行政書士を考える③ 中小企業を支える「もう一人の相談相手」

七月二十日は「中小企業の日」。日本にある企業の実に九十九パーセントは、中小企業・小規模事業者だと言われています。近所のスーパーや飲食店、工事を頼む工務店、精緻な部品をつくる町工場——私たちの暮らしは、その一つひとつに支えられています。

けれども今、こうした企業は厳しい局面に立たされています。原材料や人件費は上がっても価格に転嫁できない。人を雇いたくても雇えない。後を継ぐ人がいない。賃上げをしたくても、その原資がない——。

こうした課題に対して、実は「行政書士」という専門家が、地味ながら確かな形で力になれることをご存じでしょうか。今回は、市民の方にもわかりやすく、行政書士が中小企業のために何ができるのかをご紹介します。

行政書士とは、そもそも何をする人か

行政書士は、役所に提出する書類の作成や、契約書づくりを専門とする国家資格者です。「代書屋」という古いイメージを持たれることもありますが、実際には、経営者が新しい挑戦をするときの許可を取ったり、事業を次の世代へ引き継ぐための道筋を書類の形で整えたりする、いわば「制度と経営をつなぐ専門家」です。

値上げがしにくい会社に、できること

「値上げをお願いしたいけれど、取引先に言い出せない」——そんな声をよく耳にします。行政書士は価格交渉そのものに立ち会うことはできませんが、値上げの裏付けとなる「公的なお墨付き」を取る手伝いができます。

たとえば、国や都道府県が行っている「経営革新計画」や「経営力向上計画」の認定を受けると、税制の優遇や融資の際の信用力アップにつながり、「うちはこれだけの努力をしている」という説得材料になります。こうした計画書の作成や、ものづくり補助金・持続化補助金といった補助金の申請書類づくりも、行政書士の仕事です。

人手不足に、できること

人手不足は今、多くの中小企業にとって死活問題です。ここは行政書士が特に力を発揮できる分野です。

外国人の方に働いてもらうためには、「在留資格」という国の許可が必要です。この申請を代理で行えるのが行政書士です。2027年には「育成就労」という新しい制度も始まる予定で、早いうちから受け入れの準備を進めたい企業にとって、頼れる相談相手になれます。

また、建設業など、許可を維持すること自体が事業継続の条件になっている業種では、その許可の手続きを整えることが、そのまま人手不足対策にもつながります。

後継者がいない会社に、できること

経営者が高齢になっても継ぐ人が見つからず、やむなく店を畳んでしまう——そんな悲しい事例が増えています。行政書士は、こうした事業承継の「書類面」を早いうちから整えておく手伝いができます。

誰に、いつ、どのように会社を引き継ぐかをまとめた事業承継計画書の作成。相続でもめないための遺言書づくり。後継者に議決権を集中させるための定款変更。他の会社に事業を譲る「M&A」を検討する際の契約書づくり。どれも、経営者が元気なうちに準備しておくほど、選択肢が広がります。

行政書士にできないこともある

念のため申し添えると、税務相談は税理士、給与や社会保険の手続きは社会保険労務士、裁判や複雑な交渉は弁護士の仕事です。行政書士は、こうした専門家と経営者の間に立ち、「許可」「計画」「契約書」という書類の力で橋渡しをする存在だとお考えください。

七月は「中小企業魅力発信月間」。身近な中小企業のたゆまぬ努力に思いを馳せるとともに、その裏側で経営者を支える専門家の仕事にも、少し目を向けていただければ幸いです。


出典:拙稿「中小企業の日に —— 私たちの暮らしを支える、見えない力

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