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吉田高等教育局長説明
国立大学経営力戦略の策定について
国立大学改革に関しては、平成25年11月に国立大学改革プランを策定し、第3期中期目標期間において、持続的な「競争力」を持ち、高い付加価値を生み出す国立大学を実現することを目指し、取組を進めてきた。
来年度から始まる第3期においては、各大学において、これまでの機能強化の取組を生かしつつ、より一層、高い機能を発揮できるよう、更なる新陳代謝・自己変革の取組を押し進めていただきたい。
今日、我が国社会の活力や持続性を確かなものとする上で、新たな価値を生み出す礎となる知の創出とそれを支える人材育成を担う国立大学の役割への期待は大いに高まっており、国立大学には、「社会変革のエンジン」として「知の創出機能」を最大化していくことが求められる。
この「知の創出機能」を最大化させていくための改革の方向性を、今回、文部科学省として取りまとめたものが「国立大学経営力戦略」。
国立大学が、その役割を一層果たしつつ、今後更なる改革を進めていく上では、学長のリーダーシップやマネジメント力、多様な財源に裏付けられた財務基盤、新陳代謝・自己変革の促進といった、「経営」の視点が重要。
各学長におかれては、既存の枠組みや手法等にとらわれない大胆な発想を持ち、本年4月から施行されたガバナンス改正法の下、強いリーダーシップを発揮し、組織全体をリードする将来ビジョンを構築いただきたい。
その際、確かなコスト意識と戦略的な資源配分を前提とした経営的視点で大学運営を行うことで経営力を高め、そのことを、教育研究機能の強化につなげていただきたい。
文部科学省としては、基盤的経費である運営費交付金を確保しつつ、自己改革に取り組む大学にメリハリある重点支援を実施するとともに、財務基盤の強化のために必要な規制緩和を行うべく、検討を進めていく。
本戦略を実行するにあたっての具体的な方策については、「Ⅱ.経営力を強化するための方策」にお示ししている。
このうち、「1.」は「第3期中期目標期間における国立大学法人運営費交付金の在り方に関する検討会」の議論の内容を掲載したもの。
次頁の「2.自己変革・新陳代謝の促進」については、まず、(1)にあるように、各大学による機能強化のための学内の組織再編、大学間・専門分野間での連携・連合等を促進する。
さらに、マネジメント改革を進めるため、「学長の裁量による経費(仮称)」を新設し、各学長のリーダーシップに基づく自己改革の取組を予算面から後押しさせていただく。
次頁の(3)については、各大学が、若手が活躍する組織へと転換していくことを目指し、
・教育研究業績や能力に応じたメリハリある給与体系への転換
・中長期的な視野に立った教員の年齢構成の是正
等を促進していく。
各大学には、人事給与システム改革と業績評価に関する中期目標期間を通じた計画を、中期計画の一部として記載する等の方法により、平成27年度末までに策定いたく。
「3.財務基盤の強化」については、基盤的経費である運営費交付金を確保するとともに、
・資産活用等の規制緩和や寄附金の獲得による自己収入拡大
・民間との共同研究・委託研究等による外部資金獲得へのインセンティブの付与
を検討する。
(1)について、自己収入を拡大する観点から、国立大学法人制度内で、各大学が実施することが可能な「収益を伴う事業」の範囲について、各大学の好事例も踏まえ、ガイドラインを示すことを考えている。
(2)について、各大学においては、寄附金を獲得するための専門スタッフの配置による体制強化と獲得戦略の策定を進めていただきたい。また、そのような大学の取組を支援するために、文部科学省として、個人からの寄附に係る所得控除と税額控除の選択制の導入など寄附促進策の検討を行う。
(3)について、各国立大学においては、大学が持つ強みのある研究分野やその研究成果について、組織的に積極的な情報発信を行うとともに、民間に対する「提案型」の共同研究や大学本部のイニシアティブによる組織的な産学連携を推進し、可能な限り民間との共同研究・受託研究に関する中期目標期間中の目標を設定していただきたい。
「4.」について、特に「特定研究大学」(仮称)に関する具体的な制度設計については、今後、文部科学省内に有識者会議を設置し、検討を開始していく予定。
内容に関する御説明は時間の制約上、以上となるが、各国立大学においては、第3期中期目標期間において、本戦略に基づく取組を強力に進めていただくようお願いする。
文部科学省においても、本戦略に示された方針及びスケジュールのもと、各国立大学の改革の取組を後押しできるよう、必要な支援や検討を進めていく。(続く)