2011年12月23日金曜日

国立大学改革のスピードを加速する仕組みの導入

既に、報道等でご案内のとおりですが、平成24年度予算に係る閣僚折衝が19日から始まり、このうち文部科学省関係では、国立大学法人への運営費交付金を1%余り減らす一方、学部の再編や他の大学との連携など、大学改革を行った場合に支援する新たな補助金を創設することが固まりました。

このうち、国立大学運営費交付金については、復興特別会計分の57億円を含め、今年度予算に比べ、▲105億円減(▲0.9%)の1兆1,423億円、また、運営費交付金とは別に、今後のわが国の再生に向けて、大学改革を推進するため「国立大学改革強化推進事業」(138億円)を新設(補助金による補助事業)することになっています。

運営費交付金の内訳や「国立大学改革強化推進事業」の具体的内容等の詳細事項についてはまだ決まっていないようですが、平成24年度予算案については、12月24日(土)閣議決定の予定です。

文部科学大臣と財務大臣による大臣折衝に関連する資料が両省から発表されているようですが、WEB上ではまだ見当たりませんので、発表資料の中から主なものをご紹介したいと思います。

(関連報道)大学改革推進へ138億円 政府予算案、資金面から支援(2011年12月19日 日本経済新聞)


それにしても、今回は露骨な”財政による政策誘導”ですね。財務省してやったり! 文部科学省は打つ手なし! といった感じでしょうか。この政策によって、補助金獲得のための過度な「大学間競争」が生じ、これまで以上に「大学間格差」が拡がるのではないかと懸念するのは私だけでしょうか。


平成24年度文教予算(国立大学関係)のポイント

国立大学の改革を強力に推進するために、従来の経費を見直す一方で、大学改革をこれまでにない深度と速度で進めるための経費を新設し、大学改革に向けた予算の見直しを実施

1 国立大学法人運営費交付金 11,582億円→11,366億円(▲161億円、▲1.4%)(別途、復興特別会計計上57億円)

大学を取り巻く環境の変化に即応するために、国立大学の改革についての基本的考え方(別紙)に基づき、スピード感を持って大学改革に取り組むこととし、国立大学の教育研究の基盤経費である運営費交付金11,366億円を措置(第二期中期目標期間最大の削減額、同最大の削減率、23年度は▲0.5%)。復興特別会計計上分を加えると、11,423億円(▲0.9%)を措置。

(主な内容)
  • 提言型政策仕分けの結果を踏まえ、運営費交付金の算定の見直しにあたり第一期中期目標期間の評価結果を反映し、法人運営の活性化が図られるように一定以上の評価を受けた大学法人に対して重点的に支援(30億円)。
  • 「マニフェスト」を踏まえ、意欲と能力ある学生が経済状況にかかわらず修学の機会を得るために授業料減免枠を拡大 225億円→252億円(+27億円)(学部・修士:3.6万人(7.3%)→4.1万人(8.3%)、博士課程:0.6万人(12.5%)。更に復興特別会計計上分として14億円(0.2万人)を別途措置。また、卓越した学生に対する授業料免除として新たに2億円(349人)を創設。

2 国立大学改革強化推進事業(仮称) 138億円

国立大学の教育研究の活性化、多様性、開放性を図るとともに、世界の大学と対等に伍していくため、国立大学改革を強力に進めることとし、大規模な大学改革の取組に対して重点的に支援。

(取組例)


  • 教育の質保証と個性・特色の明確化(教員審査を伴う学部・研究科の改組等)
  • 大学間連携の推進(学部・研究科の共同設置、地域大学群の連合・連携等)
  • 大学運営の高度化(事務処理の共同化、大学情報の一元化等)




  • (別紙)今後の国立大学の改革について(基本的考え方)

    今後の我が国の再生のため、大学改革の促進が強く求められており、中央教育審議会のみならず、政府の行政刷新会議の政策提言型事業仕分けや予算編成政府・与党会議における議論などにおいても、大学改革が大きなテーマの一つとなっている。

    大学改革の課題は多様であり、大学における人材育成のビジョンづくり、グローバル人材の育成、入学から卒業までの学力の担保等の学生の質保証など、大競争時代における国際競争力の強化に加えて、少子化時代における持続可能な経営を目指した足腰の強化・合理化、財政危機における効率的な経営の努力など、国公私立大学を通じて検討すべき課題が少なからずある。

    それとともに、文部科学大臣が定める中期目標に基づき、運営費交付金の措置を受けて運営される国立大学の機能を抜本的に強化することも、大学改革の最重要課題の一つである。

    国立大学については、幅広い分野において欧米の主要大学に伍して教育研究活動を展開している大学も存在するが、それ以外にも、国際的に優れた教育研究水準にある専門分野を有する国立大学も少なからず存在しており、知の国際競争を勝ち抜くためには、これらについて重点的な強化策を講じる必要がある。また、国立大学の役割として、特化した分野・地域での卓越した人材育成の視点も必要である。

    このため、大学の枠組みを超えてオール・ジャパンの視点から、有機的な連携協力を展開出来るよう、大学間のネットワークである「大学群」の創出など連携協力システムの構築に取り組むとともに、個々の大学においては、個性や使命の明確化を図り、学部など学内の教育研究組織の大規模な再編成、外国人や実務家等の教員や役員への登用拡大など人材交流の促進などにより、知の競争力の向上に努めることが重要である。

    こうした施策を効果的に推進するためには、必要な財政措置の確保に加え、「大学群」のスケールや求められる機能、大学間の連携協力促進のための支援方策、それらを踏まえた多様な制度的選択肢の考え方(例えば、一法人複数大学方式(アンブレラ方式)、国立大学運営費交付金の配分基準などについての更なる整理が必要である。

    こうした点に関して、文部科学省内に設けられるタスクフォースにおいて、これまでの関係者の議論も参考にしながら所要の整理を行い、すみやかに改革に着手したい。



    国立大学改革強化推進事業 13,833,000千円(新規)

    1 目 的

    国際的な知の競争が激化する中で、世界の大学と対等に伍していくためには、特に国立大学改革を強化推進することで、将来を支える人材の育成や我が国の国際競争力の強化にも寄与。


    2 対 象

    国立大学改革を強化推進するため、例えば以下のような取組をこれまでにない深度と速度で行う国立大学法人に対し重点的支援を実施。

    (取組例)

    ○教育の質保証と個性・特色の明確化<
    • 教員審査を伴う学部・研究科の改組
    • 外国人や実務家等の教員や役員への登用拡大
    • 双方向の留学拡大のための抜本的制度改革
    (支援のイメージ)
    新たな教育研究組織の整備に必要となる基盤の整備と海外や産官学との人的連携強化を抜本的に推進する経費を総合的に支援


    ○大学間連携の推進
    • 互いの強みを活かした学部・研究科の共同設置
    • 地域の大学群の連合・連携
    • 大学の粋を超えた大学間連携による教育研究の活性化
    (支援のイメージ)
    新たに大学間連携を行うために必要となる基盤の整備(遠隔教育システムなど)と連携による教育研究の展開に必要な経費(連携により必要となる学生・教職員への支援を含む)を総合的に支援。


    ○大学運営の高度化
    • 効率的な大学運営のための事務処理等の共同化
    • 大学情報の一元管理と適性な活用による運営体制の強化
    (支援のイメージ)
    事務システムの統合等による改修、インターフェイス化など、連携による高度な大学運営に必要となる経費を総合的に支援。


    3 本補助金の効果
    • 組織改組の構想段階からの支援が可能となることで大学改革のスピード感が加速。
    • 本事業の実施に当たり、中期目標・中期計画の変更を課すことで、大学改革の達成目標・達成時期が明確化。

    4 補助率 定額