2008年2月17日日曜日

高等教育政策の動向

文部科学省高等教育局から配信されている高等教育政策に関する情報メルマガ(2008年2月8日号)のうち主なものをご紹介します。

■政策動向

平成20年度予算案について(高等教育関係)

質の高い大学教育推進プログラム(予定額86億円)について

本プログラムは、特色GPと現代GPを発展的に統合し、大学、短大、高専の教育の質向上に向けた様々な取組を積極的に支援しようとするものです。

募集は、大学等がそれぞれの人材養成目的に沿った確実な計画のもとに大学等の教育の質向上を図ろうとする取組を対象としており、例えば、従来現代GPに申請できたような個別の政策課題に対応した取組についても、申請を受け付けられるようにしたいと考えております。

また、本プログラムを通じて、各大学等の人材養成目的の明確化やFDの実施義務化といった大学設置基準等の制度改正(平成20年4月施行)への積極的な対応とともに、アドミッション、カリキュラム、ディプロマの3つのポリシーの明確化など教育の質向上への取組強化を促進したいと考えています。

そのため、各大学等の制度改正等への対応について申請書に記載していただく方向で検討を進めています。各大学等におかれては、申請される教育プロジェクトの検討とともに、これらの制度改正への積極的な対応を進めていただくことが期待されます。

申請や審査に係る事項、スケジュール等については、今後、有識者・専門家等で構成される実施委員会を組織し検討を進めたいと考えております。
内容について固まり次第お知らせしていく予定ですので、各大学等におかれては、意欲的な取組への御検討をお願いしたいと思います。


戦略的大学連携支援事業(予定額30億円)について

本事業では、国公私立の複数の大学、短期大学、高等専門学校による「戦略的な連携」を積極的に進めることにより、
  1. 教養教育や専門教育の共同実施、教育力向上に向けた取組の強化

  2. 教育研究環境の充実のための教育・研究設備の共同利用化

  3. 教育研究資源の結集による産学連携活動や生涯学習機能の強化

  4. 事務局機能の共有化・効率化

  5. 先進的な教育プログラムの開発による教育研究の高度化などをはじめとする、組織的連携によるメリットを最大限に活かした様々な取組
を支援することを目的としています。

これまでの国公私立を通じた各支援プログラムとは異なり、連携する大学等間の将来目標や連携効果等を盛り込んだ「大学間連携戦略」を策定し、申請書と併せて提出していただきます。

事業期間は最長3年間としていますが、「大学間連携戦略」については、その事業目的を明確にするため、事業期間内にとどまらない、概ね10年程度を見通した将来目標や大学等の目指すべき方向性等について具体的に記載していただく予定としています。

申請件数や事業規模など、申請に当たっての必要条件については鋭意検討しているところですが、まずは連携を予定される大学等間で「大学間連携戦略」についてご検討いただくとともに、これまでの連携実績との違い、つまり新規性や発展性についても併せて整理・検討いただくことが必要であると考えています。


教育再生会議について(最終報告)

教育再生会議は1月31日に、首相官邸で最後の総会を開き、教育再生に向けた最終報告を福田首相に提出しました。

最終報告では、新たな提言は追加せず、第1次~第3次報告で盛り込まれた提言を総括したものとなっています。また、これらの提言について、文部科学省など関係省庁や地方自治体、教育委員会に対し、実施計画を作って着実に実行するよう求めています。さらに、これらの実施状況を評価、実効性を担保するための新たな会議を内閣に設けることを政府に求めています。

平成18年10月に安倍首相の肝いりで発足した同会議は、これで役割を終え解散しますが、提言を受けて政府は、フォローアップのための新たな会議を内閣に設置する予定です。

【教育再生会議ホームページ】
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouiku/houkoku/honbun0131.pdf


中央教育審議会大学分科会(第66回)について

去る1月30日に中央教育審議会大学分科会(分科会長:安西祐一郎・慶應義塾大学塾長)が開催され、1)平成20年度予算案及びOECD非公式教育大臣会合、2)グローバル化プラン(仮称)、3)今後の大学分科会の審議について議論が行われました。
  1. 平成20年度予算案及びOECD非公式教育大臣会合については、事務局から説明があった後、意見交換が行われました。分科会長から、OECDにおいて今後国際的なフィージビリティスタディが始まるが、大学分科会の意見を参考にしつつ日本政府として適切に関与していくことを望む旨ご発言がありました。委員からは、予算について、欧米並の公財政支出を目指してほしいと発言がありました。また、教育振興基本計画について、初等中等教育偏向でなく高等教育に重点をあてるべきということや、公財政支出を含めて計画を立てるべきという意見が出されました。

  2. グローバル化プラン(仮称)について事務局から説明があった後、意見交換が行われました。委員からは、専門学校に在籍する留学生にも注目してほしいこと、日本の質の高い教育や研究を海外に輸出すべきこと、グローバル化についてもっと内容を熟慮すべきという意見が出されました。
今後の大学分科会の審議について意見交換が行われ、概ね以下の趣旨が了承されました。
  1. 現在審議中の諸課題に関しては適当な時期(学士課程教育の在り方については本年3月を目途に制度・教育部会で審議まとめを行い、夏前を目途に答申、高等専門学校の在り方については、夏前を目途に答申等)に成案をまとめることが重要。

  2. 大学教育の質保証に関しては、今後、認可・基準、評価などを一体的に議論していくことが重要。

  3. 日本学術会議との連携については、各分野で具体的に教育の質保証の在り方を考えていく上で、重要な取組であり、準備を進めることが適当。

  4. 大学分科会の審議体制の見直しや教育振興基本計画への具体的な対応については、分科会長へ一任。
なお、上記「3」と関連して、去る1月30日の東京新聞(1面)及び2月6日の産経新聞(24面)で「大学教育内容に指針 学術会議に審議59年ぶり依頼へ」との報道がされましたが、現時点では、日本学術会議との連携の枠組みについて検討中の段階です。文部科学省としては、今後、大学分科会の意見を踏まえ、日本学術会議との協議を行い、必要な連携を図っていきたいと考えています。


大学等における履修証明制度の施行について

これまでも随時情報提供をしてまいりましたが、昨年の学校教育法の改正により、大学、大学院、短期大学、高等専門学校、専門学校(以下「大学等」という。)における「履修証明制度」が創設され、12月26日より施行されました。1月23日付けで各大学等に対し施行通知を発出したところですが、制度の内容について改めてお知らせします。

大学等においては、これまでも科目等履修生制度や公開講座等を活用して、その教育研究成果を社会へ提供する取組が行われてきたところですが、より積極的な社会貢献を促進するため、学生を対象とする学位プログラムの他に、社会人等の学生以外の者を対象とした一定のまとまりのある学習プログラム(履修証明プログラム)を開設し、その修了者に対して法に基づく履修証明書を交付できることとしました(法第105条等)。

制度の詳細は学校教育法施行規則(第164条等)や施行通知をご覧頂きたいと存じますが、主な内容としては、
  • 履修証明プログラムは、社会人向けに開設する講習等を組み合わせることにより、体系的に編成すること

  • 履修証明プログラムの総時間数は、120時間以上とすること

  • 履修証明プログラムの名称、目的、内容、履修資格、修了要件などをあらかじめ公表すること

  • 履修証明制度を実施するために必要な体制を整備すること
などが挙げられます。

文部科学省としては、各大学等においてこの制度を活用した取組が積極的に展開されることを期待しており、今年度から実施している「社会人の学び直しニーズ対応教育推進プログラム」の拡充(平成20年度予定額20億円)を図ること等により、様々な分野の学習機会が積極的に提供されるよう予算面でも支援していきます。http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/shakaijin.htm

また、履修証明プログラムを各種資格の取得と結び付けるなど、目的・内容に応じて職能団体や地方公共団体、企業等と連携した取組も期待しており、この制度に基づく履修証明書を、教育機関等における学習成果を職業キャリア形成に活かす観点から政府全体で検討・推進している「ジョブ・カード制度」においても、「職業能力証明書(ジョブ・カード・コア)」として位置付けています。http://www.kantei.go.jp/jp/singi/seichou2/job/saisyu/siryou.html

関係資料を来週中に文部科学省のホームページに掲載する予定ですので、制度の内容をご理解頂き、積極的な活用をお願いします。
http://www.mext.go.jp/a_menu/01_d.htm


■国会の動き

留学生政策に関する国会審議について

去る平成20年1月28日 (月)の衆議院予算委員会において、遠藤利明議員から留学生政策に関する質問があり、福田内閣総理大臣が答弁しておりますので、その質疑の概要をご紹介します。

【問】遠藤利明氏(自由民主党)

アジア外交と教育に関し、総理は施政方針演説の中で「留学生30万人計画」を提唱された。ご父君の赳夫元総理も留学生の増加には積極的に取り組んでおられたと聞いているが、留学生の増加に向けた総理の見解如何。

【答弁】福田内閣総理大臣

我が国は、大きな方針として、「開かれた国」を掲げています。現在、経済の面においても、海外に対する依存、海外との経済的な交流が年々増えています。特にアジアとは増えています。それは何故か、アジアの経済が順調に伸びているからです。そして日本は、非常に大きなスピードで伸びている国と交流を深めあって経済を活性化するためにも、人的な交流も深めていく必要があると思います。

もちろんアジアのみならず、世界を相手にすべきです。そういう観点からすると、我が国の留学生数は、他の国より少ないと思います。現在、我が国にいる留学生は12万人で、この数は、以前に比べるとかなり増えたと言われていますが、欧米と比べると遙かに少ない割合です。そういう意味でも、我が国は果たして開かれているのか、と批判を受けかねません。将来をにらんだ上で、このような面での国際化を進めていく必要があります。

我が国は、学生数が今後減少することから、日本の大学には、学生を受け入れるキャパシティがあるでしょう。しかし受け入れるために、我々はそれなりの覚悟が必要です。そして海外から訪日した人は暖かく迎えるべきですし、日本語が不自由で困るということでは望ましくありません。語学の面でも格段の改善をしていく必要があります。

(参考)
第169回国会 福田内閣総理大臣施政方針演説 抜粋(平成20年1月18日)
『新たに日本への「留学生30万人計画」を策定し、実施に移すとともに、産学官連携による海外の優秀な人材の大学院・企業への受入れの拡大を進めます。』