あなたの「当たり前」は、誰かの「すごい」

――自分では気づかない力に、出合い直す――

あなたにとっての「当たり前」は何でしょう

「あなたにとって当たり前にできることで、人に驚かれることは何ですか」

そう尋ねられたら、あなたは何と答えるでしょう。すぐに思いつく方は、意外に少ないものです。「特にありません」と答える方もおられるでしょう。けれども私は、答えが見当たらないところにこそ、大切なものが隠れていると考えます。人は、自分にとって自然にできることを、特別だとは思わないからです。

毎日欠かさず続けられること。人の話をじっくり聴けること。初対面の人とも自然に言葉を交わせること。誰かが困っていると、気づかぬうちに手を差し伸べていること。本人にとっては「ごく普通のこと」でも、その普通は、誰にとっても普通とは限りません。

才能は、目立つ姿をしているとは限らない

才能と聞くと、絵が上手い、文章が書ける、人前で話せるといった、人より秀でた能力を思い浮かべがちです。もちろん、それらも才能です。けれども、才能は必ずしも目立つ形をしているわけではありません。

「どうしてそんなことができるの」と尋ねられても、うまく説明できない。努力しているという自覚さえない。ただ、自然にできている。そこに、自分では気づいていない力が宿っています。あまりにも自然にできてしまうからこそ、自分では見つけにくいのです。

身近にある、見えにくい才能

  • 続ける力:毎日少しずつでも、決めたことを続けられる。本人には普通のことでも、長く続けることは誰にでもできるわけではありません。
  • 聴く力:相手の話を遮らず、急いで答えを出そうとせず、ただ耳を傾けられる。それだけで救われる人がいます。
  • つなぐ力:人それぞれの良さを見抜き、「この二人ならきっと合う」と、自然に橋を架けられる。双方から信頼されていなければできない、高度な営みです。
  • 和ませる力:その人がいるだけで、場の空気がやわらぐ。仏教に言う「和顔愛語」、穏やかな表情とやさしい言葉の持ち主です。
  • 上機嫌でいる力:嫌なことがあっても声を荒らげず、誰もが腹を立てそうな場面でも、機嫌よく物事を収める。周囲への、何よりの贈り物です。
  • 美点を見つける力:欠点より先に長所が目に入り、その人自身も気づいていない良さを引き出せる。
  • 切り替える力:「今泣いたカラスがもう笑う」。子どものような素直さで、失敗を引きずらず、また前を向ける。

こうして並べてみると、どれも一見、特別な才能には見えません。けれども、人と人との関係を支えるという点で、決して小さな力ではないのです。

「できること」ほど、自分では見えない

私たちは、自分にできないことには敏感です。あの人は話が上手い、仕事が速い、人付き合いがうまい。そうして、つい人と自分を比べてしまいます。ところが、自分が自然にできていることには、驚くほど無頓着です。「こんなことは誰でもできる」と思い込んでしまうからです。

そこで、信頼できる方に、こう尋ねてみてはいかがでしょう。

「私が当たり前にやっていることで、あなたがすごいと思うことは何ですか」

思いがけない答えが返ってくるはずです。自分では何とも思っていなかったことを、「そこがあなたの良さです」と教えてもらうこともあるでしょう。それは、新しい才能を手に入れることではありません。すでに自分の中にあったものに、出合い直すことです。

自分の「当たり前」は、誰かの「ありがたい」

このことは、自分自身にだけ向けるものではありません。身近な人にも、その人なりの「当たり前」があります。いつも黙って話を聴いている人。困っている人に自然に声をかける人。人目につかぬところで、役割を果たし続けている人。本人には特別なことではなくても、周囲にとっては大きな支えになっています。

私たちは、ともすれば目立つ才能ばかりを評価しがちです。しかし、本当に人を支えているのは、目立たない力なのではないでしょうか。

地域に生きる私たちへ

地域社会もまた、一人ひとりの「当たり前」によって支えられています。近所の人に自然に声をかける人。会合の席で、皆が話しやすいよう気を配る人。頼まれもしない地域の務めを、黙々と続ける人。こうした力は数字には表れにくいものですが、その一つひとつが、地域の安心と温もりをつくっています。

自分の当たり前に気づくことは、自分を誇ることではなく、自分が誰かの役に立てる場所を知ることです。そして同時に、隣に立つ人の当たり前に気づき、その存在に感謝することでもあります。

今日という日に

今日一日、ご自身が何気なくしていることを、少しふり返ってみませんか。あなたにとっては当たり前のことが、誰かにとっては、なかなかできないことなのです。「たいしたことではない」と思っているその中に、誰かを支えている力が、きっとあります。

出典

※本稿は、上記ブログ記事およびそこで紹介されている書籍を参考に、筆者自身の視点を加えて再構成したものです。

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