宮崎公立大学が理事長を初公募。市民として何を見ていけばよいか

宮崎市が、宮崎公立大学の理事長を全国から公募しています(宮崎市の公募ページ)。同大学として初めての試みです。募集は2026年10月5日に始まり、締切は12月4日正午です。応募書類による一次選考と面接による最終選考を経て、候補者は12月中に決まる予定です。

◆ 選考スケジュール(予定)
10月5日
募集開始
12月4日
応募書類の提出期限
(12時必着)
12月24日
一次選考通過者への
面接
12月中
理事長候補者の決定

大学のトップを公募すると聞くと、「大学の運営に何か問題があるのだろうか」と感じる方もいるかもしれません。市は、経営基盤を安定させ、学生に選ばれる大学としての魅力を高め、地域や地元企業との連携を進めるための公募と説明しています。

私は今回の公募を、これからの宮崎公立大学に何を期待するのかを、市民も考える機会として受け止めたいと思います。

数字から見える課題と、数字だけではわからないこと

10月5日の市長定例記者会見で、市は課題として次の3点を挙げました。

  • 県内就職率が3割程度にとどまっていること
  • 志願倍率が安定していないこと
  • 持続可能な運営基盤の確立が必要であること

あわせて市長は、設立団体として年間約8億円の運営費を交付していると説明しています。

◆ 市が示した数字
県内就職率
3割程度
※「3割程度」という市の説明を目安に図示した概念図です。
市から大学への運営費の交付
年間約8億円
設立団体である宮崎市が交付しています。

いずれも、大学の将来を考えるうえで大切な情報です。ただ、数字の意味は丁寧に見る必要があると思います。

たとえば県内就職率です。学生の出身地、希望する仕事、企業の採用状況などによって、受け止め方は変わります。卒業生が県外でも学んだことを生かし、社会で活躍することは、大学の教育成果の一つと考えられます。

そのうえで、宮崎で働きたい学生が希望を実現できているのか。県内の仕事を知り、自分の将来と結びつけて考える機会は十分にあるのか。数字の中身にも目を向けたいところです。

志願倍率も同じです。広報の強化で変わる部分もあれば、大学の魅力がどう伝わり、他の大学と比べてどう選ばれているかという、もっと根本的な部分もあるかもしれません。原因によって、必要な対応は変わってくるでしょう。

いま動き出していることにも目を向けたい

宮崎公立大学では、現在の国際文化学科に加えて、2027年4月に国際情報学科の新設が予定されています。入学定員は、国際文化学科が150名、国際情報学科が50名とされています(宮崎公立大学「新学科設置構想について」)。大学が新しい教育に踏み出そうとしている時期に、理事長の公募が行われている、ということになります。

◆ 入学定員の見通し(人)
現在
200
2027年4月から(予定)
150
50
国際文化学科    国際情報学科(新設予定)
出典:宮崎公立大学「新学科設置構想について」(今後の公表内容により変わる可能性があります)

また、UMKテレビ宮崎の報道によると、これまで理事長は宮崎市の職員OBなどが務めてきたということです。今回、理事長の候補者を全国から募ることになります。

私は、今回の公募を現在の大学を否定するものとは受け止めていません。すでにある取り組みを土台に、次の段階をどう描くかを考える機会だと思います。

取り組みを、学生の学びにつなげる

私が注目したいのは、地域や企業との連携が、学生の経験にどう結びつくかという点です。

企業と協定を結ぶ。地域の行事に参加する。インターンシップを実施する。どれも意味のある取り組みですが、実施した件数だけでは、学生が何を得たのかまでは見えてきません。

たとえば大学は、2026年9月18日に、国際情報学科の開設に向けて宮崎市ICT企業連絡協議会と連携協定を締結したと公表しています。こうした協定が、授業やインターンシップなど、学生の具体的な経験にどうつながっていくのか。そこに注目したいと思います。

授業で地域の課題を知り、企業や住民と話し、自分で考えて行動する。その経験が、次の学びや進路の選択につながっていく。そうした流れをつくることが、連携の価値を高めるのではないでしょうか。

今ある取り組みの成果を確かめ、さらに学生の学びにつなげていくことを、新しい理事長にも期待します。

理事長に期待したいこと

市は、理事長に求める人物像として、大きく2つを挙げています。経営に関する高い見識を持ち、大学の魅力向上に資する人物。そして、大学の魅力を広く発信し、地域との連携を推進できる人物です。あわせて、在学生への講義、地元企業や団体のトップと連携した学生の就職支援、設立団体である市との連携・調整も期待されています。

幅広い役割ですが、一人の力で実現できることには限りがあります。だからこそ、学内の声を聴き、教職員の専門性を生かしながら、地域・企業・行政との協力を具体的な活動にできる人に期待したいと思います。何を優先するのかを示し、そのために必要な人や予算、時間を整える。成果と課題を確かめ、次の改善につなげる。そうした積み重ねが大切だと考えます。

その際、学生募集や県内就職とともに、教育・研究の質や、学生が自分の進路を選べる環境をどう支えるかも問われるはずです。

市民として、何を見ていくか

年間約8億円という運営費についても、金額とあわせて、何に使われ、どんな成果につながっているのかを知りたいところです。学生がどんな力を身につけたのか。研究や地域活動を通じて、どんな知識や機会が地域に生まれたのか。すぐには数字に表れない成果も含めて、わかりやすく説明されることが、市民の理解につながります。

今回の公募については、募集要項、選考基準、理事長の職務や勤務条件が、市のホームページで公開されています。どんな人物が求められているのかは、誰でも確認できます。

候補者が決まった際には、次の点に注目したいと思います。

  • 大学の強みと課題を、どんな根拠で捉えているか
  • 教育・研究の充実、学生募集、進路支援に、どんな優先順位で取り組むか
  • 教職員や学生の声を、大学運営にどう生かすか
  • 目標と成果を、市民にどう説明するか

宮崎公立大学の将来は、大学関係者だけの話ではありません。地域にどんな学びの場を育て、次の世代に引き継いでいくかという話でもあります。今回の公募を、そのことを考えるきっかけにしたいと思います。

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