2009年3月14日土曜日

急がれる介護者ケア

老齢化社会が進む中、不治の病である認知症と闘っている方々も増加の一途をたどっています。

認知症と診断された方々はもとより、介護する方々も日々大変なご苦労をされています。私自身、認知症の家族を持つ一人として、少しでも介護する方々のお役に立てることができればと考え、この日記を通じて時折目についた認知症や介護に関する情報の提供をさせていただくことにしました。この日記の趣旨には合いませんが、社会保障、医療、介護、福祉の課題としてお読みいただければ幸いです。


アルツハイマーには漢方!・・・阪大の研究で効果分かる(2009年3月3日 読売新聞)

幻覚や妄想などアルツハイマー病の周辺症状にも処方される漢方薬「抑肝散(よくかんさん)」に、症状の原因と考えられる脳の神経細胞死を抑える効果があることが、大阪大の遠山正彌教授、松崎伸介助教らの研究でわかった。

漢方薬の効能の仕組みに迫る成果として注目される。

松崎助教らが着目したのは、細胞内のたんぱく質の形を整える小胞体にある遺伝子で、遺伝性のアルツハイマー病患者に変異が多いプレセニリン1(PS1)。PS1が変異した小胞体は、神経伝達に重要なカルシウムの濃度変化に対応できず機能が低下、不完全なたんぱく質が蓄積して細胞死が起きる。

実験では、PS1を変異させた実験用の神経細胞を使い、小胞体内のカルシウム濃度を変化させる薬剤を投与。約60%が死滅したが、抑肝散を加えると死滅率は約25%に減った。

抑肝散は子供の夜泣きや疳(かん)の虫などを抑えるために使われてきた漢方薬。遠山教授は「患者の多くを占める老年性アルツハイマー病も小胞体の機能低下が関係しており、今回の結果と同様の仕組みで周辺症状を抑えている可能性が高い」と話している。
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20090303-OYT1T01098.htm


介護殺人:保険利用も半数防げず 昨年発生分 本紙調べ(2009年3月3日 毎日新聞)

在宅介護を受ける65歳以上の高齢者が家族に殺害される「介護殺人」で、08年に起きた事件の少なくとも約半数が介護保険制度を利用しながら防げなかったことが、毎日新聞の調べで分かった。介護保険では介護される人(要介護者)の状態を判定し、サービスを自己負担1割で提供しているが、悲劇に歯止めをかけられない実態が浮かんだ。

毎日新聞が06~08年の3年間で報道した介護殺人・無理心中(未遂を除く)は計97件で、年間30件を超えるペースで起きている。介護保険制度が始まる直前の99年は21件で、約10件多くなっている。

08年の事件は32件だったが、このうち少なくとも15件が行政に自ら要介護認定を申請、うち13件がヘルパー派遣やデイサービスを利用し、介護専門職が家族にかかわっていた。2月に茨城県で77歳妻が起こした嘱託殺人事件では、週6日ヘルパーが家を訪ね、寝たきりの夫(77)を介護していたが、深夜のおむつ交換や食事を担ってきた妻がひざを痛めた際、夫に「殺してくれ」と懇願されたことから突発的な犯行に及んでいる。

3年間の合計で加害者側の内訳をみると、約7割(70件)は男性。核家族化やきょうだいの減少などで男性介護者が急増していることが背景にある。年代別では65歳以上の高齢者が加害者の4割(44件)を占めた。

一方、被害者には認知症の人が多く、3年間のデータでは少なくとも3割に当たる31件に症状があった。

◇急がれる介護者ケア

家族を介護地獄から解放しようと「介護の社会化」を掲げた介護保険制度は今年4月、10年目を迎える。だが家族の精神的、身体的、経済的負担はなお重い。制度が「要介護者=高齢者」の状態を判断してサービスを提供し、「介護者=家族」の状態把握まで行わないことも一因だ。

家庭内での高齢者虐待は年間1万件を超え、介護うつも深刻化している。背景には急速な少子高齢化で家族の介護力が一気に低下していることがある。そのスピードに施策が追いついていない。公的コストを抑制するため、行政は介護政策を施設から在宅重視へとシフトする一方、同居家族がいる人のヘルパー利用を制限している。

ケアする人のケアに取り組むNPO「介護者サポートネットワークセンター・アラジン」の牧野史子理事長は「介護者の心身を守らなければ、要介護者も守れない。家族に休息を義務づけるなどの制度が必要」と訴える。欧州などでは介護者支援の動きが広がっている。超高齢化の最先端を走る日本こそ、一刻も早い支援策が求められる。
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20090303k0000m040119000c.html


介護:孤立しがちな男性の全国ネット発足 切実な声、続々(2009年3月8日 毎日新聞)

男性介護者の“駆け込み寺”として相談や交流、政策提言にあたる初の全国組織「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」(京都市上京区、荒川不二夫代表)発足会が8日、京都市北区の立命館大であった。約150人が集まり、男性介護の現場を巡る切実な声が続々と上がった。

男性介護者とは、在宅で妻や親を介護する夫や息子ら。在宅介護者の3割を占め、女性よりも孤立しやすいとされる。発足会では事務局長の津止正敏・同大学産業社会学部教授が「介護のため職場を失い、追いつめられた末の殺人も後を絶たない。男性介護者の声を集め、身の置き所を作り、八方ふさがりの状態に風穴を開けたい」と強調した。

リレートークで「認知症を発症した妻は『なぜ私が。神様助けて』と嘆いたが、何をしていいか分からなかった。先輩男性の体験を共有する場ができてうれしい」などの声が出た。事務局(075・811・8195)。
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20090309k0000m040049000c.html


介護する男性に―「ケア友」をつくろう(2009年3月8日 朝日新聞社説)

土曜日、京都市内に12人の男性が集まった。61歳から96歳。それぞれ自宅で妻や親を介護している。

「夜中に何度も起きて家内をトイレに連れて行く。体がもたへん」「おむつにしてもらいなはれ。あんたが倒れたら、だれが奥さんをみるんや」

「女房は一日、黙りこくっている。会話がないのが寂しい」「ぼくは妻と花や野菜を作ってます。一緒になにかをすることが大事やと思うで」

ひとしきりしゃべると笑顔になって帰っていく。京都に本部を置く「認知症の人と家族の会」が、2カ月に1度の集いを支援している。

厚生労働省の調査では、いまや家族を介護している人の約3割が男性だ。男性介護研究会の代表をつとめる津止(つどめ)正敏・立命館大学教授は06年、介護をしている男性295人を対象に実態を調査した。平均年齢69歳。近隣とのかかわりが薄いなかで、介護の負担と炊事や裁縫などの家事に苦労している孤独な姿が浮き彫りになった。

「男性は介護を仕事のように考える傾向がある」。津止教授は心配する。律義に目標を設定して努力し、思うような結果が出ないと落ち込んだり、介護されている人を責めたりする。

07年に厚労省が行った家庭内の高齢者虐待の調査では、加害者のなかで息子の割合が41%と突出して多く、次いで夫が16%を占めた。

働き盛りの男性が仕事を失うケースもある。総務省の就業構造基本調査によると、06年10月からの1年間に介護や看病のために離職や転職をした男性は2万5600人にのぼる。

介護休暇は取りづらい。仕事を辞めて生活に困窮し、追いつめられて殺人や心中に至る悲劇も起きている。男女を問わず、介護しながら仕事をつづけられるような職場環境を整えたい。

8日、「認知症の人と家族の会」や男性介護研究会が呼びかけ、各地のグループ10ほどが京都に集まって「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」が発足する。情報交換を重ねて、いずれは政策提言などもするという。

介護する男性の集まりが地域ごとにできるといい。悩みを打ち明け、情報や経験を伝え合うだけで、どれほど励まされることだろう。まずはそんな「ケア友」をつくることだ。

行政やNPOは、場所を提供し、料理教室など家事の技術を身につける機会を設けて後押ししてほしい。

介護保険制度を見直すことも必要だ。家族が同居していれば調理や掃除などの生活援助が受けられない。しかし、高齢の夫婦の老老介護は増える一方だ。各家庭の実態に応じたきめの細かい援助が必要だ。

家族の負担を減らして社会全体で介護を支え合う。それが介護保険の原点ではなかったか。
http://www.asahi.com/paper/editorial20090308.html#Edit2


男性にとって介護は苦手、不向きのようです。

先日、「となりのかいご(NPO法人申請中)」という団体から「介護で家族を憎まないために」という冊子を購入し読んでみました。この冊子は、当該団体が2009年1月18日に開催した「介護殺人を食い止める一言を考える討論会」での、介護体験が掲載されてあります。

先日この団体から以下のようなメールが届きました。「誰もが無理なく介護が続けることができる社会の実現」を目指したこうした取り組みは、いつかは実を結び、介護で苦しんでおられる多くの方々の支えになっていくことでしょう。


さて、このたび私どもでは、男性で介護されている方へのアンケートを実施することになりました。
討論会でも男性が介護するときの難しさについて議論されました。私も、知り合いのつてで何名かの介護している(されていた)男性にお話しをうかがうことができ、介護の大変さと、その支援の必要性を強く感じました。
男性が介護する中で
  • 困ったと自分からなかなか言い出せない
  • 何でも一人で解決しようとしてしまう
  • 仕事のように一生懸命介護に取り組んでしまう
その結果、孤立してしまい一人で介護を抱え込んでしまい、長い介護生活の中で疲弊してしまう傾向があるようです。
そこで、高齢者虐待の防止活動をしている私どもとしても、男性で介護されている方の支援ができればと考え、まずは当事者の方々の声を聞こうと、アンケートを実施することにしました。
すでに知り合いの紹介などで30名前後の方へのアンケートをすることができたのですが、もっと多くの方の声を聞きたくて、皆様へのご協力をお願いしたいのです。
ご自身が男性で介護している方であればご自身でお答えください。またお知り合いで、男性で介護されている方がいらっしゃいましたら、アンケート返答のお願いをしていただければと思います。すでに、介護を終えられてらっしゃる方でもかまいません。(アンケート用紙は添付ファイルにて送信いたします・・・略)
お手数をおかけして本当に申し訳ありませんが、ぜひ皆様と一緒に、「誰もが無理なく介護が続けることができる社会の実現」ができたらと考えております。皆様の暖かいご協力お待ち申し上げております。お答えいただけたアンケートは、メール:info@roshin-kaigo.comもしくはファックス(03-6893-5874)まで送信ください。
不明な点についてもお気軽にご連絡ください。