投稿

2月, 2008の投稿を表示しています

大学に対する社会の信頼

近時、「公的機関」である大学の根幹を揺るがしかねない様々な不祥事が多発しています。 社会の信頼を失いつつある大学に対する警鐘とも受取れる文章が、2月27日、文部科学省のホームページにアップされました。 その真意は定かではありませんが、大学はこの警鐘を真摯に受け止め、緊張感を持った経営改革に取り組んでいかなければならないと思います。 近年の審査を振り返って (大学設置・学校法人審議会学校法人分科会長コメント) 私立大学審議会を前身とする本分科会は、法令の定めにより私立大学関係者を中心に構成され、経営面を中心に設置審査に当たっている。 言い換えれば、本分科会は、私立大学関係者の「自主性」「自律性」に厚い信頼を置く私立大学制度の一部を成すものであり、申請者の「自律性」を期待し、「自主性」を尊重することを審査の基本方針としている。 一方、我が国の私立大学は、過去十数年の間、著しい環境の変化に晒されてきた。 18歳人口が4割減少し、地方を中心に定員割れに苦しむ大学も少なくない。 バブル経済の崩壊は、出口(就職)を意識した教育内容の不断の見直しを不可避とした。 さらに、大学設置基準の大綱化以降の規制緩和の流れは、私立大学の多様化に大きく道を開いた。 かかる環境変化に直面し、各大学が、経営の安定性に意を払いつつ、建学の精神の下、様々な工夫を凝らし改革を進めていることは、高く評価したい。 しかし、他方で、私立大学制度の前提である「自主性」「自律性」を損ないかねない事態が審査の過程等で明らかになりつつあることを指摘しなければならない。 第一に、継続的な運営のための「安定性」の問題である。 私立大学は、在学生のみならず、卒業生に対しても母校として存続、発展する責務がある。 「安定性」は学校経営の最も基本的な命題であり、学校法人制度もそうした前提で設計されている。 にもかかわらず、近年、新設早々に学生確保に苦しむ経営見通しの甘い大学の例や、校舎の全部借用の結果、借料が経営を大きく圧迫する株式会社立大学の例が多く見られるようになった。 第二に、社会からの「信頼性」の問題である。 教育基本法で規定される通り、学校とは「公の性質」を有するものであり、その設置者たる学校法人には高い「公共性」が求められる。 しかし、昨今、認可申請書の...

生涯学習の振興

「生涯学習」という言葉が世の中で定着して久しいわけですが、このたび中央教育審議会から 「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について-知の循環型社会の構築を目指して-」 (2008年2月19日)と題する答申が出されました。 答申の主旨 については、次のように記載されています。 ■はじめに(抜粋) 平成17年6月、第3期中央教育審議会は、文部科学大臣から「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について」の諮問を受けた。 諮問では、当面、特に審議すべき事項として、 1) 国民一人一人の学習活動を促進するための方策について と、 2) 地域住民等の力を結集した地域づくり、家庭や地域社会における子どもの育ちの環境の改善のための方策について の2つの事項を中心に、制度の在り方を含め、具体的に検討を行うよう求められた。 今回の答申は、審議で示された数多くの意見を基に、現在の我が国の状況について整理し、その上で、目指すべき施策の方向性や施策を推進する際に必要な視点等を明確にし、国民の学習活動の促進や地域社会の教育力向上等のための生涯学習の振興方策について提言をまとめたものである。 本答申を受けて、生涯学習の振興を図る行政(以下、「生涯学習振興行政」という。)・社会教育行政がさらなる発展を遂げ、「生涯学習の理念」の実現に向けた取組が一層推進されるよう期待している。 答申の中で言及された 高等教育関係の記述 は以下のとおりです。  ■履修証明制度等の活用 (P22) 平成19年に改正された学校教育法により、大学等が社会人等を対象とした課程(教育プログラム)を修了した者に対して証明書を交付することができる履修証明制度が導入されており、その活用を図ることが重要である。 ■大学等の高等教育機関と地域の連携 (P27) 各大学や高等専門学校、専修学校が地域における社会貢献としてそれぞれの特色を活かして行う公開講座等の地域振興に貢献する取組を促すことも、地域社会の教育力向上を図る上で効果的である。 その際、各大学等の教育研究の連携を図り、地域において活躍する人材の育成等、大学等の地域貢献機能の強化・拡大等を国又は地方公共団体が支援することも重要となってくる。 行政が積極的に関わって、大学等と社会教育施設、関係団体等のネットワーク...

図書系職員のあり方

大学がその機能を高めていくためには、大学に勤める様々な職種の人々が、それぞれの役割や使命を十分に果たすこと、そして、全体としての最適化が図られることが最も望ましいと思われます。 しかしながら、専門的な事務系の職種については、構成員に占める割合が小さいため、ともすると周囲の理解や、あり方についての検討の熟度が十分ではないような気がします。 前回、大学図書館の現状と課題について考えてみましたが、今回は、大学図書館で働く人材のあるべき姿について考えてみたいと思います。 前東京大学理事の上杉道世氏が、文部科学教育通信という雑誌(No.190/2008.2.25)に寄稿された「図書系職員のあり方の改善について」(全文)をご紹介します。あくまでも東京大学の改革例ではありますが、基本的な考え方としては参考になるものだと思います。 図書系職員をめぐる諸問題 図書系職員は、他の業務分野の職員に比べると、専門家集団の形成や全学的組織化などさまざまな面ですでに一定の専門職の体系が確立されていると言える。 それだけにより具体的な課題が見えてきており、他の専門職種を考える際の参考になる。 また、特定の部門だけ改善を図ろうとしても限界があり、全学の全職種総体での改善が同時に必要であるという状況も見えてくる。 図書系の職員について、どのような課題が言われているであろうか。 古い大学の中の一段と古い建物が図書館であり、古い書物に囲まれて古い机と椅子が並び、書物の貸し出しや整理をしている職員がいる、というイメージは過去のものになりつつある。 今ももちろん書物としての資料も重要ではあるが、電子的なデータやジャーナルの比重が飛躍的に高まっており、サービスもオンラインでの資料提供や情報提供の比重が高まり、図書系というよりも学術情報系という呼称の方がふさわしい状況になってきている。 したがって、その専門性についても多岐にわたっており、図書系の中でもどのような分野のどのような専門性を持った職員を育てていくかということをきめ細かく考慮していかなくてはならない。 同時に、相当規模の職員集団を管理し組織運営をしていくためのマネジメント能力のある職員の養成もしていかなくてはならない。 図書系職員の中には、情報能力や語学能力の高い職員も多く、図書館での仕事のみならず...

大学図書館のいま・これから

「図書館のない大学なんて大学とは言えない」というほど、大学には必ず図書館が設置されています。 あまりにも当たり前のことではありますが、大学図書館の位置づけや存在価値についてご存知の方は意外と少ないようです。(恥ずかしながら実は私自身そのうちの一人です。) 大学図書館の設置根拠は、「大学設置基準」 *1 に示されています。 大学設置基準(抜粋) (校舎等施設) 第36条 大学は、その組織及び規模に応じ、少なくとも次に掲げる施設を備えた校舎を有するものとする。ただし、特別の事情があるときは、この限りでない。 学長室、会議室、事務室 研究室、教室(講義室、演習室、実験・実習室等とする。) 図書館 、医務室、学生自習室、学生控室 ・・・ (図書等の資料及び図書館) 第38条 大学は、学部の種類、規模等に応じ、図書、学術雑誌、視聴覚資料その他の教育研究上必要な資料を、図書館を中心に系統的に備えるものとする。 2 図書館は、前項の資料の収集、整理及び提供を行うほか、情報の処理及び提供のシステムを整備して学術情報の提供に努めるとともに、前項の資料の提供に関し、他の大学の図書館等との協力に努めるものとする。 3 図書館には、その機能を十分に発揮させるために必要な専門的職員その他の専任の職員を置くものとする。 4 図書館には、大学の教育研究を促進できるような適当な規模の閲覧室、レフアレンス・ルーム、整理室、書庫等を備えるものとする。 5 前項の閲覧室には、学生の学習及び教員の教育研究のために十分な数の座席を備えるものとする。 ちなみに、大学図書館の実態はどうなっているのでしょうか。 東京工業大学附属図書館が国内の大学図書館関係のWWWサーバのURL(登録数:666)を収集・掲載しています。 http://www.libra.titech.ac.jp/libraries_Japan.html その大学図書館で、最近ユニークな取り組みが行われています。 筑波大 図書館離れ防止にスターバックス誘致 (2008年2月4日付毎日新聞) 筑波大(つくば市天王台1)付属図書館に3月下旬、米国のコーヒーチェーン大手「スターバックス」が出店する。大学が学生の図書館離れを防ぐために誘致した。 店ができ...

教育振興基本計画

中教審分科会が他部会に「檄文」「大学予算も考慮を」 (2008年2月9日付朝日新聞) 教育基本法の改正を受けて教育振興基本計画作りを進める中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)の特別部会に対し、同審議会の大学分科会が8日、「檄(げき)文」を送った。 中教審内の会議が、別の会議の審議に強い調子で異議を申し立てるのは異例。 小中高校の予算が増えるのに対し大学関係の予算が減らされていることもあり、分科会の議論では毎回、「特別部会の議論は小中高校の教育に偏っている」という意見が出ており、こうした不満が爆発した形だ。 檄文は、大学分科会長の安西祐一郎・慶応義塾長ら特別部会委員も兼ねる4人の連名で出された。 「先進諸国が大学への投資を競い合うように伸ばしている現実を無視するのは、鎖国的発想と言わざるを得ない」などと、強い調子で特別部会の議論を批判。 檄文とともに、25年までに現在の大学への公的支出2.6兆円の倍増が必要などとする提言も送った。 特別部会は、こうした委員間の意見調整や、5年後の教育の姿を示す数値目標をめぐる文科省内の調整が難航。 基本計画の閣議決定は、同省が目標とする07年度内からずれこむ見通しとなった。 特別部会長の三村明夫・新日鉄社長が「年度内は無理」と述べた。 上記報道の詳細については、まだ、文部科学省から議事録や会議資料が公表されていませんのでよくわかりませんが、このたび、文部科学省高等教育局から配信された高等教育政策に関する情報メルマガ(2008年2月15日号)により次のような概要を把握することができます。 教育振興基本計画特別部会(第12回)-答申に向けて重点事項を審議、大学関係4委員が意見書を提出- 去る2月8日に中央教育審議会教育振興基本計画特別部会(部会長:三村明夫・新日鐵代表取締役社長)が開催されました。 特別部会では、 1)答申の構成案(素案) 2)今後10年間を通じて目指すべき教育の姿(素案)(第2章に相当) 3)今後5年間に特に重点的に取り組むべき事項(素案)(第3章(2)に相当) 等について事務局から紹介の上、議論が行われました。 1)では、 第1章 我が国教育の現状と課題-「教育立国」の実現に向けて- 第2章 今後10年間を通じて目指すべき教育の姿 第3章 今後...

高等教育政策の動向

文部科学省高等教育局から配信されている高等教育政策に関する情報メルマガ(2008年2月8日号)のうち主なものをご紹介します。 ■政策動向 平成20年度予算案について(高等教育関係) 質の高い大学教育推進プログラム(予定額86億円)について 本プログラムは、特色GPと現代GPを発展的に統合し、大学、短大、高専の教育の質向上に向けた様々な取組を積極的に支援しようとするものです。 募集は、大学等がそれぞれの人材養成目的に沿った確実な計画のもとに大学等の教育の質向上を図ろうとする取組を対象としており、例えば、従来現代GPに申請できたような個別の政策課題に対応した取組についても、申請を受け付けられるようにしたいと考えております。 また、本プログラムを通じて、各大学等の人材養成目的の明確化やFDの実施義務化といった大学設置基準等の制度改正(平成20年4月施行)への積極的な対応とともに、アドミッション、カリキュラム、ディプロマの3つのポリシーの明確化など教育の質向上への取組強化を促進したいと考えています。 そのため、各大学等の制度改正等への対応について申請書に記載していただく方向で検討を進めています。各大学等におかれては、申請される教育プロジェクトの検討とともに、これらの制度改正への積極的な対応を進めていただくことが期待されます。 申請や審査に係る事項、スケジュール等については、今後、有識者・専門家等で構成される実施委員会を組織し検討を進めたいと考えております。 内容について固まり次第お知らせしていく予定ですので、各大学等におかれては、意欲的な取組への御検討をお願いしたいと思います。 戦略的大学連携支援事業(予定額30億円)について 本事業では、国公私立の複数の大学、短期大学、高等専門学校による「戦略的な連携」を積極的に進めることにより、 教養教育や専門教育の共同実施、教育力向上に向けた取組の強化 教育研究環境の充実のための教育・研究設備の共同利用化 教育研究資源の結集による産学連携活動や生涯学習機能の強化 事務局機能の共有化・効率化 先進的な教育プログラムの開発による教育研究の高度化などをはじめとする、組織的連携によるメリットを最大限に活かした様々な取組 を支援することを目的としています。 これまでの国公私...

産学連携

ここ数年、大学が力を入れていることの一つに「産学連携」があります。 大学が自らの財政基盤の強化を求め、民間企業が大学の知的資源の活用を求め、相互がWin-Winの関係で利益を享受することができるよい仕組みではないかと思います。 今日は、産学連携に関する最近の動きをいくつかまとめてご紹介します。 「政府」の動き 文科省、産学官連携戦略展開事業の公募要項を公表 (2008年2月8日付IP NEXTニュース) 文部科学省はこのほど、ポスト知財本部事業にあたる「産学官連携戦略展開事業(戦略展開プログラム)」の公募要項を公表した。 全国の国公私立大学、大学共同利用機関法人、国公私立高等専門学校を対象に公募する。 助成事業は以下の3種類。 「国際的な産学官連携活動の推進」。約15件を選び、単年度あたり5000万円から1億円程度を支援。事業期間は原則5年間 。 「特色ある優れた産学官連携活動の推進」。約15件を選び、単年度あたり3000万円から5000万円を支援。事業期間は原則5年間 。 「知的財産活動基盤の強化」。約10件を選び、単年度あたり1000万円から2000万円を支援。事業期間は2~3年間 。 (参考) 「産学官連携戦略展開事業(戦略展開プログラム)」の公募について(文部科学省) 「大学」の動き 東大、国際・産学共同研究センターを来月末に廃止 (2008年2月6日付日刊工業新聞)  東京大学は国立大学の地域共同研究センターの一つである「国際・産学共同研究センター(CCR)」を3月31日付で廃止する。 自治体から研修生を受け入れる産学連携人材育成と研究者データベース(DB)は、全学事業にあたるため産学連携本部へ移管し、個別の研究プロジェクトは小規模の新組織で引き継ぎ、それぞれ機能強化する。 学部・研究科・研究所・センターなどの部局は大学自治の象徴でもあり、廃止は異例。大学改革でネックとなる“学内組織の壁”を壊す取り組み ともいえそうだ。 国立大学の旧来の産学連携は、工学部系の地域共同研究センターが手がけていた。東大のCCRは96年度に設立。 しかし04年度の国立大学法人化に合わせ、03年度に法人の発明・特許を管理する知的財産本部(東大の名称は産学連携本部)が発足。役割が重複し非効率になっていた...

危機意識の不在

研究費不正、パワハラ、アカハラ、セクハラ、挙句の果てには、わいせつといった大学の不祥事に関するニュースが毎日のように飛び交う情けない時代になってしまいました。 最高学府でなぜこのようなことが頻繁に起こるのか。一言では言えない様々な要因が背景にはあるのでしょうが、これだけ事件や不祥事が頻発するということは尋常ではありませんし、「大学というところは、社会の常識やモラルと相当にかけ離れた閉ざされた世界なのですね」と揶揄されても仕方ありませんね。 最近の記事を例に少し考えて見ましょう。なお、ここでご紹介する事例は、特定の大学を批判するためのものではありません。多くの大学に通じる事例としてご紹介しようと思っていますので誤解のないようにお願いいたします。 パワハラで○○大教授戒告 休日出勤を強要 (2008年2月7日付産経新聞) ○○大(○○市)は7日、休暇中の教員に「業務命令だ」と言って強引に出勤させるなどのパワーハラスメントや学生に対するセクハラ(性的嫌がらせ)をしたとして、工学部の60代の男性教授を戒告処分にした。 同大によると、教授は同じ学科の教員らに対し自分の意に沿わないことがあると「業務命令だ」「辞めろ」などと言って無理な命令をするパワハラを繰り返した。教員を叱咤(しった)する際、頭をたたいたこともあった。 また講義中に性的発言をして学生に不快感を与えたり、侮辱的な言葉で学生をしかったりしていた。 昨年4月、教員らから苦情があり大学側が調査していた。 ○○学長は「教授の行為は教育を行う立場にある者としてあるまじき行為で、品位を欠く。指導監督を強化するなど再発防止に取り組みたい」とのコメントを出した。 パワハラ:○○大が60代教授を戒告 教員、学生から苦情 (2008年2月8日付毎日新聞) ○○大は7日、工学部の60代の男性教授が部下の教員をたたき、学生を立たせて歌わせるなどのハラスメント(嫌がらせ)行為をしたとして、戒告処分にしたと発表した。 大学によると教授は昨年3月、男性教員の頭を平手でたたいたほか、複数の教職員に「辞めろ」などと口頭やメールで伝えるパワハラ行為を繰り返した。 また、06年7月10日には学生約60人がいる教室で答案返却時に学生に卑わいな言葉を言い、成績が悪かった学生は立たせ、歌を歌うことを強要。...

国民の資産は有効に活用されているか

大学、資産運用を積極化・日経調査 (2008年1月31日付日本経済新聞) 大学が資産運用に力を入れている。 日本経済新聞社が全国の大学を対象に実施した資産運用調査によると、回答した私立大学の30%がデリバティブ(金融派生商品)を用いた仕組み債の買い増しを検討。 国公立大学では地方債や政府保証債に資金を振り向ける動きが強まっている。 少子化で経営財源の確保が求められ、運用の重要性が高まっていることが背景にある。 回答した176校の私大のうち、現預金や国債以外の「リスク性資産」に投資している大学は65%にのぼった。外債投資が中心だが、株式運用の経験があるところも24%あった。 ◇ 上記の記事は、狭義の資産、つまりは「資金」の運用に関するものですが、確かに私立大学はもとより、法人化された国立大学においても、最近は、余裕資金を短期の定期預金で細かくつないでみたり、国債を購入したりと、大きなリスクを抱え込むことを禁じた法人制度の枠組みの範囲内で、少しでも財政基盤の強化につなげようとする試みが積極的に行われているようです。 今日は、国立大学法人が保有している不動産などの資産の活用について考えてみたいと思います。 国立大学法人の資産とは 現在、政府は、国の資産圧縮を進めており、いわゆる「骨太方針2006」では、「約700兆円ある国の資産を2015年度までに約140兆円に圧縮する」方針を決めています。 その方針の下、昨年5月初旬に開催された経済財政諮問会議では、国の資産だけでは不十分ということなのか、民間議員から「国立大学法人が全国に保有している土地などの資産は有効活用されていない」との指摘がなされ、「国立大学法人が抱える資産についても売却や有効活用などを進めるべき」という提案が出されました。 現在、各国立大学法人が保有している土地、建物、工作物などの膨大な資産 *1 は、全て法人化の際、国から各国立大学に譲渡されたものです。しかも「タダ」で。あまり知られていないことですが、国民の貴重な資産である国有財産が、平成16年4月1日を機にいとも簡単に各国立大学法人に無償で引き渡されていたのです。 国から各大学への承継に当たっては、資産の適正な評価額を設定するために、不動産鑑定士や公認会計士といった専門家に資産評価をお願いし高額な手当てが...

自分のこととして考える

今日は大変気持ちのいい日記が書けます。 最近、友人宅で、ある小学校の学校新聞を目にする機会がありました。その中には、小学1年生の書いた日記と、日記を読んだ先生の感想が書かれてありました。 私がいろいろと講釈を述べる前に、まずは読んでいただいた方がいいと思います。 原文(抜粋)のままご紹介します。皆さんはどうお感じになりますか。 ◇ 先日、2人の子が同じ日に同じ内容の日記を書いていました。下校途中のバスでの出来事でした。 【Aさん】 きょう、バスの中でかなしいことがありました。 それは、小学校のおにいちゃんがバスの中で、ていきいれをなげあいっこしたり、ゆかにふざけてなのかわからないけど、ねっころがっていました。 わたしはとてもかなしいです。 だって、バスのうんてんしゅさんも、しんぱいになるから、わたしはやめてもらいたいです。 【Bさん】 今日は、かえりのバスできけんなことがありました。 それは小学校のおとこの子がバスの中で、ていきをつかってあそんでいました。 どんなあそびかというと、ていきいれをなげていたり、ふりまわしてあそんでいました。 でも、わたしがとめられなかったのもありました。 これからは、わるいことをしているおともだちがいたら、とめてあげたいです。 Aさんも、Bさんも同じバスに乗っていて、同じ出来事を見て感じたことを書いていたのです。 バスのの中でふざけることが悪いということは、誰もがわかっていることです。 しかし、その場の雰囲気に流されてしまい、周りの人のことが見えなくなってしまったのが、この日記に登場した「お兄ちゃん」でした。 人間は弱い存在ですから、楽な方や楽しい方に流されがちです。だからこそ、社会で守るべきルールやマナーを決めているのだと思います。 しかし、この日記を書いた2人は、バスの中でのルールやマナーだから守るのではなく、それらの意味をしっかり理解しています。そして 「自らに引き寄せて考えている」 のです。 その証拠にAさんは「わたしはとてもかなしいです。」と表現し、Bさんは、「わたしがとめられなかったのもありました。」と書いています。 「バスの中でふざけている人がいる。でも、私は静かに座っているからいい」と考えても何ら問題はないように思います。どちらかと言えばそう考える方...

国立大学法人の評価

国立大学法人の業務実績の評価は、主務官庁である文部科学省に置かれた「国立大学法人評価委員会」による評価だけでは終わらないことをご存知でしょうか。 国立大学法人の評価については、教育・研究・診療という業務の特殊性に鑑み、一義的には「国立大学法人評価委員会」が評価を行うことになっているのですが、国立大学法人といえども、「独立行政法人通則法」を準用した法律(国立大学法人法)により設置されている独立行政法人には違いはありませんので、「国立大学法人評価委員会」が行った評価を、さらに「総務省に置かれた政策評価・独立行政法人評価委員会」が2次評価 *1 するしくみになっているのです。 いわゆる「お仲間達」が行った評価を第三者的に総務省が検証しようということなのかもしれませんが、各府省が所管する旧特殊法人である独立行政法人などは、この総務省の評価によって、毎年、組織の存続を含めた厳しい見直しを迫られているという実は恐るべき評価なのです。 このたび(1月31日)、この総務省による平成18年度の国立大学法人の業務実績に関する評価結果が公表されました。 この機会に、国立大学が法人化された平成16年度以降の評価結果も含めてご紹介します。 平成18年度 平成18年度における国立大学法人の業務の実績に関する国立大学法人評価委員会の評価の結果(以下「評価結果」という。)については、以下のとおり改善すべき点がみられた。 各国立大学法人の中期目標の前文には、各国立大学の理念等である基本的な目標が記載されている。貴委員会は、各大学の基本的な目標の達成に向けた取組状況の評価に取り組んでいるが、その評価結果の説明には法人ごとに差異があり、大学の基本的な目標との関係においてどのような評価が行われたのか分かりにくいものもみられる。今後の評価に当たっては、各国立大学法人の基本的な目標の達成に向けた取組状況について、引き続き積極的に評価を行うとともに、評価の結果を分かりやすく説明するよう工夫すべきである。 貴委員会は、本年度評価より、研究費の不正使用の防止のための体制・ルール等の整備状況についての評価を行っているが、その後も一部の国立大学法人において公的研究費の不正使用が発覚している例があることなどを踏まえ、公的研究費の不正使用の防止のための取組状況について、引き続き評価を行うべき...

教育再生会議最終報告

イメージ
政府の教育再生会議(野依良治座長)は1月31日、首相官邸で最後の総会を開き、最終報告を福田康夫首相に提出しました。 同会議は、これまで3次にわたる報告をまとめてきましたが、今回がその最終であり、文部科学省など関係省庁に対し「実施計画を作成し提言内容を着実に実行することが必要」と指摘し、「国、地方公共団体、学校等の実施状況を評価し、実効性を担保する新たな会議を内閣に設けることが極めて重要」と提案しました。 [右写真:首相官邸ホームページから引用] 報道では、主に初等中等教育関係の事項が取り上げられていましたので、ここでは、前回 *1 同様、高等教育関係の該当部分(抜粋・要約)をご紹介します。  「社会総がかりで教育再生を」(最終報告)-教育再生の実効性の担保のために- はじめに 教育再生会議は、我が国の教育の在り方を根本から見直す作業を進め、これまで第1次報告から第3次報告まで3つの提言をとりまとめてきた。 教育再生の原点は、保護者はもとより、国民、社会全体から信頼され、期待される教育の実現。教育再生会議の委員は、それぞれの立場から、現在の日本の教育をどのように再生させるべきか議論してきた。その議論の結晶が第1次から第3次までの報告。 国民の皆様も、国や地方の行政の方々も、校長・教員はじめ学校関係者も大学関係者、保護者や地域の方々も、これらの報告をしっかり受け止めて頂き、国民一人ひとりがあらゆる場を通じて、教育再生に参画することをお願いしたい。 これまで「臨時教育審議会」、「教育改革国民会議」を通じ、日本の教育制度の根幹に関る改革が提言されてきたが、残念ながら、それらの提言は十分教育現場に反映されているとは言い難い状況。 こうした状況を踏まえ、教育再生会議では、最終報告にあたり第1次報告から第3次報告までの提言の実効性の担保を重視。 「生活者重視」、すなわち教育の受益者である全ての子供や若者たち、保護者の立場に立った教育再生、自立して生きる力と、共に生きる心をもった人材を育成する教育再生が着実に推進されることを強く期待。 教育は国家百年の大計。知・徳・体のバランスのとれた教育環境が整備され、健やかな子供が育まれることは国民の願い。 特に、最近の社会状況に鑑み、学校教育における徳育の充実が不可欠。 さらに...