学校法人旭学園 令和7年度決算所見 - 将来への基盤づくりをどう評価するか

本稿について
本稿は、学校法人旭学園が公表した令和7年度決算書(資金収支計算書・貸借対照表・財産目録)および事業報告書を基に、一個人として決算内容を読み解いた所見です。事実関係は公表資料に基づいていますが、評価や見解については筆者個人の意見であり、さまざまな見方があり得ることをあらかじめお断りしておきます。

Ⅰ.総論:この一年をどう読むか

本決算には厳しい数字も見られます。一方で、その数字を大学新設という投資局面の中で読み解くと、将来への基盤づくりに取り組んだ一年として評価できる材料も見えてきます。

① 129年の歩みの中で、新たに大学を開設しました

明治30年の中島ヤス家塾から始まり、女学校、高等学校、短大と歩んできた旭学園が、令和7年8月に文部科学大臣から大学設置認可を受け、武雄アジア大学キャンパスを完成させました。総資産は67億円から81億円へと約17億円増加しており、これは大学開設に向けた施設整備への投資を反映したものです。3月のオープンキャンパスには2日間で1,000人超が来場しており、地域の期待や関心の高さをうかがわせる数字です。

② 短大・高校には改善の兆しが見え始めています

  • 短大:外国人留学生の増加もあり、入学者182名(定員充足率1.07倍)となりました。学生生徒等納付金収入は前年より増加し、教育活動資金収支差額が黒字(+約8,177万円)に転じています。
  • 高校:入学者数が増え、看護師国家試験合格率97%(全国平均93%)、美容師国家試験完全合格率93%など、資格教育の実績も着実に積み上がっています。
  • 部活動でも、九州高校総体でバドミントン部が団体優勝、全国高校総体では団体3位という成績を収めるなど、学園の知名度向上につながる成果が続いています。

③ こども園は保護者からの信頼が厚くなっています

ふたばこども園の「園の自己評価」では保護者の99.6%が「子ども主体の質の高い教育・保育」と評価しています。ひしのみこども園も含め、全項目でA評定という結果は、財務諸表には現れない、保護者からの信頼という無形の価値の大きさを示しています。

④ この赤字は「投資フェーズの赤字」として読める面があります

大学新設という大型投資は初年度から黒字化するとは限らず、新設大学では初年度募集に苦戦する例も少なくありません。事業報告書の記載からは、初年度募集の厳しさを想定していたことがうかがえます。短大・高校という既存部門が資金面で下支えし、教育活動によるキャッシュフローがプラスに転じたことは、教育活動による資金創出力に改善の兆しが見られる材料と考えられます。


Ⅱ.保護者の皆様への個人的な所見

この決算を拝見して、まず個人的に感じるのは、旭学園が将来を見据えた投資を本格化させた一年だったということです。武雄アジア大学の開学は、単なる新しい建物の完成ではなく、129年前に一つの家塾から始まった学園が、次の世代に新しい進路の選択肢を用意した、という意味で意義のある出来事だと思います。3月のオープンキャンパスに2日間で1,000人を超える方が集まったという数字は、地域の期待や関心の高さをうかがわせるものだと感じます。

もう一つ、保護者の皆様にお伝えしたいのは、短期大学・高等学校といった既存部門に改善の兆しが見えているという点です。短大は留学生を含めて入学者が182名まで増え、教育活動によるキャッシュフローも黒字に転じました。高校でも入学者が増え、看護師国家試験合格率97%、美容師国家試験完全合格率93%という数字は、日々の専門教育の質が結果として表れていることの証だと感じます。部活動でも、九州高校総体でのバドミントン部団体優勝、全国高校総体団体3位という成績は、生徒の皆さんの頑張りが正しく評価されている証拠ではないかと思います。

こども園についても、保護者アンケートで99.6%という評価、そして全項目A評定という結果は、財務諸表の数字よりもむしろ雄弁に、現場の保育の質を物語っていると個人的には感じています。数字に現れない部分にこそ、お子様を預けていらっしゃる保護者の皆様が一番安心できる無形の価値があるのではないかと思います。

大学の開学初年度の入学者数が厳しかったことは事実として受け止めるべきですが、新設大学では初年度募集に苦戦する例も少なくなく、事業報告書からは、学園としてもその可能性を想定した上で大学開設に臨んだことがうかがえます。既存の短大・高校・こども園がしっかり足元を固めていることは、新しい挑戦を支える基盤の一つになり得ると、個人的には受け止めております。


Ⅲ.理事会の皆様への個人的な所見

決算数値を拝見して、まずお伝えしたいのは、厳しい指標だけで全体を評価するのではなく、大学開設という投資局面も踏まえて読み解く必要があると考えます。経常収支差額▲13.3%や人件費比率70.4%といった指標は、大学開設という大型投資局面において一時的に生じている特徴とも考えられ、総資産が前年度比約17億円増加している事実(その大半が武雄アジア大学キャンパス整備への投資によるもの)と併せて読む必要があると思います。

一つ注目すべき改善点として挙げたいのは、活動区分資金収支計算書における教育活動資金収支差額が黒字(+81,774,651円)に転じたことです。これは学園の本業である教育活動による資金創出力に改善の兆しが見られることを示しており、大学投資という大きな挑戦を、既存部門がどこまで支えられるかを考える上での一つの材料になると考えます。もちろん、経常収支差額が▲13.3%、翌年度繰越収支差額が△3,583,452,678円(約35億8,345万円)という状況も併せて見る必要があり、この黒字転換だけをもって財務状況全体が改善したと判断するのは早計です。短期大学の経常費補助金交付状況が全国247校中13位という結果も、規模の小さい法人としては評価に値する実績だと感じます。

大学開学初年度の入学者数37名(定員充足率約26%)は看過できない数字であり、次年度以降の募集戦略の見直しは急務だと思います。この結果に至る過程で、市民説明会を50回以上、市民講座を12回開催するなど、認知拡大に向けた活動は着実に積み重ねられてきました。その成果を今後の学生募集へどのように結び付けていくかが、次年度以降の重要な課題になると考えます。

今後の焦点は、①武雄アジア大学の学生募集力強化、②短大・高校という安定収益部門のさらなる伸長、③こども園における0歳児からの園児確保、の3点に集約されると考えます。財務体質の厳しさは事実として受け止める必要があります。一方で、将来を見据えた基盤づくりが着実に進められていることも、今回の決算から読み取れる点ではないでしょうか。


本稿で引用した数値は、学校法人旭学園が公表した令和7年度(2025年度)資金収支計算書・活動区分資金収支計算書・事業活動収支計算書・貸借対照表・財産目録および事業報告書に基づいています。

出典:学校法人旭学園公式サイト「情報の公表」
https://www.asahigakuen.ac.jp/asahigakuen/jyouhou/jyouhou_top.php

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