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日本語教員試験の出願者が過去最多に!登録日本語教員制度で変わる日本語教育の現状と展望

日本語教員試験の出願者数が、令和8年度に初めて2万人を突破しました。外国人の受け入れが進み、日本語教育の重要性が高まるなか、国家資格「登録日本語教員」への関心も広がっています。一方で、資格を取得した人が実際に働く場を確保できるのか、地域による人材の偏りはどうなるのかなど、解決すべき課題もあります。出願状況や試験ルートの変化を確認しながら、日本語教育を取り巻く現状と今後の展望を整理します。

1.日本語教員試験の出願者が初めて2万人を突破

文部科学省が公表した「令和8年度日本語教員試験」の出願状況によると、出願者数は20,918人となりました。令和7年度の18,313人から2,605人、率にして14.2%の増加です。令和6年度の初回試験と比べても2,531人増えており、制度開始後、初めて2万人を超えました。

令和8年度 出願者数 20,918人 初めて2万人を突破
前年度からの増加 +2,605人 増加率 14.2%
令和6年度との比較 +2,531人 増加率 13.8%
年度別の出願者数
令和6年度
18,387人
令和7年度
18,313人
令和8年度
20,918人
※棒グラフは令和8年度を100とした場合の相対比較です。

令和6年度は新制度による初めての試験であり、令和7年度には養成機関ルートが加わりました。したがって、出願者数の推移を見る際には、単純な人数の増減だけでなく、制度や資格取得ルートの変化も考慮する必要があります。

また、出願者数は実際の受験者数や合格者数とは異なります。特に経過措置によって試験の全科目が免除される人の人数は年度によって変動するため、数字の背景を踏まえて見ることが大切です。

出典:文部科学省「令和8年度日本語教員試験出願状況について」

2.養成機関ルートの出願者が大幅に増加

出願者数の増加とともに注目したいのが、資格取得ルートの構成です。令和8年度は、養成機関ルートの出願者が6,556人となり、前年度の2,465人から4,091人増加しました。今回の出願者数の変化を特徴づける、最も大きな動きです。

出願ルート 令和6年度 令和7年度 令和8年度
試験ルート4,133人3,917人4,575人
養成機関ルート―2,465人6,556人
Cルート5,750人6,938人6,129人
D-1ルート1,574人1,278人1,088人
D-2ルート691人592人491人
E-1ルート1,228人625人376人
E-2ルート4,730人2,227人1,402人
Fルート281人271人301人
令和8年度の主な出願ルート
養成機関
6,556人
Cルート
6,129人
試験ルート
4,575人
※主な3ルートを比較しています。

養成機関ルートは、文部科学大臣の登録を受けた養成機関の課程を修了するなど、所定の要件を満たして資格取得を目指すルートです。令和7年度から出願者が現れ、令和8年度には大きく増加しました。制度に対応した養成課程が広がり、資格取得を目指す人の進路として定着し始めていることがうかがえます。

一方、Cルートは6,938人から6,129人へ、D・Eルートもそれぞれ減少しています。これらは新制度への移行に伴う経過措置の対象者を含むルートです。したがって、養成機関ルートの増加には、新たに資格を目指す人の増加だけでなく、旧制度から新制度への移行という側面もあります。

なお、養成機関ルートの増加数は4,091人で、出願者全体の純増数2,605人を上回っています。これは、養成機関ルートが増えた一方で、経過措置ルートなどの出願者が減少したためです。全体の数字だけでは見えにくい、制度移行期ならではの変化といえます。

出典:文部科学省・令和7年度出願状況 / 令和8年度出願状況

3.出願者が増加している背景

外国人の増加と日本語教育ニーズの広がり

出願者増加の背景として、まず挙げられるのが、日本で暮らす外国人の増加です。留学生だけでなく、仕事や家族との生活を目的に日本で暮らす人も増えています。日本語を学ぶ目的も、進学や就職だけでなく、職場でのコミュニケーション、地域社会での生活、子どもの学校生活など、幅広くなっています。

こうした状況では、日本語を教えるだけでなく、学習者の生活背景や学習目的を理解し、それぞれに合った支援を行える人材が必要です。日本語教育の役割が広がっていることが、日本語教員を目指す人の関心につながっていると考えられます。

国家資格「登録日本語教員」の制度化

もう一つの大きな要因が、国家資格「登録日本語教員」の制度化です。令和6年度から日本語教員試験が始まり、日本語教育に携わるための資格制度が整備されました。

これまで日本語教師になるための経路は、養成課程の修了や民間の検定試験、実務経験など、複数の仕組みに分かれていました。新制度では、登録日本語教員という共通の資格が設けられ、必要な知識や技能を確認する仕組みが明確になりました。

資格制度が整ったことで、これから日本語教師を目指す人にとって、学ぶ内容や目標が分かりやすくなった面があります。専門性を身につけ、資格を取得したうえで教育現場に進みたいと考える人が増えていることも、出願者数を押し上げる一因とみられます。

養成機関ルートの整備

養成機関ルートが設けられたことも、出願者増加に関係しています。登録日本語教員を目指す人が、大学や専門学校などの養成課程で体系的に学び、資格取得につなげる道が整いました。

特に、未経験から日本語教育を学びたい人にとって、養成機関で学ぶことは知識や実践力を段階的に身につける機会になります。養成機関ルートの出願者が大幅に増えたことは、新制度に対応した教育課程への関心が高まっていることを示しています。

4.全国8地域すべてで増加、関東・近畿がけん引

令和8年度は、全国8地域すべてで出願者数が前年度を上回りました。特に関東と近畿の増加が目立ちます。

地域 令和7年度 令和8年度 増減
北海道323人427人+104人
東北398人442人+44人
関東8,138人9,775人+1,637人
中部1,460人1,885人+425人
近畿3,087人3,909人+822人
中国・四国792人1,012人+220人
九州1,097人1,489人+392人
沖縄166人201人+35人
地域別の出願者増加数
関東
+1,637人
近畿
+822人
中部
+425人
九州
+392人
中国・四国
+220人
北海道
+104人
東北
+44人
沖縄
+35人

関東の増加数は1,637人で、地域別の増加数全体の約45%を占めています。近畿も822人増えており、都市部を中心に出願者が増えていることが分かります。

ただし、地域別の増加数を合計した数字と、出願者全体の純増数は一致しません。令和8年度は、試験を全て免除される人が前年度の2,852人から1,778人へ1,074人減少しています。この変動が全体の純増数にも影響しています。

出願者の増加が全国に広がっていることは確かですが、人数の規模には地域差があります。今後、各地域で日本語教育の需要に応じた人材を確保できるかどうかも、重要な課題となりそうです。

出典:文部科学省「令和8年度日本語教員試験出願状況」

5.合格者数・合格率も上昇

合格者数を見ると、令和6年度は11,051人、令和7年度は11,876人でした。合格率も62.6%から67.5%へ上昇しています。

令和7年度 合格者数 11,876人 前年度から825人増加
令和7年度 合格率 67.5% 前年度は62.6%
令和7年度 受験者数 17,597人 前年度は17,655人
年度別の合格率
令和6年度
62.6%
令和7年度
67.5%

ただし、合格者数には経過措置によって試験の全科目が免除された人も含まれています。そのため、合格者数や合格率を比較する際には、試験を受けて合格した人と、経過措置によって合格となった人の違いを踏まえる必要があります。

令和8年度の試験は11月8日に実施される予定です。現時点では試験前であり、合格者数や合格率はまだ公表されていません。今後の結果によって、新制度のもとでの受験状況がさらに明らかになるでしょう。

出典:文部科学省・令和6年度試験結果 / 令和7年度試験結果

6.資格取得者の増加だけでは解決しない課題

出願者数が2万人を超え、日本語教員を目指す人が増えていることは明るい動きです。しかし、資格取得者が増えることと、日本語教育の現場で人材が十分に確保されることは同じではありません。採用状況や待遇、地域ごとの人材配置など、考えるべき課題があります。

求人状況をどう見るか

厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」では、日本語教師に関連する職業情報として、令和7年度の有効求人倍率が1.55、求人賃金(月額)が24.9万円とされています。数字だけを見ると一定の求人需要があるように見えます。

有効求人倍率 1.55倍 令和7年度
求人賃金(月額) 24.9万円 令和7年度

ただし、この統計は日本語教師だけを完全に切り分けたものではなく、関連する職業分類に基づくデータです。そのため、1.55倍を日本語教師だけの正確な有効求人倍率とみなすことはできません。求人賃金についても、勤務先や雇用形態、勤務時間などによって実際の条件は異なります。

日本語教師の求人は、日本語学校や大学、専門学校、企業、地域の日本語教室など、さまざまな場所にあります。しかし、常勤・非常勤の別、授業時間、担当する学習者、求められる経験や資格などは一様ではありません。資格取得者が希望する働き方と、現場が求める条件が合わなければ、採用につながらないこともあります。

したがって、求人倍率や求人賃金だけで人材不足の実態を判断するのではなく、どの地域で、どのような雇用条件の求人があり、資格取得者がどの程度就職できているのかを把握する必要があります。

出典:厚生労働省「job tag:日本語教師」

育成就労制度の開始で、人材確保が新たな課題に

今後の日本語教育の需要を考えるうえで注目されるのが、2027年4月に始まる育成就労制度です。技能実習制度に代わる新たな外国人受け入れ制度であり、外国人材が日本で働くための日本語能力の育成も重視されています。

制度の開始に向けて、出入国在留管理庁と厚生労働省は、監理支援機関として活動する予定の団体などを対象に、日本語講習を担う登録日本語教員の確保状況を調査しました。2026年10月に公表された調査では、回答した348団体のうち、登録日本語教員を「確保済み」とした団体は14.6%にとどまりました。

育成就労制度に向けた登録日本語教員の確保状況
確保済み
14.6%
確保見込み
19.0%
調整中
30.5%
未確保・候補なし
35.9%
※回答した348団体の回答割合です。全国の監理支援機関すべてを対象とした確保率ではありません。

「確保見込みあり」は19.0%、「調整中」は30.5%でしたが、「未確保で候補も未定」と回答した団体も35.9%に上っています。制度開始を前に、日本語講習を担う人材の確保が課題となっていることが分かります。

この調査は、回答した団体の状況を示すものであり、日本語教師全体の求人件数や不足人数を表すものではありません。それでも、新たな制度の開始に向けて、実際に人材を確保できていない現場があることは注目すべき点です。

今後、育成就労制度の運用が本格化すれば、就労前の日本語講習や入国後の学習支援など、登録日本語教員が活躍する場が広がる可能性があります。ただし、必要な人材の人数や雇用条件は、制度の運用状況や受け入れ機関の体制によって変わるため、今後の動向を見ていく必要があります。

出典:出入国在留管理庁「育成就労制度における日本語講習の提供について」 / 共同通信・2026年10月23日報道

資格取得と就職が直結するとは限らない

日本語教員試験に合格し、登録日本語教員の資格を取得したとしても、必ずしも日本語教師として就職できるわけではありません。養成課程を修了した人のすべてが教育現場に進むわけではなく、資格取得後の進路には幅があります。

また、教育機関によって採用条件や求める経験は異なります。常勤として安定した雇用を希望する人がいる一方、非常勤の授業を複数担当する働き方もあります。給与や勤務時間、研修制度などが希望と合わず、資格を取得しても就職を見送るケースも考えられます。

資格制度を整備するだけでなく、資格取得者が現場に入り、経験を積みながら長く働き続けられる環境を整えることが欠かせません。採用後の研修やキャリア形成を支援する仕組みも重要になります。

学習者の増加が、そのまま教師の需要増加につながるわけではない

日本語学習者が増えているからといって、教師の需要も同じ割合で増えるとは限りません。必要な教師の人数は、教育機関の種類や授業の形態、学習者の年齢や目的、地域の教育体制などによって異なります。

2026年に公表された研究論文では、過去の留学生受け入れ政策と日本語教師の需要の関係が分析されています。その結果、留学生が増加しても、必ずしも教師の需要が同じように増えるわけではないことが示されています。また、日本語教師の需要や不足を直接把握できる統計が十分ではない点も指摘されています。

つまり、学習者数や資格取得者数だけを見て、日本語教師がどの程度不足しているかを判断することは難しいのです。今後は、教育機関ごとの採用状況や求人条件、就職者数、地域別の人材配置などを継続的に把握することが求められます。

参考:牲川波都季(2026)「留学生受入れ政策により日本語教師の需要は増えたのか―文化庁等による『日本語教育実態調査』の分析―」『言語政策』第22号。論文全文(J-STAGE)

地域による人材の偏り

出願者数は全国8地域すべてで増加しましたが、人数では関東や近畿に集中しています。日本語教育機関や外国人が多い地域では採用の機会が比較的多い一方、地方では教育機関の数や求人の種類が限られる場合があります。

日本語教育を必要とする人は、大都市だけでなく、地方の企業や自治体、学校などにも広がっています。地域によって人材の確保に差が生じれば、学習機会にも影響しかねません。オンライン授業の活用や地域間の連携なども含め、必要な場所に教師を届ける仕組みが必要です。

7.今後の展望――資格制度を教育現場の充実につなげられるか

日本語教員試験の出願者が2万人を超えたことは、日本語教育への関心が高まっていることを示す動きです。登録日本語教員制度が定着し、養成機関で学ぶ人や試験ルートで資格を目指す人が増えれば、専門性を備えた人材の育成につながることが期待されます。

また、育成就労制度の開始をはじめ、外国人の受け入れや地域での共生が進むなかで、日本語教育を必要とする場面はさらに多様化する可能性があります。日本語学校や大学だけでなく、企業、自治体、地域の日本語教室、学校教育など、活躍の場も広がっていくでしょう。

一方で、資格取得者を増やすだけでは、現場の課題は解決しません。安定した雇用や適切な待遇、研修機会の確保、地域間の人材の偏りへの対応など、資格取得後の環境整備が重要です。日本語教師を専門職として育て、その能力が適切に評価される仕組みも求められます。

さらに、学習者の背景や目的が多様化するなかで、教師に求められる役割も広がっています。日本語を教える知識や技能に加え、異なる文化や生活環境への理解、学習者一人ひとりに応じた支援力なども必要になります。養成課程や現職者研修を通じて、こうした力を継続的に高めていくことが大切です。

今後は、試験の出願者数や合格者数だけでなく、資格取得者がどのような職場に就職し、どのような条件で働いているのかを把握することも重要になります。資格制度の整備を、実際の教育現場の充実につなげられるかが問われています。

まとめ

令和8年度の日本語教員試験は、出願者数が20,918人となり、初めて2万人を突破しました。特に養成機関ルートの増加が目立ち、全国8地域すべてで出願者数が前年度を上回っています。外国人の増加や日本語教育ニーズの広がり、登録日本語教員制度の整備などが、関心の高まりにつながっていると考えられます。

一方で、資格取得者が増えることと、教育現場の人材不足が解消されることは同じではありません。求人や待遇、資格取得後の就職、地域ごとの人材配置など、取り組むべき課題は残されています。

これから重要になるのは、資格を取得する人を増やすだけでなく、その人たちが日本語教育の現場で力を発揮し、長く働き続けられる環境を整えることです。出願者数の増加を、日本語教育の質と基盤を高めるきっかけにできるか。今後の制度運用と教育現場の変化に注目していきたいところです。

主な参考資料

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