、職場環境の健全性も重要な条件である。フランクな対話、方針や情報の共有、新しい取組みや改善の奨励、職場内の連携・協力などが行われにくい職場では成長も阻害されよう。
最後は評価・処遇である。行き過ぎた成果主義は弊害のほうが多いが、上司や人事部門がきっちり見てくれているという信頼感や安心感がなければ意欲も長続きしない。
人材育成を目的に組織・制度・人事・研修を再構成
これまで述べてきたことからわかるように、職員の多様な生き方や価値観を尊重し、職員が自らの責任において自らを成長させることがSDの基本である。その成長を促すのはOJT(on the Job Training)であり、その効果が発揮されやすい環境を整えるのが大学の役割であると考えている。
その場合、大学は何に重点を置いてSDの環境を整えればよいのであろうか。3つに絞り、本稿のまとめとしたい。
1つめはマネジャーとメンターの育成・配置である。それ自体がSDであり、メンターについては本来自然発生的なものであるが、両方とも現段階においては意図的な育成・配置が必要と考えている。
マネジャーについては、同じ部課長級であっても組織を束ねるマネジャーと専門知識や経験を生かした上級スタッフの2種類の役職を設け、前者については、学内外で開催されるマネジメントプログラムの受講を義務付けるなど、マネジャー教育の徹底に力を注ぐ必要がある。
メンターについてはマネジャーがその役割を果たすことも多いだろうが、それに加えて、メンターの役割を担い得る人材をみつけ、戦略的な人事配置を行うとともに、後輩の指導をしながら自らも育つ仕掛けとしてチューター制を導入するなど、メンターが育つ基盤を整えることも重要である。
2つめは健全な職場づくりの促進である。理事や事務局長などが気軽に職場に出かけて職員に声をかける、定期的に職員との懇談会を設けるなど、すぐにでもできる工夫で、職場の雰囲気や組織の風通しは大幅に改善する可能性がある。
3つめはOJTを補うための、学外の教育・研修機会も活用した研修体系の構築とその計画的実施である。同時に、これら研修の成果を日常業務に根づかせるための方法論を確立しなければならない。
人を育てるためには、組織、制度、人事、研修などの総点検が必要であり、SDを掛け声倒れにしないためにも、それらを人材育成という1つの目的に向けて再構成する必要があると考えている。(おわり)
吉武博通 筑波大学大学研究センター長・大学院ビジネス科学研究科教授著 (リクルート・カレッジマネジメント161 Mar-Apr.2010号掲載)
職員が自らを成長させるための5つの条件
大学職員に求められる能力について述べてきたが、職員がそれらを身につけながら自らを成長させるためには、目的意識、質の高い職務、良き指導・助言者(メンター)、健全な職場環境、評価・処遇の5つの条件が整っていることが望ましい。
目的意識については、経営の一翼を担う気概を有する職員、ルーティン業務を着実に処理することで信頼を得たいと考える職員、学生に接することに喜びを感じながら親身に相談や質問に応じる職員など、様々であろう。大切なことはそれぞれの生き方や価値観に基づき、自分の持ち味を生かして大学に貢献する、そのような意識をもち続けることである。
職員に仕事を与えるに際しては、質の高い職務を適切に課すことを大学として常に心がけておかなければならない。仕事の目的や進め方に疑問を感じながら担当業務を処理している職員は決して少なくない。仕事の目的を明確にし、効率的に処理できる仕組みを整え、適切に職務を配分する。その役目を担うのはマネジャーである。
手本については前述したが、仕事の仕方や働き万の手本となる存在、必要な時に良き指導・助言を与えてくれる上司・先輩・同僚がいることは成長を強く後押しする。メンターと呼ばれる存在であるが、思考・行動特性を含む広義のスキルは彼らから学ぶことが多いし、どのような知識を身につけるべきかについても彼らの影響を強く受ける。
これと関連するが、職場環境の健全性も重要な条件である。フランクな対話、方針や情報の共有、新しい取組みや改善の奨励、職場内の連携・協力などが行われにくい職場では成長も阻害されよう。
最後は評価・処遇である。行き過ぎた成果主義は弊害のほうが多いが、上司や人事部門がきっちり見てくれているという信頼感や安心感がなければ意欲も長続きしない。
人材育成を目的に組織・制度・人事・研修を再構成
これまで述べてきたことからわかるように、職員の多様な生き方や価値観を尊重し、職員が自らの責任において自らを成長させることがSDの基本である。その成長を促すのはOJT(on the Job Training)であり、その効果が発揮されやすい環境を整えるのが大学の役割であると考えている。
その場合、大学は何に重点を置いてSDの環境を整えればよいのであろうか。3つに絞り、本稿のまとめとしたい。
1つめはマネジャーとメンターの育成・配置である。それ自体がSDであり、メンターについては本来自然発生的なものであるが、両方とも現段階においては意図的な育成・配置が必要と考えている。
マネジャーについては、同じ部課長級であっても組織を束ねるマネジャーと専門知識や経験を生かした上級スタッフの2種類の役職を設け、前者については、学内外で開催されるマネジメントプログラムの受講を義務付けるなど、マネジャー教育の徹底に力を注ぐ必要がある。
メンターについてはマネジャーがその役割を果たすことも多いだろうが、それに加えて、メンターの役割を担い得る人材をみつけ、戦略的な人事配置を行うとともに、後輩の指導をしながら自らも育つ仕掛けとしてチューター制を導入するなど、メンターが育つ基盤を整えることも重要である。
2つめは健全な職場づくりの促進である。理事や事務局長などが気軽に職場に出かけて職員に声をかける、定期的に職員との懇談会を設けるなど、すぐにでもできる工夫で、職場の雰囲気や組織の風通しは大幅に改善する可能性がある。
3つめはOJTを補うための、学外の教育・研修機会も活用した研修体系の構築とその計画的実施である。同時に、これら研修の成果を日常業務に根づかせるための方法論を確立しなければならない。
人を育てるためには、組織、制度、人事、研修などの総点検が必要であり、SDを掛け声倒れにしないためにも、それらを人材育成という1つの目的に向けて再構成する必要があると考えている。(おわり)
2010年6月1日火曜日
SDの体系化と実践(2)
スタッフ・デイベロップメント(SD)の体系化と実践 (続き)
吉武博通 筑波大学大学研究センター長・大学院ビジネス科学研究科教授著 (リクルート・カレッジマネジメント161 Mar-Apr.2010号掲載)
変わるためには手本とスキルが不可欠
次は「スキル」であるが、3つの要素のなかで身につけるための方法論や道筋が最も見えにくいのがスキルではなかろうか。
責任感、職務知識、規則に基づき正確に処理する能力などは申し分のない大学職員も、新たな問題に直面するとたとえそれが小さな問題でも戸惑いを隠せないという場面を数多く見てきた。また、意識改革の必要性は理解し、何かを変えなければいけないことはわかっていても、具体的にどのように発想を変え、仕事のやり方を変えればいいか、それがわからずに前に進めないというケースも多い。
このような状況に陥るのは、身近に手本がないからである。スポーツでも芸術作品の制作でもものづくりでも見たことがないものを真似ることはできない。先輩たちが規則や前例に従って正確に処理する姿は常に見てきた。だからそのような仕事ぶりは確実に引き継がれる。それ自体は大切なことであるが、変化が激しく、次々と新たな問題が投げかけられる近年の大学の現場には、新たな発想や方法を生み出すダイナミズムも必要である。
このような状況に役立つ手本は本当にないのだろうか。学部新設に一からかかわった職員、制度やシステムをゼロベースから作り上げた職員、大きなトラブルを処理した経験を有する職員などは、手本となり得る何かをもっていると思われる。このような職員は後述するメンターになり得る。
これと並行して、大学が重視するスキルを整理するとともに、それをどのようにして養成するかについての方針を明確にすることも重要である。
ここでいうスキルは思考・行動特性を含む幅広い概念であるが、
知識を体系化・構造化し人材育成を計画的に推進
3つめの要素である「知識」は、前述のとおり、「社会や学問の動向に関する興味・関心」、「大学業務に必要な知識」、「自分の大学に関する知識」の3つに大別できる。
大学教育において教養教育が重視されるように、社会や学問の動向に幅広く興味・関心を抱くことは大学職員の意識と業務の質を高めるために不可欠の要素である。ここでいう社会には国際社会や地域社会も当然に含まれる。
各国の経済状況を知ることで留学生支援業務への取組み方も変わってこよう。大学所在地の雇用状況は志願者数、在学生支援、就職活動に影響を及ぼす。このような具体的問題だけでなく、会や学問の動向を理解するなかで、自分なりの大学観が形成され、自分の大学の将来を考える上での座標軸を得ることができる。
大学業務に必要な知識は、「大学固有の知識」と「経営に関する知識」に分けることができる。前者には、大学の歴史・制度と諸外国の大学事情、大学を取り巻く状況と政策の動向教育に関する知識、研究に関する知識、学生支援・キャリア支援に関する知識、国際交流・留学生支援に関する知識などがある。
経営に関する知識は、経営管理、人事・労務管理、財務管理、施設管理、情報システム、知的財産管理、広報、リスクマネジメントなどである。それぞれに、企業にも大学にも適用できる共通の知識と大学だけに適用できる固有の知識(例えば国立大学法人会計や学校法人会計など)があることに留意する必要がある。
これらの大学業務に必要な知識には、担当職務に関係なく知っておくべき基礎知識と担当職務に関するプロフェッションを確立するための専門知識の2つのレベルがある。研修を実施する場合、対象者と目的を明確にした上で、それにふさわしい内容のプログラムを編成する必要がある。
本稿でいう知識の3つめが自分の大学に関する知識である。収容定員と在籍学生数,出身地分布留学生数と出身国・地域分布、学部別志願・受験倍率の推移、学部別就職率の推移、収入・支出内訳などについて、おおよその数字や傾向をすべての職員が頭に入れておくことが望ましい。さらに、自分の大学の歴史、教育の特徴、研究の強み、特色ある活動、最近のトピックスなども知っておくべきである。
自分の大学を知ることは自らを動機づけることになる。大学全体の状況を理解することで自部門や担当職務の課題も見え、他部門に対する理解も深まる。とりわけ、経営環境が厳しさを増すなか、大学がどのような伏態にあるかをより多くの職員が理解することで、危機感を共有することもできる。
求められる知識の全体像について述べてきたが、担当職務によって知識の深浅があるのは当然である。基礎知識のレベルであってもここに掲げたすべてが必要と考える必要もない。大切なことは知識を体系化・構造化することである。職員はそれに基づき自己啓発の目標を定めることができるし、人事部門はより合目的的な人材育成計画や研修計画を立てることができる。(続く)
吉武博通 筑波大学大学研究センター長・大学院ビジネス科学研究科教授著 (リクルート・カレッジマネジメント161 Mar-Apr.2010号掲載)
変わるためには手本とスキルが不可欠
次は「スキル」であるが、3つの要素のなかで身につけるための方法論や道筋が最も見えにくいのがスキルではなかろうか。
責任感、職務知識、規則に基づき正確に処理する能力などは申し分のない大学職員も、新たな問題に直面するとたとえそれが小さな問題でも戸惑いを隠せないという場面を数多く見てきた。また、意識改革の必要性は理解し、何かを変えなければいけないことはわかっていても、具体的にどのように発想を変え、仕事のやり方を変えればいいか、それがわからずに前に進めないというケースも多い。
このような状況に陥るのは、身近に手本がないからである。スポーツでも芸術作品の制作でもものづくりでも見たことがないものを真似ることはできない。先輩たちが規則や前例に従って正確に処理する姿は常に見てきた。だからそのような仕事ぶりは確実に引き継がれる。それ自体は大切なことであるが、変化が激しく、次々と新たな問題が投げかけられる近年の大学の現場には、新たな発想や方法を生み出すダイナミズムも必要である。
このような状況に役立つ手本は本当にないのだろうか。学部新設に一からかかわった職員、制度やシステムをゼロベースから作り上げた職員、大きなトラブルを処理した経験を有する職員などは、手本となり得る何かをもっていると思われる。このような職員は後述するメンターになり得る。
これと並行して、大学が重視するスキルを整理するとともに、それをどのようにして養成するかについての方針を明確にすることも重要である。
ここでいうスキルは思考・行動特性を含む幅広い概念であるが、
- 仕事ごとにその目的を確認し、目的に照らして最も合理的な方法を選択する能力・習慣
- 仕事の判断や処理に際して拠り所となる価値基準や行動規範
- 改善や効率化の手法
- 理解を得やすい文書の書き方や説明の仕方
- 職場での良好な関係の築き方
- 組織を超えた連携・協働の方法
知識を体系化・構造化し人材育成を計画的に推進
3つめの要素である「知識」は、前述のとおり、「社会や学問の動向に関する興味・関心」、「大学業務に必要な知識」、「自分の大学に関する知識」の3つに大別できる。
大学教育において教養教育が重視されるように、社会や学問の動向に幅広く興味・関心を抱くことは大学職員の意識と業務の質を高めるために不可欠の要素である。ここでいう社会には国際社会や地域社会も当然に含まれる。
各国の経済状況を知ることで留学生支援業務への取組み方も変わってこよう。大学所在地の雇用状況は志願者数、在学生支援、就職活動に影響を及ぼす。このような具体的問題だけでなく、会や学問の動向を理解するなかで、自分なりの大学観が形成され、自分の大学の将来を考える上での座標軸を得ることができる。
大学業務に必要な知識は、「大学固有の知識」と「経営に関する知識」に分けることができる。前者には、大学の歴史・制度と諸外国の大学事情、大学を取り巻く状況と政策の動向教育に関する知識、研究に関する知識、学生支援・キャリア支援に関する知識、国際交流・留学生支援に関する知識などがある。
経営に関する知識は、経営管理、人事・労務管理、財務管理、施設管理、情報システム、知的財産管理、広報、リスクマネジメントなどである。それぞれに、企業にも大学にも適用できる共通の知識と大学だけに適用できる固有の知識(例えば国立大学法人会計や学校法人会計など)があることに留意する必要がある。
これらの大学業務に必要な知識には、担当職務に関係なく知っておくべき基礎知識と担当職務に関するプロフェッションを確立するための専門知識の2つのレベルがある。研修を実施する場合、対象者と目的を明確にした上で、それにふさわしい内容のプログラムを編成する必要がある。
本稿でいう知識の3つめが自分の大学に関する知識である。収容定員と在籍学生数,出身地分布留学生数と出身国・地域分布、学部別志願・受験倍率の推移、学部別就職率の推移、収入・支出内訳などについて、おおよその数字や傾向をすべての職員が頭に入れておくことが望ましい。さらに、自分の大学の歴史、教育の特徴、研究の強み、特色ある活動、最近のトピックスなども知っておくべきである。
自分の大学を知ることは自らを動機づけることになる。大学全体の状況を理解することで自部門や担当職務の課題も見え、他部門に対する理解も深まる。とりわけ、経営環境が厳しさを増すなか、大学がどのような伏態にあるかをより多くの職員が理解することで、危機感を共有することもできる。
求められる知識の全体像について述べてきたが、担当職務によって知識の深浅があるのは当然である。基礎知識のレベルであってもここに掲げたすべてが必要と考える必要もない。大切なことは知識を体系化・構造化することである。職員はそれに基づき自己啓発の目標を定めることができるし、人事部門はより合目的的な人材育成計画や研修計画を立てることができる。(続く)
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