2008年3月28日金曜日

高等教育関係の法律改正など

去る3月17日(月曜日)にメルパルク東京において、文部科学省主催の大学設置等に関する事務担当者説明会が開催されました。

この説明会は、大学設置等の認可申請等の事務手続きに関して、大学設置基準等の改正内容や申請書類の変更点等について、適正な事務処理に係わる事項の周知を図ることを目的として開催されたものですが、文部科学省としてはなにぶん初めての試みのようで、2階席まで満員に近い状況で、しかも午後半日休憩なしの説明でしたが、大学の置かれた厳しい状況を反映してか、ほとんど席を立つ人もなく、説明後の質疑応答も驚くほど多くの熱心な質問が飛び交いました。

当日は文部科学省の担当官から次のような内容の説明が行われました。
  • 最近の設置認可の問題点について
  • 学校教育法、大学設置基準等の改正について
  • 設置基準等改正に伴う様式記入方法の変更について
  • 学部等の設置届出等について
  • 設置計画履行状況調査について
  • 認可申請における留意点等について
  • 寄附行為変更認可申請書類作成上の留意点について

当日の会議資料のうち、平成19年度に改正された学校教育法や大学設置基準のポイントについてご紹介します。


学校教育法等の一部を改正する法律の概要(高等教育関係)


教育基本法改正及び中央教育審議会答申等を踏まえ、学校教育法の規定を次のとおり改正(平成19年6月27日公布、12月26目施行)

大学等の目的関係等

1)大学に関する事項
  • 教育基本法に大学の基本的役割に関する規定(第7条)が置かれたことを踏まえ、現行の大学の目的に関する規定(新第83条)に、教育研究活動の成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するといった趣旨を追加
2)高等専門学校に関する事項
  • 高等専門学校の目的に関する規定(新第115条)についても、大学と同様に改正
  • このほか、公立大学法人が高等専門学校を設置できるよう規定を整備
大学等の情報提供等に関する事項
  • 大学は、教育研究活動の状況に関して、情報を公表するものとするといった趣旨を規定(高等専門学校、専修学校及び各種学校についても同様の趣旨の規定を整備)
  • 専修学校及び各種学校は、教育活動等の状況についての評価に努めるものとするといった趣旨を規定(※大学及び高等専門学校については既に新109条で規定)
大学等の履修証明
  • 大学は、文部科学大臣の定めるところにより、当該大学の学生以外の者を対象とした特別の課程を編成し、これを修了した者に対し、履修証明書を交付できるといった趣旨を規定(新第105条)(高等専門学校及び専門学校についても同様の趣旨の規定を整備)
※施行通知と条文を文部科学省のホームページに掲載
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/07081705.htm


大学設置基準等の一部改正の概要


平成18年の大学院設置基準の改正を踏まえ、学部段階においても教育力向上のための必要な措置を講じるとともに、基準をより明確にする観点から、以下のような改正を行った。

学部段階等の教育力向上を図るための改正(大学院については平成18年に先行して改正済)
  1. 大学は、学部等ごとに教育研究上の目的を学則等に定め、公表するものとしたこと(第2条の2)
  2. 大学が、一の授業科目について講義と実習など二以上の方法の併用により行う場合は、その組み合わせに応じ、授業方法ごとの基準を考慮して当該大学が定める時間の授業をもって一単位としたこと(第21条第2項第3号)
  3. 大学は、学生に対して、授業の方法及び内容並びに一年間の授業の計画(シラバス)をあらかじめ明示するものとしたこと。また、学修の成果に係る評価及び卒業の認定に当たっては、客観性及び厳格性を確保するため、学生に対してその基準をあらかじめ明示するとともに、当該基準にしたがって適切に行うものとしたこと(第25条の2)
  4. 大学は、授業の内容及び方法の改善を図るための組織的な研修及び研究(ファカルティ・ディベロップメント)を実施するものとしたこと(第25条の3)
基準をより明確化し大学教育の質を保証するための改正
  1. 大学は、科目等履修生等を相当数受け入れる場合においては、教育に支障のないよう相当の専任教員等を増加する等としたこと(第31条第3項、第4項)
  2. 大学が二以上の校地において教育研究を行う場合は、それぞれの校地ごとに必要な専任教員や施設・設備を備えるものとしたこと(校地が隣接している場合を除く)(第7条第4項、第40条の2)
  3. 大学は、その目的を達成するために必要な授業科目の開設は、自ら行うものであることを明確化したこと(第19条第1項)
  4. 大学は、専用の施設を有することとし、一定の条件を満たす場合に、他の学校、専修学校及び各種学校との間で施設を共用することができることとしたこと(別表第3イの表備考第6号)
(平成13年文部科学省告示第51号の改正)
  • 大学が、多様なメディアを高度に利用して行う授業の要件について、毎回の授業の実施に当たって設問解答、添削指導、質疑応答等による指導を併せ行う形態をとる場合には、インターネットその他の適切な手段を利用し又は指導補助者を配置することにより、十分な指導を行うものとしたこと。
施行期日

平成20年4月1目

※施行通知と条文を文部科学省のホームページに掲載
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/07091103.htm


大学院設置基準の一部改正について(博士課程の修業年限の弾力化)


これまでの制度の概要

(修士課程)
社会人学生等の多様な需要に応えるため、教育研究上の必要がある場合には、2年を超えることができる(長期在学コース)と規定されていた。

(博士課程(区分制))
夜間大学院の場合には前期は2年、後期は3年を超えることができると規定されていた。

(博士課程(一貫制))
夜間大学の場合には5年を超えることができると規定されていた。

⇒ただし運用上は、「博士前期の課程は、修士課程として取り扱う」(第4条第4項)との規定を踏まえ、博士前期の課程については、夜間大学院以外にも長期在学コースを設けることが認められてきた。

改正の概要

各大学院における多様な履修形態を提供する取組が、それぞれの大学の主体的な判断により推進されるよう、博士課程の区分制及び一貫制のいずれについても、教育研究上の必要がある場合には、研究科、専攻又は学生の履修上の区分に応じ、これらの年限を超えることができることを明確化(第4条)

施行期日

平成19年12月14目

※施行通知と条文を文部科学省のホームページに掲載
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/08012813.htm


学校教育法施行規則の一部改正について(大学の入学時期の更なる弾力化)


改正の趣旨

大学の入学時期については、現在、原則4月としつつ学年の途中においても入学できることとされているが、大学の秋季入学を促進する観点から、大学の入学時期を更に弾力化した。

改正の概要

大学の学年は、4月1目に始まり翌年3月31目に終わることとし、学年の途中においても学期の区分に従い入学・卒業させることができることとされていたが(第72条)、秋季(9月)入学を更に促進するため、各大学の判断により秋季(9月)を学年の始期とすることができるよう、学年の始期及び終期は学長が定めることとした。

※なお、大学の入学時期に係る規定は、これまで「第3節 認証評価その他」の最後に置かれていたが、今回の改正に伴い、小学校等の規定順にならい「第2節 入学、退学、転学、留学、休学及び卒業等」の最後に置くこととする。

施行期日

平成20年4月1目

※施行通知と条文を文部科学省のホームページに掲載
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/08012813.htm


上記のほか、平成19年度の「設置審査の主な観点」も紹介されました。

設置の趣旨・目的
  1. 設置の趣旨は、大学が担うべき法令上の目的・役割に照らして、整合性のあるものとなっているか。
  2. 特に職業人養成に特色を置く大学、学部及び学科の場合、経済社会の人材需要や地域の実情等について、的確な見通しを持っているか。
名 称
  1. 大学等の名称は、大学等として適当であるとともに、当該大学等の教育研究上の目的にふさわしいものか。
  2. 学位に付記する名称は、適切な専攻分野の名称となっているか。
  3. 英文表記は、国際的に通用性を有しているか。
教育課程
  1. 大学の教育上の目的を達成するために必要な授業科目を開設し、体系的に教育課程が編成されているか。また、その教育上の目的を達成するために必要な授業科目を自ら開設しているか。
  2. 大学の教育上の目的に沿って、各授業科目を必修科目、選択科目及び自由科目に分け、各年次に配当しているか。
  3. 講義、演習、実験、実習若しくは実技のいずれか又は併用により行われることになっているか。授業の方法に応じ、当該授業による教育効果、授業時間外の必要な学修等を考慮して、単位数を定めているか。
  4. 国内外の機関や企業等への派遣によって実習等を行う場合、実習先が十分に確保されているか。また、実習等の計画・指導・成績評価等の連携体制が適切なものとなっているか。
  5. 卒業要件は、人材養成目的及び課程の目的に照らして必要な学修量を確保し、4年以上在学し、124単位以上修得するものとなっているか。
  6. 履修科目の登録上限(CAP制)の設定、厳格な成績評価(GPA)など、いわゆる「出口管理」に努めているか。
  7. 通信教育を行う場合、通信教育によって十分な教育効果が得られる専攻分野であるか。
  8. 高度メディア利用授業を実施する場合、具体的な実施方法等が法令の要件に適合しているか。
教員組織
  1. 教育上主要と認める授業科目に、原則として専任教員(教授又は准教授)が配置されているか。
  2. 演習、実験、実習又は実技を伴う授業科目については、なるべく助手に補助させるなど、指導体制が配慮されているか。
  3. 教育研究上の責任体制、管理運営への参画、勤務形態・処遇等において、専任教員の位置付けは、明確となっているか。
施設・設備等
  1. やむを得ず運動場が校舎と同一の敷地内又はその隣接地にない場合、適当な位置に設けられているか。また、その場合、学生が円滑に利用できるようになっているか。
  2. 教育研究に必要な専用の研究室、教室(講義室、演習室、実験・実習室)等が備えられているか。
  3. 学部の種類、規模等に応じ、図書、学術雑誌、視聴覚資料その他の教育研究上必要な資料が図書館を中心に系統的に備えられているか。(電子ジャーナルやデジタルデータベースの整備を含む。)
  4. 大学における校地の面積は、収容定員上の学生一人当たり10平方メートルとして算定した面積を充足しているか。
  5. 校舎の面積は、設置基準上に定める基準面積を充足しているか。
その他
  1. 授業の内容及び方法の改善を図るための組織的な研修及び研究を実施する仕組みとなっているか。(FD活動)
  2. 教育・研究、組織・運営、施設・設備の状況について点検・評価を行い、その結果を公表する方策が講じられているか。
  3. 当該大学における教育研究活動等の状況について、刊行物への掲載その他広く周知を図ることができる方法によって、積極的な情報提供を行うための方策が講じられているか。
  4. 認可申請を行った者が設置する大学等における開設前年度から過去4年間の入学定員に対する入学者の割合が一定値未満であるか。