いつまで続く模索と試行錯誤
天野郁夫さんが書かれた「国立大学の法人化-現状と課題-」(名古屋高等教育研究第6号)をご紹介します。 この論考は、国立大学が法人化して2年目に入った2006年(6年前)に書かれたものですが、この中で指摘された多くの課題が、今なお未解決のまま残存しています。 該当すると思われる部分を抜粋します。関係者は、改めて制度面、運用面について検証及び改善に向けた努力を深める必要がありそうです。 4 法人間の差異と格差-人的な資源 学長は法人化後、経営協議会と教育研究評議会から同数選ばれる委員からなる、学長選考会議によって選任されることになった。いいかえれば最高経営者としての学長は、「同輩集団」の直接選挙によらず、経営協議会委員という学外者を加えた学長選考会議が、大学の内外を問わず最適任者を選任できる仕組みになったのである。 しかし現状では学長は、学長選考会議で選任されるとは言っても、ほとんどの場合、選考手続きの一環として行われる教職員の意向投票を参考に、しかも学内から選任されるケースが圧倒的に多い。また、理事等の役員についても、一部学外から財務・人事等の専門家を任用する例がないわけではないが、一般的には、学内の教授陣のなかから任期付きで選任される場合がほとんどである。つまり現状では、国立大学法人の経営管理層の供給基盤は、それぞれの大学の現有する人的資源の量と質によって、大きく規定されていることになる。 法人化によって、文部科学省の直接的な「統制と庇護」から解き放された、一般の事務職員の場合にも、法人職員としての意識変革だけでなく、新しい経営体制に対応した職務の遂行能力の形成や向上が、重要な課題のひとつとなっている。しかし現状では、法人化からまだ2年ということもあるだろうが、どの大学法人とも、研修等を含む職員の人事政策の本格的な検討や策定を進めているようにはみえない。新しい任用試験制度の導入や、大学独自の方針による職員の新規採用、外部者の中途採用、地方自治体・企業等との交流人事も、一部の大学でようやく始まったばかりである。とくに、小規模の大学法人の場合、限られた数の職員を対象に、新しい試みを導入する余地はきわめて小さい。 大学の側からはしばしば厳しく批判されてきたことだが、これまでは、文部科学省の主導下に行われてきた本省と各大学、大学と大学の間の事務系管理職や一般職員の人事交流が...