「職員問題のいま」(IDE 2016年8-9月号)をご紹介します。学長、理事など大学経営者に求められる意識改革を指摘しています。
一時ほどは教職協働という言葉を聞かなくなった。教員と職員が、それぞれの特質や能力を生かしつつ、協働して仕事をするのは当然のことだが、現実にはそれが当たり前ではなく、職員側から教職協働を進めようという議論が展開されてきた。特に熱心な大学職員は、忙しい合間をぬって、大学院で学び直したり、講習会型にとどまらない研修を受けたり、研鑽を積んでいる。プロフェッショナルとしての大学行政管理職員の確立を目指して設立された大学行政管理学会も来年には20周年を迎える。
筆者もこうした場に関わっているが、ここ最近、彼ら自身の関心も変化してきた印象を持っている。以前は、職員の役割の再認識、そのために職員の能力や専門性をいかに向上させられるか、というのが関心の中心があった。職員に対するアンケート調査が多く実施されたのもこうした問題意識を反映してのことである。
こうしたテーマが消えたわけではないが、最近は、大学の経営陣や教員の役割や意識を研究してみたいという職員が増えている。
教職協働のためには、職員だけでなく、教員の理解や変化も必要であること、そうしたきっかけを作り出すキーパーソンとして重要であるはずの経営陣の無理解に意識がシフトしていくのは自然のことであろう。より対等な関係での教職協働が進まない背景には、教員のお手伝いをしていればよいという職員自身の意識の問題も依然として大きいし、身につけるべき能力の問題もあるが、当然それだけではない。職員として頑張り、最終的に理事等での立場で経営の中核として参加できる道は開かれているのか、委員会等の長として職員が任命され、裏方メンバ一としてではなく、正式メンバーとして参加しているのかという機会の問題も大きい。機会があってこそ、成長へのインセンティブや責任感も出てくる。また、評価活動は典型だが、大学に求められる機能が広がる中で、各種委員会も増え、その準備にさく時間も増えている。こうした会議などの効率化は職員ではなく、管理側が対処すべき事柄である。
教職協働の議論で、よく「教員と職員が気軽に話し合える雰囲気」などの重要性が言われたが、そういう問題ではないのではと違和感を覚えていた。若い熱心な職員が、大学全体のマネジメントを向上させるための様々なアクターや諸要因の関係に目を向きはじめたことはよい変化であるが、経営陣の意識も同時に変えていかねば、バーンアウトするのではないかと危機感を抱いている。プロフェッショナルとしての大学経営者の確立をめざす動きも加速することを願う。