補助金は誰のために使われるのか?――「天下り」と公金の流れから考える税金の透明性

朝日新聞に、片山財務相が補助金の削減に本腰を入れるという記事が出ました(朝日新聞の記事)。「これからバトルが始まる」という発言も紹介されています。

私は、補助金の見直しを「消費税減税の財源探し」にしてはいけないと思います。税金の使い道は、減税の話があってもなくても、普段から点検されるべきだからです。

では、何を点検すればよいのでしょうか。事業の必要性と効果はもちろんです。もう一つ、公金を受け取る団体と役所の間に、どんな人的な関係があるのかも見る必要があります。お金の流れと人の流れを重ねて見る、ということです。そこで出てくるのが「天下り」の問題です。

図1 「お金の流れ」と「人の流れ」が重なる場所を見る

役所
お金の流れ → 補助金・委託費・随意契約など
人の流れ → 役所OBの再就職
団体

2つの流れが同じ団体で重なるとき、公金の出し方を通常以上に説明できるかどうかが問われます。

なお、本稿でいう「天下り」は、国家公務員OBの再就職を広く指す言葉として使います。役所が就職先を用意したのかどうか、再就職が違法かどうかを論じるものではありません。

再就職は一律に禁止されていません。注意が必要なのは「お金の流れ」と重なる場合です

国家公務員の退職後の再就職そのものが、一律に禁止されているわけではありません。一方で、国家公務員法には再就職に関する規制があり、管理職職員であった人などについては、届出や公表の仕組みが設けられています(内閣人事局「退職管理・再就職等規制」)。

内閣は、その届出をもとに再就職状況を毎年度公表しています。令和7年度(2025年4月〜2026年3月)分は1,742件でした。これは届出・公表の対象者に限った集計で、再就職の全体数ではありません。それでも、行政経験者が多様な民間・非営利団体に移っていることは分かります。

図2 国家公務員の再就職先(令和7年度分、合計1,742件)

営利法人
646件(37.1%)
一般社団・一般財団法人
326件(18.7%)
その他の非営利法人
206件(11.8%)
上記以外の区分の合計
564件(32.4%)

出典:内閣人事局の公表資料。「上記以外の区分の合計」は、合計から上の3区分を引いた数です。棒の長さは件数に比例します。

再就職そのものを問題視するのではありません。注意が必要なのは、役所から団体へ補助金・委託費・随意契約などの公金が流れ、その団体に同じ役所のOBが在籍している場合です。人の流れと財政の流れが同時に存在するので、利益相反が起きないか、公金の出し方が説明できるか、という管理が必要になります。

会計検査院が調べた「OBがいる法人」と「いない法人」

この点を数字で調べたのが、会計検査院です。2009年10月の報告書(各府省所管の公益法人に関する会計検査の結果について)では、次のように調べています。

  • 各府省所管の公益法人6,661法人のうち、所管府省から平成18・19年度のいずれかに補助金等の交付または契約に基づく支払を受けた1,521法人を分析した
  • 支出は平成19年度(2007年度)のもの
  • 再就職者の在籍は2008年4月1日現在
  • 随意契約は1件300万円以上のもの
  • 旧公益法人制度の下での調査

図3 分析の対象と、OBが在籍していた法人(法人数)

各府省所管の公益法人
6,661法人
うち、所管府省から補助金等・契約の支払を受けた法人(分析対象)
1,521法人
うち、OBが在籍していた法人
1,163法人

出典:会計検査院報告書(2009年10月)。棒の長さは法人数に比例します。

図4 OBが在籍していた法人の割合

分析対象の全体
76.5%(1,163/1,521)
補助金を受けた法人
74.3%(371/499)
随意契約の相手方の法人
80.5%(770/957)

補助金と随意契約の両方に該当する法人が189あるため、下の2つのグループは重なっています。棒の長さは0〜100%の目盛りです。

図5 1法人あたりの平均額(平成19年度)

OBがいる法人OBがいない法人

補助金
約6億1,600万円
約8,700万円
随意契約(1件300万円以上)
約4億1,300万円
約5,900万円

どちらも、OBがいる法人は、いない法人の約7倍でした。棒の長さは金額に比例します。

図6 年間収入の50%超を所管府省からの支出が占める法人の割合

OBがいる法人
16.6%
OBがいない法人
4.7%

棒の長さは0〜20%の目盛りです。事業年度が4月〜3月の1,354法人が対象です。

図6は、平均額とは別の角度から見たものです。平均額は一部の巨大な法人に引っ張られることがあります。しかし、収入の半分以上を所管府省に頼る法人の割合にも差があったことは、政府資金への依存度を考えるうえで見逃せません。

ただし、これは「天下りが補助金を呼んだ」という証明ではありません

これらは十数年前の調査で、いまも同じとは限りません。そして「OBがいる法人ほど公金が多い」という関係は、因果関係の証明ではありません。考えられる筋書きは3つあります。

図7 考えられる3つの筋書き

① OBの存在が公金を呼ぶOBの影響力で、補助金や契約が増える。疑われてきた構図です。
② 公金の存在がOBを呼ぶ役所との関係が深い法人が、制度に詳しい元官僚を自ら採用する。因果が逆の場合です。
③ 制度が両方を生む役所が特定の法人に業務を任せ、その法人が公金に依存し、調整役としてOBが必要になる。

どれが実態に近いかは、個別に確かめるしかありません。会計検査院も、因果を断定してはいません。報告書の所見で求めているのは、OBが在籍する公益法人への支出について、透明性の確保に特に留意し、支出の必要性を十分に説明できるようにすることです。

つまり、問うべきは「OBがいるかどうか」ではありません。「その公金を、なぜその団体に、その方法で出すのか。通常以上に説明できる状態になっているか」です。人的な関係と財政的な関係が重なる場所では、利益相反の管理と説明責任が、とくに重要になります。

文部科学省を取り上げる理由

文科省は、所管する公益法人の数が最も多い省庁です。会計検査院の報告書(検査の結果)によると、2008年4月1日現在で1,941法人あり、次に多い国土交通省の1,118法人、厚生労働省の1,078法人を大きく上回っています。

ただし、文科省を取り上げるのは、会計検査院のデータで文科省がとくに問題だったからではありません。むしろ、同じ調査では文科省は他省よりOB在籍率が低い側でした。在籍率が高かったのは、農林水産省、厚生労働省、国土交通省などです。

図8 OBが在籍していた法人の割合:文部科学省と全府省の比較

文部科学省全府省

所管府省から支出を受けた法人
45.6%(104/228)
76.5%
補助金を受けた法人
33.0%
74.3%
随意契約の相手方の法人
54.8%
80.5%

出典:会計検査院報告書(2009年10月)の図表。棒の長さは0〜100%の目盛りです。

それでも文科省を検証する価値があるのは、次の理由からです。教育・研究という大きな公的支出の領域を所管していること。そして、公益法人だけでなく、私学助成を受ける多数の学校法人という巨大な受け皿があることです。会計検査院の調査は公益法人が対象で、学校法人は含まれていません。

過去のデータで文科省が突出していなかったことと、現在の文科省と学校法人・公益法人の関係に問題がないことは、同じではありません。古い調査が見ていない領域に、公金と人の流れが重なる場所があるかもしれません。それを確かめる必要があります。

現在の文科省の再就職先

内閣人事局が公表している令和6年度分(令和6年4月〜令和7年3月)の再就職状況では、文部科学省の届出は52件でした(別紙PDF)。再就職先の区分で最も多いのは「学校法人、社会福祉法人又は更生保護法人」の21件で、全体の中で大きな比重を占めています。ただし、この区分には学校法人以外も含まれています。

図9 文部科学省の再就職先(令和6年度分、合計52件)

学校法人・社会福祉法人・更生保護法人
21件
営利法人
6件
国立大学法人
6件
公益社団・公益財団法人
5件
独立行政法人
5件
一般社団・一般財団法人
4件
その他の非営利法人
3件
国・地方公共団体の機関
1件
その他
1件

出典:内閣人事局の公表資料(別紙)。最上段は「学校法人」だけの件数ではありません。棒の長さは件数に比例します。

件数の多さを数えるだけでは、何も言えません。再就職先の法人を一つずつ特定し、その法人の公的資金との関係を見る必要があります。

私学助成は、資金の種類ごとに見る必要があります

学校法人には、私学助成をはじめ、複数の公的資金が流れています。配分の仕組みが違うため、同じ物差しで比べると誤った結論になります。

図10 学校法人に流れる公的資金の3つの種類と、見るべき点

① 私立大学等経常費補助教育研究を支える経常的な助成。教職員数や学生数、教育研究条件などを基礎に算定される部分があるほか、教育条件や財政状況などを反映した配分もある。
見る点:同規模・同種の大学との比較
② 施設・設備整備の補助建物や設備の整備に関わる資金。
見る点:採択基準、事業費、自己負担、採択の継続性
③ 改革支援・研究・委託など政策目的や個別事業に基づく資金。
見る点:審査方法、応募者数、採択理由、委託先選定の競争性

また、資金には国から学校法人に直接入るものだけでなく、別の機関を経由するものもあります。見るべきは「助成額が多いか」ではなく、配分基準から見て、説明しにくい変化や突出がないかです。

「要検証」になる条件と、断定してはいけないこと

次の条件が複数重なる場合は、選定理由や資金配分の妥当性について、詳しい検証が必要です。

図11 「要検証」のチェックリスト(複数重なる場合)

  • 役所から団体へ、補助金・委託費・随意契約などの公金が継続的に流れ、指定・認可など行政上の関係もある
  • 団体の幹部などに、その役所のOBがいる
  • 公金の選定に競争性が乏しい(随意契約、応募が1者のみ、特定団体の指定など)
  • OBの就任後に、公金が増えている
  • OBの前職が、団体の収益源(補助金・認可・委託など)と関係している

ただし、これらが重なったからといって、直ちに不適切な利益供与があったとはいえません。逆に、OBがいることや公金を受け取っていることだけで、不適切な関係があったとも判断できません。公募の実態、配分基準、同種の団体との比較、就任前後の変化を合わせて確認する必要があります。公募があっても、応募条件が特定の団体に有利だった可能性は残ります。

もう一つ、慎重にしたい点があります。「団体の人件費や役員報酬は、公金で賄われている」とは、確認せずには言えません。団体の収入には、補助金以外にも、会費、寄付、事業収入、受託収入などがあります。補助金には使途の制限があることもあります。

参考になるのは、会計検査院の同じ調査です。

図12 国の補助金と人件費(平成19年度)

国の補助金を受けた法人
473法人
うち、補助金を人件費に充てた法人
321法人
うち、人件費の半分以上を補助金で賄う法人
54法人
228億円人件費に充てられた
補助金の額
6.2%321法人の人件費全体に
占める割合
16.8%321法人のうち、半分以上を
補助金で賄う法人の割合

棒の長さは、473法人を100%とした法人数に比例します。

ただしこれは、OBの報酬を直接示した数字ではありません。確認すべきなのは、その団体の人件費がどの程度公金に支えられているのか、その中に元官僚の給与・役員報酬が含まれているのか、という点です。

おわりに

補助金の見直しは、減税のためでも、役所叩きのためでもありません。公金を誰に、なぜ、どのような手続きで渡しているのかを、普段から検証することです。

そのために必要なのは、レッテル貼りではなく、人の流れとお金の流れを重ねて見る視点です。再就職状況、公益法人への支出、補助金の交付データなどは、すでに公表されています。「天下りが補助金を呼んでいる」と決めつけるのではなく、その可能性を検証できるだけの材料と方法が、すでにあります。

もし具体的に検証するのであれば、文科省OBが再就職した法人について、人事の時期と公金の支出時期を重ね、就任前後の変化を追う必要があります。その際は、同規模・同種の法人を比較対象に置き、就任年の前後で公金の額と配分方法がどう変わったかを見ることが考えられます。「増えた」だけでは足りません。制度改正や法人の規模拡大といった別の要因を考慮して、それでも説明しにくい変化が残るのかを確かめる必要があります。また、OBがいる法人だけを見るのではなく、OBがいない法人や、公金が増えていない法人も比較対象にする必要があります。

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