人を動かす
日本私立大学協会私学高等教育研究所研究員の岩田雅明氏が書かれた、論考「 人を動かすマネジメント 」( 文部科学教育通信 No294 2012.6.25 )をご紹介します。 ◇ 承認のパワー 企業研修等で、意欲が出た上司の言動とはどんなものだったかということを聞いてみると、「相談に乗ってもらえたとき」とか、「難しい仕事を任されたとき」、「結果をきちんと評価してくれたとき」、といった答えが多く返ってくる。逆に、意欲が喪失した上司の言動について尋ねると、「全否定されたとき」とか、「結果に対してコメントのなかったとき」といった答えが多い。これらの答えから推測できることは、上司が部下の存在を認めること、能力を認めること、行動や結果を認めることが、部下の意欲向上と強く関係しているということである。 アメリカの調査機関ギャラップ社のハーター博士が、世界各国の40万人以上のビジネスパーソンに対して実施した調査を分析した結果、従業員に対する承認、称賛が所属部門の生産性や利益を高めることが分かったという(太田肇同志社大学教授著『承認とモチベーション』より)。また太田教授自身の研究でも、承認とモチベーションの関連性が明らかにされている。 そして、このようなことが実証される前から、マネジメントの才に長けた人たちは、このことを感覚的に分かっていたようである。例えば、マネジメントの古典的名著である『人を動かす』の中で、著者のデール・カーネギーはこう勧めている。人を働かせるためには、褒めることと、励ますことが何よりであると。日本でも、大日本帝国海軍の連合艦隊司令長官、山本五十六氏は、次の言葉を残している。 「やってみせ、言って聞かせてさせてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」 「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず」 「やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」 軍隊といえば、上司の命令は絶対的なものという世界である。そのような中でも、主体的な意欲・行動を引き出すためには、承認することが不可欠であることを悟っていたのであろう。また、サービス業に従事する人たちが口を揃えていうことは、お客さまからの感謝の言葉が何よりの励みになるということである。これなども、承認のパワーを裏付けするものの一つである。承認と類似したものであるが、...