加盟国では学習者がどこで何を学び、どんな資格や技能を持っているかを電子履歴の形で、大学や企業にオンラインで送ることができる。発行元や発信・送信記録も確認でき、私が25年前に経験したような紙の書類の真正性の確認はとうに不要になっている。
紙文化の日本は、こうした潮流から完全に取り残されている。海外赴任中、大学の卒業・成績証明書を取り寄せるのに苦労した経験がある方もいるだろう。コロナ禍によるキャンパス閉鎖や事務局のリモートワークで、卒業証明書の発行が遅れるなどの問題も起きた。
証明書類のデジタル化は、海外留学する日本人や来日する留学生だけでなく、就職や転職で学修歴の証明書を必要とする全ての学生や卒業生にメリットがある。特にこれからは終身雇用が崩れ、1つの職場に在籍する期間が短くなり、転職機会が増えることが予想される。デジタル化の必要性は一段と高まる。
実証実験は1年間の試行を経て21年秋から本格運用に移行する予定だ。主要国で使われているものの中から日本の大学の実情に合ったシステムを選んでおり、多くの大学の参加を期待したい。
新政権の誕生で各分野のデジタル化に弾みがつきそうだが、大学も遅れを挽回する必要がある。学修歴証明書のデジタル化は、優秀な外国人材や留学生の獲得に寄与すると確信している。
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大学でも脱・紙文化の動きが始まった。東北大は6月、「オンライン事務化」を宣言。学内の申請や決裁の手続きをデジタル化するとした。押印(ハンコ)の原則廃止により、年に約8万時間分の作業が減るという。
デジタル化は大学の国際化とも密に関わる。9月入学の拡大などをしても、海外からオンラインで直接出願できる仕組みが整わないと、外国の若者にとって日本の大学は身近な存在にならない。
学生の国際流動性を高めるには、事務手続きなども含めた総合的な改革が必要だ。(抜粋引用)