2016年3月14日月曜日

国立大学法人運営費交付金改革の経緯と今後の方向性(4)|財政審の審議に対する国立大学協会、政界の反応

(続き)

1 国立大学協会

国立大学協会は、財政制度等審議会財政制度分科会において財務省が示した今後の「国立大学法人運営費交付金」に関する提案について、平成27年10月、次のような声明を発表しています。
財務省は、運営費交付金を削減することによって、はじめて自己収入確保等のインセンティブが生まれると主張するが、我々国立大学の現状や自律的な取組に対してあまりにも配慮を欠いたものであり、むしろ改革の実現を危うくすると言わざるを得ない。 
また、家庭や学生の経済状況が厳しくなっている中で、授業料の引上げと併せて運営費交付金の減額を行うことは、経済格差による教育格差の拡大につながる。経済条件にかかわらず、また我が国のすべての地域において意欲と能力のある若者を受け入れて優れた人材を社会に送り出すという国立大学の役割を十分に果たすことができなくなることを危惧するところである。(中略) 
国立大学協会が本年9月14日に公表した「国立大学の将来ビジョンに関するアクションプラン」においては、主体的な改革の具体的な方向性と工程表を明らかにし、その中では厳しい財政状況も直視しつつ、大学間等の連携・共同による教育研究水準の向上を図ることや寄附金等の外部資金を含む多様な財源確保に努めることを明記するとともに、こうした改革を長期的見通しに立って実現していくためには、基盤的経費である運営費交付金の確保が不可欠であることを述べている。
国立大学が教育・研究・社会貢献の諸機能を強化し、将来の我が国の持続的発展に貢献する改革を着実に実行していくためには、「国立大学法人運営費交付金」等の基盤的経費の充実が不可欠であることを重ねて強調し、各方面のご理解を求めるものである。

また、各国立大学においても、経営協議会学外委員等の声明を発表しています。

さらに、平成27年11月、国立大学協会、公立大学協会、日本私立大学団体連合会は、危機的な財政状況を背景に、国公私立大学の教育研究基盤を揺るがす動きが加速しているとして、連名による「国家予算における国公私立大学の基盤的経費拡充に関する要望」を財務大臣と文部科学大臣に提出しています。



2 国立大学振興議員連盟など


国立大学の機能強化と財政基盤強化の方策を検討し、国家戦略としての国立大学振興を強力に進めていくことを目的に「国立大学振興議員連盟」が設立され、次のような決議が行われています。

平成28年度予算及び税制における国立大学法人関係予算の確保及び税制改正に関する決議
急速な少子高齢化やグローバル化の進展、新興国の台頭による国際競争の激化など、我が国を取り巻く社会環境の変化は激しく、新たな時代を切り拓く人材育成、イノベーションの創出、地方創生の実現に向けて、国立大学の果たすべき役割の重要性はますます高まっている。また、諸外国に目を向ければ、先進国や近年成長を遂げている国は高等教育政策を重視し、充実強化を戦略的に推進している。 
国立大学は全都道府県に設置され、社会・経済・文化・医療・福祉の拠点として、地域の中核、また我が国全体の総合的な発展に貢献するため、自ら積極的に改革を進めている。また研究面では、全てのノーベル賞受賞者を生み出したように、基礎研究から応用研究にわたり国際的な知的基盤を支える世界水準の研究を推進している。 
大学力は国力そのものである。我が国は長年にわたる経済の低迷から着実に脱却しつつあるが、経済社会の重大な転換期において、我が国社会の活力や持続的な成長を確かなものとするためには、国家戦略としての大学政策が不可欠である。特に、全国に配置された「知」の拠点である国立大学が、卓越した研究力と質の高い教育力をもって、我が国が直面する諸課題の解決に最大限貢献しうるよう、その機能と財政基盤を一層強化する必要がある。 
このような状況に鑑み、平成28年度予算及び税制において、左(下)記事項の実現に万全を期すべきである。
  1. 国立大学の機能を強化し、着実に改革を推進するため、基盤的経費である国立大学法人運営費交付金及び施設整備費補助金の拡充を図ること。
  2. 国立大学附属病院が、人材育成、地域医療の中核拠点、高度先進医療などの機能を十分に果たすため、必要な財政的支援の確保及び充実を図ること。
  3. 研究力の強化や大学改革を加速するため、科学研究費補助金をはじめとする各種競争的経費の安定的確保及び間接経費の充実を図ること。
  4. 卒業生も含めた多様な寄附者を拡大するため、個人寄附に係る所得控除と税額控除の選択制の導入を図ること。
右(上)決議する。
平成27年8月5日
国立大学振興議員連盟

国立大学法人運営費交付金の拡充に関する決議
経済社会の重大な転換期において、我が国社会の活力や持続的な成長を確かなものにするためには、国家戦略としての大学政策が不可欠である。しかし、国立大学においては、法人化以降続いてきた運営費交付金の削減により、若手の育成や研究力の低下などに深刻な影響が生じている。 
このような状況において、11月24日の財政制度等審議会の「平成28年度予算の編成等に関する建議」では、運営費交付金の削減を前提とした提案がなされた。このような提案は、国民からの期待に応えるべく、自ら改革を進める方針を打ち出している国立大学の改革意欲を損なうものであり、全く容認できない。 
急速な少子高齢化やグローバル化の進展を乗り越え、我が国が持続的に成長していくため、全都道府県に設置された「知」の拠点である国立大学は、人材育成、幅広い研究、社会や地域への貢献、グローバル化への対応などにおいて中核的役割を果たしていかなければならない。第三期中期目標期間がスタートする平成28年度の取組は、国立大学の改革の決意と着実な実行を示すためにも決定的に重要である。 
このような方針を示すため、平成28年度予算において、左(下)記事項の実現に万全を期すべきである。
  1. 国立大学の機能を強化し、着実に改革を加速するため、基盤的経費である国立大学法人運営費交付金の拡充を図ること。
右(上)決議する。
平成27年12月7日
国立大学振興議員連盟

(参考1)関連記事

教職員定数及び国立大学法人運営費交付金の充実、科学技術イノベーション創出に向けた投資の充実に関する決議
財政制度等審議会財政制度分科会において、少子化に応じた機械的な教職員定数の削減、国立大学法人運営費交付金の毎年度の1%削減、科学技術の投資目標設定の否定などの議論がなされているのは、誠に遺懐である。 
教育は国家の礎であり、将来を担う子供たちは国の宝である。我が国が急速な高齢化社会やグローバル化の進展を乗り越え世界に伍して成長していく上で、教育は未来への先行投資であり、不可欠なものである。教育は一人一人の生産性を高めるのみならず、科学技術イノベーションの創出につながり、経済の成長をもたらす。特に、学校を取り巻く環境が複雑化・困難化している中で、教育現場が抱える様々な課題への対応や、国立大学の機能強化と財政基盤の一層の強化、明確な投資目標を掲げた科学技術イノベーションの強力な推進は我が国の喫緊の課題である。成長の源泉である人材育成や研究開発への投資を削減すれば、経済の停滞をも招き税収が低下し国家財政の更なる悪化にもつながることとなる。 
このような状況にかんがみ、平成28年度予算においては、「一億総活躍社会」や「地方創生」を実現するためにも、以下に掲げる課題に万全を期すとともに、十分な文教・科学技術予算を確保すべきである。
  1. 学校現場の課題に対応する加配定数の充実をはじめ、長期的な視野に立った教職員の質と数の一体的な強化を図るための教職員定数の充実
  2. 国立大学の機能を強化し、自助努力を促しつつ、着実に改革を加速するため、基盤的経費である国立大学法人運営費交付金の充実
  3. 次期科学技術基本計画における政府の研究開発投資目標の明記、及び科学技術ノベーション創出に向けた投資の充実
右(上)決議する。
平成27年11月4日
自由民主党政務調査会文部科学部会

国立大学法人運営費交付金等の基盤的経費の充実に関する決議
世界が知識基盤社会へと進展する中、我が国の「知」を支える大学の役割は欠くことが出来ない。経済社会の重大な転換期において、大学を核としたグローバル化、イノベーションの創出や地域社会の活性化こそが、我が国の成長を支えるのであり、国家戦略としての大学政策が不可欠である。 
全都道府県に設置された「知」の拠点である国立大学は、人材育成、幅広い研究、社会や地域への貢献など、我が国の発展に貢献してきた。しかし、法人化以降続いてきた国立大学法人運営費交付金の削減により、若手の育成や研究力の低下などに深刻な影響が生じている。このような中にあっても、国立大学は、第三期中期目標期間において、国民からの大きな期待に応えるべく、自ら改革を進める方針を打ち出している。積極的に改革に取り組む国立大学を支援するため、教育研究基盤の充実は喫緊の課題である。 
このような状況において、財政制度等審議会から、国立大学法人運営費交付金の今後15年間にわたる毎年1%の機械的な削減が提案されたが、大学の改革意欲を損なうものであり、全く容認できない。また、この提案には、大学の自己収入を毎年1.6%増やすことも併せて付されている。大学の自己収入を増やす努力は重要であるが、この提案を実現するには、授業料の大幅な引き上げを余儀なくされ、結果的に家計に大きな負担を転嫁することとなることから、このような提案には、断固反対する。 
このような状況を踏まえ、政府は以下の事項の実現に万全を期すべきである。
  1. グローバル化、地域再生・活性化への対応、イノベーション創出機能の強化、優秀な若手研究者の確保など、改革を進める国立大学を積極的に支援し、その機能強化を加速するため、国立大学法人運営費交付金の充実を図ること。併せて、国公私立を通じた大学への支援の充実を図ること。
右(上)決議する。
平成27年11月5日
公明党文部科学部会
(続く)

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