投稿

6月, 2008の投稿を表示しています

教職協働のための目標設定

大学における教員と職員の連携、いわゆる「教職協働」については、この日記でも、これまで、その重要性や不可欠性とともに、現実としては意識の問題も含めてなかなか進まない実態などについて何度か取り上げました。 つい最近では、「 大学経営改革の動向 」の中で、英国の研究重点大学で研究支援の要職にあるマイク・グリフィス氏の寄稿「大学経営のプロへの途」をご紹介した際にも、教職協働に触れた次のようなコメントを転載いたしました。 もう一つ、とても大切なことは、チームワークです。協働が生み出す知恵と力はどんな個人にも勝ります。人々の能力は多様です。個々人がどんな能力を持っているか認識し、チームを多様な能力の人材で構成することが大切です。しかし、チームがオープンにかつ十分なコミュニケーションをとっていないと、目標も共有できませんし、チームとしての力も発揮できません。 大学でのキャリアを成功に導くためには、教員との間に良い関係を築かなければなりません。このことは、とても難しいことではあります。教員の中には、事務系職員から指示を受けるのを嫌う人もいますし、はなから事務系職員が役に立つアイデアを持っているはずがないと思っている者もいるのです。とにかく、会って話すことが大事です。とかくメールに頼りがちになる昨今ですが、教員と良い関係を築くためには欠かせません。そして、事務系職員と教員は同等の立場で、大学に貢献するのに、ただ違う能力を持っているのだと言うことを肝に銘じておきましょう。 今日は、久々に、 広島大学・高等教育センター長の山本眞一氏 が「文部科学教育通信」(2008.6.9 No197)に寄稿された 「教員と職員との目標共有」 をご紹介したいと思います。 大学の使命達成のために多くの課題解決を求められている同志として、事務職員はもとより、教員の方々にも、「教職協働」について、そろそろ真剣に考えていただくべき時期にきているのではないかと思います。 ■教育研究と事務処理と 言うまでもなく、大学の使命は、教育研究を通じて社会に貢献することである。このため大学の活動の中心部分をなすのは、もちろん教育や研究である。その教育や研究は、数ある知識の中でも、未だに知られていない部分をも含めて取り扱うものであり、企業における生産や営業活動に比べてはるかに創造性が要求される仕事...

チャンスの平等

先日、東京・秋葉原で多くの方が犠牲になった痛ましい事件が起こりました。 様々な社会的・個人的な問題が複雑に絡み合った結果生じた事件のようですが、今後このようなことが二度と起こらないよう、起こさないよう、私たち一人ひとりが自分のこととして重く受け止めなければなければなりません。 この事件の背景の一つとして大きく取り上げられているのが「格差社会」です。 いつも勉強させていただいている 「モチベーションは楽しさ創造から」 というブログでも最近取り上げられていますが、「 i Phoneと格差社会と秋葉原連続殺人 」と題された記事では、i Phoneのような素晴らしい製品を開発する企業には、クリエイティブからルーチンといった複数の業務に対応した人材階層が存在し、人件費コストの重視の結果がルーチン業務の軽視を、引いては、格差の固定・拡大、社員のモチベーション低下を誘引していること、格差解決のためには、社内における「チャンスの平等」「チャンスの提供の拡大」に視点を置いた人事制度が不可欠であることが述べられています。 私は、筆者の考えにいつもながらの示唆を覚えるとともに、実は同様のことは、企業社会だけではなく、大学にも十分当てはまるのではないかと考えました。そこで今日は、このブログの記事の一部をお借りして、その内容を大学に置き換えて考えてみたいと思います。[   ]が大学の場合になります。少し無理がありますが、読み替えてお読みください。 ◇ 企業 [大学] が支払う人件費には限界があります。高い人件費は、価格 [授業料] に転嫁されていくので、競争力を失わせる結果に繋がります。高い価格 [授業料] は、顧客 [学生] 満足度を下げる形になるからです。できる限り安い人件費率を実現する事で、価格 [授業料] 競争力を維持していこうとします。 i Phoneの競争優位を生み出している、源泉となる人材は誰かというと、当然、クリエィティブクラスの人材 [役員] となります。彼らの頭脳流出が起こらないように、彼らへは高収入が支払いをしていく事になります。彼らの市場価値は高く、引っ張りだこだからです。彼らを流出する事は、企業 [大学] の根幹を揺るがす事になるからです。そこで、優先的に彼らへの人件費配分が決定されていきます。 *1 しかし、クリエィティブクラス ...

大学経営改革の動向

大学は激動の時代を迎えていると言っても過言ではありません。大学は現在、経営改革に向けた懸命の努力を続けています。 特に、国立大学は、平成16年の法人化以降、国に依存する体質からの脱却を目指して、様々な自立的改革を進めています。独立行政法人国立大学財務・経営センターが配信しているメールマガジン(第25号、208.6.13)を通じ主な取り組みを見てみたいと思います。 特別寄稿「大学経営のプロへの途」 今回は、英国の研究重点大学で研究支援の要職にあるマイク・グリフィス氏に寄稿していただきました。同氏は会計の専門家として大学事務に入り、その後、システム関連分野にも専門を拡げていきました。 アンケートによると国立大学法人でも国際、会計、法律などの専門分野の人材が不足しており、外部人材のリクルートによって対応している大学も多いようです。今後は、新規採用に当たって、専門性の高い人材を一定程度確保する傾向も出てくるのでしょう。一方で、現に大学に奉職している職員も自分の足場になる専門性を身につけることが必要ではないでしょうか。特に若い職員の方々は、自分の専門を持つことによって、その後のキャリアが広がりを持つことにつながると思います。大学もそうした努力を奨励し、応援することが必要ではないでしょうか。 自分の専門性を活かしながら、新しい分野にも積極的にチャレンジしてやりがいのある職業人生を送ってきた大学事務系職員のエッセイをぜひお読みください。 ⇒ http://cz.biglobe.ne.jp/cl/W0399/1/2201000109/1156186 (抜粋) 自分自身のキャリアを振り返って見て、教訓めいたことはなんでしょうか? このエッセイを書きながら、様々なことが思い浮かんできます。最初に申し上げたいのは、ある分野で専門性を築くと言うことです。そして、その専門性をベースにして新しいことを学び、違う分野でも専門家になるのです。新しい分野に移ったからと言って、過去に修得したものが失われるわけではありません。過去に獲得した専門性が新しい展開を見せるだけです。私の場合も、コンピュータシステムの仕事から離れましたが、今度は、電子文書マネジメントシステムの開発で過去にものにした専門が活かされています。また、以前学んだ会計の知識がTRACや総経済コストに活かさ...

高等教育政策の動向

恒例になりました、文部科学省高等教育局が配信するメルマガ「高等教育政策情報」(第32号 2008.6.9)のうち主な記事をご紹介します。 このメルマガは、大学現場に身を置く者にとっては、高等教育に関する文部科学省の政策動向をリアルタイムに確認することができると同時に、「政策担当者の目」「編集後記」において、実際に政策に携わっておられる担当者の方々の率直な考えを伺い知ることができます。 今回掲載されている「誰がための数値目標か」では、教育振興基本計画への数値目標の設定に関わる財務省との闘いが、決して文部科学省の面目や保身のためにやっているものではないこと、我が国がこれまでお金をかけずに教育水準を保ってくることができたのは、教育関係者や国民の懸命な努力によるものであり、教育水準を更に高めようとするならば、もっとお金をかけなければならないこと、欧米先進国がより多くのお金をかけることにより有為な人材を多く養成し、その結果として国全体のパワーを高めようとしている中で、我が国がこのまま投資努力を怠れば大変な事態に至ることは確実であることなど、国民の利益を大義として、懸命に闘っておられる姿が目に浮かびます。 官僚バッシングが続く昨今ではありますが、国民、特に我が国の高等教育の発展のために是非がんばっていただきたいと思います。 ■教育振興基本計画の策定に向けた状況について -国立大学協会から要望提出- 教育振興基本計画については、中央教育審議会(会長:山崎正和LCA大学院大学長)の「教育振興基本計画について(答申)」(平成20年4月18日)を踏まえ、文部科学省で「教育振興基本計画」(案)を公表し、各省協議を開始した旨を 高等教育政策情報第30号 において、お知らせしたところです。本号では、その後の動きについてご紹介します。 6月2日(月)、国立大学協会の小宮山宏会長から渡海紀三朗文部科学大臣に 「教育振興基本計画について」(要望) が提出されました。具体的には、“特に、世界最高水準の教育研究環境を実現し、政府内諸会議からの大学に対する具体的な提案を実施するため、明確な資金投入の目標額を教育振興基本計画に盛り込み、出来るだけ速やかに高等教育への公財政支出をGDP比0.5%からOECD平均の1.0%を上回る規模へ拡充すべき”という要望が出されました。 こ...

国立大学の目指すべき方向

このたび、国立大学協会は、「国立大学の目指すべき方向-自主行動の指針-」(以下「指針」)を策定しました。 まだ、社会に公表されている段階のものではないようですが、教育振興基本計画の閣議決定を目前にした政府内での攻防が山場を迎えている今こそ、国立大学の存在価値と将来の展望について、国民の皆様の理解を得る必要があるのではないかと考え、今日は指針の概要をご紹介したいと思います。 指針には「提案の趣旨」として次のような記述があります。 指針を提案することにしたのは、各国立大学が第2期の中期目標・中期計画を策定するに当たり、あらためて国立大学としての使命と役割を確認すると同時に、各大学がそれぞれの特徴を生かし、個性的で存在感のある大学として発展するための基本的な方向を示すことに意義があると考えたからである。 指針は、大学の個性化・機能分化が大きな流れであることに鑑み、国立大学セクターとして求められている共通の役割に加え、各国立大学が、自らの将来を展望し、自主的な行動計画を策定するための基本的な方向性を「指針」という形で示すことにしたものである。 また、指針には、このたびの財務省と文部科学省の「対GDP比の議論」に触れる形で次のような主張が記述されています。 国立大学を取り囲む環境は大変厳しく、特に国の財政事情は逼迫の度を深めている。しかし、そのことを最大の理由に挙げ、高等教育費に対する政府支出のGDP比が先進諸国で最低水準であることを合理化することは、それこそ高等教育の国際的通用性を財政基盤から危うくすることに繋がる。このことの理不尽さを国民各層が実感を持って理解するためには、大学、とりわけ国立大学が21世紀を切り開く高等教育機関としての信頼性を確立することが何よりも重要である。 「指針」は、直接的には、国立大学の自主行動計画策定のためのガイドラインであるが、同時に、国民各層の期待に応えるための国立大学の「行動宣言」でもある。各大学において真剣な議論と責任ある行動が展開されることを願っている。 それでは本文(概要)をご紹介します。 現在、各国立大学は、平成22年度から始まる第2期中期目標期間(6年間)における事業計画である中期計画の策定に向けた準備に余念がありません。計画を策定するためには、各大学の理念に基づく個性の発揮などを核とした経営戦略...

財政審は国民に夢を与える議論ができないのか

昨日(6月3日)、 財政制度等審議会 (以下「財政審」)は、「平成21年度予算編成の基本的考え方について」と題する建議を財務大臣に提出しました。(財政審の建議について取り扱うのは今回で2回目です。1回目: http://daisala.blogspot.jp/2007/11/blog-post_5702.html ) 財政審の建議は、例年、財務省の主張を忠実に反映した厳しい内容で埋め尽くされているわけですが、特に今回は、教育予算に関し、文部科学省とのいわゆる「対GDP比の議論」が目下山場を迎えていることも影響してか、財務省の反論が露骨に書き込まれています。見方によっては、 財務省の省益優先の考え方を公の審議会をツールとして利用し国民に訴えている ようにも見えなくはありませんし、 今回の書きぶりは少々冷静さや品格に欠けたものではないか という気が個人的にはしています。 いつもながら不思議に思うのは、財政審は、各界の様々な立場の有識者で構成されており、我が国の将来発展の基盤となる健全な財政運営に関する議論を行う場であるはずなのですが、公表されている審議会の議事内容や今回のような建議からは、多様な意見や考えをうかがい知ることがなかなかできません。財務大臣の私的諮問機関という位置づけ、あるいは審議会委員の選定の仕方に要因があるのかもしれませんが、もう少し 透明性のある運営を行うべきではないか と考えますし、 財務省の役人が用意したシナリオどおりの議論だけではなく、国民の目線で議論をすることにも配意されてもいいのではないか と思います。 以下に、財政審建議に関する記事と、建議に書かれた高等教育関係の抜粋をご紹介します。 財政審、歳出削減路線の堅持を 09年度予算で建議 (2008年6月3日 共同通信) 財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は3日、2009年度予算編成の基本的な考え方を示す建議(意見書)を額賀福志郎財務相に提出した。社会保障や教育など各分野で予算増の圧力が高まる中で、小泉政権以来の歳出削減路線の堅持を要請。高齢化で膨らむ医療や年金負担の財源として、消費税率引き上げを含む税制抜本改革の早期実現を訴えた。 建議は、国と地方を合わせた長期債務残高が08年度末には778兆円に達する見通しについて「金利上昇で利払い費が増加し、財政赤字が拡大する懸...

高等教育政策の動向

前回に続き、文部科学省高等教育局が配信しているメルマガ「高等教育政策情報」(第31号 2008年6月2日)の主な記事をご紹介します。 中央教育審議会の審議状況について (1)大学分科会留学生特別委員会(第4回~第7回)について -「『留学生30万人計画』の骨子」取りまとめの考え方に基づく具体的方策の検討- 4月14日、4月25日、5月12日及び5月19日に、大学分科会留学生特別委員会(座長:木村孟大学評価・学位授与機構長)の第4回、第5回、第6回及び第7回会議が開催されました。 各委員会では、「『留学生30万人計画』の骨子」取りまとめの考え方が示され、これに基づく具体的方策の検討事項について、議論がなされました。 取りまとめの考え方においては、以下のような項目で構成されています。 留学生30万人計画の意義と期間 優れた資質を有する留学生を戦略的に獲得 留学生を引き付けるような魅力ある大学づくりと受入れ体制 留学生にとって魅力ある社会-日本の社会のグローバル化- 関係省庁・関係機関等の連携による有機的、総合的な推進 日本人の海外留学 委員会においては、主に以下のような意見が出されました。 留学生の獲得戦略を立てる場合は、それぞれの地域や国の相違や事情等も勘案して、対策、戦略を立てる必要があること。 戦略的に留学生を受け入れるために、労働政策や外交政策との連携が重要であること。 留学生30万人計画を推進するにあたり、多くの留学生を受け入れつつ、優秀な留学生を獲得するためには、大学等が留学生を引きつけるような魅力を持つことが必要であること。 日本の大学のグローバル化のために、1)大学側の組織的な受入体制の整備、2)各大学の取組をさらに組織的に支援していく施策について考慮すること。 (2)大学分科会(第68回)について -制度・教育部会、留学生特別委員会等の審議状況について意見交換- 5月20日に中央教育審議会第68回大学分科会(分科会長:安西祐一郎慶應義塾長)が開催されました。 当分科会における教育振興基本計画に関する審議については、 第29号 で紹介したところです。この他、制度・教育部会、留学生特別委員会等の審議状況について報告・意見交換を行いました。 制度・教育部会(部会長:郷通子お茶の水女子...

がんばれ 文部科学省!

まず、文科省高等教育局が配信しているメルマガ「高等教育政策情報」(2008.5.28 第30号)の主な記事をご紹介します。 教育振興基本計画をめぐる動きについて-文部科学省原案を公表- このたび文部科学省において、「教育振興基本計画」の原案を策定し、5月23日(金)に公表の上、各省協議を開始しましたので、その内容についてお知らせします。(略) 文部科学省としては、各省協議を経て、できるだけすみやかに閣議決定することを目指しています。 なお、教育振興基本計画に関連し、5月26日の新聞では、大学分科会の安西委員(朝日新聞)、郷委員(日経新聞)が、それぞれ高等教育への投資拡大を訴えています。 安西委員は、インタビューに答えるかたちで、2月に4委員連名で発表した意見書「大学教育の転換と革新」の趣旨に触れつつ、「高等教育は危機にある」、「大学の自助努力と国の財政支援は車の両輪」等の主張をされています。 また、郷委員は、財務省の主張にも「大学の教育研究環境の現状を直視していない」と批判を加え、「教育の「成果」や質の卓越性を追求することは、「投入量」の在り方と不可分で、相反するものではない。大学教育の「成果」を直接的に把握・測定することが困難であればこそ、OECD統計や国際的な大学評価などでは、「投入量」の指標が多用されている。」とした上で、大学分科会において、学士課程教育に関する審議を通じ、教育の質を問う真剣な論議を行っていることを強調しています。 財務省財政制度等審議会の動向について-文部科学省の見解- 財政制度等審議会は国の予算、決算及び会計の制度に関する重要事項等について審議するため、財務省に置かれている審議機関です。毎年、春と秋に財務大臣に予算編成に関する意見を述べており、今年は5月19日に文教・科学技術関係について審議が行われました。 高等教育関係の主要部分について、審議会で示された資料とそれに対する文部科学省の見解を簡略にまとめました。 財政制度等審議会資料掲載ホームページ http://www.mof.go.jp/singikai/zaiseseido/siryou/zaiseib200519.htm 総論 審議会資料: 教育振興基本計画では、「投入量」ではなく「成果」で目標設定すべき。 文科省見解: 成果目標...