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大学の防衛省研究費への応募が急増。私たちは「一線」をどう考えるか

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防衛省の研究費に応募する大学が、急に増えています。 防衛装備庁は2026年10月20日、 「安全保障技術研究推進制度」 (通称・防衛省ファンディング)の 2026年度の応募状況と採択課題を公表しました。 応募は全体で560件、採択は47件です。 応募件数は2025年度の340件を上回り、 制度開始以来最多です。 防衛装備庁の応募・採択資料 で確認できます。 このうち、大学・高専・大学共同利用機関 (以下「大学等」)からの応募は、 報道によれば291件 でした。 2025年度の123件の約2.4倍で、 制度創設以来最多とされています。 2024年度の44件から数えると、 2年で約6.6倍です。 「大学等」の範囲は両年度とも同じです。 採択された47件のうち、大学等は30件でした。 数字で見る2026年度の応募状況 560 応募総数(件) 47 採択総数(件) 291 大学等の応募(件) 報道値 30 大学等の採択(件) 出典:防衛装備庁、私塾界。 291件は報道に基づく数字です。 大学等からの応募件数の推移 2024年度 44件 2025年度 123件 2026年度 291件 2026年度は報道値。棒の長さは291件を基準に表示。 応募件数であり、採択件数ではありません。 この数字を見て、 「大学も軍事研究に賛成するようになったのか」 と感じた方もいるかもしれません。 でも、そう決めつけるのは早いと思います。 1 「応募が増えた」ことをどう読むか 増えた理由は、ひとつではないはずです。 報道では、国立大学を中心に研究費の確保が 経営課題になっていることが背景として挙げられてい...

AI時代に本当に大切なのは「答え」より「判断する力」

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「AIが答えを出してくれたから、もう大丈夫」と思って、そのまま使ってしまったことはありませんか? 最近のAIの進歩は目覚ましく、文章を書く、資料をまとめる、調べものをする、アイデアを出すといった、少し前なら人間が時間をかけていた仕事を、あっという間にこなしてくれるようになりました。実際、AIを活用することで自治体の業務時間を大幅に削減できたという事例も出ています。正直なところ、「すごい時代になったな」と私も感じています。 でも、そこには面白い落とし穴があります。 AIに任せれば任せるほど、人間の「確認する力」が重要になるのです。 AIは「答えを出す」のが得意。でも「責任を取る」のは人間 AIはとても優秀ですが、AIが出した答えをそのまま信じればいいわけではありません。間違った情報が混ざることもありますし、一見もっともらしい文章でも、前提条件が違っているかもしれないからです。 たとえば、AIに会議の資料を作ってもらったとします。きれいに整っていて読みやすいのですが、よく見ると数字の出どころが違っていたり、自分たちの状況には当てはまらない前提で書かれていたりすることがあります。そのまま提出してしまえば、困るのはAIではなく提出した本人です。文章が上手に見えるほど間違いに気づきにくいのも、ちょっと厄介なところですよね。 だから、これから大切になるのは、 「AIを使える人」ではなく、 「AIの答えを判断できる人」 なのだと思います。これは仕事だけの話ではなく、ニュースを見るときも同じです。SNSで誰かが言っていたから正しい、有名な人が言っていたから正しい、AIが答えたから正しい。そんなふうに考えてよい時代ではなくなっています。 「本当かな?」 と一度立ち止まり、自分でも確認してみる。この小さな習慣が、とても大きな差になるのではないでしょうか。 便利になるほど、「考える力」が価値になる 昔は、情報をたくさん知っている人が強かったですよね。今は、検索すればかなりの情報が...

「保険あってサービスなし」の時代に、私たちが考えておくこと

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「介護保険料はきちんと払っているのに、いざという時にサービスを受けられない」。そんな事態が、いま各地で現実になりつつあります。NHK解説委員室の時論公論「 “保険あってサービスなし”拡大の危機 どうなる介護人材 」(2026年10月15日)は、介護を必要とする人が増える一方で、支える人が減っていく2040年に向けた課題を取り上げています。 ここで言う「保険あってサービスなし」とは、全国どこでも今すぐサービスを受けられないという意味ではありません。介護保険という制度があっても、地域によっては人材不足などから、希望するサービスを受けにくくなる可能性がある、という問題提起です。 この問題の根っこにあるのは、人手不足そのものというよりも、次の問いだと私は考えています。 限られた人材と財源の中で、何を公的な介護サービスとして残すのか。私たちはどんな介護を、どのくらいの負担で残したいのか。 「介護の人手不足は大変だな」で終わらせず、この問いを自分たちの老後や家族の問題として考えてみませんか。 1. 「保険料を払えば、サービスを受けられる」とは限らなくなる 介護保険は、40歳以上の人が保険料を負担し、原則として65歳以上で介護が必要と認定されたときにサービスを受けられる仕組みです(40〜64歳の人は、加齢に伴う特定の病気が原因の場合などに限られます)。2000年の開始当初は、介護を家族だけに背負わせず、社会全体で支えること(「介護の社会化」)を目指していました。 ところが、サービスを提供する「人」がいなければ、お金だけあっても介護は成り立ちません。介護職員は、お金を出せば明日すぐに増えるわけではないからです。たとえば、山あいの地域では、ヘルパーが1軒ずつ30分以上かけて訪問するのは非効率で、事業者が訪問介護を続けにくいという報道もあります( nippon.com )。 2. 数字で見る「必要な人数」と「実際の人数」 厚生労働省は、各都道府県が第9期介護保険事業計画(2024〜2026年度)に基づいて推計した「必要な介護職員数」を集計し、2024年7月に 公表 しました。 介護職員数:実績と必要数 単位:万人 2022年度(実績) 約215万人 2024年度(実績...

「忙しい」は「成果」ではない。パーキンソンの法則から考える、仕事を減らす組織づくり

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「最近、仕事が減らないな」「会議ばかり増えている気がする」と感じたことはありませんか。 役所でも会社でも学校でも、町内会やPTAでも、「やることがどんどん増えていく」という現象はどこにでもあります。この現象を説明してくれる有名な考え方が「パーキンソンの法則」です。 この記事では、むずかしい専門用語をできるだけ使わずに、この法則から私たちが学べることを、実際の研究も交えて整理します。 パーキンソンの法則とは 『日本の人事部』 では、パーキンソンの法則として、主に次の2つが紹介されています。 第一法則 仕事は、与えられた時間を満たすまで膨らむ 第二法則 支出は、収入に達するまで膨らむ 身近な例で考えてみましょう。夏休みの宿題は、期限までまだ時間があると、つい時間をかけてしまいがちです。ところが、締め切りが迫ると急に進むことがあります。予算も同じで、余っていると「せっかくだから何かに使おう」と考えがちです。 パーキンソンが注目したのは「役所の人員の増え方」でした パーキンソンがこの法則を論じる際に取り上げたのは、個人の宿題のような話ではなく、役所の人員の増え方でした。 この観察を紹介している数理モデルの論文( Klimek、Hanel、Thurner、arXiv )によると、英国の植民地省では、1935年から1954年にかけて、職員が年平均およそ6%ずつ増え、372人から1661人になりました。その間、管轄する植民地は大きく減少していました。 図1 英国植民地省の職員数 1935年 372人 1954年 1,661人 その間、管轄する植民地は大きく減少。職員は年平均およそ6%の増加。 出典: Klimek, Hanel & Thurner (2008) 仕事が減っているのに、人は増える。パーキンソンが注目したのは、まさにこうした現象でした。 本当に検証されているのか 「ただの笑い話ではないのか」と思う方もいるでしょう。実は、研究者たちが実際に調べています。ここでは3つの調査を、「何を調べたか」と「わかったこと」に分けて紹介します。 ① 実験:作業が減ると、人...

子どもの進学が「善意」頼みでいいのか。あしなが学生募金と物価高から考える

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10月17日から、「第112回あしなが学生募金」が全国で始まりました。同じ日に、 NHKは 「奨学金を受けている高校生の保護者の約2割が、子どもの進学の断念や進学先の変更を検討している」と報じています。 団体のお知らせと報道、この二つを並べて読むと、「困っている子どもがいるから募金しましょう」という話にとどまらない問いが見えてきます。 1.「貧しい家庭の子どもの問題」で片づけない 奨学金を受けているからといって、進学できるとは限らない。今回のニュースが示しているのは、そういう現実です。 あしなが育英会が8月に、奨学金を受けている高校生の保護者に物価高の影響をたずねたところ、約2割が、子どもの進学の断念や進学先の変更を検討していると答えました( NHKの報道 )。物価高による家計への負担が、奨学金を受けている家庭の子どもたちの進学にも影響していることがわかります。 【図1】奨学金を受けている高校生の保護者への調査(2026年8月) 約2割 それ以外の回答 子どもの進学の断念や進学先の変更を検討している それ以外の回答 出典:NHKニュース(2026年10月17日)。割合は「およそ2割」の報道に基づく概数です。 注目したいのは、「奨学金が必要な家庭だから進学できない」という単純な話ではないことです。 奨学金のおかげでなんとか進学の道をつないでいる家庭ですら、物価の上昇でその道が削られている のです。 こうなると、「本人の努力が足りない」「家庭の教育意識が低い」といった説明では、もう追いつきません。 2.問題は「教育費」だけではない 奨学金というと、「学びたい本人の不足分を補ってもらうお金」というイメージがあります。ところが、進学にかかるお金は授業料だけではありません。 【図2】進学にかかるのは、授業料だけではありません 家賃 食費 光熱費 交通費 教材費 制服代 受験費用 大学進学後の生活費 物価が上がれば、学費が変わらなくても、家計に残る「教育に回せる余力」が減ってしまいます。 ですから、「教育費をどうするか」だけでなく、 「教育を選べるだけの...

親を頼れない若者は、なぜ病院に行けないのか 制度はある。足りないのは「つないでくれる人」

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病気やけがで病院に行く必要があるのに、お金がなくて行けない。支援団体につながる若者の中にも、そんな状況に置かれた人がいます。 認定NPO法人D×P(ディーピー)は、LINE相談を利用する13〜25歳の若者445人にアンケートを行いました(2026年8〜9月実施)。報道は NHKニュース でも伝えられています。調査の結果は、 D×Pの公式発表 と 報告書(PDF) で確認できます。 D×Pの調査結果(割合ごとに「分母」が違います) 回答者445人(回答率4.0%) LINE相談の利用者が対象 病気やけがで「受診・治療が必要だった」人のうち、実際には受診・治療をしなかった人 (分母:356人) 52.5% 受診・治療をしなかった人のうち、その理由が「支払いが難しかった」人 (分母:187人・複数回答) 62.0% 身体の病気やけがで受診したいとき、保護者との関係で何らかの障壁を経験した人 (分母:回答者445人・複数回答) 45.8% この調査は、LINE相談の利用者のうち445人が答えたもので、回答率は4.0%です。D×P自身も、若者一般の傾向とは言い切れないとしています。それでも、困窮している若者の実態の一端を示す、重い数字です。 この問題は、単なる「若者の貧困」ではありません。「親を頼れない」ことが、医療費の支払いだけでなく、病院探し、制度の利用、行政への相談、住まいなど、本来なら家族が支えてきた生活上の支えを一度に失わせてしまうところに、核心があります。 なぜ、こんなことが起きるのか ① 日本の社会は、暗黙のうちに「家族を頼れる」前提でできている 20歳の人が病気になったとします。親を頼れる人なら、次のようなことを家族がしてくれます。 医療費を 一時的に立て替える 医療保険の手続きを 手伝う 病院を探す 学校や仕事への連絡を 相談する 親を頼れない人は、これを全部一人でやらなければなりません。虐待やDV、親の病気や依存症、親自身の貧困、家族関係の断絶、親に病気を理解してもらえない。事情はさまざまです。 NPO法人サンカクシャ が、2026年8月に、現在つながっている若者45人を...