批判の陰で、まちが動き始めている
武雄アジア大学(TAU)をめぐっては、入学者数の少なさや財政面の課題について、厳しい声が寄せられています。運営法人・旭学園が7月3日に公表した令和7年度決算では、定員140人に対し入学者数は37人、充足率26.4%という結果でした。こうした数字への懸念は、事実に基づくものであり、大学側も真摯に向き合っていく必要があるでしょう。
一方で、まちの中では、報道を通じて少しずつ「期待」の芽も見え始めています。今回はその一部をご紹介します。
教室に集まった137人の「学生」
4月15日、開学したばかりのTAUの教室で、60歳以上の市民を対象とした「武雄市民大学」の講義が始まりました。これまでは公民館のホールで行われていた講義が、今年度から大学の教室に会場を移し、市内外から講師を招いて来年1月まで全10回のプログラムが予定されています。
参加したのは60代から80代までの男女137人。講義に先立ち、小長谷有紀学長は「いくつになっても学ぶことは素晴らしい。地元にできた大学を大いに活用してほしい」と歓迎の言葉を述べました。派手なニュースにはなりにくい光景ですが、大学が若者だけでなく、高齢の世代にとっても「学びの場」として動き始めていることがうかがえます。
学生たちの、等身大の声
1期生自身の声も届き始めています。5月には、地元・御船が丘小学校の6年生約100人を対象に、1期生が特別授業を行いました。担当した重松大貴さんは「いろいろな縁があってこの大学に入学した。学びたいことを学べるので、大学で学ぶのは楽しい」と話しています。授業を受けた児童からも「開放感があって集中できそうな場所」「自分も大学に入れるように勉強を頑張りたい」といった感想が上がりました。
入学者数の少なさが繰り返し報じられる中でも、キャンパスの中では、学生一人ひとりが自分なりの理由でこの大学を選び、日々を過ごしています。
まちと大学、少しずつのすり合わせ
7月4日には、大学の運営や地域連携について話し合う「地域連携協議会」が、開学後初めて開かれました。この場で大学側は、自治体や高校との連携協定の締結、住民向け「出前講座」の実施、武雄高校への職員派遣といった取り組みの進捗を報告しています。
出席した地元委員からは、「武雄には伝統芸能が多く残るが担い手不足が深刻。学生にはぜひ地域に出て祭りに関わってもらいたい」といった声や、学生の生の声を聞く機会を求める意見も出されました。同じ日には、熊本地震からの復興を指揮した蒲島郁夫・前熊本県知事を招いた開学記念講演会も開かれています。
こうしたつながりは、教室の外でも生まれています。7月には、地元の婦人会が学生に向けて手作り料理の「炊き出し」を行い、その夜には男子学生が地域の伝統行事に運営側として参加しました。婦人会の山口七重会長(76)は「武雄の味を知って元気に学生生活を送ってほしい。後輩たちにも大学の魅力を伝えてもらい、来年はもっと多くの学生が集まるといい」と話しています。
こうした一つひとつの積み重ねが、大学とまちの関係を少しずつ形づくり始めています。
数字だけでは見えないもの
小松政市長は、大学誘致の当事者として、入学者数の少なさについて「誘致した私にも責任がある」と、責任を引き受ける姿勢を示しています。厳しい船出であることを、行政側も隠していません。
それでも市が繰り返し語ってきたのは、大学を「初年度の数字だけで判断しない」という考え方です。学生のボランティア活動、教員による市民講座、キャンパスの市民開放など、時間をかけた積み重ねが、まちにどんな変化をもたらすのかは、これから先の話です。
厳しい現実を認めたうえで、なお「様子を見ながら応援したい」という声にも、もう少し光が当たってよいのではないでしょうか。
教室に集まった137人の市民、小学生に語りかけた1期生、手作りの食事を差し入れた婦人会――そうした静かな期待もまた、武雄アジア大学をめぐる一つの現実です。

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