投稿

7月, 2017の投稿を表示しています

記事紹介|民意の衣

横浜市長選で与党が推薦する現職の林文子氏が3選を果たした。しかし安倍首相が姿勢を改めたことが奏功したとは想像しづらい辛勝であった。更なる悪化を押しとどめたとは言えるかもしれなが。 変化をもたらしたのは、何といっても1日の東京都議選での自民党惨敗と、内閣支持率の急落だ。それがなければ安倍首相が閉会中審査に出席することも、「丁寧な説明」をすることもなかったろう。 4日に発表された11日付の文部科学省人事では、初等中等教育局長が官房長に、高等教育局長が生涯学習振興局長に異動した。慣例からいえば屈辱的だ。しかし噂では他省庁から局長をあてがう内示が都議選前にあったというから、同省にとって最悪の事態は逃れたというべきかもしれない。 安倍首相に席上からヤジを飛ばさせたのも、低姿勢に一変させたのも、選挙結果や支持率という民意の衣である。就任以来、アベノミクスによる景気回復への期待が続いてきたが、その幻想も幻滅に変わったということか。 政権交代後、とりわけ「お友達」の下村博文氏が文部科学相になって以来、不可解な動きが省内に感じられた。端々に出てきたのは学習指導要領の「解釈改訂」、教科書検定の見直しなどだが、「ミサイル教育」は果たして教職課程コアカリキュラムにとどまらず次期指導要領解説の総則に「国民保護」を明記させるに至った。 森友・加計両学園の問題によって、ようやく不可解さに「忖度」という名が付いた。前川喜平・前事務次官に対しては「なぜ在任中に言わなかったか」という批判があるが、当時とてもそのような雰囲気になかったことは端目に見ても分かる。 首相が裸だと明らかになった7月が終わる。内閣改造後の残暑は過ごしやすいのか、はたまた止まらない汗が衆目にさらされることになるのか。 【池上鐘音】首相の衣|教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説  から

記事紹介|難の有る人生が、有り難い人生

難の無い人生が、無難な人生。 難の有る人生が、有り難い人生 パッと見ると、難を避けて無難な方がいいかなと思ってしまうかもしれませんが、 「有り難い」と漢字で書くことで、困難が有ることも悪くないと思えるようになる。 エジソンもこう語っています。 『ほとんどの人が機会を逃してしまうのは、その機会が作業服をまとって、いかにもありきたりの仕事に見えるからだ。』 自分を育ててくれるものは、自分にとって都合が良かったり、すぐにありがたいと思えるような格好をしていないということ。 砥石は滑らかではないから、刃物を磨くことが出来るのと同じですね。 難|今日の言葉  から

記事紹介|足るを知る者は富む

ブッダは「嫉妬することで満足することがないから、明らかな智慧(ちえ)をもって満足するほうが優れている。明らかな智慧をもって満足している人を、嫉妬が支配することはできない」と述べておられます。 もしあなたが「足(た)る」を知る、つまり自分のもっているものの大切さを知り、ひとをうらやんでも意味がないという智慧をもつなら、もはや嫉妬があなたを支配することはないと語っているのです。 「足るを知る」ということは、「いま自分のもっているものを大切にせよ」ということです。 もともと「足るを知る」という言葉は老子(ろうし)の「足るを知れば辱(はずかし)められず」から来ています。 そして「足るを知れば辱められず」に続けて「止まるを知れば殆(あや)うからず(限度を知れば危険はさけられる)、もって長久なるべし」と語っています。 老子はこの説明として「名誉と身体とどちらが大切か、健康と財産はどちらが大切か、得ることと失うことはどちらが苦しいか、ひどく欲しいものがあれば、大いに散財する、たくさん持てばたくさん失う」といっているのです。 他人が何かをもっていても、それは健康に比べれば意味がない、もっているものは必ず失うようになるのだ、だからうらやんでも仕方がないといっているのです。 連合艦隊司令長官を経て、昭和天皇の侍従長として二・二六事件の際にあわや一命を落とすばかりの経験をし、天皇に請われて終戦時の総理大臣になった鈴木貫太郎(かんたろう)大将の座右の銘は「足るを知る者は富む」でした。 あれほどの名声地位をもつ鈴木貫太郎大将がこれを座右の銘にしていたということに深い感慨を覚えます。 堀口大学という詩人がいます。 芸術院会員で文化勲章をもらい、功成り名遂げたこの詩人に「座右銘」という詩があります。 「暮らしは分が大事です 気楽が何より薬です そねむ心は自分より 以外のものは傷つけぬ」 人をそねみ、うらやんでも、結局うらやむ自分が傷つくのだという詩です。 これはほんとうにわたしたちの心を動かす詩です。 さらに「気楽が何より薬です」という言葉には「気楽になることが人生の目的だ」という意味も含まれているように思えます。 江戸時代の禅僧で書画をよくして博多の仙厓(せんがい)和尚は「寡欲(かよく)なれば即ち心おのずから安らかなり」と...

記事紹介|日本の大学が国際化するには

日本の大学の国際化がなかなか進まない。世界大学ランキングで上位に顔を出すのは一握りで、留学生の受け入れ比率なども世界的に低い水準だ。東京大学で正規職の外国人教員として32年間教え、今春退官したロバート・ゲラー名誉教授は「日本の大学が国際化するにはガバナンス(統治)改革が不可欠」と訴える。 ▶外国人の目に日本の大学はどう映りますか。 「私は1984年、東大の任期なし外国人教員第1号として米スタンフォード大から招かれた。恩師が東大出身だったので、オファーを受けたときに迷いはなかった。だが当時も今も、外国人が移籍したいと思う日本の大学はほとんどない。大学運営も世界標準から大きく外れている」 外国人教員5% 「なかでも奇異に感じたのが2011年、東大が秋入学への移行を検討し始めたときだ。欧米の多くの国が秋入学なので、日本もそれに合わせれば国際化が進むという単純な発想だったようだが、議論は紛糾し、結局先送りになった」 「学内討論会が開かれたとき、私は『なぜそんなマイナーな問題にこだわるのか』と当時の学長に問いただした。国際化を目指すなら、もっとやるべきことがあると」 ▶それは何ですか。 「最も大事なのは優れた外国人教員を任期なしで多く採用することだ。英米の一流大では外国人比率が3~4割に達し、多様性の高さが研究や教育の質を高めている」 「一方、日本では外国人教員は5%程度しかおらず、大半が3~5年の任期付きだ。せっかく日本に来ても任期中から次の就職先を探さねばならず、日本語を学ぶ余裕すらない。結局定着できず日本を去ってしまう」 ▶なぜ外国人を増やせないのでしょうか。 「ひとつの理由は日本では各専攻で少人数の教授たちが人事権を実質的に独占していることだ。教授会で審査されるが、覆ることはほぼない。しかも採用基準が曖昧で、自分の弟子や仲間だけが条件に当てはまるようにしている。外部に優れた人材がいても確保できず、大学がタコツボ化している。自治に名を借りた悪平等だ」 「一方、欧米の有力大では教員を採用するとき、一流学術誌に掲載された論文数や引用数といった定量的評価と学外の第三者による定性的な評価を併用し、大学が本当に必要とする人材を国内外から選んでいる」 ▶何を改めるべきですか。 「米国の大学には学長に次ぐ『プロボスト』という職があり...

記事紹介|組織の動かし方、仕事の進め方(2)

イメージ
(続き) 知識の深さと広がりが判断の的確性と柔軟性を育む 次に、仕事の進め方について、主として大学職員を前提に考えてみたい。 近年、業務の多様化や高度化を背景に、教職協働、より高い専門性や企画・立案力等を大学職員に求める傾向が強まっている。このこと自体、決して間違いではないが、高度な専門性も企画・立案力も、的確かつ効率的に仕事を進める能力の上に積み上がっていくものであり、このような能力を持続的に高められる環境が整っているか、個々の大学の実情も含めて厳しく点検する必要がある。 下図は、仕事を進める上で必要な能力を、学士力や社会人基礎力を含むこれまでの議論も踏まえつつ、整理したものである。白地は、主として学校教育段階でその基礎を身につけるべき能力であり、網かけは、仕事や職場での経験を通して養われる部分が大きいと思われる能力である。以下では後者を中心に論じることとする。 図は、下から上に向かう構造となっており、土台としての自己管理能力から始まり、組織内で信頼を蓄積し、それに基づいてリーダーシップを発揮できる状態に到達するまでに、求められる能力要素を整理している。ここでいうリーダーシップは、役職等の地位に関係なく発揮できる能力を意味する。 自己管理能力は課外活動を含む学校教育段階で一定程度身につけることができるが、職業生活においては、職場規律、チームワーク、生産性等に影響することもあり、格段に厳しくその能力が問われることになる。就職直後に関わり合う上司・先輩の影響はとりわけ大きい。 知識については、学校教育で得るものに加えて、職務上の知識をOJTまたはOff-JTで身につけなければならない。 ここで重要なのは、表層的な知識にとどまることなく、その本質まで掘り下げるとともに、周辺領域や関係領域まで広げて知識を習得する必要があるという点である。 職務上必要な知識に深さと広がりを持たせることで、正確な理解に基づいた的確な判断が行えるようになるだけでなく、根本的な原理・原則を押さえた上で、より柔軟な判断や創意工夫を行う余地も広がる。 どのようにすればこのような深さと広がりのある知識を身につけることができるかは、育成上重要な課題である。 価値観や考え方を組織文化として定着させる 中段右側の要領、手順、段取りは、生産性に直結する要素で...

記事紹介|組織の動かし方、仕事の進め方(1)

「ハード」の変革から「ソフト」の工夫へ 「改革」を通して大学はより良き方向に向かっているのだろうか。組織や制度を変えることは改革の手段であり、目的ではない。また、組織や制度を変えたからといって、それが直ちに教育研究の高度化や経営力の強化に結びつくわけではない。 組織が目指す目的・目標を構成員が十分に理解し、その達成に向けて個々の能力を高め、最大限に発揮しつつ協働する。そして、組織内の至る所で自発的かつ持続的な改善が展開される。このような状態を創り上げることこそ改革の究極の目的である。 組織・制度の見直しは、そのための「ハード」の変革と言えるが、実際に組織をどう動かし、仕事をどう進めるかという「ソフト」とも呼ぶべき要素を重視し、その能力を高めることも極めて重要である。 例えば、学長が決定する事項と学部または学部長に委ねる事項を見直すことは、組織・制度に係るハードの問題であるが、学長が必要な情報を集め、如何なる判断を行い、下した決定をどう伝え、実行を促すかはソフトの問題と言える。近年のガバナンス改革は前者を中心としたものであり、後者は学長個人の能力や経験に委ねられたままである。 次に、職員の業務を考えてみたい。教員組織と職員組織の間の機能・権限分担、職員組織における部署間の機能分担や職階間の権限関係等はハードの問題であるが、実際の仕事をどう進めるかは、ソフトの問題である。教育研究に対する効果的な支援、学生サービスの質、業務全体の生産性等は、ハード面のみならずソフト面に左右される部分が大きい。 働き方改革や生産性向上は我が国全体の課題とされている。リーダーシップ、人材育成、仕事術、データ分析、プレゼンテーション等、組織の動かし方や仕事の進め方を扱った啓蒙書や雑誌の特集も多く、ビジネスの現場における関心の高さが窺われる。 これまで、合意プロセスや規則・前例に則った手続き的側面が重視されてきた大学においても、教育研究の質の高度化や経営力の強化を進める上で、組織の動かし方と仕事の進め方に関する実践的能力が、より求められるようになってきた。 本稿では、組織を動かすという観点から「会議」のあり方を根本的に見直すことを提案した後、仕事を進める場合の工夫・改善点を、具体的な場面に即して検討する。その上で、それらの基礎となる考え方やスキルを如何にして身につ...

記事紹介|心を届ける

土砂降りの中、濡れないように配達した郵便物をお渡しすると、おばあさんはびっくりしたように私のことを見ました。 「あらあら。すごい降りで、頭からビッチョリだね。大丈夫かい?」 優しい一言が、どんなに嬉しいか。 我々が届けているものは郵便でも荷物でもなくて、人の心だと思っているので、心の言葉をいただけると何より元気になります。 先日もご紹介した、 『「ありがとう」と言われる会社の心動かす物語』(日本経済新聞出版社) からのご紹介です。 郵便局の方が届ける手紙や小包はそのものの価値よりも、そこに込められている送り手の気持ちが本当の届けたい物。 松下幸之助氏のこんな話も有名です。 『ある日、幸之助氏が、工場でつまらなそうな顔をして電球を磨いている従業員に、「あんた、良い仕事してるで~」と言ったそうです。 「毎日、同じように電球を磨く退屈な仕事ですよ。」と愚痴を言う従業員に、幸之助氏は、「本読んで勉強してる子どもらがおるやろ。そんな子どもらが、夜になって暗くなったら、字が読めなくなって勉強したいのにできなくなる。そこであんたの磨いた電球をつけるんや。そうしたら夜でも明るくなって、子どもらは夜でも読みたい本を読んで勉強できるんやで。あんたの磨いているのは電球やない。子どもの夢を磨いてるんや。暗い夜道があるやろ、女の子が怖くて通れなかった道に、あんたが磨いた電球がついたら、安心して笑顔で通れるんや。もの作りはものを作ったらあかん。その先にある笑顔を作るんや。』 皆さんが扱っているものには、誰の、どんな心が乗っていますか。 心を届ける|今日の言葉  から

記事紹介|「協働型研究開発コモンズ」がイノベーション効果をもたらす

科学技術への多岐にわたる期待とは裏腹に、世界的に人材育成、研究活動は財政難にあえいでいる。実際、わが国も厳しい財政情勢の中で、現実に可能な経済支援は、局所的対症治療ないし現体制の延命措置を施すに過ぎない。今日のみならず次世代社会にも持続的に適合する科学技術の経営基盤を築くためには、根本的な発想の転換が求められる。あらゆる知恵を結集して、学術的、社会的目的達成のために、現状打開を図らねばならない。 わが国の研究生産性の低迷 わが国は、研究費総額18.9兆円(うち国費は3.5兆円で19%、民間資金が72%)、研究人口68万人(うち大学教員18万人で、民間が7割を超す)を投入する。生産性の一指標である科学論文数約7万5千本は世界5位であるが、残念ながら、被引用数トップ10%論文が10位、トップ1%論文は12位と低調で、ここ10年間、全分野について下振れ傾向にある。米国、中国など大国のみならず、研究開発費、研究人口の少ない国々の後塵を拝する惨状にある。これらは主に大学、公的研究機関が関わる活動状況を示すが、その充実、改善のためには、既成の体制への単純な資金の拡大、人頭の増加ではなく、当然資金配分法の改革、研究人材の内容向上が求められる。しかし、不振の主たる原因は、大学の教育研究に関わる守旧的価値観の岩盤、それがもたらすイノベーション効果の欠如であり、ぜひともこのシステム・クライシスを克服しなければならない。 新たな目標に対応すべく既存組織は戦略的に縮小すべし 今世紀に入り、わが国のみならず、世界の高等教育、研究開発システムは、社会の要請に十分に応えられていない。とりわけわが国ではその理由を公的財政支援の不足とする意見は多く、筆者も理解はするが、単なる資金増だけでは問題解決には至らない。急激に経済発展する中国を例外として、10年後の各国の公的研究開発費は、楽観的に見ても現在の2倍には届くまい。しかし、総額の制限にもかかわらず、科学技術界には現行の活動に加え、新たに「知の共創・再構成」、「第4次産業革命」、COP21の主題であった「地球温暖化問題」、国連で採択された「仙台防災枠組み2015-2030」、「持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs)」などの巨大な国内的、国際的諸問題への早急な対応が求められている。 ものづくり産業に例えれば、一定量の資...