今回の改革では、残念ながら、旧文部省と旧科学技術庁の各所管法人の組織統合は実現しませんでした。類似の事務事業をやっているところがあるんですけどね。単なる数減らしではなく、もっと突っ込んでやってほしかったですね。省益追求、縦割組織の弊害は今後とも続いていくことでしょう。ですが、少しづつでも、天下り、無意味な政策、税金の無駄遣いが減ってほしいものです。
それと、今回の閣議決定では、「この改革の実施に必要な措置については、平成26年4月に新たな法人制度及び組織に移行することを目指して講じるものとする。」と、なんだかわけのわからない役人言葉が使われています。いつものように時間の経過とともに、うやむやにするのではなく、必ず「実行」してもらいたいし、厳格なチエックも行ってほしいものです。
閣議決定(各独立行政法人について講ずべき措置)の中から、文部科学省所管の組織について引用してご紹介します。
国立特別支援教育総合研究所
大学入試センター及び大学評価・学位授与機構については統合し、大学連携型*2の成果目標達成法人とする。
国立大学財務・経営センターについては廃止し、その業務のうち当面継続されるものについては、統合後の法人に移管する。
統合後の法人については、学位授与に係る手数料の引上げ等により、自己収入比率を高め、将来的に運営費交付金に頼らない構造での運営を目指す。
日本学生支援機構については、その機能を整理した上で、統合後の法人への統合、事務・事業の他の主体への一部移管等、その具体的な在り方について平成24年夏までに結論を得る。なお、売却を進めている国際交流会館等のうち、やむを得ない事情により売却が困難なものについては、廃止の進め方について現行中期目標期間終了時までに結論を得る。
国立青少年教育振興機構
成果目標達成法人とする。
国立青少年交流の家等の自治体・民間への移管等に向けた取組や稼働率の低い施設の廃止に向けた検討を積極的に進め、その上で、将来的な独立採算制への移行、他法人との統合等を検討する。
国立女性教育会館
成果目標達成法人とする。
女性教育及び男女共同参画の推進という政策目標の達成に向けて、本法人の機能、在り方及び効率化に関する抜本的な検討を関係者等の参画を得て行い、平成24年夏までに結論を得る。
国立科学博物館
上記5法人については、以下の措置を実施するとともに、研究開発の特性に応じた制度が構築されることに併せて統合し、研究開発型*4の成果目標達成法人とする。
物質・材料研究機構については、ニーズ主導を徹底し、更に具体的なイノベーション創出を図るため、産学官共同事業に関する計画策定及び資源配分等の判断を企業・大学と合同で行う意思決定システムを新たに整備する。また、国際的水準での成果を更に実現するため、世界材料研究所フォーラム等の国際協力の枠組みを活用して主要な材料研究所の運営に関する国際的基準を新たに採用・実施し、本法人の運営戦略へ反映する。
科学技術振興機構については、業務内容を、1)ニーズ主導への転換による科学技術イノベーションの創出に向けて基礎研究から応用研究までを効率的に実施、2)日本全体の研究基盤としてのソフトインフラの整備、の大きく2つに再編する。また、内部組織を大くくり化・再編して効率化するとともに、組織横断的にニーズ主導・イノベーション志向を徹底するため、全体の統括機能を強化することで、ガバナンス体制を整備する。さらに、本法人と理化学研究所の実施している研究について、プロジェクトスタート時及びプロジェクトの進捗途中にそれぞれの研究テーマに重複・無駄がないか、あるとすればどちらの法人において実施することが望ましいかを調整する、理事クラスの合同コーディネーション会議(仮称)を設置し、定期的(年2回程度)に開催することとする、といった組織改革を実現する。また、本法人については、研究開発の資金配分機関としての性格を有しているが、資金配分実施機関については、事業仕分け等の議論を踏まえ、その在り方を抜本的に見直す必要があることから、その見直しの中で本法人の機能、役割及び在り方についても検討する。
理化学研究所については、独創的シーズ創出のみならず、科学技術イノベーション創出のため、ニーズ主導への転換に向けて、研究分野の融合・総合化等の見直しを行い、併せて、現在、本法人に設置されている組織の再編整理を進める。その上で、組織横断的にニーズ主導・イノベーション志向を徹底するための統括組織を整備してガバナンスを強化する。さらに、本法人と科学技術振興機構の実施している研究について、プロジェクトスタート時及びプロジェクトの進捗途中にそれぞれの研究テーマに重複・無駄がないか、あるとすればどちらの法人において実施することが望ましいかを調整する、理事クラスの合同コーディネーション会議(仮称)を設置し、定期的(年2回程度)に開催することとする、といった組織改革を実現する。
放射線医学総合研究所及び日本原子力研究開発機構
研究開発型の成果目標達成法人とする。
今後行われる中長期的な原子力政策及びエネルギー政策の見直しの議論等の結果を踏まえるとともに、事故対策・安全確保対策への重点的取組の必要性に伴い、国の組織と一体になって、事故の収束へ向けた中長期的な取組や安全対策に関する人材の確保・養成等の重要課題に効果的に取り組むことができるよう、平成24年末を目途に成案を得るべく、原子力関連の独立行政法人の将来的な統合等も含めた在り方について検討する。
国立美術館、国立文化財機構及び日本芸術文化振興会
上記3法人は統合し、文化振興型の成果目標達成法人とする。
統合に際しては、「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」(平成22年12月7日閣議決定)において「国の負担を増やさない形での事業の充実に向けて、制度の在り方を検討する」とされた趣旨を十分踏まえ、必要な職員数・予算を確保するとともに、真に自己収入の増加に向けたインセンティブが確保されることが不可欠である。このため、統合に際しては、1)一定の自己収入を美術品等の管理等を行う専門職員の確保に使用できるようにする、2)目的積立金が運用上、弾力的に認定されるようにする、3)我が国の美術品や文化財等の海外への流出等を防ぐとともに魅力ある収蔵品を機動的・効果的に購入できるように、また、トップクラスの伝統芸能の伝承者や現代舞台芸術の実演家等を招へいする際に2年ないし3年後の公演となる契約等ができるように民間資金等を活用した「基金」を設置する、4)シナジー効果を十全に発揮するため法人本部機能を拡充するといった制度設計・運用を行う。
教員研修センター
学校教育関係職員に対して、国による実施が必要不可欠な研修を行う等の事業は、国の判断と責任の下で実施すべき業務である。更なる教員の資質能力の向上は国の重要課題であることから、必要な定員・予算を確保した上で、本法人の機能を一体として国に移管するとともに、併せてその機能強化を図る。
日本学術振興会
大学連携型の成果目標達成法人とする。
本法人については、研究者向け学術研究の資金配分機関としての性格を有しているが、資金配分実施機関については、事業仕分け等の議論を踏まえ、その在り方を抜本的に見直す必要があることから、その見直しの中で本法人の機能、役割及び在り方についても検討する。
宇宙航空研究開発機構
研究開発型の成果目標達成法人とする。
宇宙基本法(平成20年法律第43号)の趣旨を踏まえ、国民生活や産業等の視点を宇宙開発に導入することにより、防災研究との連携強化や経済成長への寄与を図るため、独立行政法人宇宙航空研究開発機構法(平成14年法律第161号)を改正し、本法人の業務内容を見直す。
日本スポーツ振興センター
成果目標達成法人とする。
施設管理やスポーツ振興投票業務において、民間への委託等により、更なる効率化を図ることとし、民間委託方法の検討を含めた具体的な効率化策を平成24年夏までに作成する。また、民間委託等による効率化が十分な効果を挙げられないと認められる場合には、他法人との統合、業務の再編等の可能性について引き続き検討する。
国立高等専門学校機構
成果目標達成法人とする。
(関連記事)
独法・特会改革-組織いじりでは困る(2012年1月21日 朝日新聞)
独法・特会改革 肝心なのは政府支出の削減だ(2012年1月24日 読売新聞)
*1:成果目標達成法人は、多種多様な事務・事業を実施しており、それぞれに期待される政策実施機能も様々であることから、各法人が行う事務・事業の特性に着目し、一定の類型化を行った上で、当該類型に即したガバナンスを構築することとし、その具体的な内容については、別紙で示した類型に即し、必要に応じ個別法も含めた法制的な対応(ふさわしい名称を含む。)を行う。なお、一つの法人において複数の類型に跨る事務・事業を行っている場合には、法人の経理を区分するなどした上で、複数のガバナンスが適用されることもあり得る。また、いずれの類型にも該当しない事務・事業を行う法人については、「2.新たな法人制度に共通するルールの整備」に示すガバナンスが適用されることになる。
*2:大学との連携の下で、大学の運営等を支援する事務・事業を行っている法人類型
*3:美術品・文化財の保存・活用や芸能の振興等文化・芸術等の分野の振興に関する事務・事業を行う法人類型
*4:法人の主要な業務として、高い専門性等を有する研究開発に係る事務・事業を実施し、公益に資する研究開発成果の最大化を重要な政策目的とする法人類型