投稿

ラベル(高市政権)が付いた投稿を表示しています

高市政権1年、「実行力」は本当に評価されているのか? 決める力と納得をつくる力

イメージ
政権発足から1年。「実行力のある政権」という言葉をよく耳にします。では、実行力があることは、そのまま「良い政権」の条件なのでしょうか。この1年のデータを見ると、「実行力」という言葉には、性質の違う2つの力が混ざっているように見えます。 この記事のポイント 「実行力」には「決める力」と「納得をつくる力」の2つがある 支持理由の変化は、有権者が後者も見ている可能性を示している 国会のチェックが弱まるほど、市場が実質的なブレーキ役になる 支持の理由が「実行力」から動いている NHKの解説 によると、NHK世論調査での内閣支持率は、発足直後の66%から下がってはいるものの、50%以上を保っています。注目したいのは、支持する理由です。発足から今年8月までの約10か月間、「実行力があるから」を挙げる人がおおむね3割を超え、最も多い理由でした。過去の4つの政権では、最多の理由は「他の内閣より良さそうだから」がほとんどで、実行力が3割を超えたことはありません。 ところが直近では、「実行力」は3割を下回り、「他の内閣より良さそうだから」と並ぶようになりました。変化が出たのは6〜8月の調査です。理由は調査から断定できませんが、法律を次々に成立させる一方で、その進め方をめぐる議論も目立った時期と重なります。 図1 内閣支持率と「実行力」を理由に挙げる人の割合(NHK世論調査) 支持率(発足直後) 66% 支持率(現在) 50%以上 「実行力」(〜8月) 3割超 (最多) 「実行力」(直近) 3割未満 ※点線は30%のライン。「実行力」の2本の棒は、3割を上回る・下回るの違いを示す概念図で、正確な数値ではありません。 「実行力」には2つの意味がある ここから先は私の見方です。実行力には、次の2つがあると考えます。 ① 決める力 方針を決め、法律や予算にして成立させる力。 例:政府提出法案74本をすべて成立、皇室典範の改正、国家情報局の設置 ② 納得をつくる力 反対意見に耳を傾け、説明し、理解を得ながら進める力。 例:異論への応答、財源や効果の説明、合意形成 この1年、「決める力」が発揮されたことは確かです。首相は 就任1年の会見 で、臨時国会と特別国会を通じて、政府提出法案74本をすべて成立させたと説明しました。一方で、支持理由の「実行力...

脅威は現実。だからこそ「強いブレーキ」が要る――高市政権のインテリジェンス強化をどう見るか

イメージ
はじめに:ある記事で、戸惑いが具体的な疑問に変わった 「外国の不当干渉の防止強化」。首相の発言をそう伝える記事を読み、私はまず戸惑いました。総理が代わってから、急に聞き慣れない言葉が並び始めたように感じたからです。 その戸惑いを具体的な疑問に変えたのが、9月29日付の毎日新聞の記事でした。見出しは「首相肝いりインテリジェンス有識者会議 人選にも『高市色』」。9月28日の初会合を伝える記事です。 読んで、疑問がいくつも浮かびました。 なぜ、今こんなことが進んでいるのか 歴代の政権は、この分野で何をしてきたのか 高市首相は、どんな政治的な立場の人なのか 本当に、それほどの危機があるのか 「高市色」と報じられた17人は、どんな人たちで、何を検討する会議なのか そして何より、情報を強くする仕組みを作るなら、その仕組みを誰が監視するのか 政府資料、国会会議録、参議院調査室の資料、警察庁の資料、報道を突き合わせて、自分なりに確かめました。順番に書きます。 なお、ニュースでは「行政傍受」(安全保障目的で行政機関が通信を収集する仕組み)という言葉も目にします。これは今回の会議と直接結びつけると不正確になるので、後で整理します。 1. 「急に」ではなく、「階段を一段ずつ」 調べてまず分かったのは、この政策が突然生まれたものではないことです。 2025年5月 高市氏が会長を務める 自民党の調査会が、スパイ防止法の導入検討などを提言 2025年10月20日 自民・維新の連立合意書に、インテリジェンス政策6項目を明記 2026年2月20日 首相の施政方針演説で、国家情報会議の設置と、外国からの不当な干渉を防止する制度設計に言及 2026年3月13日 国家情報会議設置法案を閣議決定、国会に提出 2026年4月22日 衆院内閣委員会が法案を審議し、 附帯決議を採択 2026年5月27日 参院本会議で成立(6月3日公布) 2026年7月31日 国家情報会議・国家情報局が発足 2026年9月28日 インテリジェンス機能の強化に関する有識者会議の初会合 今後 「国家情報戦略」の策定・公表、スパイ防止関連法制などを検討 ひと目で見る「段差」の間隔(日付からの単純計算) 法案提出 → 成立(3/13 → 5/27) 75日 成立 → ...

「法の支配」を掲げながら、なぜ沈黙したのか――高市首相・国連演説をめぐる二つの評価

イメージ
一つの演説、二つの評価 2026年9月22日、国連総会。高市早苗首相が壇上に立ちました。 「法の支配」「国際司法機関の尊重」「力または威圧による一方的な現状変更は、どこであっても認めることはできない」――こうした言葉を前面に出した演説でした。ロシアによるウクライナ侵攻を名指しで批判し、日本が一貫してICC(国際刑事裁判所)を支持してきたことも語りました。 しかし、この演説をめぐって日本国内で大きな問いを残したのは、「語られなかったこと」でした。 沈黙が問いを生んだ 2026年8月18日、トランプ政権は国際刑事裁判所(ICC)の所長である赤根智子氏を制裁対象に指定しました。日本人が国際司法の要職に就いた、まさにその人物です。 日本政府はすでに公式な立場を示していました。高市首相は8月25日、この措置について「法の支配を重視する日本の立場と相いれず、大変深刻に受け止めている」と述べ、茂木外相も同日「法の支配徹底のためICCを支持してきた日本の立場と相いれない」と表明しています。 それにもかかわらず、米国による赤根氏らへの制裁については、9月22日の国連演説で直接言及しませんでした。 読売新聞は「米国の圧力の前では、法の支配どころか、自国民の職務継続の権利を守るという決意すら示せないのか。失望を禁じ得ない」と表明し、東京新聞は「卑屈な態度」と評しました。一方、産経新聞はこの対応を「妥当」と評価しています。自民党内からも、中谷元・元防衛相が、日米同盟と法の支配の遵守は二者択一ではないとの趣旨で、より明確な対応を求めました。 なぜ、これほど評価が割れるのでしょうか。 「弱腰」と見る側の主張 批判の核心は、単純な「勇気の欠如」ではありません。 すでに一度、目的を達成できなかった手法を繰り返している という点にあります。 2025年2月、米国のICC制裁(当時は検察官らが対象)に反対する79の国・地域による共同声明が出された際、日本はこれに加わりませんでした。報道によれば、当時の政府高官は「いま米国を刺激するのは得策でない。赤根所長に制裁が及ばないようにするためだ」と説明していたとされています。 つまり、「公の場で声を上げず、水面下で交渉すれば赤根氏を守れる」という外...