2019年11月29日金曜日

大学入学共通テスト・英語民間試験 国立大学82大学のうち74大学で活用見送り

国立大学協会は、各国立大学の英語民間試験の活用有無について公表

一般選抜における出願要件や加点等の独自利用において、82大学のうち東北大学と東京海洋大学、九州工業大学、佐賀大学、長崎大学、鹿児島大学、琉球大学の7大学で英語民間試験を活用。また、宮崎大学は一般選抜(前期日程)と総合型選抜、私費外国人留学生入試で活用

一方、東京大学や京都大学など74大学で活用見送り

地域別に見ると、九州支部では11大学のうち5大学が活用、1大学が一部活用と、約半数が英語民間試験を活用

(出典)【大学受験2021】英語民間試験、国立大9割で活用せず(全大学一覧表)|リセマム

(参照)2020年度入試における英語民間試験への対応について(続報)|国立大学協会

記事紹介|給与は士気に相関しない

待遇面の満足度は低いが、社員の士気は高い企業に共通する3つの特徴とアクション。大学も同様ですね。

1)「風通しの良さ」を高めるアクション

  • 情報のシェアや成功事例を多部署に展開するなどの行為を賞賛する
  • 成功例やいい話だけではなく、悪い話や過去の失敗談をリーダーが率先して話す


2)「社員の相互尊重」を高めるアクション

  • メンバーの仕事の能力や成果だけを確認するのではなく、「本人の意思や希望」も確認する機会をもつ
  • 立場やポジションに関係なく、誰もが自分の意見を主張する機会を定期的に設ける


3)「20代の成長環境」を高めるアクション

  • 年齢や役職に関係なく、成果や意思に応じて、業務を配分、アサインさせ
  • 定期的にキャリアディベロップメントの面談を行い、中長期のキャリア戦略を設計する


(出典)意外!「給料は低くても社員の士気が高い」会社の共通点|ダイヤモンド・オンライン

記事紹介|私立大学の入学定員管理の厳格化と影響

大都市圏大規模私立大学への学生集中を抑制するために始まった文科省の政策が引き起こしている混乱や効果について言及している記事


入学定員管理の厳格化と助成金の不交付という金で縛る政策は、入学時という限定された領域に対しては即効性があるものの、全体としては副作用が強すぎたのではないだろうか。今回の政策が本当に意味のある効果につながるのか、大いに疑問がある。

地方大学の定員未充足の状況を改善するためには、大学自身の魅力を高めて学生が集まるようにする工夫が不可欠である。さらに、地域の産業と連携した研究活動の展開や卒業後の就職先の確保など、より広く長期的な展望に基づいた方策が必要であり、政府はそのような視点からの支援にもっと重点を置くべきではないだろうか。(抜粋)

(出典)私大定員厳格化がひきおこした大学受験の大混乱 - 篠原秀雄|論座

記事紹介|奪う人ではなく与える人に

《まずは自分から》

信じて欲しいなら信じる

認めて欲しいなら認める

褒めて欲しいなら褒める

期待して欲しいなら期待する

理解して欲しいなら理解する

感謝して欲しいなら感謝する

話を聞いて欲しいなら聞く

笑って欲しいなら笑う

愛して欲しいなら愛する

求めるなら与える

他人にばかり期待しない

まずは自分から



《あっという間の人生》

夢中で駆け抜ける10代

真剣に将来を考え始める20代

人生の分かれ道を迎える30代

迷いながら信じた道を突き進む40代

残り時間を意識して選択する50代

自分を確立し始める60代

どの年代もあっという間に過ぎる

行きたい場所があるなら行く

会いたい人がいるなら会う

やりたいことがあるならすべてやる

人生は思ったよりも短く

いつ終わるのかもわからないから



《ありがとうの数》

「ありがとう」と言われなくても

「ありがとう」と言う人になればいい

自分から何もしないで

与えてもらうことばかり考えない

自分から与えなければ

何もやってこない

感謝できないのではなく

感謝しないだけ

相手が喜ぶことは

何回でも何人でも伝えればいい

いつの間にかあなたも

感謝されるような人になっている

「ありがとう」の数だけ


まずは自分から|人の心に灯をともす から

2019年11月28日木曜日

当事者意識を持て

国立大学(の一部)でも同様のことが起きているのではないでしょうか。

  • 相変わらず公務員体質から抜け出せない、いや抜け出そうという気が毛頭ない。
  • 少しばかりの仕事に不必要な時間をかけ、残業代稼ぎにネットサーフィンで暇つぶし。
  • 組織への帰属意識がみじんもなく、改善・改革の動きを封じることに神経を使う。
  • 人事評価を極端に嫌い、悪しき平等に浸りながら定年を迎えることに重きを置く。

そんな人たちが長年巣くう組織の風土を変えていくことは至難の業です。でも誰かが嫌われ者になってぶち壊すしかありません。相当な覚悟と強靭な精神が必要です。

もっと世の中の流れに敏感になってほしい。ゆでガエル・井の中の蛙状態から脱してほしい。楽しく愉快に仕事ができる環境を欲してほしい。自分たちの職場なんですから。

久々に気合の入る記事に出会いました。腹に落ちた部分を抜粋します。

  • 大企業の正社員になった人たちは、クビになる心配もないし、会社が倒産する心配もないので(これは勘違いであるケースが多いのですが)、平社員から社長まで「当事者意識」に欠けている。
  • 日本の大企業で働く人たちも、最近は「危機感を持っている」とは言うが、結局は(経営者も含めて)サラリーマンなので、(米国人と比べ)緊張感が全然違う。
  • 本を正せば、思い切った経営戦略の変更ができない経営陣が悪い。とはいえ、そんな経営者に逆らいもせず、かつ、会社を辞めることもなく文句ばかり言いながら日々の「つまらない仕事」に追われているエンジニアや中間管理職も同罪。
  • 似たようなことは、日本のあらゆる業界で起こっている。漠然とした危機感は抱きつつも目の前の仕事をこなすことに忙しく、「この業界にいても大丈夫なのか?」「こんな経営者たちに付いていって大丈夫なのか?」という厳しい目を会社に向けずにいるサラリーマンであふれているのが日本。
  • イノベーションのチャンスは、会社や上司から与えられるものではない。
  • 大切なことは、自分の立場にかかわらず、当事者意識を持って、仕事をすること。つまらない仕事や無駄な作業が多いと思うのであれば、堂々と反対意見を表明すべきだし、ダメな上司にたてつく度胸が必要。
  • どんなポジションにあっても、会社がどの方向に向かうべきかを真剣に考え、そこで自分ができること、すべきことを精いっぱいすべき。「長い物には巻かれろ」「出る杭(くい)は打たれる」という思考でいる限りは何も変わらない。目立つこと、他人と違う行動を取ることを恐れていては、何も新しいことはできない。

「変革への抵抗」をいかにとらえるか

大学で様々な改革(そこまでいかなくても、これまでやったことのない新たな取組)をやろうとすると、そこには大なり小なり必ずと言っていいほど抵抗が生まれます。

変化を好まない組織風土や教職員の意識・言動が大きな障壁となって立ちはだかり、個人の犠牲をいとわない正義感あふれる改革者を潰そうとします。抵抗勢力との闘いは心身ともにしんどいものです。

組織変革における抵抗勢力の捉え方を少しポジティブに考えてみようという記事に出会いました。自分なりにポイントを整理してみましたが、理屈ではわかっても現実は正直厳しいです。


  • 組織変革において「変革への抵抗」はつきものである。
  • 組織にとって「大切なもの」を「変えよう」とするから「抵抗」が生まれる。
  • 組織にとって「大切ではないもの」を変えようとしても、誰一人として「抵抗」しない。なぜなら「変えようとしているもの」がさして「大切ではない」から。
  • ということは、「抵抗勢力のいない組織変革」は存在しない。


<変革への抵抗勢力に対するリーダーの選択肢>

  1. 抵抗勢力を生み出さないように「根回し」を行う(=組織政治的合意の形成)
  2. 抵抗勢力を「排除するべきもの」ととらえて、いかに、それを排除するかという視点にたつ(=抵抗勢力の排除)
  3. 抵抗勢力が生まれるのは「あって当然」と考え、それをポジティブにとらえなおす。


<志向したいポジティブな考え>

  1. 組織変革への抵抗はごちそうである(抵抗勢力なんて生まれてあたりまえ。それを好機ととらえるくらいがちょうどいい)
  2. 組織変革への抵抗によって、むしろ強固な変革を創り出していけるのではないかという視点


<変革への抵抗による効果>

  1. 変革への抵抗によって、変革の目的が問い直されて、よりクリアになる
  2. 変革への抵抗は、組織内の会話を活性化し、変化に対する方向性を「Active」な状況にする
  3. 変革の抵抗があることによって、組織変革のレベルがあがり、施策の実装のクオリティがあがる
  4. 変革の抵抗によって、組織メンバーが「本音で何を思っているのか」が顕在化される
  5. 変革の抵抗を乗り越えることで、「新たな強固な組織へのコミットメント」がつくりだされる


(出典)組織変革のときに必ず生まれる「抵抗勢力」は「根回し」か「排除」か「ごちそう」か? | 立教大学 経営学部 中原淳研究室 - 大人の学びを科学する|NAKAHARA-LAB.net

記事紹介|政治主導の国立大学改革

自民党税制調査会長の甘利明氏への国立大学改革に関するインタビュー記事。厳しいです。

「イノベーション」をキーワードに進む国立大学改革。最大の狙いである日本経済の活性化に向け、主導権を握るのは、当の大学でも文部科学省でもなく官邸、そして政治家だ。その1人、自民党税制調査会長の甘利明氏は国立大学に対し一貫して、自律した「知識産業体」への変身を求め、改革のための枠組みづくりに取り組んでいる。日本に大学が誕生して約140年。国立大学の改革が常に大学の全体像を変えてきた。政治主導の改革は、大学をどう変えるか。

国立大学はスズメの子

<今の国立大学をどう見ているか>

ポテンシャルはあるのに全く活かしきれていない。残念だし、もったいない。日本の国立大学が持つシーズ(種)は優れもの。世界にない付加価値を生むシーズ自体は、日本が一番豊富だと思う。

だが、それをマネタイズする、ビジネス化する仕組みが全くできていない。シーズはシーズのまま放っておかれて芽が出ず、やがて干からびてしまう。

<シーズには水と肥料が必要だ。大学関係者なら「だったら金をよこせ」というだろう>

日本の大学が変わらなければいけないのは、そこだ。世界の大学を見ても、スズメの子のように口をあけて、親スズメが餌を運んでくれるのを待っている大学はない。お金というと「運営費交付金を増やせ」の合唱だけだ。国家予算はべらぼうには増えていないのに。

世界の先頭を走っている大学は、予算規模が国家予算の範囲をはるかに超えて増えている。自らのシーズを活用して付加価値を作っていく仕組みが、できているからだ。大学のガバナンス、マネジメントがうまくいっている。日本の国立大学は、スズメの子から卒業できていない。口を開けて親が餌を運んでくるのを待って、少ないと「親の働きが悪い」とピーピー騒いでいるだけなんだ。

<大学だけの問題か>

いや、そうではない。だがまず、大学が意識改革し、待っているだけではなく、能動的に仕掛けることを学ばなければならない。国立大学は過去に大きな改革をやったはずだ。いまも大学改革では、国立大学が先頭を走っているはずなんだが。

<2004年の国立大学法人化は、戦後最大の改革だった>

そう。だから、国立大学は大改革に慣れていて、こちらの方向だよと示すと、すぐ反応して動くと思っていた。全然そうではなかった。

調べてみたら、国立大学改革なんて、何もしていなかった。笑い話がある。国立大学法人化の際、「大変なことになる」と関係者に動揺が走った。ところが、文科省は「どうぞ皆さん、心配なく。何も変わりません。名前が変わるだけですから」と動揺を抑えて回ったようだ。実はそこで、うんと動揺させなくてはいけなかったんだ。意識改革をしなければならなかった。いわば革命が起きたんだから。国の枠組みから離れ、自由で自律性のあるものに変わった、自分で自分を律する運動体にならないと生き残れないのだ、と危機感を持たせるべきだった。そうしなかったから、改革は進まなかった。

<文科省の失態だったのだろうか>

いや、大学側にも乗り越えていく覚悟ができていなかった。だから動揺した。文科省側にも乗り越えさせる覚悟ができていなかった。その結果、文科省が動揺を抑えるために動いたのだ。政府は大学改革の旗を振ったけれど、徹底しなかった。

政治も怠慢

<2018年6月、CSTIのフォーラムで「大学を知識産業体に変えたい」と発言していた。その背景には、そんな思いがあったのか>

そうだ。大学は自ら考え、能動的に動かなければいけない。その基本がわかっていない。トップに立つ学長が、自分の大学のアセット(資産)をフル活用し、経営者として自分の大学のどこに強みがあるか、どこが弱みか、どう付加価値を生むか、マネタイズするか、ビジネス化するか、それを基礎研究にどう還元していくか、常に考えなくてはいけない。知識産業体というのは、自分たちが独立して生きている生き物だと自覚している。世界の大学は、みんなそうだ。

研究者1人当たりの運営費交付金は、世界でも1番高いクラスにある。英国の国立大学や米国の州立大学などが国や州政府からとっている運営費交付金に当たるものは、どんどん減っている。でも彼らが使う予算は、年ベースで6~7%伸びている。自分で稼いでいるからだ。

<問題は、日本の国立大学の意識が低いということに尽きるのか>

世界の大学は自分たちの予算規模は大きくしているが、国からの補助金の比率は下がっている。日本の場合、その意識改革ができていない。国からの予算に頼っていたら、世界の大学とはとても勝負にならない。交付金、補助金以外の仕組みを作らなければいけない。その仕組みができてこなかった裏には、政治の怠慢もある。

<なるほど、政治の怠慢もあると。では、挽回策として何をしたのか>

例えば寄付金集めだ。金融資産を寄付する際、取得した時と現在利益との差について、寄付者は改めて利益を申告して税金を納めなければいけなかった。そんなことを求めたら、なかなか寄付はしない。だから、寄付しやすい税制に一昨年、作り替えた。われわれが問題提起をしたのだ。基礎研究の大本の大学をみんなで育てる「文化」を作りたいからだ。

<国立大学の改革に取り組み始めたのはいつか>

経済産業大臣になってすぐ。手始めにCSTI改革をやった。CSTIの橋本和仁さん(国立研究開発法人物質・材料研究機構理事長)は、私が野党の頃から一緒にチームを組んでやっていた。林芳正、岸田文雄さんとか茂木敏充、世耕弘成、これはみんな「チーム甘利」だ。われわれが政権を取ったら、こういうことをやろう、と話し合っていた。そのカウンターパートナーが橋本さんだった。

橋本さんがある日、私のところに当時、東大理学部長だった五神真さんを連れてきた。「この人を東大総長にしたいと思っている。本命ではないけれど、きっとさせてみせます」と。さらに「甘利大臣の大学改革にも興味を持っていると思います」とも。そこで五神さんに、「あなたが総長になったら、私についてきてくれますか」と聞くと、「その節には一緒にやります」と言ってくれた。結局、五神さんは総長になった。

CSTI改革に不可欠の事務局長役も、橋本さんが政策研究大学院大学副学長(当時)の上山隆大さんを紹介してくれた。来てくれるかなと聞いたら、「大臣が説得したら、来てくれます」と言うので、上山さんに電話をかけた。改革に取り組んでいる、日本を変えたい、出世を諦めて私と日本を良くする方に回りませんか、と伝えたら、二つ返事でOKしてくれた。その後、上山さんと五神さん、橋本さんと一緒に話し合ってきた。文科省高等教育局長や官邸の和泉洋人補佐官たちも交えて、構想を練ってきた。

<どのような構想か>

まず大学の意識改革と組織改革。国立大が身動きができないのは、学長に採用権も予算権も事実上ないからだ。運営費交付金では裁量が効かない。無理やり動かそうとしたら、学部長や教授会が猛反発する。学長は何も動かせない。その状態を革命的に変えようとしたんだ。学長に人事権を与える。学長選考会議に外部の人間を入れる。それまでの学長選考は、労働組合員の投票で社長を決めるようなものだった。そんな状態では、学長が改革はできない。学長の裁量経費もなかったので、裁量経費として40億円作った。

<学長選考会議のあり方の変更や裁量経費も、そこが発信源だったのか>

そうだ。その時に私につけられた注文は、運営費交付金には1円も手をつけないでくれ、だった。そこで財務省と協力し、渡海紀三朗と後藤茂之にも手伝いをお願いした。彼らも一生懸命やってくれて、裁量経費が誕生した。

国立大学は革命的な意識改革を

<財政面から学長のリーダーシップを高めようとしたわけか>

そう。それから、各大学にどんなアセットがあるのかを調べさせた。
すると五神東大総長がやって来て、「東大を全部見てみた。一等地にあるから、すごい不動産価値があるけれど、全然利用されていないし、利用しようという意識がゼロだ。例えば建物はすべて平屋。容積率はいくらでも余っているのに、利用されていない。問題意識を持つものも、1人もいない」と言うんだ。要するに、経営感覚を持った取締役が1人もいない会社なんだ。

その後に聞いた話はもっと笑えた。東大の隣に草ぼうぼうの広い土地がある。東大と一体的に活用したらいろいろできそうだと五神総長は考えて、職員に地主を調べさせた。数日して職員が「わかりました」と報告してきた。「どなただった?」と問い返したら、「うちのでした」だって(笑)。こういう感じなんだ。経営感覚がない。

知識産業体として経営するという自覚がないと、資産は全く活用されない。これはその典型例だ。不動産だけでなく、知財もそう。研究者として見るのと同時に、経営者として見てほしい。宝の山を積んでおくだけではいけない。大学の意識を、運営から経営へと変えなくてはいけない。

<経営に変えていくと。だが、入学定員は管理され、授業料も一定の制限下にある。手足を縛ったまま自律的に経営しろと言うのは、無茶な話だ>

大学は授業料だけでやっているわけではない。大学の最大のアセットは、世の中をリードしていくシーズだ。理科系のシーズも文科系のシーズも、活用すればいい。そうすれば、研究者の給与体系も自由にできる。「原資は国が出してちょうだい」ではだめだ。自分で生み出せ。そのための自由度は、どんどん与える。ともかく、経営していくんだ。運営費をよこせばいいんだという体質から、革命的に意識改革をしなければならない。

<給与体系にも踏み込んでいるようだ>

クロスアポイントメント制度を作った。上山さんや橋本さんと連携して設けた。ところが、ちっとも進まない。調べさせたら、例えば1500万円もらっていた大学の研究者が、大学のほかに国立教育政策研究所と企業で働いたとする。そうしたら、給与は各機関から500万円ずつで計1500万円になるというのだ。企業には、1億円払わせたっていいはずだ。それに見合う仕事をしているなら。東大500万、国研500万、企業1億円にしたって、ちっとも構わない。これでは、クロスアポイントをする人は出てこないだろう。仕事ばかり増えて給与が変わらないんだから。企業も意識が変わっていなかった。日本でも、年収5000万円、1億円の教授を作ろうじゃないか、という運動だから、これは。

<プロをプロとして遇するということか。たしかに、日本には欠けている>

そうでなければ、外国からも優秀な研究者は連れてこられない。実際に起こったことだが、国の会議に米国有力大学の学長を招くことになった際、公務員規定で1日1万円程度しか払えないという。飛行機はエコノミー、ホテルはビジネスで、スタンフォード大学の学長経験者を呼べるか。1日最低50万円は必要だ。そこで私から官邸に、これでは海外の著名な研究者は来ないと注文をつけた。そうしたら、そのことがマスコミの耳に入り、叩かれた。私はマスコミが日本をダメにする、と本当に思っている。揚げ足取りだけ。いいじゃないか、いくら払ったって。日本が良くなるなら。

文科省も意識改革を

<国立大学の自由度を高めるのなら、入学定員を大学に任せなくては。英国の国立大学、米国の州立大学も大学が決めている>

文科省を少しずつ説得し、国立大学の自由度を上げている。その代わり、自己責任が原則。文科省も国立大学も、意識改革が必要だ。運営費交付金の傾斜配分にも、踏み込んでいる。国立大学協会は「けしからん。これが基礎研究をだめにしている」というが、今のままで本当にいいのか。もちろん、毎年細かいチェックをして傾斜配分をかけていったら大学は疲れてしまう。世界の大学は数年間通して改革努力をみる。そういうふうにしようと、財務省と話している。最低5年はみようじゃないか。その間にマネジメントの努力をしてもらい、6年目以降に傾斜配分の仕組みを入れようよと。

ルールを創った者が勝ち

<単年度主義から脱却できるのか。ところで、2014年10月の産業競争力会議で「大学改革が日本経済の活性化の1丁目1番地」と発言していた。なぜ、そう考えたのか>

36年前に政界に入った時から、自分のライフワークは通商産業政策と決めていた。日本は資源もないし、土地も山ばかりで平地は少ない、ハンデを背負った国が生き残るには、知恵を価値にするしかないと思っていた。

<知恵を価値に。なるほど>

ルールを制する者が世界を制する。経産大臣の時、どう取り組んでいくかの問題提起をした。
当時、日本は何でも「世界標準」に合わせようと躍起だった。その度に私は「そのルールは神様が作ったのか」と返していた。誰かが自分の都合のいいように作ったのが「ルール」だ。だからわれわれの都合のいいようにルールを作ったら、市場を席巻できるはず。ルールは「合わせる」ではなく「創る」ものだ。そういう発想を持てと経産省に言った。

ただし、良いものがルールになった方がいい。以前勤めていたソニーは、技術屋の会社、いや、技術過信の会社だった。ソニーの営業マンはトップから「良いものは勝つ。うちの技術はいいから、市場はとれる」と言われていた。ところが蓋を開けたら、違う。市場をとったものが、良いものだったんだ。消費者を囲い込んだ方が勝つんだ。消費者にとっては、良いものを作っている勝者の方がいい。だからルール戦略と知財戦略は裏表で、良いものが市場を席巻しないと、消費者は不幸になる。けれども、良いものが黙っていたら、市場を席巻できない。良いものが市場を席巻できるルールを作っておくことが重要なんだ。知財戦略とルール戦略は表裏一体というのは、そういうことだ。知恵が付加価値を生む、ただし良いものが世界の標準になるような先回り戦略が大事だ。

<それが大学改革につながるのか>

大学は、知の創造拠点だ。下流、実用化研究は企業がやる。中流は国立の研究所、もっと上流が基礎研究、大学だ。上流中流下流がつながっていれば、還元できる。ところがみんなバラバラだ。大学にはプライドがあって、商売が寄ってくると「汚れる」と。

<かつては、そうだったが>

いまだってそうだ。上流の大学人は「われわれは純粋な研究をしている。金儲けじゃない」と言う。

基礎研究はどんどんやってほしい。でも、あんたのその研究費は誰が持ってくるのか、天から降ってくるのかと言いたい。どうやったら研究が社会の役に立つかを考えないと。それをいくらで売るかまでは考えなくてもいい。それを考える周囲の仕組みとつながっていることが、大事なんだ。

<なるほど、そのための環境整備か>

大学が出資したっていい。基礎研究を実用化するために大学が出資し、それが市場に出て何百倍にもなり、基礎研究に還元される。つまりエコシステムなんだ。ところが、基礎研究が汚れるから近寄るなと研究者は拒むし、一方では画期的な研究がないからブレイクスルーできない。

<官民イノベーションプログラムで、スタートアップ企業はいくつかできたが、そこを買いとる企業が出てこない>

日本の企業は、海外の大学とは相当コラボする。しかも億単位で金を出している。ところが、日本の大学には平均200万円程度だ。なぜこんなに違うのか尋ねたら、「日本の大学との付き合いは、アリバイづくり程度だ。何の期待もしていない」と言う。日本の大学を信用できないからだ。お金を投じてもどこに流れるかわからないし、機密や知財を守る仕組みもない。自律した知識産業体としてマネジメントができていないから、危なくて組めないよと。

<世界大学ランキングは気にならないか>

知識産業体になれるよう改革が進めば、自然と上がる。世界ランキングを発表しているある出版元から日本の大学に対して助言がきたそうだ。「資金調達源を多様化してください」と。

それから、大学のグローバル化、国際化が大切だ。世界を舞台にした若い実業家が私の周りに集まってくるが、彼らに言わせると、日本、なかでも東京は世界で1番魅力的な街だという。一つ足りないのは、大学の国際化だ。グローバルな知識産業体だと思うから、人が海外から集まってくる。ところが、来てみたらドメスティックな受動体だったと。

<冒頭はスズメの子だったし、こんどはドメスティックな受動体。いずれにせよ、現状のままではイノベーションが起きないという危機感はわかる>

起きないし、たまさか起きても続かない。エコシステムというのは、生態系だ。国が手を離しても動く。どんなボンクラ政権ができても、自律的な生態系としてイノベーションが起きる国にしたい。そのためには安倍政権の時にやるしかない。政権交代してわけのわからない政権が生まれる、過去の3年間のように。それでも自動的に動いていくイノベーションの生態系を作りたい。

<国立大学とは何か。税金を投入する正当性はあるか>

税金を投入する正当性はある。何の役に立つかわからないことを、どこかで研究しなければならない。公的資金で支えなければ。宇宙はどうしてできたのかは、すぐには実社会の役に立たないけれど、いいじゃないか。探究心、そこからブレイクスルーも出てくる。

ひとこと

法人化した国立大学に強い逆風が吹くようになったのは、第二次安倍内閣が発足した頃ではないだろうか。政権奪還の勢いと景気低迷を背景に、「イノベーションを起こせ」と様々な政策が打ち出された。その勢いは衰えていない。

今年六月の「経済財政運営と改革の基本方針2019(骨太の方針)」には、「国は国立大学との自律的契約関係を再定義」とこれまでの関係を改めるよう求めたうえで、評価の簡素化や学生定員の弾力化も盛り込んだ。単年度ごとの決算を廃した中期的な予算と執行、文科省役人の出向排除などにまで踏み込んだ内容は当然のごとく、財務省や文科省の反発を呼んでいる。

肝心の大学人は、さて?(奈)

記事紹介|巧言令色鮮なし仁(こうげんれいしょくすくなしじん)

どんなに細心の注意を払ってイメージ作りに励んできたとしても、たった一つの不注意な言葉や行動で、すべて台無しになってしまうこともある。

次のことは何があっても口にしてはいけない。

  • 政治的に正しくないコメント
  • 差別的なジョーク。あらゆる種類の性差別
  • 傲慢な発言
  • 平静さを失った発言
  • 汚い言葉
  • 不平不満、愚痴、ゴシップ
  • 人についてどう思うかの本音


 「愚痴や不満」を言うとどんな害があるか。

  • 細かいことにうるさい、器が小さい人物と思われる。
  • 口角が下がって魅力のない顔になる。
  • 時間を無駄にする。
  • 愚痴っぽい人間ばかりが周りに集まる。
  • 非生産的な人間だと評価される。
  • 自分のモチベーションを下げ、負のスパイラルに陥る。

たった一度の不注意な発言|人の心に灯をともす から

記事紹介|不安定の中の安定、安定の中の不安定

人としてのステージが上がるときには

さらに高度な問題に直面するようになっている。

簡単に超えられる問題しかないときは、

自分の成長が止まっているとき。


もしも今一所懸命やっているのにうまくいかないことが続いている場合には、この言葉を思いだすと良いでしょう。

大きくジャンプする前には足を大きく曲げて力を溜めるように、いったん停滞する。

そう思えば「Welcome!高度な問題!」と捉えられるようになる。

逆に無難な日々が続いているときは、成長が止まっているのだとも気付けるようになる。

「不安定の中の安定。安定の中の不安定」ですね。

ステージ|今日の言葉 から

国立大学法人等の業務実績評価

国立大学法人等の平成30年度に係る業務の実績に関する評価結果が公表されています(以下抜粋)。

<全体評価>

  • 全体として、昨年度に引き続き、人事マネジメント改革や外部資金獲得の拡大の取組が継続するとともに、自己点検や評価の充実に向けた取組が増えている。この他、多様な財源による施設の整備や有効活用に加え、近年改正した制度を活用した新たな収入を伴う事業創設の取組も始まっている。
  • 他方で、入学者選抜における不適切事案等の事務上の不備も見受けられ、これらについては、課題として指摘している。また、学長不在により国立大学法人法制度の求める運営体制となっていない法人についての強い懸念を示している。


<平成30年度評価結果の特徴>

1)意欲と能力のある教員がより高いパフォーマンスを発揮する環境の整備等に関する取組(29法人)

  • 組織への貢献度など多面的な視点やエフォート率を取り入れた評価の構築
  • 外国人教員や女性研究者等の公募・選考過程の見直し
  • 若手教員数の拡大
  • 女性教員・研究者の働きやすい環境整備 等


2)自己点検・評価の充実に向けた取組(9法人)

  • 全学的観点や定量的指標による部局組織評価の実施
  • 戦略的に大学運営を実施するための内部質保証体制の整備 等


3)新たな収入を伴う事業創設の取組(6法人)

  • 保有資産(土地の有効活用)
  • 寄附金等を原資とする余裕金の運用
  • 個人からの現物資産による寄附拡充 等


4)多様な財源による施設の整備や有効活用の取組(17法人)

  • 自治体等との連携や補助金の活用など、多様な財源による施設整備
  • 既存施設の有効活用や教育研究成果発信機能の強化
  • 産官学連携によるAI運行バスの導入 等


5)外部資金獲得の拡大に向けた取組(23法人)

  • ファンドレイザーの活用や広報活動の充実
  • 大学の特色を活かした連携等による共同研究の実施
  • 外部資金比率(寄附金)の向上
  • 間接経費割合の見直し 等


国立大学法人等の平成30年度に係る業務の実績に関する評価結果|文部科学省 から

2019年11月27日水曜日

教皇の教え

ローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇(第266代)は、来日中(11月26日午前)、上智大学を訪問、大学生に向けて講話を行いました。

講話の全文が公表されています(印象に残った箇所を一部抜粋)。

  • 学問、思索、研究にあたる教育機関は、現代文化においても重要な役割を果たし続けています。それゆえ、よりよい未来のために、その自主性と自由を保ち続けることが必要です。大学が未来の指導者を教育する中心的な場であり続けるとしたら、そこでは、及ぶかぎり広い範囲における知識と文化が、教育機関のあらゆる側面が、いっそう包摂的で、機会と社会進出の可能性を創出するものになるような着想を与えるものでなければなりません。
  • 良質な大学での勉学は、ごく少数の人の特権とされるのではなく、公正と共通善に奉仕する者という自覚がそこに伴われるべきです。それは、各自が働くよう課された分野で、めいめいが果たす奉仕なのです。わたしたち全員にとっての大義であり、ペトロがパウロに与えた今日でも明白な助言です。貧しい人たちのことを忘れてはいけません。

運営費交付金の成果配分に最適な評価指標とは

政府(財務省)は、2020年度以降の国立大学運営費交付金の配分に関し、教育・研究に関する共通指標を設定の上、成果を中心とする実績状況に基づく配分の予算枠を拡大する方針を示しています。

これに対し国立大学協会は、共通指標及びその活用の在り方に関する基本的な方向性や、共通指標の具体的活用方法等についての見解を11月8日に公表しました。


「2020年度の運営費交付金の配分における共通指標の活用について(考え方の整理)」の公表について|国立大学協会 要旨(本文はこちら

1 基本的な方向性

  • 教育・研究に関する評価は分野・領域単位(11 学系)で行うことを基本とし、その結果を基に大学全体の総合評価を行う。
  • 評価に当たって、大学の特性、ミッション、規模等が適切に配慮されるようにする。
  • 評価は定量的指標と定性的指標を組み合わせて行い、専門家のピアレビューによる厳正な分析・評価を行う。
  • 評価のサイクルは中期目標期間の6年間とするが、4年目に現況分析に基づく中間評価を行う。
  • 4年目の中間評価の結果を次期中期目標期間の運営費交付金の初年度の配分に活用し、6年目の最終評価の結果を踏まえ必要に応じ次期の期間中に配分額を調整する。
  • 地域・社会への貢献などの全学的な取組、財務に係るマネジメント、人・物に係るマネジメントについては大学単位で評価を行い、今後さらに検討を進めていく。

2 2020年度における共通指標の活用(留意点)

(1)評価の単位・項目

  • 教育・研究の評価については、分野・領域単位(11学系)で行うことを基本とすべきである。
  • 教育については、「教育課程」と「学修成果」の二つで構成する指標をもって評価すべきである。「教育課程」の指標は、学術界等からのニーズを踏まえて、育成する人材像の設定と教育課程の編成等における工夫や体系的な教育の内容を構築するための工夫がどれほどなされているかなどを測定するための項目からなる。「学修成果」の指標は、在学生や卒業生にどれほどの成果を身につけさせているかなどを評価するための項目からなる。
  • 研究については、「研究成果」と「研究環境」の二つで構成する指標をもって評価すべきである。「研究成果」の指標は、学術的に卓越した研究成果がどれほど生まれているかと併せて、研究活動・成果が社会などへのインパクトをどれほどもたらしているかを測定する項目からなる。「研究環境」の指標は、研究活動を持続し発展させるための方策や戦略がどれほどとられているかを評価するための項目からなる。

(2)共通指標の設定

  • 共通指標の設定に当たっては、高等教育・学術に識見のある専門家による十分な検討を行い、国立大学の教育・研究活動の実態を反映し得るような具体的かつ明確な形で指標を設定するとともに、各指標の持つ意味、活用方法、用語の定義等をあらかじめ各大学に明示した上で必要なデータを収集するようにすべきである。
  • 現状において入手が可能なデータは極めて限定されており、その中で妥当性をともなった指標を設定するには限界がある。特に評価者(ピアなど)による定性的評価を必要とするような事項については、国立大学法人評価(第3期中期目標期間)における現況分析がまだ実施されていないなど、指標として活用できる情報が現在は十分に存在しない。そのため、2020年度に提示する指標は、あくまで現状において入手可能なデータを活用した指標であり、将来的に教育・研究の成果を適切に測ることが可能な指標を開発することを見据え議論することが必要である。当面は、指標を試行的に導入するものとし、当該指標は将来的に追加・修正していくとの考え方に立つべきである。(教育・研究に係る評価の指標について、大学の規模(教員数、予算規模等)等を考慮した補正が必要と考えられる場合の具体的方法については、さらに慎重に検討する必要がある。例えば、教員数で補正する場合には、教育・研究等の職務活動別時間数の割合(FTE に基づく補正)の活用の可否などについても検討が必要であるが、その基礎となる正確なデータは現在無く、データの収集・分析体制の整備と並行して検討する必要がある。)
  • 指標は、定量的指標のみでは状況を把握できないことに配慮すべきである。特に、教育については、一般に入手可能な定量的データが少ないことから、例えば教育マネジメントについて簡素に確認するような定性的指標の設定も検討すべきである。

(3)指標の運営費交付金配分への活用

  • 第4期中期目標期間に向けては、6年間の中期目標期間を基本とした評価と資源配分の安定的な仕組みを構築すべきである。したがって、指標に基づく評価の毎年度の運営費交付金配分への反映については、各大学の中期目標・計画に基づく教育・研究の戦略的・計画的な取組を阻害することのないような範囲内にとどめるべきである。さらに、上述したように入手可能なデータの制約から当面は試行的に指標を導入していくべきとの考え方も踏まえ、指標の活用は限定的にすべきであり、教育については特にその点に留意すべきである。
  • 教育・研究のいずれについても、一つの定量的指標だけに基づいて評価するのではなく、複数の指標を総合した評価を行うべきである。
  • 指標に基づいて収集するデータの対象期間については、各指標や分野・領域の特性等を考慮して検討する必要があるが、原則として、単年度のデータではなく、複数年度(例えば第3期中期目標期間に入ってからの2016-18年の3年間)のデータを活用することとすべきである。

<具体的な指標の例>

(1)教育に係る評価

2020年度に導入するとすれば、次のような指標を組み合わせて活用すべきである。教育の質の向上の観点から「教育に係る評価」は、前述のように「教育課程」と「学修成果」の二つの項目から評価を行うこととすべきである。

「教育課程」の指標については、①大学・学部等のミッションに基づいて、三つのポリシー(ディプロマ・ポリシー、アドミッション・ポリシー、カリキュラム・ポリシー)の改善に取組み、大学教育の内部質保証を確立し社会から求められる人材の育成が可能な教育課程の改善の取組を行っているか、②教育目的を実現するための学修支援や教育改善の取組を行っているか、という二つの観点に基づき評価を行うべきである。

また、「学修成果」の指標については、①客観的な測定方法で学生の学修成果を把握し教育の内容を改善しているか、②卒業後の活躍状況を把握し、教育効果の分析を実施し教育の内容を改善しているかの観点で評価を行うべきである。

今後、教育の成果を適切に評価するための指標については、データの収集方策も含め、さらに検討を行うべきである。現時点で定量的データが入手可能で指標として考えられるものは以下のとおりである。

【教育課程】

(将来的に開発すべき評価指標の方向性の例)

  • 社会に必要とされる人材の育成を目指す教育課程が整備され実施されていることに関する評価指標
  • 学科、学部、大学の各階層において三つのポリシーが整合的に策定されており、それに基づく教学マネジメントが確立・機能していることに関する評価指標
  • 教育成果を生むために望ましい教育方法が工夫されていることに関する評価指標
  • 教育の内容や方法についての学生の満足度調査や学修成果結果を活用して、改善点を分析するなどの内部質保証システムが機能していることに関する評価指標

(2020年度評価指標案)

評価については、分野・領域単位(11 学系)で行うことを基本とし、複数年度のデータを活用できる場合は優先して活用することとすべきである。各指標について、大学の特性、ミッション、規模等を適切に配慮した補正の具体的な方法についてはさらに慎重に検討をする必要がある。

※入学定員に対する充足状況
 入学定員充足率:入学者数/定員(学士課程、修士課程、博士課程)

※ カリキュラム編成上の工夫の状況
 例えば、ナンバリングの実施状況や履修系統図(カリキュラムマップ、カリキュラムチャート)等の活用状況(平成28年度の大学における教育内容等の改革状況について(概要)2.教育内容の改善の状況 <2-A カリキュラム編成上の工夫>)

【学修成果】

(将来的に開発すべき評価指標の方向性の例)

  • 学修成果を把握する方法の工夫状況とそれにより得られた結果に関する評価指標
  • 全国学生調査等に基づく学生の到達度や満足度等に基づく学修成果の評価指標
  • 卒業後の学生追跡評価等に基づく卒業生の大学教育の有効性認識の評価指標

(2020 年度評価指標案)

評価については、分野・領域単位(11 学系)で行うことを基本とし、複数年度のデータを活用できる場合は優先して活用することとすべきである。各指標について、大学の特性、ミッション、規模等を適切に配慮した補正の具体的な方法についてはさらに慎重に検討をする必要がある。

※卒業・修了者の就職、進学、資格取得等の状況
  1.卒業・修了者数に対する資格取得率:合格者数/卒業・修了者数
  2.進学率:進学者数/卒業・修了者数
  3.卒業者に占める就職者の割合:就職者数/卒業・修了者数

※卒業・修了者の状況
 卒業・修了者のうち標準修業年限×1.5 年以内での卒業・修了率:標準修業年限×1.5年以内での卒業・修了者数/卒業・修了者数

※博士号授与の状況
 本指標案については、分野・領域に加え各大学の博士課程の定員なども踏まえつつ、例えば「博士号授与数/該当年度の入学定員」とし評価を実施すること等補正のあり方について検討する必要がある。
 (注)5月に独立行政法人 大学改革支援・学位授与機構に依頼した文書では「研究環境」の評価指標に含めていたが、ここでは、若手人材を育成しているか、という観点から教育の評価指標としている。

(2)研究に係る評価

「研究に係る評価」について、2019年度の予算配分においては、重点支援の第3の枠組みの大学についてのみ、「運営費交付金等コスト当たりトップ10%論文数」が試行として導入された。しかし、そもそも引用数をもとにしたトップ10%という評価指標が適用できる学問分野が限られており、これのみでは大学や学問分野の多様な特性や質を考慮した評価は不可能である。2020年度に「研究に係る評価」をより広く導入するとすれば、次のような指標を組み合わせて活用すべきである。研究の質の向上の観点から「研究に係る評価」は、前述のように「研究成果」と「研究環境」の二つの項目から評価を行うこととすべきである。

「研究成果」の指標については、①質の高い研究論文や著作物などの研究業績をどれほど生み出しているか、②経済、社会、文化、公共政策・サービス、衛生、環境、生活の質などの改革や改善にどれほどの影響を与えているか、という二つの観点に基づき評価を行うべきである。

研究の成果は、「研究環境」によるところも大きく、またその「研究環境」は大学の規模にも大きく影響されることから、当該指標における適切な補正方法の開発を含め、今後、研究の質の向上に資するための評価指標については、さらに検討を行うことが求められる。

また、「研究環境」の指標については、研究活動を持続し発展させるための長期的な計画を策定しているかの観点で評価を行うべきである。

今後、研究に係る評価指標については、データの収集方策も含め、さらに検討を行うべきである。現時点で定量的データが入手可能で指標として考えられるものは以下のとおりである。

なお、どのような分母で指標を除するかについてはさらなる検討が必要である。例えば、現状において入手が困難ではあるが、フルタイム換算(FTEに基づく補正)の研究従事者数を分母とすることや、研究と同様に教育についても適切な指標を設定して、教育活動に多くの時間を割いている大学の教育実績が見える工夫をすることなどの検討も必要である。

【研究成果】

(将来的に開発すべき評価指標の方向性の例)

  • 質の高い研究論文や著作物などの研究業績数(11学系別の標準的な様式、あるいはピアレビューによる評価結果など)
  • 研究による社会・経済・文化的なインパクトに関する評価指標(評価結果など)

(2020 年度評価指標案)

評価については、分野・領域単位(11学系)で行うことを基本とし、複数年度のデータを活用できる場合は優先して活用することとすべきである。各指標について、大学の特性、ミッション、規模等を適切に配慮した補正の具体的な方法についてはさらに慎重に検討をする必要がある。その一例として、以下では「大学教員数」を記している。

※大学教員数当たりの科研費獲得件数の状況
 内定件数(新規)/全本務教員数
 内定件数(新規・継続)/全本務教員数

※大学教員数当たりの研究業績数の状況
 (論文については査読付論文(学内の紀要等に掲載の論文は除く)を基本とし、11学系別の標準的な様式に基づき各大学が提出した研究業績)
 (注)独立行政法人 大学改革支援・学位授与機構が来年度実施予定の現況調査において指定する様式を先取りして試行的に活用する必要がある。

※大学教員数当たりの受託事業・受託研究・共同研究の実施件数の状況
 (注)受託事業においてはデータ分析集の指標には含まれていないため新たに調査を実施する必要がある。
 共同研究受入件数/全本務教員数
 受託研究受入件数/全本務教員数

【研究環境】

(将来的に開発すべき評価指標の方向性の例)

  • 国内・国際共同研究の体制、若手研究者育成、研究戦略など研究を安定的かつ発展的に実施しうる体制についての評価指標

(2020 年度評価指標案)

各指標について、大学の特性、ミッション、規模等を適切に配慮した補正の具体的な方法についてはさらに慎重に検討をする必要がある。

※大学教員数当たりの外部研究資金獲得額の状況
 内定金額/全本務教員数、
 内定金額(間接経費含む)/全本務教員数
 受入金額/全本務教員数
 共同研究受入金額/全本務教員数
 受託研究受入金額/全本務教員数

「大学教員数当たりの外部研究資金獲得額の状況」の評価にあたっては、他の指標と同様に分野・領域単位(11学系)で行うことを基本とし、複数年度のデータを活用できる場合は優先して活用することとすべきである。なお、「研究環境」は大学の規模による影響もあり、「研究成果」にも波及することを踏まえ、前述した「研究成果」の「大学教員数当たりの科研費獲得件数の状況」などの件数と「研究環境」の「大学教員数当たりの外部研究資金獲得額の状況」の資金の両面から細やかに評価することによって、各大学の研究の質の向上について測定することで大学の実態を適切に評価するように配慮し、大学の特性、ミッション、規模等を適切に配慮した補正方法の開発を含めて検討する必要がある。

また、後述の「財務に係るマネジメント」よりも「研究環境」の項目で分野・領域単位(11学系)に配慮した指標として設定した方が、多面的に評価することが可能となり望ましいと考える。

3 財務に係るマネジメント

「財務に係るマネジメント」に関する指標について、2019年度の予算配分においては「会計マネジメント改革状況」及び「教員一人あたり外部資金獲得実績」の指標が導入されたが、次のような改善を検討すべきである。

  • 「会計マネジメント改革状況」については、あらかじめ各大学に指標の持つ意味、活用方法、用語の定義等を明示した上で必要なデータを収集するようにすべきである。
  • 2019年度の予算編成において「教員一人あたり外部資金獲得実績」のうち経営資金獲得実績を除き、新たに科研費、競争的資金を含めた共同研究、受託研究等の外部研究資金獲得額は研究環境に係る評価の指標とし、ここでは「大学に対する寄附金等の外部資金獲得実績」とする方が適切である。

5 人・物に係るマネジメント

「人・物に係るマネジメント」に関する指標について、2019年度の予算配分においては、「若手研究者比率」及び「人事給与・施設マネジメント改革」の指標が導入されたが、次のような改善を検討すべきである。

  • 「若手研究者比率」は高いほど良いものではなく、年齢構成のバランスがとれた状況が望まれる。「統合イノベーション戦略2019」等の政府方針を踏まえ、2020年度において目標となるような値等を分野の違いを考慮し検討する必要がある。例えば、「教員の多様性の確保」の観点から、女性教員数等の割合や年齢構成のバランスを総合的に評価するような方法も検討すべきである。
  • 「施設マネジメント改革」については、あらかじめ各大学に指標の持つ意味、活用方法、用語の定義等を明示した上で必要なデータを収集するようにすべきである。

2020年度予算に対する財務省のスタンス

来年度の予算編成も大詰めを迎えています。
「令和2年度予算の編成等に関する建議」(令和元年11月25日財政制度等審議会)が公表されています。
高等教育に関係の深い部分を抜粋します。

<文教・科学技術関係のポイント>


3.文教・科学技術(本文)

急激な少子化の進展や潜在成長率の低下、激しさを増す国際競争の中、次の時代を切り拓くための能力を一人ひとりが育むことが求められている。生産性や潜在成長率の向上に向け、教育改革や科学技術のさらなる発展は喫緊の課題として取り組む必要がある。同時に、現在及び将来の子供たちに対して既に巨額の財政負担を先送りしてきていることを
忘れるわけにはいかない。

文教・科学技術予算に関しては、これまで、教員数や公的支出額など、教育や研究のために使う「量」の多寡を目的として議論されることが多かったが、「量」は教育政策や科学技術政策の目的を達成する手段であり、本来は、教育や研究が目指す成果、すなわち「質」に焦点をあて、予算のより効果的で効率的な使い方を議論すべきである。

こうした観点から、更なる「質」の向上に向け、義務教育及び科学技術分野における人的・物的資源の有効活用について、また、国立大学、スポーツ及び文化に関する自律的なメカニズムの創出について、以下のとおり提言する。

これらの取組については、文部科学省や教育委員会、大学のみで対応できるものではなく、他省庁や地方公共団体の首長部局、産業界など、幅広く関係者を巻き込みつつ、世論も踏まえ、政府として、改革の流れを着実に支援し続けることが重要である。

(1)人的・物的資源の有効活用

② 科学技術(P42)

日本の科学技術関係予算は、対 GDP 比でも実額でも、主要先進国と比べて遜色のない水準にもかかわらず、質の高い論文の数が主要先進国に劣っている。研究力向上に向けては、この研究開発の「生産性」を改善させていくことが急務である。

〔資料Ⅱ-3-8~11 参照〕

(若手研究者の活力向上)

若手研究者は、シニアの研究者に比して相対的に質の高い論文を多く発表しており、日本の研究力の向上を目指して、その活力を高めていくことが必要である。

イ)若手研究者への支援

大学における若手研究者の処遇に着目すると、国立大学では、業績評価の活用が十分でないことや定年延長などによりシニア層や高職位層に偏重した人事運営が行われ、その結果、教員数が増加する中でも若手教員の数が減少している。

若手研究者の任期付採用数が増加していることが若手研究者の増えない一因であるとの指摘もある。一方、国立大学教員に占める任期付教員の割合は米国と同程度の水準であり、海外においても、研究者のキャリアパスは任期付きから始まるのが通例であることに留意すれば、必ずしも指摘は当たらないのではないか。しかも、競争的資金においては、科
学研究費助成事業(科研費)等での若手研究者への支援重点化を進めている。また、競争的資金の支援期間は、科研費が2~6年であるなど、OECD 諸国と同様の長さとなっている。

こうした現状を踏まえれば、まずは、大学側において、若手研究者の処遇改善に向け、自らの人事・給与マネジメント改革を図ることが重要である。また、政府においては、科研費等での若手研究者への重点化を引き続き推進するとともに、研究成果を出す若手研究者について、基礎研究の探求や社会実装など、それぞれの研究の方向性に応じて様々な研
究資金を継続して支援できるよう、関係省庁・関係機関が連携しつつ、競争的資金全体を見直していくことが重要である。

〔資料Ⅱ-3-12~13 参照〕

ロ)博士課程修了者のキャリアパスの多様化

博士課程に優秀な人材を継続的に確保するためには、そのキャリアパスの一つとして、現在は一部にとどまる民間企業への就職を積極的に拡大していくことが重要である。この点、民間企業からは、博士課程修了者の採用に消極的な意見も少なくないが、実際に採用した企業においては、学士号・修士号取得者よりも高い満足度が示されており、博士課程
修了者と民間企業の適切なマッチングが、民間企業への就職を後押しする上で重要なポイントになると考えられる。

他方、博士課程修了者がインターンシップ経験を有する場合は民間企業に就職する者の割合が大きくなるが、研究開発者向けのインターンシップを実施している企業は一部にとどまっており、産学双方での認識や取組が追い付いていない可能性がある。このため、インターンシップ機会の拡充など、産学の自発的な取組により積極的に改善を進めていくこ
とが求められる。

〔資料Ⅱ-3-14 参照〕

(研究者の事務負担の軽減)

研究者が研究成果を出す上で、研究時間の確保の困難さが最大の制約要因とされている。詳細にみると、大学運営業務が最大の負担とされている。競争的資金の事務手続きに限らず、研究者の幅広い活動に係る事務の負担も課題になっていると考えられる。競争的資金については、申請事務の電子化等研究者の負担軽減に係る取組が進められているところ
である。依然として政府の取組が不十分との指摘がある一方で、事務手続きに割く時間は研究時間全体の5%程度、との調査結果もある。

このため、まずは、関係省庁や関係機関等が研究現場の実態の把握に一層努める必要がある。そうした結果を踏まえた上で、大学における学内業務の効率化や競争的資金における事務の合理化・簡素化など、研究者の事務負担の軽減に向け、多角的に検討していくことが求められる。

〔資料Ⅱ-3-15~16 参照〕

(官民の適切な役割分担・連携)

主要先進国の中で、日本の企業部門の研究開発投資はトップクラスの水準にあるが、企業が大学に投じる研究開発費の割合は低い水準であり、また、一件当たりの規模も小さい。

企業部門から大学への資金の流れは、大学における研究開発を社会の期待に沿ったものとしつつ、企業においても新たな事業の「芽」につながるものであり、日本全体の研究力向上に向けて、その拡大が期待される。

ただし、国の基礎研究向け支援の確保に向けては、企業が自己資金で研究開発を実施することが可能な分野は、企業自ら実施することが必要である。事業化までを見据えた国の研究資金の一部において、官民で資金を負担するマッチングファンド方式の導入が図られている。これは、民間資金を活用する有効な方式の一つとして考えられるが、本来民間が
担うべき範囲について国が負担することのないよう、厳格な運用が求められる。

また、産学連携・拠点形成事業についても、欧米諸国では民間資金とのマッチングファンド方式の徹底がなされた事業が見られるが、日本では、こうした取組は一部の事業にとどまっている。

厳しい財政状況の中、国の支援が民間資金の活用が難しい基礎研究等に適切に配分されるよう、実用化を射程に含む国の研究資金や産学連携・拠点形成事業について、研究フェーズの進捗等に応じた客観的な判断に基づくマッチングファンド方式を積極的に導入するなど、民間資金を活用する仕組みを工夫していくことが求められる。

〔資料Ⅱ-3-17~19 参照〕

(2)自律的なメカニズムの創出

① 国立大学(P45)

国立大学運営費交付金(令和元年度予算1兆 971 億円)については、社会のニーズに応じた教育水準やグローバルレベルで通用する研究水準を確保するための全学的なマネジメントが行われるよう、令和元年度(2019年度)予算から、厳選された共通の成果指標による相対評価に基づき約7%(約 700 億円)を配分する仕組みが導入された。その実施状況を見ると、会計マネジメント、人事給与マネジメント等の改革に積極的に取り組む大学を重点的に支援する結果となっており、大学改革のインセンティブ付けとしては一定の機能を果たしていると考えられる。

〔資料Ⅱ-3-20 参照〕

この新たな相対評価の仕組みについて、今後は、「新経済・財政再生計画改革工程表2018」(平成 30 年 12 月 20 日経済財政諮問会議)において示されているように、

  • 教育研究や学問分野ごとの特性を反映した、教育研究の成果に係る客観・共通指標及び評価について検討を行い、その結果を活用すること、
  • 配分対象割合・再配分率を順次拡大すること、

を図っていくことが求められる。

その際、教育と研究を明確に区分したうえで、その質を測る客観的かつ比較可能な指標、特にアウトカムに重点を置いた指標を設定するとともに、平成 28年度(2016年度)から導入された重点支援評価65(約300億円)を縮小し、新たな相対評価の仕組みを拡充していくことが必要である。また、これら2つを合わせた約1,000 億円の評価枠について、その拡大を念頭に置きつつ、改革に取り組む大学への重点支援を強化することが重要である。

〔資料Ⅱ-3-21 参照〕

令和4年度(2022 年度)から始まる第4期中期目標期間を見据えると、資源配分における評価の在り方については、新たな相対評価の仕組みが一定の機能を果たしつつあることを踏まえれば、その実効性を引き続き検証し、これを基本とした重点支援の在り方を検討すべきである。

その際、配分額を長期にわたって固定してしまえば、新陳代謝や切磋琢磨を阻害し、ひいては国際競争の遅れにもつながりかねない。過去からの努力の積み重ねとして現れてくる改革の成果を、適時適切に毎年度評価することで配分の適正化につなげていくことが不可欠である。

次に、配分に際しては大学の多様性を踏まえることも必要である。ただし、評価によるメリハリ付けの観点からは、評価対象の括りを細分化しすぎると相対評価として十分に機能しなくなることから、相対評価の母数については一定の規模を確保することが求められる。

また、各大学内においても、自らの経営判断に基づき学内の資源配分の最適化を図ることが重要であり、

  • 新たな相対評価の枠組を通じた経営判断力向上に向けた環境づくりへのインセンティブ付け、
  • 大学にとって有用であるが競争的資金の獲得が難しい学問分野への学長裁量経費の更なる有効活用、
  • 寄付金等の財源の多様化に向けた取組、

を更に推進していくことが求められる。

〔資料Ⅱ-3-22 参照〕

令和2年度予算の編成等に関する建議|財務省 から

2019年11月26日火曜日

記事紹介|おそれなきを施す

「おそれなきを施す」という自戒の言葉がある。

  1. 夜道がこわい(命がおしいからだ)
  2. 病気がおそろしい(幸せすぎるからだ)
  3. 家業が心配だ(欲が深いからだ)
  4. おせじが言いたい(よく思われたいからだ)
  5. 縁起(吉凶の前触れ)が思える(自分だけが幸せになりたいからだ)
  6. 目上の人がおそろしい(出世がしたいからだ)
  7. 同僚を疑う(自己の誠心が足りないからだ)

自分を捨てるということ|人の心に灯をともす から

2019年11月25日月曜日

AI・ICT人材育成に関する政策動向

11月13日(水)、政府の経済財政諮問会議が開催され、「教育、科学技術政策」が議論されています。関係資料(抜粋)は以下のとおり。


安倍総理は令和元年第11回経済財政諮問会議を開催しました|首相官邸

Society5.0を実現する上では、学校教育の段階からICT(情報通信技術)に親しみ、デジタル化に対応した人材を社会全体で育成していくことが、まずもって重要。取組を大胆に加速していただきたい。(総理発言)


資料5-1 経済再生・財政健全化の一体的な推進強化に向けて~教育・科学技術政策~(有識者議員提出資料

Society5.0 時代にふさわしい成長基盤を構築するには、デジタル化に対応した人的資本の形成、SDGs1等の社会的課題に対応した先端技術の社会実装が必要。そのためには、教育・研究機関に閉じた対策だけでなく、民間サービス等より多様な主体を巻き込んだ、よりオープンな対策が求められる。
生徒数の減少が見込まれる中、メリハリのある予算配分と改革の実行を通じ、次代を担うカギとなる AI・ICT 人材を育成するとともに、官民連携の下で戦略的な研究開発投資を促進することで、イノベーション創出による経済成長と歳出効率化を同時に実現することが重要。


資料5-2 経済再生・財政健全化の一体的な推進強化に向けて~教育・科学技術政策~(参考資料)(有識者議員提出資料)

教育のICT化等を通じた人材育成

  • それぞれの段階で、どのような能力をもったAI・ICT人材が求められるかを明確化するとともに、学校のICT利用環境の整備、eラーニング・オンライン教育の活用、STEAM教育の強化等に総合的に取り組み、予算配分を含め施策にメリハリをつけていくべき。
  • 学校のICT化に当たっては、これまでの延長ではない、外部の専門人材の積極的登用、IT端末、eラーニング・オンライン教育やデジタル教科書を全生徒が利用できる環境整備を早急に実現すべき。

官民連携による戦略的な研究開発投資の促進

  • 民間資金の受入れや研究促進効果について意欲的な目標を設定し、適切な成果目標に基づき、官民が連携してSDGs等の社会課題に対応した質の高い研究開発投資を加速させるべき。



  • Society5.0時代の学びの実現に向け、教師が授業における日常のツールとしてICTを活用するための環境整備を推進するとともに、指導体制の充実を図っていく。
  • 官民連携によるイノベーション創出



  • Society5.0を加速する未来への投資
  • 「研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ」(仮称)の方向性
  • 官民研究開発投資の拡大

給与改革により役所風土の刷新を

いわゆる同一労働同一賃金関係法の施行が来年4月に迫っている。

国立大学には今、大きくは、正規(定員内)職員と非正規(定員外)職員が雇用され、給与・手当・福利厚生等の面で様々な違いが生じている。

法律の施行にどのように対応するのか、違いについてどのような説明責任を果たすのか、説明困難な格差をどう改善するのか、各大学の経営層や人事担当は頭を抱えているはず。

この際、公務員を踏襲した複雑かつお手盛りの給与制度に競争原理を導入し、厳格な業績評価に基づく仕組みに刷新してはどうだろうか。

不合理な待遇差の改善はもとより、弛緩した役所体質や組織風土を一変させる絶好のチャンスかもしれない。

正社員の手当が消える… 非正規との格差是正へ|日本経済新聞

異常な日本の働き方を変えよう

「せやろがいおじさん」の叫び。相変わらずわかりやすい。

第6期科学技術基本計画の策定に向けた議論

第6期科学技術基本計画の策定作業が進んでいます。

去る11月6日に開催された文部科学省科学技術・学術政策研究所(NISTEP)主催のシンポジウムでは、産官学界で指導的立場にある方々から様々な意見が表明されたようです(以下抜粋)。

上山氏は、計画の対象期間となる2021年からの5年間が「日本にとって国家的な分水嶺になる」と指摘、計画が新しい視点で構想されることを強調。

2030年から2050年に日本がどのような国家であるべきかを考え、あるべき社会の姿を念頭において、この5年間にやるべき政策を策定する、としている。

少子高齢化、財政健全化、地球温暖化などグローバルな問題でもある重要課題を解決する政策モデルを提示し、日本らしいイノベーション(ジャパンモデル)を創出するなど、具体的な目標を挙げた。

加えて指摘したのが「人間中心の科学技術政策」。これは、一人一人の幸福追求と地球規模の平和と繁栄を両立させ、地域、ジェンダー、世代の枠を越えて全ての人々に科学技術のもたらす恩恵を届けることだ、としている。

さらに「モノからコトへ」というこれまでの考え方から「コトからヒトへ」に転換する重要性も指摘し、教育改革によって創造的な人間を増やす政策の重要性も強調。

レビュー「人間中心の政策に転換 第6期科学技術基本計画策定作業進む」|SciencePortal

記事紹介|時には逃げ出してみる

「自分の身は自分で守る」と常に意識していないと、物事が悪いほうに進んでいても鈍感になりがちだ。

誰かがどうにかしてくれるだろうという甘い考えは捨てるべき。

誰かの「大丈夫」にすがりたくなるけれど、自分の身を守れるのは自分しかいない。

結局は、自分自身を信じるしかない。

人生がつらくなる最も大きな原因の一つが「自信をなくすこと」だ。

自信をなくしている自分は脆(もろ)く弱い。

なんにでも傷つき、さらに自信を失う。

だから、あなたの周りで、あなたの自信をなくそうとする人がいたら、今すぐに距離を置くのだ。

自分の言いなりにしたいか、潰そうとしているかのどっちかだから。

悪意を向けて来る人は無視していいんだよ。

嫌な思いをしたり傷ついたりしたら、正に相手の思うつぼ。

これは、過去のことも同じ。

過去のことで今苦しんでいたら、今の自分がもったいない。

悪意のある人に、やさしいあなたが負けるはずがない。

悪意のある人は自分自身も悪意に毒されて苦しんでいる人だから。

「一緒にいるべきではない人」は、人生に確実にいる。

一緒にいてその時は楽しくても、あとから考えてみると、自分がしんどかったり、損ばかりしたり。

後味の悪い人には近づかないに限る。

近づかなければ係わらずに済む。

たとえその人が肉親であれ、近しい人であれ、心の距離感・態度の距離感をとるのだ。

そして、「一緒にいるべきではなかった人」から離れたあとは、その人の悪口を言わないこと。

それはまだ、その人に拘泥(こうでい)している証拠だし、その人と同じレベルにまだいるということだから。

色々な執着を捨てて、潔い人になりたいと思う。

潔い人であると決めたら、余計な心配のタネが消えて気持ちがスッと軽くなる。

あきらめることとは違う。

ただ、潔くあろうと思う。

だめなら逃げてみる|人の心に灯をともす から

記事紹介|困っても、困ったらあかん

人生には必要なことしか起こらない。

今あなたを悩ませていることも

何かをあなたに伝えている。


これと同じような趣旨を心理学者のバーバラ・アンジェリスが『障害物は、あなたに教えるべきことを教えるまで消えない』と語っています。

「悩み」や「障害物」は自分の考え方や行動を変えるチャンスになり、または、実はもっと大きな問題に発展する前に食い止めてくれるできことであったり、もしも次にそれが起こる時の対処法を授けてくれるものにもなりえます。

大事なことは、自分がどんな姿勢でそれに臨むかということ。

そして一人で悩まないこと。

松下幸之助氏が言うように、『困っても、困ったらあかん』のです。

必要なこと|今日の言葉 から

記事紹介|勘違いしてませんか、学長の権限

いつも多くの貴重な示唆を与えてくれる吉武博通さんの論考。今回は、現場を熟知されている先生ならではのリーダーシップ論。

大学等の経営トップ、その予備軍、事務系管理職の方は必読ではないでしょうか。(以下抜粋)

  • 学長に確かな地位と権限を与えれば改革が進むと短絡的に考えているわけではなかろうが、その側面を強調しすぎると、地位と権限があれば人は動くとの思い違いが起き、思い通りにならない時は、権限が不十分、構成員の意識や能力に問題がある等、他に原因を求めがちになる。
  • リーダーシップは学長はじめ上位役職者に求められるものとの理解も重大な思い違いの一つといえる。法人は教学に、教学は法人に問題があると言い、上位者は下位者に、下位者は上位者に問題があると言う。原因を他に帰せがちな傾向、つまり当事者意識の希薄さは大学の変革が進まない根本原因の一つである。
  • リーダーシップは管理者だけに求められるものではない。リーダーシップを発揮できる人材が組織内にどれだけいるか、それを育む組織文化をどう根づかせるかは、大学が困難を克服し、未来を切り拓くための不可欠の要素である。
  • リーダーシップは、組織に建設的な改革を起こすために、方向性の設定によりビジョンと戦略を生み出し、コミュニケーションを通して構成員の理解を促し、組織を一つにまとめる。そして様々な障害を乗り越えてビジョンを達成するために、構成員が能力を最大限に発揮できるよう動機づける。
  • 本物のリーダーにそなわっている資質のなかでも、特に重要なものは、①他者が共感できる意義を見いだし、周囲を巻き込む能力、②自分を明確に表現できる、③誠実さ、④適応力(絶え間のない変化にも素早く、理性的に対処できる)。
  • これからのリーダーに求められる要素は、幅広い教養、限りない好奇心、つきることのない熱意、周囲を巻き込む楽天性、仕事仲間やチームに対する信頼、すすんでリスクをとろうとする意志、短期的な利益より長期的な成長を追求する姿勢、卓越することへのこだわり、適応力、共感能力、自分自身であること、誠実さ、ビジョン。
  • 「信頼」はリーダーシップを語るうえで欠くことのできない要素である。信頼という概念の根底にある主要な要因は、誠実性、能力、一貫性、忠誠心、開放性。信頼を築く方法は、開放的である、公正である、感情を言葉に表す、真実を話す、一貫性を示す、約束を果たす、秘密を守る、能力。
  • 職員組織においても、職員間での認識や価値観の隔たり、部署間のセクショナリズムに加え、国立大学の場合は全国異動とプロパー、公立大学の場合は自治体派遣とプロパー等、職員間の立場の違いもある。企業等に比べると協働の密度が低くなりがちであることは否めない。このような状況を克服するためにも、大学は様々なテーマを設定し、プロジェクトチームやタスクフォース等の形で協働の機会を意図的に増やしていく必要がある。会議や手続きに係る業務を大幅に圧縮することで時間は捻出可能と思われる。
  • 教員同士や職員同士の協働が必要なことはいうまでもないが、教員と職員の協働は、より大きな成果を生み出し、リーダーシップを育む場としての学習効果も一層高まる可能性がある。職員が教員間の接着剤や円滑剤の役割を果たすこともあるし、その逆もあり得る。また、教員と職員では知識や経験が異なるため、問題を多面的に捉えることでアイディアも生まれ、互いに補い合うことで信頼が蓄積される可能性も高い。大学や学部のビジョン・戦略の策定、学部・学科の新設や改組、国の補助事業への申請、カリキュラム開発、学修成果の可視化、学生支援の充実、キャンパス・デザイン、広報戦略等、テーマはいくらでもある。
  • 経営者の役割はもはや命令を発し、管理することではなく、企業組織のあらゆるレベルにおいて人々の行動の質を高めたり、調整したりすることなのだ。そして、リーダーがおのれの不完全さを自覚し、長所と短所を併せ持った存在であることを認めた時、初めて自分に足りないスキルを誰かに補ってもらうことができる。
  • リーダーシップを構成する能力は、①状況認識(企業と従業員が置かれている状況を理解すること)、②人間関係の構築(社内外で人間関係を形成すること)、③ビジョンの策定(説得力あふれる将来像を描くこと)、④創意工夫(ビジョンを実現するための新しい方法を生み出すこと)。
  • 学長は任期中にアピールできる実績を残そうと意気込み、学部長は2年か4年の任期を大過なく過ごそうとし、教員はできれば静かに研究と教育に専念したいと考える。全てがこの通りではなかろうが、大学という組織の特質や個々の大学の状況を踏まえながら、大学にふさわしいガバナンスとマネジメントを確立し、それぞれの状況に応じたリーダーシップの在り方を追求していくことが重要である。

2019年11月5日火曜日

記事紹介|イノベーションに挑戦する

一般的に「企業は営利を追求するためにある」と考えられている。

しかしドラッカーは、これに異を唱える。

彼は、「利益は企業活動を支える最低条件でしかなく、それが目的なのではない」という。

会社という組織は、まず社会に貢献するために存在するというのが彼の見解だ。

では、企業にとっての社会貢献とは何か?

その第一は「顧客の創造」である。

企業は顧客が求め、それを満足させる製品やサービスを提供することでしか生き残れない。

顧客が求めるものをいち早く察知し、その欲求に応える商品を提供してはじめて、欲求が購買に変わり、企業は評価される。

つまり常に顧客の需要を汲み取り、その意識に見合ったものを提供していくことが、第一に企業が果たすべき社会貢献なのである。

だからドラッカーは、「顧客の創造」を第一に考える。

顧客を創造しないかぎり、企業は生き残れない。

「企業の価値を決めるのは顧客」だからだ。

顧客は気に入った製品やサービスを手に入れるために対価を払う。

その対価を多く集められる企業だけが、“価値が高い優れた企業”という評価を得られる。

たとえばアップルのiPhoneやiPadが「かっこいい」と若者たちの共感を呼び、大ブレイクしたことはご存じだろう。

その半面、顧客の創造に失敗すれば、企業はその使命を果たすことができない。

欲求に応えられないと売り上げという目標を達成できず、市場から撤退せざるを得ない。

したがって、企業が自らの発展と社会貢献を願うなら、「顧客を創造」していかなければならない。

顧客が価値を認め、求めるのは「製品そのものではなく、それらが提供する“効用”」である。

効用は「満足感」と置き換えてもよいかもしれない。

したがって企業は、製品やサービスを通じて彼らを満足させるよう、絶えず働きかけていかねばならない。

企業にはそのためのマネジメントが不可欠だ、その第一の武器になるのが「マーケティング」である。

ここでいうマーケティングとは一般にいわれているような、「市場調査」でもなければ「販売テクニック」でもない。

人々の欲求を察知し、消費、利用してもらえるような満足を与える戦略を練ること。

言いかえれば、「売れる仕組みづくり」である。

マーケティングとは、「顧客は何を求めているか」を自らに問いかけ、彼らの欲求、ニーズを把握して、それを満足させるべく、「我々はこうした製品やサービスを提供できます」と訴えかけることに尽きる。

しかし、マーケティングだけで企業は成功できない。

マーケティングは「現在の事象」には対応できるが、企業は絶えず成長する経済に対応していかなければならず、未来への変化を前提として活動していかなければならないからだ。

これを可能にするのが「イノベーション」である。

これも単なる「技術革新」や「発明」「改良」ではない。

「新しい経済的満足を生み出すための方策を生み出すこと」である。

価値の下落は避けられない。

それは価格の低下や販売数の減少になって表れる。

したがって企業は、従来の製品やサービスだけで満足せず、常に新しいものを提供していかなければならない。

「イノベーション」の意味は、顧客の新しい欲求に応え、満足を与える製品やサービスを創造し、一歩抜きんでた制度や仕組みをつくり出すことである。

「より大きな新しい富を生み出す能力を獲得するための新しい挑戦」と言い換えてもよい。

《企業や組織には、絶えず自らを社会の動きに適合させるための「マネジメント」が不可欠で、その二大要素が「マーケティング」と「イノベーション」なのである。》


ドラッカーは、イノベーションについて本書の中でこう語る。

『企業や組織は、新しいことにチャレンジするとともに、「陳腐化」したものを「廃棄」する必要がある。

使命が終わった製品やサービス、顧客満足が達成できなくなったもの、業績に貢献できなくなったものは、速やかに廃棄する必要があるのだ。』

今ほど「イノベーション」の必要性が叫ばれている時代もない。

前例踏襲や、過去の知識の積み重ねでやってこれた時代が去ってしまったからだ。

古い知識や、常識といった囚(とら)われを捨てなければ、変化という大きな谷間を飛び越えることはできない。

思い荷物を捨て、身軽にならなければ、ジャンプすることはできないからだ。

また、「もし顧客に、彼らの望むものを聞いていたら、彼らは『もっと速い馬が欲しい』と答えていただろう。」というヘンリー・フォードの有名な言葉がある。

当時のアメリカは、一般大衆の主な移動手段は車ではなく、まだ馬だったからだ。

顧客は、この世にないものを想像できない。

だからこそ…

新たな顧客を創造するため、イノベーションに挑戦したい。

ドラッカー式マネジメント入門|人の心に灯をともす から

2019年11月2日土曜日

無念、首里城焼失

沖縄を象徴する遺産であり、沖縄の人々の心の拠り所だった首里城が焼失。極めて残念ですが、一日も早い再建を心から願っています。

再建に向けた寄付活動も始まっています。
沖縄のシンボル「首里城」再建支援プロジェクト


焼失前の首里城正殿 (C)NOBUAKI SUMIDA/SEBUNPHOTO/amanaimages



琉球人と歩んできた首里城  アジアに開かれた交流の場

首里城焼失の報を知ったのは、取材のため那覇に滞在中のことだった。早朝、縁戚からの電話は「首里城が燃えて……」と言ったまま途切れてしまい、テレビをつけたものの、画面に映る光景を現実として受け止めることができなかった。

ずっと一緒に生きてゆけると信じていた人が、突然この世を去っていったような、今なすべきことさえ思いつかないような、そんな感覚だった。

首里城の創建は14世紀末にさかのぼるともされる。統一王朝・琉球王国が誕生したのち、歴代の王によって整備されていった。うねる石垣に囲まれて建つ城は、威容を誇る城ではなく、争いのための城でもない。遠く海を渡ってやって来る人たちを迎えるための城であり、波涛(はとう)を越えていった琉球人の城だ。15世紀、王国は絶頂期を迎えたが、こののち幾多の困難に見舞われた。

それでも首里城は、政治・行政の要として機能し、外交・貿易の拠点として、さらには琉球文化発信の場としての役割を担ってきた。

だが、いわゆる「琉球処分」によって王国は解体され、明治政府の軍隊と警察隊の威圧によって接収されてしまう。のちに首里区(当時)に払い下げられ校舎として使用されたが、城は荒れ果てる一方だった。

大正末期、美術教師として首里に滞在した香川出身の鎌倉芳太郎は、沖縄の人々と深く交流するなかで琉球文化に魅せられ、なかでも首里城には「教わることがたくさんある」と語った。彼は断続しながらも16年におよぶフィールド調査をし、多数の資料やガラス乾板写真を残した。鎌倉の尽力もあって、大正14年に首里城は現在の国宝に指定され、大規模な修理もなされた。

しかし、沖縄戦が何もかも破壊し、首里城は姿を消した。城跡には琉球大学が建てられ、沖縄は27年におよぶ米軍施政下を生きなければならなかった。この間にも首里城復元の声が絶えることがなかったのは、城が王国の歴史文化を伝える象徴としてだけではなく、琉球人・沖縄人の足跡を雄弁に物語る場としての意味が大きかったからだ。

沖縄では祖先の人生がいきいきと語りつがれていることに驚くばかりだが、さまざまな困難に直面しながらも生きた人々の存在があって、今の私たちが生まれたことを実感させてくれる。

琉球大学のキャンパスが移転したのち、首里城復元のプロジェクトが進められた。戦争によって失われた史料は膨大だったが、多分野の英知を結集したプロジェクトメンバーは、それを嘆くばかりでなく、わずかな手がかりから丹念な調査と研究を続け、復元を成しとげた。鎌倉芳太郎が残した資料やフィールドノートも活用されたが、何より多くの沖縄県民の協力が大きな支えとなったことは言うまでもない。

首里城復元から27年の歳月が流れ、子どもの頃から「赤い城」を見て育った世代も増えてきたことをうれしく思うようになったその時、焼失という悲劇を体験することになってしまった。

私も数えきれないほど訪れた首里城が崩れ落ちた光景を見るのは、胸がえぐられるように辛い。今はこの深い悲しみのなかに沈むことしかできない。けれど首里城は沖縄の人々だけの城ではない。日本の歴史のなかに琉球史を組み入れた時、アジア諸国と交流し、豊かな文化を築いた国のあり方が見えてくるだろう。首里城は現代の私たちにそれを語りかけてきた。(与那原恵)

琉球人と歩んできた首里城 アジアに開かれた交流の場|日本経済新聞 から

記事紹介|自分の人生をデザインする

自分をアップデートし続けるための、最もシンプルな方法は、付き合う人を変えることです。

「何をするか」を考えることも大切ですが、「誰といるか」にこだわることは、それ以上に重要なことなのです。

私の会社では、留学のサポートを行っていますが、「学校選びは、誰と付き合いたいかですべてが決まる」という話をよく生徒にします。

どこで誰と出会うのかは、自分で決めることなのです。

そして、誰と出会うかを決めることは、自分の力で人生をデザインすることにほかなりません。

私たちは自分が置かれている環境によって進化もするし、退化もします。

もしあなたの付き合う友人が何年も変わっていないとしたら、それは危険な状態です。

あなたはもう古くなりかかっています。

付き合う人が変化しているならば、あなた自身がアップデートできている証といえるでしょう。

最近は、さまざまなテーマでのセミナーや講習会が全国各地で開催されています。

そこでは出会いがあり、学びがあるでしょう。

そうした場所に参加するのは有意義なことです。

人は居心地のいい空間に身を置きたいと考え、そこから一歩足を踏み出すだけでストレスを感じる傾向にあります。

このような居心地のいい空間のことを「コンフォートゾーン」と呼びますが、このコンフォートゾーンから外へ飛び出す勇気こそ、これから必要とされる力となります。

私は過去に本を書きたいと思ったとき、どうしたら書けるのかとあれこれ考えるようりも、まずは勉強会に通うことを選択しました。

お金はかかりましたが、志の高い仲間たちと出会えたのはそれなりの対価を払ったからだと、その結果に満足したものです。

その勉強会は大阪で開催されていましたが、遠く東京や名古屋から本気の人たちが集まっていました。

それぞれに専門を持っていて、私にはない強みを持っている人ばかりの環境でした。

コンフォートゾーンを飛び出したわけですから、最初は気持ちも落ち着きませんし、自分よりも経験や知識が豊富な人たちが集まる環境にいることで自分が小さく感じることもありました。

しかし、それによって、自分に何が足りなくて、これから何を学べばいいのかもわかりましたし、自分よりも上のステージにいる人たちがどういうプロセスでそこに至っているのかを知ることで、今、自分がどうあるべきかが見えてきたのです。

彼らがどのような話をし、どのように振る舞っているのかを徹底的に観察し研究しました。

「観察学習」とは、他者の行動を見て学習することを指しますが、他者の行動やその結果をモデルとすることにより、観察している人の行動に変化が生じます。

最初は慣れない環境に「自分なんて場違いなのではないか」とヒリヒリするでしょう。

しかし、それが成長の余地であり、自分に足りないものを教えてくれるいい機会なのです。

そのヒリヒリした感覚が、自分は「何をすればいいか」「誰と付き合えばいいか」を教えてくれます。

せっかくの素晴らしい縁を途切れさせないために、自分を成長させる欲求が刺激されるのでしょう。

もちろん、どうしてもその水が合わなければ変えればいいのです。

感覚的に「なんか違うな」と感じたならば、無理してそこにとどまる必要はありません。

SNSを使って面白そうなコミュニティを探すことも容易です。

一つに固執する必要はありませんから、どんどん試してみればいいのです。

自分をアップデートするために、少しヒリヒリする、でも成長できる期待感を覚えられる人間関係をつくってみましょう。

コンフォートゾーンで安穏とせず、まずは付き合う人を考えてみるのです。

自分イノベーション|人の心に灯をともす から

2019年11月1日金曜日

記事紹介|後からではなく、いま言いましょう。「おかしい」と

最近こんな話を聞いた。

あるところで2人の国立大学の学長が一緒になった。1人が「入試に英語民間試験を活用するという話、あれに私はどうも賛成できなくて」とぼそりと言うと、もう1人が「先生もですか。私もそうなのです」とぼそりと答えた、という。

真偽のほどはわからない。でも、まともな学長なら(まともでない学長がいるとは思いたくないが)こう語ってもおかしくない。そう思う教育関係者は少なくない。だからこの話、静かに広まり、私の耳にも届いたのだろう。

全国の大学の学長先生にお願いしたい。この話が本当なら、そして本当にこの入試改革がおかしいと思われるのなら、もう少しだけ大きな声で「これはまずい」「やめよう」とおっしゃっていただけないだろうか。

この国の近現代史を振り返ると、あとになって「実は私もおかしいと思っていたのだが、とても言えなかった」と語る元責任者や元幹部たちがいた。74年前に惨憺たる結果で終わったあの戦争を遂行した軍部や政府の幹部たちもそうだったという。最近、巨額の金品を受け取って大問題になったあの大企業や、カリスマ大物経営者が逮捕された国際的な大メーカーも、内部はそうだったのではないか。「私はおかしいと思っていた。でも言えなかった」と。

これから進もうとする入試「改革」でも、また同じことが起こらないともかぎらない。そのとき、直接の被害を受けるのは若い受験生たちだ。だからこそ、大学という知と教育を担う組織の、責任ある立場のみなさんにお願いしたい。もし、この入試「改革」に疑問や疑念をお持ちならなら、いま発言し、行動してほしい。影響力を行使してほしい。

大学の英語入試、まだ「異議あり」 - 刀祢館正明|論座 - 朝日新聞社の言論サイト から

記事紹介|目先の生産性を求めず、基礎研究の「層の厚み」を増す施策が必要だ

国立大の資金難響く

ノーベル賞の自然科学3賞(医学生理学、物理学、化学)の日本の受賞者は24人になる。世界6位だ。2001年以降だと18人で米国に次ぐ2位。ただし、ノーベル賞は対象となる業績が出てから受賞まで平均27・8年かかる。吉野さんの場合も、1980年代の元気な研究現場が生んだ「昭和の遺産」だ。

近年の日本の基礎研究はどうか。

論文数では、この10年間で世界シェアは2位から4位に、注目度の高い論文数に限ると4位から9位に落ちるなど退潮が著しい。博士課程への進学者数は03年度をピークに減り続け、人口当たりの博士号取得者の数は米、英、独などの半分以下だ。先進国で日本だけ減っている。将来も危うい。

企業はバブル崩壊とともに基礎研究への投資を大幅に縮小し、日本の論文の多くは国立大学が生み出しているのが実態だが、その屋台骨に元気がない。

国立大学の弱体化の背景には国の「選択と集中」の政策がある。04年の国立大学の法人化以降、教員の人件費や自由に使える研究費など、大学運営の基盤に充てる補助金(運営費交付金)を削減し、代わりに国の審査を受けて勝ち取る「競争的資金」を増やしてきた。運営費交付金の一部にも競争を導入し、ぜい肉のない経営体への「体質改善」を求めている。

その結果、何が起きたか。

国立大学は予算難のため教員の正規ポストを減らして新規採用を抑え、高齢化が進んだ。審査で有利な東大など一部の大学に資金が集中。多くの中堅の国立大学は資金難にあえぎ、人材育成の場である研究室の維持にも事欠く状態に陥っている。研究の「層の厚み」が失われつつある。

競争的資金の柱の一つにイノベーションを目指す研究費がある。政権の経済政策「アベノミクス」を受けたものだが、スケールの大きな研究とはいいがたい。「環境にやさしいIT機器」「放射性物質の低減」といった個別テーマが設定され、進め方や予算の使途が縛られ、頻繁に成果報告を求められる。現場の教員は予算獲得の雑用が膨らみ、研究時間が削られている。トップダウン式の限界が指摘されている。

吉野さんは、国の政策に振り回される大学の現状を「中途半端で最悪の状態」と危惧し、「百に一つのとんでもないリターンを生み出すイノベーションには、福井謙一先生のような真理を探究する基礎研究が必要」と言う。自らの賞金を原資に日本化学会に設置した「吉野彰研究助成」では「一切好きなように使ってもらいたい」と話す。

目先の成果急いでも

国は競争政策の資金配分の基準として、大学側に細かい数値目標の設定を求めている。財源難の中、企業と同等の手法を大学経営に適用し、生産性の観点から国の眼鏡にかなう大学を重点支援する。生産性とは投入コストによる割り算だ。しばしば引き合いに出されるのは、その大学が生み出した論文数や特許などの成果を、投入した運営費交付金で割った値だ。

そもそも、基礎研究の成果は生産性ではかられるべきなのか。

数値重視の背景には、政府が進めるEBPM(証拠に基づく政策立案)がある。予算配分の合理性を高めて国民の理解を得るためとされ、科学技術分野では国の第5期科学技術基本計画(16~20年)に導入が盛り込まれている。

しかし、研究者からは「測りやすいデータだけで評価されている」「基礎研究や学生の教育といった非定型の業務に数値目標はそぐわない」などといった批判がつきない。運営費交付金のかなりの部分は論文作成以外にも使われており、もっと精緻(せいち)な議論が必要だとの指摘もある。

博士課程の人材育成を専門に担う総合研究大学院大学の長谷川眞理子学長は、「データは政策判断を正当化するためにあるのではない。いまの政策は生産性向上が目的化している」と憤る。「学生たちは職探しにきゅうきゅうとし、すぐに成果が出る研究を目指さざるを得ない。指導する先生も余裕がなく、成果を急ぐと学生にしわよせがいく。これでは、飛び抜けたアイデアなど生まれようがない」。政策が生む悪循環を肌で感じている。

現場を信じ、「苗床」作るのが国の役割 個々は「賭け」でも、GDPを押し上げ

日本の国家予算は「借金」の返済と社会保障費が6割を占める。科学技術や教育、公共事業の予算額の割合は、平成の30年間横ばいのままだ。国の成長を考えれば将来への投資は必要だ。しかし、社会保障費を削ってでも「好奇心の赴くままの自由な研究」にお金を回す価値が本当にあるのか、疑問に思うかもしれない。

個々の基礎研究は「賭け」のようなものだ。だが国全体でみると、基礎研究力と経済力には相関がある。大学経営に詳しい鈴鹿医療科学大学の豊田長康学長によると、OECD(経済協力開発機構)の人口当たりの統計では、論文数とGDP(国内総生産)は比例する。GDPとイノベーション力の指標もおおむね比例する。基礎研究力、イノベーション力、GDPには、相互に押し上げ合う関係があると推定できる。

ノーベル賞を受賞した日本の研究も昨年の本庶佑・京都大特別教授のがん免疫治療薬「オプジーボ」、2014年の赤崎勇・名城大終身教授ら3人による青色LEDなど、世界的な市場を切り開いたものは多い。日本の経済活性化の好機となったのは間違いない。

これらの業績は、いずれも真理を探究する大学での基礎研究に端を発している。自然の仕組みの解明を至上の価値とするノーベル賞の伝統からみれば当然だが、一方でイノベーションに光を当てる近年の授賞の潮流にも沿ったものだ。真理探究の成果が貧困問題の解決や地球環境への負荷低減など、人類共通の課題にどう貢献したか。公共財としての科学研究の価値を近年のノーベル賞は強く意識している。

そして、イノベーションの成果は市場を通じて普及する。日本が「百に一つのリターン」という大きなインパクトを得るには、いたずらに競争を促すのではなく、現場を信頼し、豊かな好奇心の「苗床」を作る施策が求められる。

(記者解説)後退する基礎研究 0から1生む力、競争政策で弱まる 大阪科学医療部・嘉幡久敬|朝日新聞デジタル から

記事紹介|心にかけた色眼鏡を外してみましょう

「脳力開発」の創始者、城野宏氏は、ものごとの見方や考え方(それをつくる習慣)には5つあるという。

それは…

1. 中心・骨組みで考える習慣をつくる

2. 両面とも考え、どちらが主流かも考える習慣をつくる

3. 立場・観点を整理し、多角度から考える習慣をつくる

4. 確定的要素から出発して考える習慣をつくる

5. 行動のつながりで、具体的に考える習慣をつくる

その中でも、「行動のつながりで、具体的に考える」というのが、お釈迦さまのいう「人を見るなら、その行動を見よ」。

我々は、とかく人を見るとき、その人の外見や、肩書、社会的地位、資産、で判断してしまいがちだ。

どんなに口では格好いいことを言っても、それに行動が伴っていなかったら人からは信用されない。

反対に、あまり口数が少なくても、行動が立派ならいつか必ず人から評価される。

「人を見るなら、その行動を見よ」

自分の生きざまを、具体的行動で示せるような人でありたい。

人を見るなら、その行動を見よ|人の心に灯をともす から