運営費交付金の在り方検討会 審議まとめ及び平成28年度概算要求について
第3期中期目標期間における国立大学法人運営費交付金の在り方については、昨年11月から検討会を設置し、10回に亘る議論を経て、6月15日に審議まとめがとりまとめられた。ポイントを説明させていただく。
まず、第3期において、国立大学が目指す姿として、各国立大学が形成する強み・特色を最大限にいかし、自ら改善・発展する仕組みを構築することにより、持続的な「競争力」を持ち、高い付加価値を生み出していくことにある、とされている。
その上で、第3期における運営費交付金の在り方としては、
- 運営費交付金は、国立大学法人が安定的・持続的に教育研究活動を行うために必要不可欠な経費である
- 各国立大学法人が自らの努力で増収を図った場合に、運営費交付金を減額しない
- 各国立大学法人のビジョンに基づき、機能強化を迅速に実現するための手段とする
- 各国立大学法人の規模、分野、ミッション、財務構造等を踏まえ、きめ細かな配分方法を実現するとともに、透明性を高める必要がある
その上で、第3期における運営費交付金の配分にあたっては、「機能強化の方向性に応じた重点配分」と、「学長の裁量による経費(仮称)」の2つの新たな仕組みを導入することとされている。
1つめの、「機能強化の方向性に応じた重点配分」については、国立大学の多様な役割や求められている期待に応える点を総合的に勘案し、機能強化の方向性に応じた 取組をきめ細かく支援するため、予算上、3つの重点支援の枠組みを新設することとされている。
2つめの「学長の裁量による経費(仮称)」については、学長のリーダーシップの発揮を予算面で支援し、組織の自己変革や新陳代謝を進めるため、教育研究組織や学内資源配分等の見直しを促進する仕組みを設けることとされている。
文部科学省としては、今後、この審議まとめを十分に踏まえ、平成28年度概算要求に向けて、具体的な検討を進めていくとともに、国立大学法人が知識基盤社会を支える中核として、今後も更なる機能強化を図るために、必要な予算の確保に努めてまいりたい。
各国立大学におかれては、学内のIR機能の強化や積極的な情報公開など、本検討会における様々な議論を踏まえ、これからスタートする第3期に向けて、積極的に改革を進めて頂くようお願いする。
審議まとめの内容等を踏まえた、平成28年度概算要求にあたっての考え方や留意点については、基本的な考え方として、
- 各国立大学法人における教育研究活動は、それぞれの目標・理念や経営戦略に則り、中期目標及び中期計画に沿って自主性・自律性を発揮していただきながら取り組むべきもの。その際には、国の各種政策提言を踏まえ、各大学が形成する強み・特色を踏まえた機能強化の取組を更に進めていくことが求められる。
- 強み・特色を踏まえた機能強化に積極的に取り組む国立大学に運営費交付金を重点配分する仕組みを導入し、第3期における各国立大学の機能強化の方向性に応じた取組をきめ細かく支援するため、運営費交付金の中に、①地域のニーズに応える人材育成・研究の推進、②分野毎の優れた教育研究拠点やネットワークの形成の推進、③世界トップ大学と伍して卓越した教育研究の推進の3つの重点支援の枠組みを設ける。
- 各大学におかれては、中期目標・中期計画に記載する内容を基に、いずれか一つの枠組みを選択していただき、各大学の「ビジョン」を策定し、ビジョンの実現 に向けた具体的な改革の方針である「戦略」、各「戦略」の達成状況を判断するための「評価指標」、「戦略」の実行に必要となる具体的な「取組」を取りまとめ、パッケージとして要求していただきたい。
- 各大学におかれては、それぞれの「ビジョン」と具体的な「戦略」を明確にした上で、学内資源の有効活用及び再配分を行うことを前提としつつ、3つの重点支援の枠組みに応じた取組構想を提案していただきたい。
- また、取組構想の具体的な内容や工程等に加えて、その成果を検証するための測定可能な評価指標(KPI)等を設定し、各大学が自ら達成状況を確認・分析・改善できる体制を構築していただきたい。
<要求の内容について>
概算要求の内容としては、「ビジョン」の実現に向けて設定した「戦略」を実行する「取組」として、教育研究組織の再編成に必要な基盤的経費や教育研究プロジェクト等に必要な事業費や設備費等を盛り込んでいただく。
なお、平成27年度予算の特別経費として支援を受けている事業についても、各大学が自ら選択した3つの重点支援の枠組みとの関連性を整理した上で要求していただくことは可能。
また、連携・ネットワークに係る構想については、関係する複数の大学が、重点支援の3つの枠組みのいずれを選択するかに関わらずご提案いただきたい。
<選定、配分、評価方法>
各大学から提案された取組については、文部科学省において開催する有識者会議の意見を踏まえ、重点支援の対象とする取組構想を選定し、「機能強化促進係数(仮称)」による財源等を活用して、主として改革の取組構想に応じて加算して予算要求を行う。
選定にあたっては、各大学の機能強化の方向性との適合性に加えて、取組構想の戦略性・発展性・実現可能性等とともに、意欲的な達成目標及び評価指標が設定されているか否かについて確認することを想定している。
評価については、平成28年度においては、重点支援の枠組みごとに設定する、支援の観点を重視した評価を行うことを想定している。
詳細については、資料の「3 重点支援の枠組みごとの観点及び留意点」中の「ウ 評価指標について」をご覧ください。
また、評価にあたっては、取組構想を全体として評価対象とすることとする。
平成29年度以降については、原則として年度ごとに取組構想の進捗状況を確認するとともに、あらかじめ設定していただいた評価指標等を用いて、その向上度合に応じて段階的な評価を実施し、予算配分における重点支援に反映することとしている。
なお、「機能強化促進係数(仮称)」については、審議まとめにもあるように、予算編成過程において適切な割合を決定する。
また、3つの重点支援の枠組みに係る予算の規模感については、今後決定される政府全体の概算要求の方針に基づき、検討していく。
<共通政策課題に関する重点支援について>
また、3つの重点支援の枠組みのほか、各国立大学法人が教育研究活動を行うに当たって、社会経済の変化や学術研究の進展等による我が国の高等教育政策、学術政策の推進の観点を踏まえ、各法人の個性や特色に応じて意欲的に取り組むべきものとして、平成28年度概算要求においては、6項目について、必要な支援を行うこととする。
これらについても、文部科学省として、事業区分との適合性や実現可能性、社会的効果等を確認していくこととしている。
今年度は、第3期中期目標期間における最初の概算要求であり、より具体的な相談などあれば積極的に応じてまいるので、その際は、国立大学法人支援課まで遠慮なくご連絡いただきたい。(続く)
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(関連報道)
国立大、新評価制度導入へ 政府「成長戦略の柱」(2015年4月15朝日新聞)
政府の産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)が15日開かれ、国立大学の改革に向けた新たな評価制度の導入を決めた。全国86ある国立大の役割をはっきりさせ、運営費交付金の配分にもメリハリをつける。6月にもまとめる成長戦略の柱にする。
今夏までに文部科学省が「経営力戦略(仮称)」をつくる。「地域に貢献する教育研究」「特色ある分野で世界的な教育研究」「世界で卓越した教育研究」のいずれかから、各大学がめざす大学の特徴を選び、その大学像に沿った評価に応じて交付金を配分するようにする。
安倍首相はこの日の会議で「これまでは各大学の特徴に応じたミッション(役割)設定が不明確なままで、自律的な経営に欠けていた面があったことは否めない」と指摘。企業などからの資金獲得や資産の運用など、大学独自の取り組みを促す考えを示した。
国立大交付金地域貢献や世界水準研究で重点配分(2015年6月15日NHK)
国立大学に配分する運営費交付金について文部科学省の有識者会議は、地域に貢献する大学や世界トップ水準の研究を目指す大学など、国立大学を3つの枠組みに分類し、取り組みや実績が高く評価された大学に交付金を重点的に配分する方針をまとめました。
国立大学は平成16年度に法人化されて以降、6年ごとに中期目標を定め、その達成状況の評価などに応じて国から運営費交付金が配分されています。来年度から6年間の配分方法を検討してきた文部科学省の有識者会議は、15日、改革や機能強化に積極的に取り組む大学に交付金を重点的に配分する方針をまとめました。
具体的には、国立大学を人材育成や研究を通して地域に貢献する大学、特定の分野で優れた教育や研究の拠点となる大学、それに世界トップ水準の教育や研究を目指す大学の3つの枠組みに分類し、大学はいずれか1つを選んで取り組むとしています。そのうえで、取り組みの状況や実績を有識者の会議が評価し、翌年度の交付金の配分に反映させるということです。中期目標の策定にあたっては文部科学省が8日、国立大学に通知を出し、教員養成系や人文社会科学系の学部や大学院については廃止やほかの分野への転換に努めることなど、組織や業務全般を見直すよう求めています。各大学はこうした方針を踏まえて、今月中に中期目標の素案を提出することになっています。