初代文部大臣森 有禮(もり ありのり)が職員の心構えを記した「自警」
自警
文部省ハ全国ノ教育学問ニ関スル行政ノ大権ヲ有シテ其任スル所ノ責随テ至重ナリ 然レハ省務ヲ掌ル者ハ須ラク専心鋭意各其責ヲ盡クシテ以テ学政官吏タルノ任ヲ全フセサル可カラス 而テ之ヲ為スニハ明ニ学政官吏ノ何モノタルヲ辨ヘ決シテ他職官吏ノ務方ヲ顧ミ之レニ比準ヲ取ルカ如キコト無ク一向ニ省務ノ整理上進ヲ謀リ若シ其進ミタルモ苟モ之ニ安セス愈謀リ愈進メ 終ニ以テ其職ニ死スルノ精神覚悟セルヲ要ス
明治19年(1886)1月 有禮自記
(解釈)
文部省は、全国の教育学問に関する行政の大権を有しているので、その責任は大変に重いものである。
したがって、文部省の職務を担当する者は、専心誠意その責任を尽くして、学問をつかさどる行政官吏の任をまっとうしなければいけない。そしてそのためには、学問をつかさどる行政官吏であることをわきまえ、決して他の官吏と比べることはせず、ひたすら文部省の職務に熟達することを計り、ある程度になったからといっても満足しないで、もっと、もっと上に進むよう努力し、最後にはその職に死んでもいいくらいの精神を自覚することが必要である。