オープンサイエンスの推進(第5期科学技術基本計画|2016年1月22日閣議決定抜粋)
オープンサイエンスとは、オープンアクセスと研究データのオープン化(オープンデータ)を含む概念である。オープンアクセスが進むことにより、学界、産業界、市民等あらゆるユーザーが研究成果を広く利用可能となり、その結果、研究者の所属機関、専門分野、国境を越えた新たな協働による知の創出を加速し、新たな価値を生み出していくことが可能となる。また、オープンデータが進むことで、社会に対する研究プロセスの透明化や研究成果の幅広い活用が図られ、また、こうした協働に市民の参画や国際交流を促す効果も見込まれる。さらに、研究の基礎データを市民が提供する、観察者として研究プロジェクトに参画するなどの新たな研究方策としても関心が高まりつつあり、市民参画型のサイエンス(シチズンサイエンス)が拡大する兆しにある。近年、こうしたオープンサイエンスの概念が世界的に急速な広がりを見せており、オープンイノベーションの重要な基盤としても注目されている。
こうした潮流を踏まえ、国は、資金配分機関、大学等の研究機関、研究者等の関係者と連携し、オープンサイエンスの推進体制を構築する。公的資金による研究成果については、その利活用を可能な限り拡大することを、我が国のオープンサイエンス推進の基本姿勢とする。その他の研究成果としての研究二次データについても、分野により研究データの保存と共有方法が異なることを念頭に置いた上で可能な範囲で公開する。
多くの大学では、既に、学術研究等の成果を、学内外に無償で公開するための「機関リポジトリ」を整備しています。しかし、自身の論文等を登録している教員は限られていると聞いています。
大学という公的機関における研究成果の公表は義務であり、今後「機関リポジトリ」への登録を徹底する必要があります。
図書館という一部局に任せても実効性に乏しいと思われ、今後は、先進大学のように、学長、理事のリーダーシップの下、大学が組織として強力に推進する必要があります。
公的資金を使った研究について、政府は学術論文やデータをネット上で原則公開させる方針を決めた。国内の科学技術関連予算は年間約4兆円に上るが、論文の多くは有料の商業誌に掲載され、自由に閲覧できない。成果を社会で広く共有し、研究の発展を促す狙い。
国内の大学や研究機関が関わる科学技術の論文数は年間7万本を超える。米国や英国で公的資金を使った研究論文の公開義務化が広がっており、日本でも進める。22日に閣議決定した第5期科学技術基本計画(2016~20年度)の期間中に実施を目指す。
国の研究費を配分する科学技術振興機構や日本学術振興会が大学などに研究資金を出す際、論文の公開を条件にする方法などを検討している。研究者は、論文を無料で読める電子雑誌に投稿するか、有料の雑誌に出す場合は大学などが設ける専用サイトで、ほぼ同様の内容を無料で読めるようにする。
STAP細胞などの研究不正が相次いだことなども受け、論文の根拠となったデータも公開の対象とする。知的財産などに問題のない範囲が対象で、データを管理、検索できる基盤作りを国立情報学研究所が中心になって進める。多くの人が論文やデータを目にしやすくなれば、成果の活用が進み、研究の透明性も高まると期待されている。
京都大と筑波大はこの方針を先取りし、雑誌に載った論文などを学内の専用サイトに登録、公開する方針を今年度に打ち出した。
文部科学省で公開について検討する委員会の委員を務める西尾章治郎・大阪大総長は「公開が進めば、異分野のデータが組み合わさって新たな研究領域をひらきやすくなる」と話している。
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