2017年2月21日火曜日

記事紹介|信頼回復

白鳥は 悲しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ(若山牧水)

新年早々、痛恨の不祥事が明るみに出た。1月20日付で関係者の処分が断行され、文部科学省に衝撃が走った。公務員天下り規制法令違反、人事課による隠ぺい工作。文部科学省への国民の信頼は著しく低下した。

天下り問題は、全省庁に共通する問題である。また、これにとどまらず、文部科学省と国立大学との人事交流や出向人事を捉えて、前行革大臣は、「国立大学は文部科学省の植民地か。」と指摘している。

ワープロ事件、リクルート事件、施設整備汚職事件など過去の大不祥事に比して、今回は贈収賄事件ではないものの、大臣官房人事課が震源地であり、また、文部科学省と大学との関係を根本的に問われる点で極めて重い。

文部科学省そして文教行政は危機的局面を迎えている。文部科学省は、事件の徹底した調査とその公表、再発防止策に、迅速かつ精力的に取り組み、国民の信頼回復に努めなければならない。

冒頭の牧水の有名な句は、文部科学省の知人からの今年の年賀状に取り上げられていた。オリジナルは、青春期の孤独感を表現した作品だが、知人は、特定の色(意向)に染まらずに自立性を確保したいこと、あるいはその難しさを示唆したようだ。

今年は、昨年以上に何が起きるかわからない、これまでの常識が通用しない年となるであろう。ダボス会議では、皮肉にも中国の習近平国家主席が、多国間の自由貿易体制の重要性を指摘し、米国トランプ政権の保護貿易主義傾向を非難した。

今後、「理念」よりも「利益」を重視するトランプ政権の誕生によって世界は多極化、無秩序化していく恐れがある。日本は、国際情勢の中で漂流することなく、地道に国力を強化しつつ、複眼的、長期的に、米国、中国、ロシア等との関係を構築する必要がある(中西輝政・ウエッジ1月号)。教育、科学技術、文化、スポーツなどの分野でも国際的視点からの政策展開が一層求められる。

今回の不祥事を受けて、職員の士気の低下が心配だ。しかし、文部科学省は、「悲しみを抱えて漂う」のではなく、今こそ自身と世界の難局へ果敢に対峙し、着実に施策を実施して行かなければならない。

文教ニュース・文部科学時評「難局を乗り越える」|平成29年2月6日 から