国立大学が社会の期待にスピード感を持って目に見える形で応えるため、グローバル化やイノベーション創出などの機能強化、人事・給与システム改革、ガバナンス改革など一体的に進めることとし、積極的に改革に取り組む大学には予算面でも重点的な支援を行うこととしています。
公表された資料がパワーポイントにより作成されているため、これを読みやすくテキスト化してみました。(平成25年12月2日付 文教ニュース 第2268号から抜粋引用)
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国立大学改革プラン(平成25年11月)
1 国立大学改革プランの位置付け(略)
2 国立大学法人化の成果(略)
3 社会経済状況の変化(略)
4 第三期に目指す国立大学の在り方
各大学の強み・特色を最大限に生かし、自ら改善・発展する仕組みを構築することにより、持続的な「競争力」を持ち、高い付加価値を生み出す国立大学へ
各大学の機能強化の方向性
◆世界最高の教育研究の展開拠点
・優秀な教員が競い合い人材育成を行う世界トップレベルの教育研究拠点の形成
・大学を拠点とした最先端の研究成果の実用化によるイノベーションの創出
◆全国的な教育研究拠点
・大学や学部の枠を越えた連携による日本トップの研究拠点の形成
・世界に開かれた教育拠点の形成
・アジアをリードする技術者養成
◆地域活性化の中核的拠点
・地域のニーズに応じた人材育成拠点の形成
・地域社会のシンクタンクとして様々な課題を解決する地域活性化機関
5 機能強化を実現するための方策
各大学の機能強化の視点
▽ 強み・特色の重点化
▽ グローバル化
▽ イノベーション創出
▽ 人材養成機能の強化
自主的・自律的な改善・発展を促す仕組みの構築
①社会の変化に対応できる教育研究組織づくり
②国際水準の教育研究の展開、積極的な留学生支援
③大学発ベンチャー支援、理工系人材の戦略的育成
④人事・給与システムの弾力化
⑤ガバナンス機能の強化
6(1) 社会の変化に対応できる教育研究組識づくり
▽各大学と文部科学省が意見交換を行い、研究水準、教育成果、産学連携等の客観的データに基づき、各大学の強み・特色・社会的役割(ミッション)を本年中に整理・公表
▽ミッションを踏まえ、学部・研究科等を越えた学内資源配分(予算、人材や施設・スペース等)の最適化、大学の枠を越えた連携、人材養成機能強化等の改革を改革加速期間中に実施する大学に対し、国立大学法人運営費交付金等により重点支援
▽改革加速期間中に各大学の改革の取組への配分及びその影響を受ける国立大学法人運営費交付金の額を3~4割に
▽各大学が中期計画を見直し、国立大学法人評価委員会において改革の進捗状況を毎年度評価。その際、産業界等大学関係者以外からの委員を増やすなど国立大学法人評価委員会の体制を平成25年度中に強化するとともに、先進的な取組は積極的に発信
▽第三期の中期目標・中期計画の検討に当たっては、各大学のミッションを踏まえ、計画的に教育研究組織の再編成、学内資源再配分を最適化
第三期には、教育研究組識や学内資源配分について恒常的に見直しを行う環境を生み出す
6(2)-1 国際水準の教育研究の展開
▽海外大学のユニット誘致による領域横断的共同カリキュラムの構築、国際共同大学院の創設、外国人教員の積極採用並びに英語による授業の拡大、多様な国、地域からの留学生の積極的な受入れ及び日本人学生の海外派遣の促進等に取り組む
▽文部科学省では、国際化を断行する大学を重点的に支援し、スーパーグローバル大学を創設するなど、国際的存在感を高める
今後10年で世界大学ランキングトップ100に10校ランクイン
6(2)-2 積極的な留学生支援
日本人の海外留学
▽世界で活躍するグローバル人材を育成するため、意欲と能力のある若者全員に留学機会を付与し、奨学金の支給に加え、大学と企業等が連携した事前・事後研修の実施等により、日本人学生等の海外留学をきめ細かく支援する官民が協力した新たな制度を創設
▽カリキュラム上、実習や実験が多く、留学期間の確保に工夫を要する分野における海外留学を促進
外国人留学生の受入れ
▽各大学の特色にあわせた重点地域等を設定し、優秀な外国人留学生の戦略的な受入れを実現
▽優秀な外国人留学生を積極的に獲得するため、海外拠点を活用した現地選抜や渡日前入学許可を促進する仕組みの構築
▽日本への留学にメリットを見いだせるようにするため、産業界と連携した環境整備を実施(就職支援など)
▽帰国留学生のフォローアップ等の実施により、日本留学経験者のネットワークを形成
2020年までに、日本人の海外留学者数を6万人(2010年)から12万人に、外国人留学生の受入数を14万人(2012年)から30万人に倍増
6(3) 大学発ベンチャー支援、理工系人材の戦略的育成
▽国立大学から大学発ベンチャー支援会社等への出資を可能とする法案を国会提出(産業競争力強化法関連)
▽ミッションの再定義等を踏まえて、今年度中に「理工系人材育成戦略」(仮称)を策定
▽同戦略を踏まえつつ、国立大学の大学院を中心に教育研究組織の再編・整備や機能の強化を図る
今後10年で20の大学発新産業を創出
6(4) 人事・給与システムの弾力化
▽運営費交付金について、必要額を確保した上で退職手当にかかる配分方法を早期に見直し、併せて競争的資金制度において間接経費30パーセントを確保しこれを活用することにより、人事・給与システム弾力化がさらに加速
▽各大学の改革の取組への重点支援の際に、年俸制の導入等を条件化
▽特に、教員の流動性が求められる分野において、改革加速期間中に1万人規模で年俸制・混合給与を導入(例えば、研究大学で20%、それに準ずる大学で10%の教員に年俸制を導入することを目標に設定)
▽年俸制の趣旨に沿って、適切な業績評価体制を整備
▽優秀な若手・外国人の力で大学力を強化するため、シニア教員から若手・外国人へのポスト振替等を進める意欲的な大学を資金面で積極支援し、改革加速期間中に1,500人分の常勤ポストを政策的に確保することを目指す
第三期には、国内外の優秀な人材の活用によって教育研究の活性化につながる人事・給与システムに
6(5) ガバナンス機能の強化
▽中央教育審議会大学分科会組織運営部会では、学長がリーダーシップを発揮できる体制の整備や学長の選考方法、教授会の役割の明確化等、多岐にわたる検討を行っており、年内に大学のガバナンスの在り方について審議をとりまとめる予定。文部科学省では審議結果等を踏まえて所要の制度改正や支援等を実施予定
中央教育審議会大学分科会組織運営部会審議まとめ「大学のガバナンス改革の推進について」(素案)平成25年11月19日のポイント
◇各大学は、教育・研究・社会貢献機能の最大化のため、本部・部局全体のガバナンス体制を総点検・見直し。責任の所在を再確認するとともに、権限の重複排除、審議手続の簡素化、学長までの意思決定過程の確立を図る。
◇国は、学長のリーダーシップの確立と教職員の意識改革のため、効果的な制度改正とメリハリある支援を実施。
◇社会は、大学と積極的に関わり、学長のリーダーシップを後押し。
<主な内容>
1 学長のリーダーシップの確立
・学長補佐体制の強化(総括副学長等の設置、高度専門職の創設等)
・予算、人事、組織再編におけるリーダーシップの確立等
2 学長の選考・業績評価
・選考組織が主体性を持って、求められる学長像を示し、候補者のビジョンを確認して決定等
3 教授会の役割の明確化
・教育課程編成、学生の身分、学位授与、教員の研究業績審査等を審議等
4 監事の役割の強化
・ガバナンスの監査
・常勤監事の配置等
第三期には、学長がリーダーシップを発揮し、各大学の特色を一層伸長するガバナンスを構築
6(6) 第三期中期目標期間に向けての当面の目標
▽教育研究組織や学内資源配分について恒常的に見直しを行う環境を生み出す
▽国内外の優秀な人材の活用によって教育研究の活性化につながる人事・給与システムに
▽学長がリーダーシップを発揮し、各大学の特色を一層伸長するガバナンスを構築
▽2020年までに、日本人の海外留学者数を6万人(2010年)から12万人に、外国人留学生の受入数を14万人(2012年)から30万人に倍増
▽今後10年で世界大学ランキングトップ100に10校ランクイン
▽今後10年で20の大学発新産業を創出
7 自主的・自律的な改善・発展を促す仕組みの構築
▽第三期における国立大学法人運営費交付金や評価の在り方については、平成27年度中に検討し抜本的に見直す
▽その際、改革加速期間中の取組の成果をもとに、
・各大学が、強みや特色、社会経済の変化や学術研究の進展を踏まえて、教育研究組織や学内資源配分を恒常的に見直す環境を国立大学法人運営費交付金の配分方法等において生み出す
・新たな改革の実現状況を、その取組に応じた方法で可視化・チェックし、その結果を予算配分に反映させるPDCAサイクルを確立する
▽第三期の中期目標・中期計画の策定に向けて、平成26年度中に組織業務の見直しに関する視点を提示。また、平成27年度には中期目標・中期計画の見直し方針を提示
8 最後に
▽文部科学省では、国立大学と一体となって、社会経済の変化を受けて、今後迅速に改革を加速化
▽産業界においては、国立大学と積極的に対話し、大学の機能強化にあらゆる側面から連携・支援をお願いしたい。
▽特に、人材育成に関しては、大学教育の充実と併せて企業側の協力も不可欠。就職・採用活動時期の変更や採用時における多面的な能力評価、採用後の社会人の大学における学び直し等について、特段の配慮をお願いしたい。
(関連)「国立大学改革プラン」の公表を受けて(声明)(平成25年11月26日国立大学協会)
(関連報道)
文科省が国立大改革プラン 世界ランクアップへ教員年俸制導入も(2013年11月26日産経新聞)
文部科学省は26日、国立大学法人の改革プランを発表し、各大学の強みや特色を生かすよう、運営費交付金を傾斜配分して自主改革を促す方針を明らかにした。大学教員の給与システムの改革にも踏み込み、年俸制の導入を促進する。一連の改革により、今後10年間で世界の大学ランキングトップ100に、日本の大学から10校以上ランク入りすることを目指している。
文科省では、国立大学が法人化された平成16年度以降、6年ごとに中期目標を定めて改革を進めてきた。今回発表された改革プランは、平成28年度からスタートする第3期中期目標のことで、「各大学の機能強化」を打ち出した。
具体的には、(1)各大学の強みや特色を年内にまとめて公表し、その強みを伸ばすような取り組みに交付金を傾斜配分する(2)国立大学時代と変わらない大学教員の給与システムを見直し、能力や成果を反映した年俸制の導入を促進する(3)教授会の影響力が強い大学運営のあり方を改め、学長がよりリーダーシップを発揮できるようにする-などの目標を掲げている。
下村博文文科相は26日の閣議後会見で「旧態依然の大学運営では厳しい国際社会で生き残るのは難しい。改革を進めることは必然的な時代の流れで、文科省が支援をするのは未来への投資として必要」と話した。
文科省によると、国立大学の法人化以降、産学連携の共同研究が倍増するなど一定の成果がみられるものの、国際評価はまだまだ低いのが現状だ。イギリスの教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」が今年10月に発表した世界大学ランキングでトップ100入りした日本の大学は、東京大(23位)と京都大(52位)の2校だけだった。文科省では「各大学の自主的な改革により、国際評価を一層高めたい」としている。
文科省、国立大の機能強化を支援 運営費交付金を傾斜配分(2013年11月26日共同通信)
文部科学省は26日、国立大への運営費交付金を傾斜配分し、機能強化に向けた組織改変に取り組む大学を重点支援する「国立大学改革プラン」を発表した。
下村文科相は記者会見で「旧態依然の大学運営をしていたのでは、厳しい国際社会で生き残れない。社会の期待にスピード感を持って応えてもらいたい」と話した。
プランによると、各大学はそれぞれの特色や社会で求められる役割を設定。達成のため、既存の学部を見直すなど改革に努める大学への運営費交付金を上積みする。
国立大改革プランを策定=公的支援重点配分で後押し-文科省(2013年11月26日時事通信)
文部科学省は26日、国際化や研究、人材養成など国立大の機能強化に向けた「国立大学改革プラン」を発表した。教員の年俸制導入など積極的な組織改革を進める大学には、運営費交付金などの公的支援を重点的に行う。
文科省によると、各大学には強みや特色に応じ、世界や国内トップレベルの教育研究拠点となるか、地域の中核的拠点を目指すかなどの方向性を明確化させる。その上で、改革の進行状況を評価し、運営費交付金の配分額に差をつける。
年俸制は、理工系や生命科学など教員の流動性が求められる分野を中心に、2015年度までに1万人規模での導入を目指す。
国立大教員に年俸制 文科省、競争を導入・退職金廃止(2013年11月26日朝日新聞)
国立大学の教員の給与について、文部科学省は、年功序列を改めて退職金を廃止し、業績を反映させる年俸制への転換を進める方針を決めた。「競争がなく、ぬるま湯体質だ」との批判もある国立大の組織全体の活性化を進めるのが狙いで、26日にまとめた「改革プラン」で示した。当面の目標として、理工系を中心に2015年度末までに1万人を年俸制に切り替えるとしている。
文科省はあわせて、企業からの研究資金などを年俸に組み込む「混合給与」も進める。また、教授の定年退職の際、「弟子」の准教授を無条件に昇進させるのではなく、有能な若手や外国人の登用を促す。
国立大は全国に86校あり、教員の総数は約6万3千人。文科省によると、現在も新規採用や年数を限った契約で年俸制をとるケースはあるが、全体で数千人にとどまるという。
計画では、勤続年数が長い教授らも終身雇用を維持しつつ年俸制への転換を進める。退職金を廃止する分、毎年一定額を従来の給与に上積みするが、一方で、以後の年俸は査定を反映させる。
国立大改革プラン:教員に年俸制 機能強化へ-文科省(2013年11月26日毎日新聞)
文部科学省は26日、国立大の機能強化に向けた方針「国立大学改革プラン」を発表した。学長の強いリーダーシップを確立し、各大学の強みを精査して将来計画を立案させる。2015年度中に教員1万人に年俸制を導入するなどし、国際競争力や地域で果たす役割を強める。文科省は国立大への運営費交付金の3〜4割を改革関連に重点配分する。
プランは、改革加速期間(今年度〜15年度)に取り組む内容を提示。年齢層の高い教員から若手・外国人への流動化を進めるため、国立大の全教員の約16%に該当する1万人が年俸制、または複数から給与を受けられる混合給与制となるよう、各大学の人事・給与システムの改革を促す。各大学の強みや役割を整理する「ミッションの再定義」は、今年中に策定・公表する。
基本的な体制を整えた上で、第3期中期目標期間(16年度~)に、各大学が持続的な競争力を培い、高い付加価値を生み出せるよう目指すとしている。
当面の目標として、教育研究組織や学内資源配分を恒常的に見直せる環境作り▽20年までに留学生(日本人、外国人いずれも)を倍増▽今後10年間で世界大学ランキング上位100校に日本の大学を10校以上入れる▽今後10年間で20以上の大学発新産業を創出する−−など6項目を示した。
国立大運営費交付金を重点配分 4000億円、文科省が改革プラン(2013年11月26日日本経済新聞)
文部科学省は26日、国立大学の教育・研究機能の強化に向けた「国立大学改革プラン」を発表した。国際化や理工系を中心とした人材育成を重点課題とし、教員の年俸制導入など積極的な組織改編に取り組むよう求めた。文科省は来年度から運営費交付金の配分方法を抜本的に改め、プランに沿った改革を進める国立大に対し、計約4千億円を重点配分する。
26日の閣議後の記者会見で、下村博文文科相は「旧態依然の大学運営では厳しい国際社会を生き残るのは難しい。各大学の特色を最大限に生かした機能強化をスピード感をもって推進する」と述べた。
プランによると、各国立大には強みや特色に応じ(1)世界トップレベルの教育・研究拠点(2)全国的な教育・研究拠点(3)地域活性化の中核的拠点-のいずれを目指すのか、方向性を明確化させる。その上で、持続的な競争力を持ち、高い付加価値を生み出すため、国際化やイノベーション創出に取り組むよう求めた。
国際化を進める具体策として挙げたのは、海外大学の研究ユニットの誘致や国際共同大学院の創設など。イノベーション創出では、国立大から大学発ベンチャー支援会社への出資が可能となるよう、産業競争力強化法案を臨時国会に提出する。
優秀な外国人教員を積極的に採用するため、教員の給与体系も見直す。2015年度末までに教員1万人に年俸制を導入。外国人や若手研究者向けに1500人分の常勤ポストを確保するとした。
文科省によると、改革の進捗状況は毎年度評価する。国立大に対する運営費交付金(13年度で年間1兆700億円)のうち約4千億円は改革に積極的な大学に重点的に配分する。