2012年2月11日土曜日

強みに焦点を合わせる(ドラッカー)

重要なことは実力であって見込みではない。要求は厳しくしなければならない。基準は途中で引き上げることはできない。したがって時間は与えてよい。ゆっくりやらせてよい。何度やらせてもよい。しかし質を落としてはならない。

二つの基本とすべきことがある。一つは身体障害者協会のスローガン、「できないことのために雇ってくれる必要はありません。できることのために雇ってください」である。聴覚の鋭さが必要な仕事では、むしろ目の見えないことが武器になる。

もう一つは、私が11歳のときに学んだことである。ピアノの先生が怒ってこういった。「ピーター、プロのようにモーツァルトを弾けるとは思っていません。でも音階はきちんと弾きなさい」

人事は強みを中心に行わなければならない。第二次世界大戦中に陸軍の参謀総長をつとめたジョージ・C・マーシャル将軍は、最高の人事を行い続けたことで有名である。

ここから学ぶべき教訓は「強みに焦点を合わせよ」である。そのうえで要求を厳しくしなければならない。そして時間をかけてていねいに評価しなければならない。向かい合って、約束はこうだった、この一年どうだったか、何をうまくやれたか、と聞かなければならない。

これらのことすべてに、明快でシンプルなミッションが必要である。ミッションは、どのような能力をも上回るものでなければならない。それは人の目線を引き上げるものでなければならない。世の中を変えることに貢献できたと思わせるものでなければならない。誰もが無駄に生きているわけではないといえるようにするものでなければならない。

最悪というべきは、階層的な考えを組織にもち込むことによって、人材の育成を阻害することである。その典型が、ハーバード・ビジネススクールのMBA(経営学修士)にしかポストを与えないことである。あるいは、昇進させていく者を早い段階に決めることである。

大事なのは成果である。一つの仕事ではなく一連の仕事での成果である。なぜならば、人とは、向き不向き、出来不出来があって当然だからである。人の組み合わせが悪いために仕事がうまくいかないこともある。誰とでもうまくやれるとは限らない。他の仕事も試させなければならない。

挑戦する者には機会を与えることが原則である。挑戦しない者は放っておいてよい。