2008年2月4日月曜日

国立大学法人の評価

国立大学法人の業務実績の評価は、主務官庁である文部科学省に置かれた「国立大学法人評価委員会」による評価だけでは終わらないことをご存知でしょうか。

国立大学法人の評価については、教育・研究・診療という業務の特殊性に鑑み、一義的には「国立大学法人評価委員会」が評価を行うことになっているのですが、国立大学法人といえども、「独立行政法人通則法」を準用した法律(国立大学法人法)により設置されている独立行政法人には違いはありませんので、「国立大学法人評価委員会」が行った評価を、さらに「総務省に置かれた政策評価・独立行政法人評価委員会」が2次評価*1するしくみになっているのです。

いわゆる「お仲間達」が行った評価を第三者的に総務省が検証しようということなのかもしれませんが、各府省が所管する旧特殊法人である独立行政法人などは、この総務省の評価によって、毎年、組織の存続を含めた厳しい見直しを迫られているという実は恐るべき評価なのです。

このたび(1月31日)、この総務省による平成18年度の国立大学法人の業務実績に関する評価結果が公表されました。
この機会に、国立大学が法人化された平成16年度以降の評価結果も含めてご紹介します。


平成18年度

平成18年度における国立大学法人の業務の実績に関する国立大学法人評価委員会の評価の結果(以下「評価結果」という。)については、以下のとおり改善すべき点がみられた。
  • 各国立大学法人の中期目標の前文には、各国立大学の理念等である基本的な目標が記載されている。貴委員会は、各大学の基本的な目標の達成に向けた取組状況の評価に取り組んでいるが、その評価結果の説明には法人ごとに差異があり、大学の基本的な目標との関係においてどのような評価が行われたのか分かりにくいものもみられる。今後の評価に当たっては、各国立大学法人の基本的な目標の達成に向けた取組状況について、引き続き積極的に評価を行うとともに、評価の結果を分かりやすく説明するよう工夫すべきである。

  • 貴委員会は、本年度評価より、研究費の不正使用の防止のための体制・ルール等の整備状況についての評価を行っているが、その後も一部の国立大学法人において公的研究費の不正使用が発覚している例があることなどを踏まえ、公的研究費の不正使用の防止のための取組状況について、引き続き評価を行うべきである。

  • 随意契約の適正化の一層の推進について、政府全体で取り組んでいることにかんがみ、一般競争入札の範囲の拡大、契約の見直し、契約に係る情報公開等についての取組状況について、引き続き評価を行うべきである。

  • 国立大学法人会計基準の実務上のガイドラインに当たる「「国立大学法人会計基準」及び「国立大学法人会計基準注解」に関する実務指針」の改定により、財務諸表において開示すべき国立大学附属病院(以下「附属病院」という。)のセグメント情報については、平成18年度から物件費について診療経費と一定の教育研究経費とが区分され、更に19年度からは教員人件費についても各教員の勤務実態に応じて附属病院と医(歯)学部との切り分けが行われることを踏まえ、今後の評価に当たっては、従来にも増して、一般診療部門における経営の効率化の進展状況、経営努力が十分に行われているかといった点に着目した評価を行うべきである。

  • 各附属病院において、国立大学病院管理会計システム(HOMAS)又はこれに類する会計システム(以下「HOMAS等」という。)が導入されたことにより、従前に比べて附属病院の経営に係る分析手法及びHOMAS等により得られる各種統計データが整備されつつある。こうしたことを踏まえ、今後の評価に当たっては、附属病院を置く各国立大学法人が、例えば、HOMAS等により得られたデータを基に他の附属病院との比較検討による経営分析を行うなど、各種統計データ等を活用して附属病院経営の効率化に向けて取り組んでいるかといった点に着目した評価を行うべきである。

平成17年度

以下の点を踏まえつつ、国立大学法人評価委員会の評価結果が活用され、中期計画等に基づく業務の質の向上及び効率化が、引き続き効果的に推進されるよう図っていく必要がある。
  • 学長等による経営方針の明確化等の取組については、経営体制の効果的運用に関して注目される取組として評価した法人の取組も含め、各法人の実態や当該経営方針等の性格に留意しつつ、当該取組の進捗ちょく、機能発揮や見直しの状況等について継続的に評価を行うべきである。

  • 法人の実施している戦略的な資源配分の成果の事後チェック及び配分の見直しに関し、今後、法人の実施体制等の整備状況とその機能の発揮状況について継続的に把握し評価を行うべきである。

  • 経営協議会については、会議運営規則、議事要旨(議事録)及び法人運営に活用された指摘事項の具体例に関する資料を基に、必要に応じてヒアリングでの追加確認を行いつつ、その運営の合規性と活性化の状況、指摘事項の法人運営への活用について評価を行っている。法人運営における経営協議会の重要性を踏まえ、継続的にこのような評価を行うべきである。

  • 財務情報の活用については、各法人の財政規模、収支構造に着目して分類し、主要な財務指標について法人間比較と法人ごとの経年比較を行っている。また、法人ごとの経年比較結果については、財務内容の改善に関する取組等の評価の客観的裏付けとして活用しているところであり、今後、引き続きその充実を図るべきである。なお、昨年当委員会が指摘した各附属病院間における比較を可能とするための費用に関する情報の適切な把握については、会計基準等の改訂により対応がなされているが、今後、比較可能性をより高めるため、収益、資産等に関する情報についても適切に把握・分析した上で評価を行うべきである。

  • 法人運営に影響を及ぼすおそれのある各種事項に対する危機管理について、全学的・総合的な対応体制の整備状況について評価しているが、今後、引き続き予防的観点にも着目した危機管理についての評価を行うべきである。

  • 「行政改革の重要方針」(平成17 年12月24日閣議決定)の総人件費改革の実行計画を踏まえ、各法人は中期目標に人件費削減の取組を記載するとともに中期計画に削減目標を設定している。国立大学法人評価委員会は、平成17年度の評価結果において、各法人に対し、今後、中期目標・中期計画の達成に向け、着実に人件費削減の取組を行うよう促しており、平成18年度以降は、その取組の進捗ちょく状況について評価を行うべきである。

  • 公的研究費の不正使用等の防止のため、総合科学技術会議が示した「公的研究費の不正使用等の防止に関する取組について(共通的な指針)」(平成18年8月31日)等に沿った、体制整備、ルールの整備・明確化等の取組状況についての評価を行うべきである。

  • 随意契約により実施している業務については、国における取組(「公共調達の適正化について」(平成18年8月25日付け財計第2017号。財務大臣から各省各庁の長あて。))等を踏まえ、各法人における一般競争入札の範囲の拡大、契約の見直し、契約に係る情報公開等についての取組状況等についての評価を行うべきである。

平成16年度

以下の点を踏まえつつ、国立大学法人評価委員会の評価結果が活用され、中期計画等に基づく業務の質の向上及び効率化が、引き続き効果的に推進されるよう図っていく必要がある。
  • 学長のリーダーシップを発揮させるための各法人における運営体制の整備や、学長裁量の経費・人員枠の確保等の状況について把握し評価しているところであるが、今後は、これらの体制や仕組みが法人運営においてどのように機能を発揮しているかという観点からも各法人の状況を把握し評価を行うべきである。

  • 業務運営や財務内容の改善について評価を行う際には、財務諸表等の分析結果を積極的に活用するとともに、経常損益・当期損益の主な内容・要因や経費節減に係る財務上の改善状況等について把握・分析した上で評価を行うべきである。また、今後は、これらを含めた重要な財務情報等についての経年比較を行った上で評価を行うべきである。

  • 国立大学法人の運営において財務上大きな比重を占める附属病院の財務状況については、病院における教育研究診療が一体的に行われている実態にも留意しつつ、業務費用の主要な内訳を把握することが求められること、また、現状では、費用計上の内容も法人間で異なっており、各附属病院間における比較が可能となるよう費用に関する情報を適切に把握することが求められることから、これらの情報を把握・分析した上で評価を行うべきである。

  • 「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005」(平成17年6月21日閣議決定)において、公的部門全体の人件費を抑制することとし、こうした取組を通じ、法人に対する運営費交付金等を見直すこととされ、現在、各方面で議論が行われているが、今後の議論の動向も踏まえて、必要な評価を行うべきである。

この総務省が行う評価、実は残念ながら、国立大学法人評価委員会への対応で精一杯の大学現場の教職員の方々は、あまりご存じないようです。
今年は、平成19年度の年度評価とともに、第1期中期目標期間の評価も合わせて実施されます。
総務省の評価委員会が、国立大学法人評価委員会に指摘したことは、必ず次年度の評価に反映されます。
身内が行った評価結果ばかりを気にするのではなく、ある種の外部評価である「総務省の指摘」にも十分配慮した準備を行わなければなりませんね。


*1:総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会が、評価の厳格性や信頼性を確保するため、各府省の評価委員会が実施した評価(1次評価)の結果について、横断的に評価(2次評価)するもの:http://www.soumu.go.jp/hyouka/dokuritu_n/hyoukaiken.html