「教育を学んだ人の3人に2人は教員にならない」は本当? 33%の数字の裏側を読み解く
先日、「教育学専攻→教員は33% 日本、OECD平均を大幅に下回る」というニュースが話題になりました。これを見て、「教員不足なのに、教育を学んだ人は先生にならないのか」と感じた方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、この数字は大事なことを教えてくれますが、見出しの印象のまま受け取ると少し危険です。順番に整理します。
「33%」は何の数字?
この数字は、OECD(経済協力開発機構)が2026年9月に公表した「図表でみる教育2026」にあるものです。
意味は、「25〜64歳の高等教育修了者のうち、主な専攻が『教育』だった人が、現在『教職専門職』(Teaching professionals)にあたる仕事をしている割合」です。日本は33%、OECD平均は53%でした。
図1 教育を専攻した人のうち、「教職専門職」として働いている割合
出典:OECD「図表でみる教育2026」(Figure A3.4)。対象は25〜64歳の高等教育修了者(PIAAC 2023)。
そもそもこの「33%」は、学校の「教員就職率」を測った数字ではありません。働いている幅広い年代の人について、「学んだ専攻」と「今の職業」の対応を見た国際比較の指標です。
しかもOECD自身が、この「教職専門職」という職業分類は、各国の学校の行政統計でいう「教員」と直接比較できるものではないと注意しています。つまり、33%をそのまま「教育を学んだ人のうち学校の先生になった割合」と読むことにも注意が必要です。
教員養成大学に限ると、まったく違う姿が見える
文部科学省の調査では、国立の教員養成大学・学部(44大学)の2025年3月卒業者のうち、大学院進学者と保育士就職者を除いた実質教員就職率は70.7%でした。前年の69.0%から上がり、5年連続の上昇です。
図2 二つの「数字」は、数えている集団が違う
見ているもの:現在の職業が「教職専門職」にあたる割合
見ているもの:大学院進学者・保育士就職者を除いた教員就職率
図3 国立の教員養成大学・学部の実質教員就職率の推移(卒業年)
出典:文部科学省「国立の教員養成大学・学部及び国私立の教職大学院の就職状況等の調査」(令和7年3月卒業者・修了者)。横軸は3月卒業の年。縦軸は60〜75%に拡大して表示しています。
つまり、教員養成を主目的とする国立の教員養成大学・学部の教員養成課程では、約7割が教員になっています。33%と70.7%は矛盾しているのではなく、数えている人の集団も、数え方も違うのです。
ただし、教員養成大学の間でも教員就職率にはかなり差があります。文科省は、教育委員会・現職教員との連携、学校体験、教育実習、採用試験対策など、各大学の取り組みを紹介しています。
「教員にならない=教育を学んだ意味がない」ではない
日本は「開放制」という仕組みで、文学部や理学部など他の学部で教職課程を取って先生になる道もあります。つまり、日本の教員供給は「教育学部→教員」だけで成り立っているわけではありません。
図4 教員になる主な入口
第二のキャリアの入口は、日本ではOECD平均と比べて非常に小さいことが分かっています(後述)。
逆に、教育を学んだ人が、公務員、教育・学習支援業、民間企業などで働くこともあります。文科省の資料でも、教員養成大学の卒業生の主な就職先として、教員のほかに公務員、教育・学習支援業、民間企業などが挙げられています。
では、33%以外の人は、どのような仕事をしているのでしょうか。OECDの図表では、教職以外の職業カテゴリーが一定程度示されています。ただ、日本についてその内訳を全国規模で詳しく追跡できる公的統計は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。分からないことは分からないと言うべきところです。
教員不足を考えるとき、「なり手」だけでなく「働く環境」にも目を向ける必要がある
OECDのデータからは、気になる点がいくつか見えてきます。
図5 教職への志望と、満足度(日本とOECD平均)
日本OECD平均
新人教員で「教員が第一希望だった」と答えた割合
中学校教員の給与への満足度
中学校教員の、給与以外の雇用条件への満足度
出典:OECD(TALIS 2024 日本版カントリーノートほか)。
図6 働き方と学級規模(日本とOECD平均)
日本OECD平均
フルタイム教員の週あたり平均労働時間(日本)と、他の高学歴フルタイム労働者の労働時間
中学校の平均学級規模
労働時間の比較対象は「他の高学歴フルタイム労働者」で、OECD平均ではありません。棒の長さは、上段が60時間、下段が40人を100%とした比率です。出典:OECD「図表でみる教育2026」日本版カントリーノートほか。
教職を第一希望として選んだ新人教員が多い一方で、給与や雇用条件への満足度は低く、労働時間も長い。これらは別々の調査や質問なので、直接結びつけることはできません。それでも、少なくとも「若者が先生になりたがらない」だけでは説明できない状況が見えてきます。
OECDも、教員の給与だけでなく、勤務条件、業務負担、専門能力開発、社会的評価など、複数の要素が教職の魅力に関係すると指摘しています。
社会人から先生になる道が、とても細い
もう一つ目を引くのが、他業種で10年以上働いてから教員になる「第二のキャリア」の教員の割合です。OECD平均が8.4%なのに対し、日本は0.9%にとどまります。
図7 中学校教員に占める「第二のキャリア」教員の割合
棒の長さは20%を100%とした比率です。出典:OECD「Teacher shortages and the attractiveness of the teaching profession」。
日本では、他業種で10年以上の職業経験を積んだ後に教員になる人の割合が、OECD平均と比べて非常に小さいことが分かります。
「教員不足」は単純な人数の問題ではない
OECDによると、日本の年度当初に埋まらない教員ポストの割合は2021/22年度の0.2%から2025/26年度の0.4%に上がっていて、欠員は実際に増えています。ただ、OECDは、この0.4%について「それでも欠員率は低い水準」としています。つまり「教員不足」という言葉だけでは、日本の状況を十分に表せません。
一方で、子どもの数は減っていきます。5〜14歳人口は2024年から2033年にかけてさらに19%減る見込みです。ただ、教員の必要数は子どもの数だけでは決まりません。学級規模、教員の勤務時間、授業時間、少人数学級や特別支援教育、不登校への対応などの政策によって変わります。実際、日本では2015〜2024年に小学生数が7%減った一方、小学校教員数は7%増えています。人口減少と教員需要が単純に連動しているわけではないのです。
図8 数字で見る「教員不足」と人口減少
OECDは「それでも低い水準」としています。
出典:OECD「図表でみる教育2026」日本版カントリーノートほか。
この数字から言えること、言えないこと
言えること
- 教育を専攻した人が、現在「教職専門職」として働いている割合は、OECD平均より低い。
- 国立の教員養成大学・学部の教員養成課程では、約7割が教員になっている。
- 教員の勤務条件や、他業種経験者が教員になる道の狭さなど、制度面の課題がある。
言えないこと
- 「日本の教育学部は失敗している」
- 「教育学部を減らせば教員不足が解決する」
- 「教育学部を増やせば教員不足が解決する」
- 「給与を上げるだけで教員不足が解消する」
(給与が重要でないという意味ではありません。このデータだけでは、給与だけで解決するとは言えないということです)
私たちが考えたいこと
大切なのは、「教育を学んだ人がなぜ先生にならないのか」と個人の選択を責めることではなく、「2040年の日本に、どんな教育の担い手が何人必要で、それを大学・採用の仕組み・学校・社会がどう分担して育てるのか」を考えることだと思います。
先生になりたい人が、安心して教職を選び、続けられる環境をどう作るか。今回の「33%」は、そう問い直すきっかけになる数字です。
参考にした情報
報道
毎日新聞「教育学専攻→教員は33% 日本、OECD平均大幅に下回る」(2026年9月29日)
文部科学省
国立の教員養成大学・学部及び国私立の教職大学院の就職状況等の調査(令和7年3月卒業者・修了者)
教育委員会月報2026年5月号「国立の教員養成大学・学部及び国私立の教職大学院の就職状況等について」
OECD「Education at a Glance 2026(図表でみる教育2026)」関連
Education at a Glance 2026: Japan
How does educational attainment affect participation in the labour market?(Figure A3.4)
Results from TALIS 2024 – Country notes: Japan
Teacher shortages and the attractiveness of the teaching profession

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