2016年2月16日火曜日

大臣が語る、加速する大学改革のゆくえ

馳浩(はせ・ひろし)文部科学大臣が、大学改革について、雑誌(Between 2016 2-3月号)のインタビューに答えています。

概ねこれまで文部科学省が語り行ってきた路線を踏襲した内容になっていますが、現役の大臣がいま何を考えているのか、わかりやすくまとめられています。抜粋してご紹介します。(下線は拙者が追加)




-国立大学改革をめぐっては、大臣 が「32点」と評した2015年6月8日付 の文部科学省通知(国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて)の問題が、いまだにくすぶっている。改革の必要性については。

「32点」は誤解を招くような文章表現に対する採点であり、内容のことを指しているのではない。また、文科省が人文社会科学を軽視していることは全くない。むしろリベラルアーツはわが国のイノベーションにとって極めて重要だと認識している。通知をよく読めば「廃止」は教員養成系のゼロ免課程に掛かっている し、そう説明すれば理解していただけるはず。

しかし、通知で組織の見直しを求めていることは事実。第3期中期目標・中期計画(2016年度から6年間)に向けた各大学の取り組みが不十分だという認識なのか。また、2016年度からの「3つの重点支援枠」 (①地域貢献、②専門分野、③卓越研究) を踏まえた国立大学、とりわけ地方大学のあり方についての考えは。

各大学の取り組みが不十分だとの認識は持っていない。今、出てきている方向性は、地に足が着いたものだと認識している。

3つの要素は、どの大学も目標にすべき。「地方創生」 「一億総活躍」の観点からもローカル性は極めて重要だし、知の拠点として自治体や企業、学校の中核的な人材育成を担うのだから、地域に貢献しない地方大学はあり得ない。

地域社会においても、製造業はもとより観光業、農林水産業でも、グローバルな視点は欠かせない。そのためにも、アジアをはじめとする多様な国・地域と、留学生の受け入れと送り出しという双方向の学生交流が、どの大学でも必要になる。

わが国の誇りは、何といってもノーベル賞受賞者を毎年のように出し続けていること。その理由は何十年も前から基礎研究に力を入れてきたからだといえる。若手研究者が安心して仕事に向き合える環境があってこそだろう。イノベーションの芽は、わが国の大学が絶対に支えていかなければならない。それも旧帝大だけではだめ。全国どの地域にある大学でも トップランナーがいなければいけないし、いなければ学長がスカウトしてくるぐらいのことをしてほしいそのために学校教育法を改正し、学長のリー ダーシップを強化したわけだから。

私立大学の改革については。

もう少し経営の透明性を内外に示 していく必要がある。私学助成をするにしても、各大学が経営計画の中で、これだけの資産の中でよい教育研究を行うために何をしたいのかを示してもらわなければならない。内部留保がたくさんあるのに、補助金はくださいというのでは、国民の理解を得られない

総合的な高等教育政策の方向性を国公私立の大学それぞれに意識してもらい、限られた投資を最大限活用しても らわなければならない。国としても、基盤的経費は支えていく必要がある。

そのうえで、地方単位あるいは全国での連携や大学同士の統合もあり得ると思う。学生の数が減少しても、経営基盤を強くすれば、より強みに特化した教育研究の推進ができるはずだし、それを促すことも必要だろう。全ては学生、地域、ひいてはわが国のイノベーションのため。

閣僚の一人としては、財政健全化計画という政府の方針に従わざるを得ない。国立大学の運営費交付金や私学助成、第5期科学技術基本計画の投資目標にしても、根拠がなければ国民に理解されない成果目標も意識しながら、高みをめざして予算要求をしていく必要がある。それには学長・理事長がリーダー シップを発揮し、経営方針を決定、実現していくことが重要

グローバル人材、イノベーション 人材の育成のためには、何が必要か。

まずは知・徳・体の育成。特に大学スポーツは、もっと本腰を入れてもいいのではないか。徳の面ではボランティアや国際交流、地域交流を盛んにしてほしい。

2つ目は、たたけば伸びる学生時代に、本物に触れさせること。製造業の現場を体験したり、ノーベル賞学者など、世界のトップランナーの業績とは何か、それを生み出したものは何かを考えさせる機会が必要。それこそがリベラルアーツ。

最後に、大学関係者に向けてメッ セージを。

大学は「団結あるのみ」。学長も理事も教授会も、同じテーブルに着いて話し合い、最終的には学長の判断に委ねる。理事会にも経営感覚のある人をどんどん入れていく必要がある。そのために文科省としても、大学と団結していく考え。