こんな中、行政刷新会議による事業仕分け関連のニュースだけは健在で、連日のように紙面をにぎわせています。特に、教育・科学関連の学者さんたちは、徒党を組んで声明を連発するなど抗議活動に忙しい毎日を過ごしているようです。
去る10日に配信された「鳩山内閣メールマガジン第10号」(2009.12.10)に、事業仕分けの草分け的存在でもあり、行政刷新会議事務局長でもある構想日本代表の加藤秀樹(かとうひでき)さんのコメントが寄せられていましたのでご紹介します。
行政刷新会議による国の事業仕分けが終わりました。怒涛のような一カ月でした。身内のことを言うのは少し気がひけるのですが、寝食の暇もなく準備作業にまい進した事務局のスタッフ、同じくひと月間本業をそっちのけにしてでもヒアリングや勉強に時間をさき、会場の体育館での足の冷えや腰痛と闘いながら仕分けに参加して頂いた評価者(仕分け人)の方々には、本当に頭の下がる思いです。
ここでは事務局長という立場ではなく、7年前から県や市などで事業仕分けを続けてきた構想日本の一員として、国の事業仕分けを通して考えたことを書いてみます。
行政の事業仕分けを始めたのは、行政改革や地方分権が、10年、20年と議論されても、実際にはほとんど進んでないからです。これを変えるには、行政の現場で行われている事業が本当に住民の役に立っているのか、国民の利益につながっているのか、一つ一つチェックしていくしかないのではないかと考えたのです。そして事業をチェックしていけばその背後にある組織や制度も洗い直せる、それを日本中でやっていけば、議論を繰り返すよりも確実に行政改革や地方分権が実現出来ると考えたのです。
その際、必ず守るルールをいくつか決めました。特に重要なのが、1)行政の現場で実際に事業がどのように実施され、税金が使われているか知っている外部の人に加わってもらい2)公開の場で議論することです。両方とも、県や市でも大きい抵抗にあいました。
今回の国の事業仕分けでも同様の批判がありましたが、当初から「仕分け人」なんて、何の資格もない外部の素人になんで評価されないといけないのか、という声が強くあったのです。しかし、公務員という『専門家』が、場合によっては審議会という更に『専門家』に議論してもらって実施してきた政策や事業の中に、現に多くの首をかしげるような事業や無駄使いがあるのです。
私は仕分けで最も大切なことは現場を知っていることだと思います。仕分けでは、市の生涯学習や町づくりでも、国の科学技術でも、趣旨や目的などが否定される事は殆どありません。趣旨や目的を見る限り日本中に無駄な事業は一つもないと思います。問題は、現場で実際に、その趣旨や目的通りに行われているか、なのです。
例えば文科省の「子ども読書応援プロジェクト」。子どもの読書を応援するという趣旨には仕分け人もみんな賛成です。ところが、予算の大部分が指導者向け啓発資料の作成などに使われて、肝心の子供の読書応援の効果が不明確といった意見が多数でした。以上のことから、事業仕分けでは政策の良し悪しは問わない、つまり『政策仕分け』ではないということをお分かり頂けたでしょうか。
また、多くの報道では事業仕分けは予算を切る手法のように言われます。しかし、実際にやっていることは、これまでに使われた税金の使い方チェックです。その結果無駄が多いのならば次の年の予算は少し考え直してみようという材料提供なのです。このあたりのことを、もっと広く理解して頂けるよう、説明していかないといけないと思っています。
事業仕分けの結果を受け、行政刷新会議が2度ほど開かれています。どのような議論が展開されているかは次の議事要旨をご覧ください。