この問題、以前このブログ*1でもご紹介しましたが、文部科学省の調査が昨年の夏、公表は年末。公表までに相当の時間が費やされていたにもかかわらず、未だにずるずると出てくるわ出てくるわ。やはり「氷山の一角」でした。
おまけに、「にせ学位」保有の教員の処分をいち早く公表したはいいが、なんと同じ教員を審査もしないで再雇用していた大学も出てくる始末です。
この国の高等教育は一体全体どうなっているのでしょうか。
折りしも入試シーズン。これまでがんばってきた受験生に与える不安は誰が責任を持つのでしょうか。なんともさなけない時代になったもんです。
非認定学位で教授昇進 金沢大 米の大学で「博士号」 (2008年1月27日読売新聞)
金沢大学医学部の男性教授(理学療法)と女性准教授(看護学)が昇進の際、米国の非認定大学で取得した「博士号」などの学位を経歴として使っていたことが26日、分かった。
文部科学省は07年12月、国内各大学に、「大学の信頼低下につながる」として、非認定大学の学位の扱いについて厳正な対応を求める通知をしている。金沢大は2教員の処分は考えていないとしている。
男性教授は2002年、米国の非認定大学「ニューポート大」の日本校に論文などを提出し、人間行動学の「博士号」を取得。翌03年に助教授から教授に昇進した。男性教授は、最終学歴・学位を大学の公式ホームページに掲載している。教授は同大に対し、「非認定校とは知らなかった」と話しているという。
女性准教授は97年にニューポート大で「修士号」を取得し、99年に金沢大講師から助教授に昇進した。
金沢大では、業績、博士号、教育経験を昇進の判断材料にしている。
同大は、2教員の昇進は「業績を重視した」とし、今後は非認定校の学位は昇進を決める材料にしないとしている。
非認定校は政府が認めていない学校で、修了しても学位は公に通用しない。文部科学省によると、米国では非認定校で学位を数十万円程度で売買するところもあり、取得した学位を就職などに悪用する例がある。
51人目の不正規学位利用教員 (2008年1月27日産経新聞)
公的な認定を受けていない米国の大学の「学位」を採用や昇進に使用した教員がさらに2人増え、合計46校の51人になりました。
文部科学省が昨日、訂正発表したものです。
また、同発表によると、報告を求めている平成18年度の対外広報に使用した教員も一人増え、48校50人になりました。
共同通信も短い記事で配信し、だいぶフツウのニュースになった感があります。
一方、同様の「学位」を利用した49人目の教員が、中部地方のある国立大学だったことも、これまでの取材の結果、分かりました。
同大学はこの教員(教授)から事情聴取をしたうえで、「不正規な学位(博士号)は昇進審査に大きな影響を与えたなかった」として、特に処分を下さなかったとのことです。ちなみに、当該教授は東大の博士号を持っていたといいます。
これに対し、すでに報告済みの九州産業大学は、ディプロマ・ミル(DM、学位工場)とされる機関の「学位」を使用した教授について、調査委員会で検討した結果、「学位に関する認識が甘かった」として反省の意を示したとのことです。
当該教授は、大学内の要職についていましたが、その辞表が受理されたそうです。
大学は、この博士号を一切使わないよう厳重注意しました。
ケースにより扱いの差はありますが、大学ごとにそれぞれの結論を出しているようです。
「常識の変わり目」というものがあります。今までまかり通ってきたことが、いつまでも続くとは限りません。
機敏に、かつ適切に対応できるか・・・大学の組織としての力と、品位が試されています。
「学歴詐称」で退職の准教授 大分大が講師採用 「学士資格あり問題ない」 (2008年1月27日西日本新聞)
大分大学(大分市旦野原)が、採用条件の修士号を取得していなかったため雇用契約を昨年取り消した外国人の元准教授を、今月1日から新たに常勤講師として採用していたことが26日、分かった。
元准教授は工学部福祉環境工学科に所属していた50代の男性。昨年10月、米国の公的機関が正規の大学と認めていない教育機関から修士号を得ていたことが発覚した。
同大は「詐称の積極的な意図は認められない」として懲戒処分にせず、「雇用契約の合意解約」で決着を図った。
同大によると、元准教授の代わりとなる教員を探したが「急なことで適任者も見つからなかった」ことから講師として契約した。
採用は一般的に公募して決めるが、関係者は「おそらく(公募を)していない」と話している。元准教授は現在、「ネーティブ工業英語」を担当している。
講師は学士の資格があれば可能。同大の責任者は「資格はある。修士号の学歴問題を解決した上での新規採用であり、問題はない」と説明している。
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報道を読む限りにおいては、ディグリー・ミル問題が、いかに我が国の高等教育の信用を失墜させたか、また、その原因を作ったのは自分達だという認識のかけらもない対応をしている大学ばかりで、言葉だけの反省は行うが責任の所在を全く明確にせず、当事者である教員の処分に寛容な対応を示しているという現実は、一社会民として納得のいくものではありません。
特に、最後の記事の大学などは、大学として教員採用時の適正な審査を怠るだけでなく、求める教員としての要件を満たさない「にせ学位教員」を雇用しておきながら、事態が発覚すると当該教員には非がなかったことを理由に、関係者の処分を全く行わずに、当該教員の契約の解除のみという形で円満解決を図りました。
にもかかわらず、報道によれば3月も経たないうちに、同じ教員を公募も行わずに代わりがいないからという理由で再雇用するという常識的には信じがたいことを堂々とやってのけています。「出来レース」だったのではと思われても仕方ないでしょう。(もしそうだったら、極めて悪質であり、国民をひどく愚弄したことになりますね。)
当該大学は、当該大学なりの事情や理屈があるのでしょうが、それは「井の中の蛙」の論理であり、全く世の中に通用するものではないと思います。
ところで、事件発生時にお約束された再発防止策「教員採用時の審査の厳格化」はいつ公表されるのでしょうか?
■真正な学位と紛らわしい呼称等の取得者への対応について
選考の段階でこのことが判明しなかった点で,本学の教員採用時の調査不足は否めず,真摯に受け止める必要があり,大いに反省すべきことと思っています。今後は,二度とこのようなことが起こらないように,教員採用時の審査を一層厳格化していきたいと思います。
http://www.oita-u.ac.jp/top/shinsei.html
これからまさに入試の山場。受験生の心をつかむのは、高等教育機関としての自覚、責任感、そして実行なのだろうと思います。
「大学の常識は、社会の非常識」をいつまで続けるおつもりですか?