最近ちょっと気になる記事がありました。
社説:情報公開法 「知る権利」さらに尊重を (2010年8月26日 毎日新聞)
01年4月に施行された情報公開法について、政府の「行政透明化検討チーム」(座長・蓮舫行政刷新担当相)が、見直し案をまとめた。
法律の目的に「知る権利」を明記し、行政側の恣意(しい)的な判断で行政文書が不開示とされる範囲を大きく絞り込む内容となっている。適切な公開を求める国民の側に立ったものとして評価したい。
行政機関が保有する情報を、請求に応じて国民に開示するのが情報公開制度だ。だが、行政の裁量範囲が広く、国民の情報アクセスの手段として不十分だとの声が強い。
特に、外交・防衛や犯罪情報については、公開すれば国の安全などを害するおそれがあるとして、行政側の判断で不開示とする裁量が広く認められてきた。
見直し案は、一度出した不開示決定について、情報公開・個人情報保護審査会の答申後、さらに不開示にする場合、首相の同意が必要とする制度の新設を打ち出した。政治主導で、行き過ぎた不開示の決定に待ったをかけることが可能になる。
また、情報公開訴訟などの場で、裁判所が、行政側に文書を提出させて、裁判官が内容を直接確認できる「インカメラ審理」も導入する方針だ。従来に比べ、実効性のある司法判断が期待できる。
他にも国民が使いやすい制度改革が盛り込まれた。例えば、不開示の場合、具体的な理由を文書で示すことを行政側に義務づける。
請求から開示決定までの期限が現在の30日以内から14日以内へ短縮され、手数料の原則廃止、コピー代の引き下げと併せ、国民にとってはるかに使い勝手がよくなるだろう。
情報公開法の適用範囲も、今より広く独立行政法人などにも拡大される予定だ。
開示の前提となる公文書の作成や移管、廃棄などについては、統一基準を示す公文書管理法が昨年、全会一致で成立し、来年4月に施行される。各省庁でばらばらだった管理基準が改められ、役人の勝手な判断で公文書が廃棄できなくなった。
今回の見直し案に沿って、政府は来年の通常国会で情報公開法を改正する方針だ。成立すれば、公文書管理法と車の両輪となり、国民の「知る権利」を実質的に保障する道具となることが期待できる。
ただし、成立までの道のりは容易ではない。官僚側の抵抗が予想される。運用に関しても、開示請求の増加に対応する予算や人員の手当てができるのか懸念も残る。
だが、行政を透明化し、より開かれた政府を実現することは、与野党で大きく対立するテーマではあるまい。前向きな国会審議を望みたい。
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/archive/news/20100826ddm005070163000c.html
行政側の恣意的な判断によって、情報公開制度の趣旨が捻じ曲げられ運用されることは決してあってはならないことですし、適切な運用が図られるよう不断の改善を行っていくことは当然のことです。
国立大学法人においても、これまで、開示請求に対する真摯な対応が行われていなかった事例は皆無ではないと思われます。(下記過去記事参照)
(過去記事)大学の倫理観とディスクローズ(2007年11月27日)
ある大学では、開示・不開示の判断(最終的には学長の判断ですが)を行う委員会では、積極的な情報公開を行うべきという意見(主に事務職員)と、不開示を主張する意見(教員)とに分かれ、結果は一部開示となったものの、開示すべき法人文書がどういう文書なのかわからなくなるほど、真っ黒な墨塗りになってしまったそうです。
また、この委員会で交わされた議論の中には、まるで後ろめたいことをやっている悪者達の談合のように、国民が聞いたらびっくりするような閉鎖的、保身的な意見が数多く、まさに「大学の常識が社会の非常識」という言葉がぴったりの状況だったようです。
さらに、一部開示の決定に当たっては、不開示部分についての不服申し立てを受けることが前提となっていたとのことで、このような法律の目的や趣旨に従わない確信犯的な決定をした大学の責任は極めて重いのではないかと思います。
大学は、憲法により保障された神聖な学問の府として、こういった社会の求めに反した、あるいは国民を愚弄するような行為を決して行うべきではありませんし、社会との垣根をより高く頑強な壁にしてしまうこのような愚かな行為は、自ら堕落の道を目指して突き進んでいるようなものではないでしょうか。
http://daisala.blogspot.jp/2007/11/blog-post_483.html
しかし、記事にあるような「情報公開・個人情報保護審査会の答申後、さらに不開示にする場合には、首相の同意が必要」、「請求から開示決定までの期限が現在の30日以内から14日以内へ短縮」「手数料の原則廃止、コピー代の引き下げ」などについては、国民へのサービス向上を優先させるあまり、教育や研究といった大学の本来の使命・役割を怠る本末転倒の事態に陥らないよう、また、大学に対する個人的怨恨等、異常な精神状態にある者による制度の悪用によって、膨大な開示請求が繰り返され、担当者達は過重な労力を費やし疲弊しているケースがあるなどの現場の実態に十分目を向け、担当職員の負担軽減、コスト抑制といった観点も踏まえた上で、どのような在り方が望ましいのか慎重に検討されるべきと考えます。