2017年6月12日月曜日

記事紹介|世界に開かれた強い大学システムを作る

先日、競合する複数の会社が運搬コストを節減するため貨物列車を共同使用する、というニュースを見た。

限られた資源を共同利用して、効率的に新しい価値を生み出す経済活動(広い意味でのシェアリング・エコノミー)が盛んになっている。カーシェアリングやシェアハウス的な試みが様々な分野に拡がる。例えば、岡山県真庭市では、芸術家が長期滞在し創作活動を行う「アーティストインレジデンス」に加えて、芸術家だけでなく異業種の外国人が同居するインターナショナル・シェア・ハウス方式を導入した。

大学の世界でも、効率的運営と成果最大化を狙って、複数大学参加によるベンチャーファンド、留学生支援などこれまでも様々な連携が進んできた。また、「大学が多すぎる」との指摘は周期的に強くなり、それに伴って大学統合も行われた。昨今、「国公私立の枠を超えた大学再編」が、政府の骨太方針や成長戦略に盛り込まれそうな勢いで、地方大学振興等有識者会議、中教審などで議論が行われている。

大学再編を想定する場合、その背景・目的によって、(1)地方の経営困難な私学救済策や人材確保策としての公的組織化、(2)県内の高等教育基盤強化のための連携、(3)県域を越えた経済圏などを想定した大学システム構築、の3つのパターンに分類できるのではないか。

(1)と(2)は、地方創生にとって重要な論点で、三重県・三重大学などから積極的な提案がされている。しかし、下手すると一県単位のビジョンしか描けず、各県が資源を取り合うこととなり、縮小均衡へと陥る危険性がある。世界との繋がりも視野に入れた発展モデルとなるかどうかが鍵だ。

(3)のパターンは、産学官の力を結集して、首都圏以外の地域での世界に開かれた強い大学システムを作ることができれば、大きなインパクトを持つ。(1)と(2)に留まるのでは無く、(3)も含めて現場からの前向きな提案が欲しい。

折しも、加計学園獣医学部新設を巡って官邸・内閣府VS文科省前事務次官の構図が注目を浴び、未曽有の政治問題となっている。高等教育局を始め文部科学省は、本来行うべき業務に全力を尽くせないかもしれない。こんな時こそ、従来に増して大学人が日本の大学全体の発展のために奮起するべき時ではないか。

大学間の連携から世界と戦う大学再編へ|平成29年6月5日文教ニュース から