グラッドウェルは、20世紀初めニューヨークに移住して、被服産業で成功したユダヤ人について触れている。
彼らの子どもたちは、ロースクールを卒業しても、ニューヨークの一流法律事務所には採用されなかった。
当時そうした事務所は、裕福なプロテスタントの家庭出身の弁護士を雇っていたからだ。
そこで、ユダヤ人弁護士は自力で小さな事務所を開き、企業の敵対的買収訴訟など一流事務所が敬遠する案件をもっぱら扱った。
その結果専門スキルを身につけて、1970年代から80年代の敵対的買収訴訟の急増に乗じることができた。
この新市場で優位に立った彼らは、以前自分たちを煙たがった大手事務所の弁護士よりはるかに多く稼いだ。
「小さな偶然のできごとはきわめて重要だ」と認めることは、「成功は才能や努力とは無関係だ」と主張するのとは違う。
競争が激しい分野で成功する人は、とても優秀でたいへんな努力家だ。
ウォーレン・バフェットが会長を務めるバークシャー・ハサウェイの副会長チャーリー・マンガーはこう記している。
「望むものを手に入れるためのいちばん確かな方法は、それにふさわしい人になろうと努力することだ」。
成功を求める人にとってなにより役立つ助言は、他者に高く評価される仕事において深い専門知識を身につけろ、ということだろう。
専門知識は運ではなく、何千時間もの努力によって身につく。
それでも、偶然のできごともまた重要だ。
成功は大きな幸運に恵まれなければほとんど不可能だからだ。
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一見すると不幸な出来事が、後になって考えてみると、それが幸せになるきっかけだった、と思うことは多い。
「幸せは、不幸の顔をしてやってくる」と言われるゆえんだ。
それを、「ピンチはチャンス」ともいう。
《成功は“ランダム”にやってくる! 》(阪急コミュニケーションズ)の中にこんな言葉がある。
『成功者は、偶然の出会い、突然のひらめき、予期せぬ結果などを経験している。彼らは運命を変えた瞬間のことを振り返り、「あの瞬間がすべての始まりだった」と言う』
何か予期せぬことがあったとき、そこに何か意味があるのかもしれない。
そんなときは、たとえそれが面倒で、損なことであったとしても、その流れにとりあえず乗ってみることも必要だ。
理屈で考えず、野生の勘や、ひらめきを大事に、とにかく行動してみるのだ。
世界は予測不可能の速さで大きく変化している。
だからこそ、誰もが予期せぬ方法で、世界に打って出る可能性を持っている。
「小さな偶然のできごとはきわめて重要だ」
偶然の出会いや、突然のひらめきを大事にする人でありたい。