投稿

7月, 2008の投稿を表示しています

国立大学法人の中期評価とは

国立大学には、現在、様々な評価制度が導入されています。法人評価、認証評価、自己点検評価、外部評価、教員評価、事務職員評価等々。ほとんどは法人化を機に導入されたものですが、今日はこのうち、私立大学にはない国立大学特有の「法人評価」についてご紹介します。 国立大学は、法人化された平成16年4月1日から、国立大学法人法第35条(独立行政法人通則法の準用)により、文部科学省に置かれた「国立大学法人評価委員会」(以下、評価委員会)の評価を受けることになりました。この評価のことを通称「法人評価」と言います。 ■法人評価の目的と分類 法人評価の主な目的は、 評価により、大学の継続的な質的向上を促進すること 評価を通じて、社会への説明責任を果たすこと 評価結果を、次期以降の中期目標・中期計画の内容に反映させること 評価結果を、次期以降の中期目標期間における運営費交付金等の算定に反映させること などが挙げられます。 法人評価は、国立大学の教育研究、業務運営、財務状況の継続的な質の向上に資するものとして行われるため、国立大学は、中期目標期間(現在は第1期で、平成16~21年度の6年間)における業務の実績についての報告書を提出し、評価委員会の評価を受けることが義務付けられています。 また、法人評価は、大きく次の2つに分類されます。 1 各年度終了時の評価(年度評価) 年度計画の実施状況等に基づく中期目標・中期計画の達成に向けた業務の進捗状況についての評価(年度評価)が行われます。各大学は、評価結果を業務運営や財務内容の改善・充実等に役立て、中期目標の実現を目指すことになります。なお、年度評価では、教育研究の状況についての評価は行われませんが、特筆すべき点や遅れている点についての指摘がなされます。 2 中期目標期間の評価(中期評価) 中期目標・中期計画の達成状況についての評価(中期評価)が行われます。なお、年度評価では行わなかった教育研究に関する評価については、「独立行政法人大学評価・学位授与機構」により専門的な観点から行われ、評価委員会はその評価結果を尊重することになっています。また、評価結果は、次期中期目標期間における各大学への運営費交付金の算定に反映させることになっており、今期中期目標期間の最終年度(平成21年度終了後)に評価を実施...

平成21年度概算要求基準

本日(29日)、平成21年度予算に係る概算要求基準が閣議において決定されました。 概算要求基準を閣議了解 高齢化で社会保障膨らむ (2008年7月29日 共同通信) 政府は29日夕、臨時閣議を開き、国の政策経費である一般歳出の上限額(基準額)を47兆8400億円とする2009年度予算の概算要求基準(シーリング)を了解した。公共事業などの削減を継続するが、高齢化に伴い年金、医療など社会保障費が膨らみ、08年度当初予算より約5600億円増えた。 3300億円の重点枠(重要課題推進枠)を確保し(1)経済成長力の強化(2)二酸化炭素(CO2)の排出抑制(3)医師不足対策を含む社会保障-などに手厚く配分。食料や資源・エネルギーの安定供給も対象に含めた。 財源捻出のため、3年以上継続している事業、公益法人向け支出などをゼロベースで見直し「政策の棚卸し」を行うと明記。公務員のレクリエーション費の原則廃止、タクシー利用の適正化を掲げた。 福田康夫首相は閣議に先立つ経済財政諮問会議で「国民の目線に立ち、めりはりのある予算にする」と決意を述べた。 平成21年度概算要求基準のポイント 概算要求基準は、財務省のホームページにおいて公表されています。主なポイントは、次のとおりです。 1 基本的考え方 平成21年度予算においては、財政健全化と重要課題への対応の両立を図る。 このため、「基本方針2008」を踏まえ、引き続き、歳出全般にわたる徹底した見直しを行い、歳出の抑制と真に必要なニーズにこたえるための財源の思い切った重点配分を行う。また、国債発行額についても極力抑制する。 2 具体的な枠組み (1)基準額の枠組み 年金・医療等については、自然増(8,700億円)に対し、制度・施策の見直しによる削減・合理化(▲2,200億円)を図り、6,500億円程度の増。 公共事業関係費は、前年度予算額から▲3%減。 その他経費(義務的経費、人件費を除く)については、以下を除き、前年度予算額から▲3%減。 ■科学技術振興費    前年度予算額と同額    ■国立大学法人運営費 前年度予算額から▲1%減    ■私立学校振興費    前年度予算額から▲1%減    ■防衛関係費       前年度予算額から▲1%減 義務的経費は、前...

これからの大学事務職員に求められる能力

近時、国立大学の法人化や全入時代の到来等に伴う大学経営重視の考え方が、以前から専門家によって行われてきた大学事務職員の在り方や職能開発に関する研究を、大学現場における実学として導入する必要性を高めています。 また、教育再生会議や経済財政諮問会議といった政府レベルにおける大学事務局の改革、事務職員の一層の資質向上と合理化等経営の効率化に関する議論が、国の重要政策としての大学の事務改革に拍車をかけています。 しかし、例えば国立大学の場合、事務職員の現状は、 天野郁夫 氏が指摘しているとおり、これまで、教員中心の大学運営の下で文部科学省所属の国家公務員としてルーティンワークに従事し、自立的な大学経営に必要な職能開発の機会を与えられてこなかったために、新規事業の企画立案等に対応しうる人材は質・量ともに十分ではありません。 事務職員の職能開発に関する多くの文献等において共通するこれからの事務職員に求められる能力は、教育研究活動支援及び大学経営支援という大学のミッションの特性に応じた専門的能力であり、この専門性は、従来のジェネラリストからスペシャリストへの単純な移行のためのツールではなく、幅広い教養や学術的視点、社会や学生・教員とのコミュニケーション能力、高等教育を取り巻く状況を分析する能力、そして戦略的な経営思考や企画能力などの大学人としての基盤的能力に裏打ちされたもの、またそれは、理論と豊富な実践経験を備えた大学経営人材(プロフェッショナル)を志向するものでなければならないとされています。 これからの大学には、学長や経営トップを支えるプロとしての力量のある事務職員が不可欠であり、今後、OJTを通じた実践的SD、職能団体や大学等が行うSD活動、大学院での専門教育など、多様な機会を積極的に活用し、事務職員が主体的に企画能力、専門能力、課題発見・解決能力を高め、教員との適切な役割分担・対等関係に基づく協働を促進していく必要があります。 その前提として、大学(私達)は、教職員の意識改革(又は意識のない者への動機付け)、事務組織の硬直性や非効率性の解消、OJTにおいて指導者となるべき幹部事務職員の能力開発、そして、大学の特殊性と言われる部局(教授会)自治主導の運営方式からの早急な脱却に向けた組織的、責任のある行動に努めなければなりません。 さて今日は、日本私...

高等教育政策の動向

文部科学省高等教育局が配信するメルマガ「高等教育政策情報」(2008.7.22、第37号)の主なものをご紹介します。 中央教育審議会(大学分科会)の審議状況 7月8日(火)、中央教育審議会大学分科会(分科会長:安西慶應義塾長)第69回が開催され、1)教育振興基本計画等、2)学士課程教育の構築に向けて(答申案)、3)高等専門学校教育の充実について(答申案)等について、報告及び意見交換が行われました。 安西分科会長からは、「教育振興基本計画をめぐる議論の中で、高等教育が大事だということが、浮き彫りになった。計画の14ページ『この5年間を高等教育の転換と革新に向けた始動期間と位置づけ、中長期的な高等教育の在り方について検討し、結論を得ることが求められる。』の部分は大学分科会に向けたものと認識している。今後、大学分科会では、具体的な議論を積み上げてまいりたい。」という旨の発言がありました。 「学士課程教育の構築に向けて(答申案)」は、「知識基盤社会」における大学教育の量的拡大を積極的に受け止めつつ、教育の質の維持・向上を図ろうとする基本的な考え方に立っています。この中では、1)学位の授与、学修の評価、2)教育内容・方法等、3)高等学校との接続、4)教職員の職能開発、5)質保証システムの各節にわたり、改革の具体的な方策について提言を行っています。分科会では、地方における大学の役割の重要性、自己点検・評価の未履行に対する厳格な対応、高等教育の財政支援の必要性に関する記述を追加して欲しい等の意見がありました。 「高等専門学校教育の充実について(答申案)」は、高等専門学校の振興方策について、高等専門学校を巡る社会経済環境の変化を分析するとともに、このような変化に対応した高等専門学校教育の今後の在り方及びその充実に向けた具体的方策を示しています。分科会では、高等専門学校教育の充実のためには財政支援が欠かせない等の意見がありました。 両答申案は、修正について分科会長に一任され、今後開催される予定の中教審総会に諮られる予定です。 その他、留学生特別委員会の審議状況について、「『留学生30万人計画』の骨子」取りまとめの考え方の説明があり、委員からは、同計画の実施に向けた財政支援の必要性や大学の自主的な取組の必要性等について意見が出されました。 ...

大学における「会議」というもの

義務教育諸学校はいよいよ今週から夏休みに入りました。大学もそろそろ夏休みモードに入ります。 とはいっても、これは学生と教員だけのことです。大学職員には学生や教員のような長い長い夏休みはありません。学生がいないからといって仕事がないわけでもありません。このことは、社会の皆様がよく誤解されていることのひとつでして、ひっそりとした大学の中でも、実は黙々と働く大学職員の姿があるのです。 大学が夏休みに入ると大学職員にとってとてもいいことがあります。それは、連日のように大学のどこかで開かれている様々な「会議」というものが一時お休みになるということです。 大学には社会や民間企業の皆様から見て実に不思議な世界が数多くありますが、この「会議」というものがそのひとつでして、その種類、数、要する時間の常識を超える多さには、さぞやびっくりされあきれかえることでしょう。 なぜそれほどまでに大学には「会議」が必要なのでしょうか。簡単に申し上げれば、教員集団による悪しき民主主義、合意形成を重んじる教員の自治意識が長きにわたり大学を支配しているからなのです。この大学の特殊性が、非生産的・無責任な議論をはじめ、多くの会議、無駄な時間・労力・費用を産み出しているのです。 学生への教育や研究の高度化を本務とする教員が、例えば、駐輪場を構内のどこにつくるかといった些細な大学の管理運営についての検討に膨大な時間を費やす、しかもそのために、高額な教員人件費、印刷費、光熱費、紙代、資料を作成する職員の人件費等々といった多額の費用が費やされている、このような社会から見て全くの非常識な状態が、大学の中では平然とまかり通っている。皆さん放置できますか? 経験から申し上げれば、大学における「会議」というものは、そのほとんどが、形式、内容ともに無駄なものだと思います。それは会議の成果、つまり責任のある効率的な意思決定を行う場として全く機能していないからです。 学長のリーダーシップの重要性が謳われて久しいわけですが、その理念に従って大学が効果的に機能している国立大学はおそらくわずかでしょう。現実は、多くの教員出身学長が、歴史と文化の異なる各部局への配慮に心を砕き、バランスと調整に奔走しているといったことではないでしょうか。したがって、会議コストの削減や効率的な運営に向けた職員の努力も、残念なが...

夢と消えた数値目標 教育振興基本計画(2)

前回の日記でもご紹介しましたが、教育振興基本計画の閣議決定(7月1日)を受け、新聞各紙はこぞって社説に論評を掲載しています。 また、基本計画の策定に向けご苦労された文部科学省も、高等教育局が配信するメルマガ「高等教育政策情報(第36号 2008年7月1日)」を通じて、以下のような「反省と抱負の弁」を述べています。 ■「教育振興基本計画」-大臣間の調整を経て、閣議決定- 「教育振興基本計画」は、改正教育基本法に基づき、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、政府が策定するものです。 文部科学省では、平成18年の教育基本法の改正を受け、平成18年2月から中央教育審議会において「教育振興基本計画」の在り方について検討を行い、平成20年4月に答申をいただきました。この答申を踏まえ、その後の様々な議論や要望も参考にしつつ、文部科学省が計画案を策定し、5月下旬から政府内での協議を進めていました。 このたび、関係大臣間の調整を経て協議を終え、7月1日(火)の閣議において「 教育振興基本計画 」が決定されました。 閣議後の記者会見において、渡海文部科学大臣からは、「数値目標を掲げることができなかったのは大変残念。現下の厳しい財政再建、財政状況の中で政府内の合意を得られなかった。今後、税制改革を含む歳入状況等の変化も踏まえ、投資と成果について研究を進めれば、数値目標は可能になるのではないか。いずれにせよ平成21年度の概算要求には、教育振興基本計画の内容を反映させていく。」とのコメントがありました。 ■政策担当者の目 (1)「骨太方針2008」 去る6月27日(金)、いわゆる「骨太方針2008」が閣議決定された。骨太2008の教育関係は、昨年の骨太2007における教育関係の記述と比較して寂しい限りの分量となっている。 本日(7月1日)に閣議決定された「教育振興基本計画」に基づき「我が国の未来を切り拓く教育を推進する。」としか記述されていない原案が内閣府から示されたのが骨太の各省協議のスタートであった。 これに対して文部科学省は反発し、基本計画が5年間の施策をカバーしているところ、骨太2008では来年度の重点施策をカバーするという違いがある点を踏まえ、「その際、・・・など新たな時代に対応した教育上の諸施策に積極的に取り...

夢と消えた数値目標 教育振興基本計画(1)

昨日(7月1日)、我が国初の「 教育振興基本計画 」がよくやく閣議決定されました。 残念ながら、文部科学省をはじめ教育関係者の努力も空しく、教育投資額の数値目標の記載は見送られることとなりました。財務省の壁は厚く、高く、極めて残念な結果に終わりました。 基本計画の策定については、これまでもこの日記で幾度となく経緯についてご紹介してきましたので、結果について私見を述べることはもう止めたいと思います。 閣議決定された基本計画についての各紙の反応は次のとおりです。 教育基本計画―学力向上へ大胆な投資を (2008年7月2日付 朝日新聞社説) 様々な政策が総花的に盛られているが、肝心のことが書かれていない。 教育基本法の改正を受けて、初めての政府の教育振興基本計画が決まった。しかし、焦点となっていた教員数や教育予算などの数値目標は軒並み削除された。 10年先のあるべき姿を見据えて今後5年の施策に取り組む。それが基本計画のねらいだ。 文部科学相の諮問機関である中央教育審議会の答申に、数値目標はなかった。これに対し、教育の底上げには数値目標が必要だ、との批判が教育現場だけでなく、与党からも上がった。 文科省は急きょ、数値目標を基本計画に書き足した。教育予算の対国内総生産(GDP)比を、現在の3.5%から経済協力開発機構(OECD)加盟国平均の5%に引き上げる。教職員を2万5千人増やす―。 だが、何せ付け焼き刃である。なぜ、5%なのか、2万5千人なのか。この投資でどんな成果が得られるのか。説得力に乏しかった。ただでさえ、歳出削減を求められる時代に、ただ金をよこせ、人を増やせだけではさすがに通らなかった。 しかし、今回の文科省の要求の仕方が稚拙だったからといって、大胆な教育投資が必要でないわけではない。 そもそも今回の基本計画から根本的に抜け落ちているのは、日本の教育の問題点をどう総括し、そのための処方箋(せん)をどのように描いていくかである。解決方法をきちんと打ち出していけば、教育予算をどのくらい増やさなければならないかもはっきりする。 例えば、日本の教育が抱える大きな問題は学力低下だ。特に国際的な調査で深刻さが浮き彫りになっているのは、考える力の不足と、できる子とできない子の二極化である。 この解決に必要なのは、子ども一人ひ...