(続き)
情報セキュリティ対策について
ご存じのとおり、先般、日本年金機構において、サイバー攻撃により約125万件もの個人情報が漏えいするという重大な事案が発生した。
各大学におかれては、学生や教職員、附属病院の患者に関する個人情報等、機密性の高い情報を多数有している。また、各大学の保有する個人情報漏洩を防止するということに限らず、昨今では、第三者への攻撃の仲介拠点として大学のサーバが利用されるような事案も発生しており、十分な対策が必要。
今回の年金機構の件を決して対岸の火事と見なすことなく、大学には、厳重なセキュリティ体制が求められるということを認識いただき、改めて、各大学のセキュリティ対策が十分されているかという見直しを徹底して行っていただきたい。
また、情報セキュリティ対策は、ウイルス対策ソフトや侵入検知機器を導入したところで、100%防御できるものではない。報道によれば、日本年金機構の事案については、攻撃者が用意した標的型メールを職員が開いてしまったことでウイルスに感染したことが原因であると言われている。最後は、システムを利用する教職員の日頃からの心がけが重要となる。
また、国立大学のサーバが簡易なパスワードを設定していたために、不正アクセスを受け、そのサーバから外部へ多量の通信が行われるという事案も発生している。各大学内における、教職員への研修・訓練の実施等を併せて徹底していただくようお願いする。
今回、情報セキュリティ対策の考え方に関する資料をお配りさせていただいている。最後のページにあるように、情報セキュリティ対策について、大学内の情報システム部門だけで判断していると、どうしても予算面の制約や、担当部署、担当者からの業務効率化要求を受ける形で、セキュリティ対策が甘くなってしまう可能性がある。
各大学におかれては、組織全体で守るべき情報資産を明確化するとともに、必要となる情報セキュリティ対策を明確化していただきたい。また、その対策に必要な予算・時間・リスクを組織内で共有し、組織としての経営判断をしていただきたい。
今後、今回の年金機構と同様の事案を発生させないよう、各大学におかれては、くれぐれも注意いただくよう強くお願いする。
学位論文不正及び補助金不正について
※ 研究不正、研究費の不正使用については、研究振興局長から説明
学位論文不正についても、研究倫理教育の実施、及び厳正な研究指導や論文審査体制の確立などを実施していただくようお願いする。
また、高等教育局が措置している大学改革の補助金についても、不正使用があった場合の対応方針を昨年4月にお示ししたところ。
各大学におかれては、これらの不正を未然に防止する取組を進めていただくようお願いする。
学生への経済的支援について
意欲と能力のある学生等が経済的理由に関わらず、安心して進学できるよう、大学等奨学金事業について、「有利子から無利子へ」の流れを加速して無利子奨学金の充実を図るとともに、平成29年度進学者から適用を予定している、より柔軟な「所得連動返還型奨学金制度」の導入に向けた制度設計等の対応の加速などに
ついて、引き続き着実に取り組んでいく。
また、地方創生の観点から、内閣官房や総務省等の関係省庁と連携し、地方大学等の活性化を図るとともに、奨学金を活用した大学生等の地方定着の促進に取り組んでいく。
就職・採用活動時期の変更について
学生の学修時間の確保や留学等の多様な機会を確保するため、一昨年の「日本再興戦略」において、現在の大学4年生から就職・採用活動時期を後ろ倒しすることを政府の方針として明記した。同年11月には、主要経済・業界団体等約450団体に対し、就職・採用活動開始時期の変更の円滑な実現について文書で要請し、今年から実施されている。各大学等におかれては、学生への周知・指導を行っていただきたい。
文部科学省としては、就職問題懇談会、関係府省及び経済界等との密な連携のもと、秩序ある就職・採用活動がなされるよう、就職・採用活動時期の後ろ倒しについて検証するとともに、必要な調整・周知を行っていく。
海外留学支援制度の拡充について
意欲と能力のある若者全員に留学機会を付与し、日本人留学生の倍増を目指すため、奨学金等の拡充による留学経費の軽減等に取り組んでいる。
国費による海外留学支援に加え、民間資金を活用した「官民協働海外留学支援制度~トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」を昨年度より開始し、第1期派遣留学生323人、第2期派遣留学生256人が順次留学を開始した。また、平成27年度の後期に留学する第3期派遣留学生について、現在選考中であり、
6月末をメドに採否決定予定となっている。各大学関係者のこれまでの御協力に感謝申し上げるとともに、引き続き、本制度に対する御理解と御協力をお願い
する。
障害学生支援について
障害学生支援については、平成28年4月1日から
いわゆる「障害者差別解消法」が施行され、障害者への合理的配慮の不提供の禁止等が法的義務となる。本法律に基づく「国等職員対応要領」については、今
後、国大協が雛形を作成予定であるが、各大学においても法律の施行に向けた準備を進めていただきたい。
職業実践力育成プログラム認定制度の策定について
今年3月、教育再生実行会議の第6次提言が出され、大学等が社会人等のニーズに応じた実践的・専門的な教育プログラムの提供を推進し、国がそうした実践的・専門的プログラムを認定、奨励する仕組みを構築することが提言された。
本提言を受けて、有識者による検討会を設置し、社会人の学び直しに資する実践的・専門的な教育プログラムの内容等について検討を行い、先月、報告書を取りまとめたところ。
大学等における正規課程及び履修証明プログラムのうち、社会人や企業等のニーズに応じた実践的・専門的な教育方法が担保されるような工夫がされているものにつき、申請に基づき文部科学大臣が認定を行うものとしている。
今後、有識者会議のまとめを踏まえ、来年度にも各大学等において認定されたプログラムが開始できるよう、速やかに制度設計を行っていく。各大学におかれても、本制度の活用を積極的にご検討いただきたい。
「理工系人材育成戦略」の策定について
文部科学省では、労働力人口の減少の中で、付加価値の高い理工系人材を戦略的に育成するため、平成27年3月に「理工系人材育成戦略」を策定し、当面、2020年度末までに集中して進めるべき3つの方向性と10の重点項目を整理したところ。今後は、産業界の協力も得て、産学官の行動計画を検討していくこととしている。
学位授与機構・財経センターの統合について
本年5月
19日に「独立行政法人大学評価・学位授与機構法を一部改正する法律案」が国会で可決・成立し、「独立行政法人大学評価・学位授与機構」と「独立行政法人国立大学財務・経営センター」は平成28年4月1日をもって統合することになった。統合後の法人名は「独立行政法人大学改革支援・学位授与機構」となる。
これまでに両法人が行ってきた業務は、統合後の新法人に引き継がれ、引き続き実施される。今後は両法人を中心に統合に向けた準備を進めていくことになる。(おわり)