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行政書士を考える⑩ 外国人支援は「ビジネス」でいいのか

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愛知県東海市にある介護施設で、あるインドネシア人女性が高齢者のケアにあたっている——今週、そんな現場の様子を伝える記事を目にしました。彼女は家族を支えるために「特定技能」という在留資格を取得し、今年来日したそうです。その様子を見守っていたのが、彼女を支える「登録支援機関」の代表者でした。登録支援機関とは、特定技能1号の外国人を受け入れる企業から委託を受け、事前ガイダンスや日本での生活・就労に関する支援など、定められた支援計画を実施する事業者のことです。記事によれば、この登録支援機関は企業から毎月、1人当たりの「支援委託手数料」を受け取って運営されているそうです。 この記事は〈移民ビジネスを追う・嵐の前夜〉という連載の一部で、2027年4月に始まる「育成就労制度」を前に、外国人労働者の受け入れに関わる業界が大きく揺れ動いている様子を追ったものだそうです。有料会員限定のため全文は読めませんでしたが、この冒頭部分だけでも、「外国人支援」という仕事の現場感が伝わってきます。おそらく本編では、この「支援委託手数料」というビジネスモデルの是非、つまり「これは支援なのか、商売なのか」という問いが掘り下げられているのだろうと思います。 今回は、この記事をきっかけに、自分なりに制度や統計を調べながら、「外国人支援をビジネスにすること」についてあらためて考えてみたいと思います。 まず数字を見てみましょう 在留外国人は2025年末に412万人を超え、初めて400万人の壁を突破しました。働く外国人も2025年10月末で257万人を超え、こちらも過去最多です。 外国人が増えれば、在留資格に関する申請や更新などの行政手続きも重要性を増します。制度も年々複雑になっていて、たとえば「経営・管理」という在留資格は2025年10月に審査基準が大きく厳しくなりました。資本金等、常勤職員、経営者の学歴・経験、日本語能力など、求められる条件が大幅に厳しくなったのです。 制度が厳しくなればなるほど、本人や企業だけでは対応が難しい場面も増え、専門家の役割は大きくなります。先ほどの記事に出てきた「登録支援機関」は、2026年9月17日時点で全国に1万1,615機関が登録されています。特定技能外国人を支える仕組みに、多くの事業者が参入していることがわかります。...

行政書士を考える⑨ 大学と行政書士、二人の「翻訳者」が地域を変える

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きっかけ NHKの解説委員室で 、「大学が地域を元気にする役割を担うようになってきている」という内容の記事が紹介されていました。少子化が進む中で、大学が「勉強するだけの場所」から「地域のために何ができるかを考える場所」へと変わりつつある、という話です。 これを読んで、私は「大学と行政書士事務所が力を合わせたら、面白いことができるのではないか」と考えました。今日はそのことを、できるだけわかりやすくお伝えしたいと思います。 そもそも行政書士とは何をする人か 行政書士とは、市役所や県庁などに提出する書類を作る専門家です。会社を作るときの手続き、外国人の方が日本で働くための手続き、相続に関する書類など、私たちの生活のいろいろな場面で必要になる「お役所とのやり取り」を助けてくれる存在です。 そして大学は、みなさんもご存知の通り、学生が勉強し、先生方が研究をする場所です。 一見、この二つには接点がなさそうに見えます。でも実は、これから何十年か先を考えたときに、この二つは「よく似た問題」を抱えている、というのが私の考えです。 大学も行政書士も、「これまでのやり方」が通用しなくなってきている 大学の役割は、長い間「知識を教えること」でした。しかし今は、インターネットで検索すれば、たいていのことはすぐに調べられます。AIに質問すれば、丁寧に説明もしてくれます。「知識を持っていること」だけでは、大学の価値を示しにくい時代になってきました。 行政書士の仕事も、これまで「書類を作ること」が大きな役割の一つでした。しかし今は、書類作成もAIやオンラインの申請システムがどんどん手伝ってくれるようになっています。「書類を作れること」だけでは、行政書士の価値を示しにくい時代になりつつあります。 つまり大学も行政書士も、 「これまで自分たちが得意だったことが、機械にもできるようになってきた」 という、同じ悩みを抱えているのです。だからこそ私は、この二つが手を組むのは、単に「仲良くやりましょう」という話ではなく、お互いがこれからも必要とされ続けるための、大切な取り組みだと考えています。 行政書士が知っている「地域の小さな困りごと」 行政書士の事務所には、日々さまざまな相談が寄せられます。たとえば、 ...

行政書士を考える⑧ 熊本地震で見えた「街の法律家」のもう一つの仕事――被災者と行政をつなぐ

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令和8年7月28日、熊本県で最大震度7を観測した地震が発生しました。「令和8年熊本地震」です。 県内の広い範囲が甚大な被害を受け、いまも復旧・復興への歩みが続いています。 大きな災害が起きると、消防、警察、自衛隊、医療関係者、建設業者、ボランティアなど、実に多くの人々が現場に立ちます。 その中に、あまり知られていないながら、静かに重要な役割を担う専門職がいます。 行政書士です。 以前このシリーズの第⑤回「 行政書士を考える⑤ 手続きは、目に見えない「二次災害」だった 」で、被災された方が発災直後から数ヶ月にわたって直面する、罹災証明・支援金申請・相続・事業再建といった手続きの重なりを、地震そのものとは別の「もうひとつの災害」として取り上げました。今回は、その手続きの山を実際に支えている専門職の姿に焦点を当てたいと思います。 熊本県行政書士会の取り組みを調べていくと、この資格の、普段とは違う顔が見えてきました。 それは、 被災者と行政の間をつなぐ仕事 です。 1.被災者支援の重要な入口――「罹災証明書」 家が損壊した。では次に、何をすればよいのでしょうか。 多くの支援は、まず「罹災証明書(り災証明書)」の取得から始まります。罹災証明書とは、地震などの災害によって住宅がどの程度の被害を受けたかを、市町村が調査のうえ証明する書類です。 これは単なる「被害の証明書」にとどまりません。住宅の被害の程度によって、その後利用できる支援の中身が変わってくるからです。生活再建支援金、住宅の応急修理、税や保険料の減免、各種の融資――。 地震 → り災証明書 → さまざまな支援制度 という一本の道筋があるからこそ、最初の一歩であるり災証明書が重要になるのです。 2.しかし、その「申請」自体が高い壁になります 「役所に行って申請すればよいだけではないか」と思われるかもしれません。しかし、被災した本人にとって、それは決して簡単なことではありません。 家が壊れている。避難している。車が使えない。高齢である。けがをしている。家族もまた被災している――。 前回の記事で触れたように、心も体もすり減っている中で書類と向き合わなければならないこと自体が、大きな負担になります。近年はオンライン申請を導入する自治体も増えましたが、便利...

行政書士を考える⑦ 境界線という、見えない落とし穴

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2026年8月26日、福岡地裁で開かれたある刑事裁判で、気になる出来事が明らかになりました。自賠責保険の請求をめぐって弁護士法違反(非弁活動)に問われている行政書士の被告が、自分に不利な内容の証拠資料を、同業者3人に流出させていたことが判明したのです。裁判長は「厳重注意」という異例の対応を取りました。 一見、ひとつの裁判での小さな出来事に見えるかもしれません。しかしこれは、行政書士という資格をめぐる、業務範囲や他士業との境界という、より大きな問題にもつながっています。今回は、①何が起きたのか、②なぜこういうことが起こるのか、③行政書士とはそもそも何をする資格なのか、④私たちはどう向き合えばよいのか、の順に整理してみます。 1. 何が起きたのか 事件の発端は、交通事故の被害者からの依頼で自賠責保険(強制的に加入が義務づけられている自動車保険)の請求手続きを行っていた、ある行政書士です。共済側から保険金の支払いを拒否されたため、この行政書士は依頼者に代わって「異議申し立て」を行いました。 ところがこの異議申し立てという行為が、「弁護士でなければできない法律事務」に当たるのではないかとして、この行政書士は弁護士法違反(非弁活動)の罪で起訴されました。被告は「非弁活動には当たらない」と否認しています。一方、検察側は法律事務に当たるとして起訴しており、現在、その法的評価が裁判で争われています。 問題はここからです。裁判の中で検察側は、県の行政書士会理事を聴取して作成した供述調書を証拠として提出しました。その内容は「これは非弁活動に当たる」という、被告に不利なものでした。 被告はこの調書のコピーをPDF化し、「意見を聞きたかった」という理由で、同業者である行政書士3人に送ってしまいます。同業者間で情報が共有された後、その内容をめぐって行政書士会内で理事への批判が繰り返される展開となりました。追い詰められた理事は「証人として出廷できない」と言い出す事態にまで発展し、検察側は弁護側に抗議。裁判長は「刑事訴訟法に抵触するおそれがある」「審理の運営に悪影響を与える可能性がある」として被告を厳重注意し、流出させたデータを削除するよう求めまし...

行政書士を考える⑥ 制度は変わる。備える人だけが、変化を追い風にできる

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2026年、中小事業者の皆様にとって看過し得ない制度変更が、期せずして同時に進行しています。ひとつは食品にかかる消費税を8%から1%へ引き下げるという案、いまひとつは毎年秋に実施される最低賃金の改定です。いずれも「まだ正式には決まっていないから」「毎年のことだから」と後回しにされがちですが、備えの有無によって事業への影響の度合いは大きく変わってきます。本稿では、この二つの変化の内容と、事業者の皆様が今から思案しておくべきことについて、あらためて整理します。 食品消費税「1%」案とは何か 政府は2027年4月をもって、食品にかかる消費税率を現行の8%から1%へと引き下げる制度の導入を目指しています。2026年6月には制度案の中間とりまとめが公にされ、その後、法改正へ向けた準備を進めるよう指示が下されましたが、本稿執筆時点(2026年8月)においては、いまだ法案の成立には至っていません。 もともとは食品の消費税を0%とする案が検討されていましたが、レジシステムや会計ソフトの多くが税率0%を想定した設計になっていないこと、インボイス上で0%が非課税として扱われてしまう懸念があること、システム改修に10か月から1年程度を要する可能性が示唆されていることなどから、あえて1%を残す形で調整が進められています。 免税事業者ほど、影響を受けやすいという事情 消費税の納税義務を負わない免税事業者にとって、これまで売上に上乗せしてきた8%分は、実質的な収益の一助として機能してきた面があります。税率が1%へと下がれば、この上乗せ分が縮小し、利益を圧迫する懸念があります。一方で仕入れにかかる消費税はコストとして残るため、業種によっては利益率の低下を避けがたいところもあるでしょう。 とりわけ影響が大きいと見られているのが、食品を扱う小売業、飲食店、そして農家です。飲食店については、店内飲食が「サービスの提供」とみなされ10%のまま据え置かれる一方、テイクアウトやスーパーの惣菜は1%に軽減されるため、消費者の外食離れを招くのではという懸念があります。農家についても、種苗や肥料、燃料の仕入れには10%の消費税がかかったままとなるため、売上側の税率が下がることで、かえって利益が圧縮されるという逆転現象が起こりえます。 最低賃金改定——「秋に決まる」ではもはや遅い ...

行政書士を考える⑤ 手続きは、目に見えない「二次災害」だった

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2026年7月28日、熊本県を震源とする最大震度7の地震が発生しました。多くの方が住まいや大切な場所を失われ、今なお避難生活を送られている方も少なくありません。テレビやSNSで流れてくる映像を見るたびに、言葉を失います。被害に遭われた皆様に、心よりお見舞い申し上げます。 災害のニュースというと、倒壊した建物や、断たれたライフラインの映像がまず語られます。でも、実際に被災された方が本当につらいと感じる時期は、少し経ってからやってくるのではないかと思います。 それは、片付けが一段落した頃に押し寄せてくる「手続き」の山です。 罹災証明書、支援金の申請、保険会社とのやり取り、亡くなった家族の相続、お店や会社の再建計画……。心も体もすり減っている中で、こうした書類と向き合わなければならない。「何から手をつければいいのかわからない」「窓口に並んでも、自分の状況をどう説明していいかわからない」。過去の災害のたびに、そうした声を耳にしてきました。 これは、地震そのものとは別の、もうひとつの「二次災害」のようなものだと感じています。今日は、被災された方がこれから歩んでいくであろう時間の流れに沿って、その中で起きがちなことを書いておきたいと思います。専門家に相談するかどうかは別として、「こういう手続きがある」「こういう順番で困りごとがやってくる」ということを知っておくだけでも、いざというときの心の負担は少し軽くなるはずです。 発災直後〜数週間:まず何から手をつければいいかわからない時期 避難所生活や片付けに追われるこの時期、多くの方が最初に耳にするのが「罹災証明書」という言葉です。これは、その後のほぼすべての支援制度の入口になる書類で、住まいの被害程度を自治体が確認して発行するものです。 ただ、これがなかなか厄介です。調査の申請、必要書類の準備、判定への納得がいかない場合の再調査依頼など、平常時でも簡単ではない手続きが、被災直後の混乱の中で降りかかってきます。「まず罹災証明書」ということだけでも、頭の片隅に置いておくと、少し見通しが立てやすくなるかもしれません。 数週間〜数ヶ月:暮らしを立て直そうとする時期 罹災証明書が取得できると、次は住宅の修繕や再建、生活再建支援金の申請といった動きが始まります。こ...

行政書士を考える③ 中小企業を支える「もう一人の相談相手」

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七月二十日は「中小企業の日」。日本にある企業の実に九十九パーセントは、中小企業・小規模事業者だと言われています。近所のスーパーや飲食店、工事を頼む工務店、精緻な部品をつくる町工場——私たちの暮らしは、その一つひとつに支えられています。 けれども今、こうした企業は厳しい局面に立たされています。原材料や人件費は上がっても価格に転嫁できない。人を雇いたくても雇えない。後を継ぐ人がいない。賃上げをしたくても、その原資がない——。 こうした課題に対して、実は「行政書士」という専門家が、地味ながら確かな形で力になれることをご存じでしょうか。今回は、市民の方にもわかりやすく、行政書士が中小企業のために何ができるのかをご紹介します。 行政書士とは、そもそも何をする人か 行政書士は、役所に提出する書類の作成や、契約書づくりを専門とする国家資格者です。「代書屋」という古いイメージを持たれることもありますが、実際には、経営者が新しい挑戦をするときの許可を取ったり、事業を次の世代へ引き継ぐための道筋を書類の形で整えたりする、いわば「制度と経営をつなぐ専門家」です。 値上げがしにくい会社に、できること 「値上げをお願いしたいけれど、取引先に言い出せない」——そんな声をよく耳にします。行政書士は価格交渉そのものに立ち会うことはできませんが、値上げの裏付けとなる「公的なお墨付き」を取る手伝いができます。 たとえば、国や都道府県が行っている「経営革新計画」や「経営力向上計画」の認定を受けると、税制の優遇や融資の際の信用力アップにつながり、「うちはこれだけの努力をしている」という説得材料になります。こうした計画書の作成や、ものづくり補助金・持続化補助金といった補助金の申請書類づくりも、行政書士の仕事です。 人手不足に、できること 人手不足は今、多くの中小企業にとって死活問題です。ここは行政書士が特に力を発揮できる分野です。 外国人の方に働いてもらうためには、「在留資格」という国の許可が必要です。この申請を代理で行えるのが行政書士です。2027年には「育成就労」という新しい制度も始まる予定で、早いうちから受け入れの準備を進めたい企業にとって、頼れる相談相手になれます。 また、建設業など、許可を維持すること自体が事業継続の条件になっている業種では、その許可...