2008年1月29日火曜日

大学連携

大学間連携の動きがにわかに激しくなってきています。
国の政策動向を先取りした戦略的な動きと見るべきでしょう。


県内の4年制7大学と放送大 連携強化へ(2008年1月26日信濃毎日新聞)


信大(信州大学)など県内の4年制7大学と放送大学長野学習センター(諏訪市)は25日、松本市の信大松本キャンパスで副学長らによる会合を開き、各大学を光ファイバーで結んでネットワーク化するなど、連携を強化することで一致した。

今年5月ごろまでに具体的な事業内容を決め、文部科学省が来年度から始める大学間の連携支援事業の採択を目指す。

構想では、ネットワークを生かし相互に遠隔授業などを行う。

7大学は2005年度に単位交換制度を導入したが、大学が各地に分散していて通いにくいことなどから本年度の制度利用者は12人にとどまる。遠隔授業の導入で、利用者の拡大を目指す。

このほか、大学の枠を超えて学生同士が交流する機会をつくることや、教職員研修の合同開催、県内大学への進学率を高めるための高校側との連携強化なども検討課題とする。

連携強化は、7大学の学長で構成し、放送大学長野学習センター長がオブザーバー参加する「県大学連絡協議会」が昨年10月の会合で確認。文科省が来年度から始める「戦略的大学連携支援事業」の活用を目指すことも決めた。

信大の小坂共栄理事(教学担当)は「大学間のネットワーク化は、教育や研究など互いに利用価値が高い。地方大学の生き残り競争が激しくなる中、大学同士が力を合わせ、できることから進めたい」と話している。


静岡大と県立大が連合大学院新設 地域貢献めざし来春開学へ(2008年1月25日中日新聞)


静岡大と静岡県立大は24日、共同で「静岡連合大学院(仮称)」を新設する構想を明らかにした。2009年4月の開学を目指す。

得意分野を補完し合うことで、単独では実現の難しい幅広い専門教育を提供する狙い
県内私立大にも参加を働き掛けており、自治体や産業界を巻き込んだ地域密着型の教育研究機関が最終目標という。

静岡連合大学院では地域社会への貢献を主眼に、実践的な職業人の育成を目指す。
現在計画している研究テーマは「国際経営」と「新公共経営」の二分野。

国際経営では、アジアを中心に海外経済に精通した人材を育成。県内企業の海外進出に役立てるほか、留学生教育も重視する。新公共経営では、地域社会の諸課題を調査し、行政職員も積極的に受け入れる。

今後はよりニーズの高い研究テーマを拡充するため、県内自治体や産業界に意見を求め、研究そのものへの参画も要請していく。
協力企業への就職を条件にした奨学金制度や、インターンシップ制度の充実などを検討しているという。

受講の利便性を高めるため、設置場所はJR静岡駅などの周辺に確保し、夜間も開講する。

24日、県庁で記者会見した静岡大の興直孝学長と県立大の西垣克学長は「既存の教育資源を有効活用し、社会の要請に応えられる魅力ある大学院をつくりたい」などと抱負を述べた。

文部科学省は教育水準の向上などを目的に、複数大学が学部や大学院を共同設置できるよう、2008年度中に制度改正する方針単独で新設するよりも負担が少なくなり、企業からの協賛金が集めやすくなるなどのメリットが見込まれ、全国規模で同様の大学間連携が進んでいる

少子化等の中で、地方の、特に私立大学等がおかれている小規模化、経営困難等の厳しい状況を踏まえ、限られた資源の最大限の活用を図るため、大学院や学部、研究所での活動の共同・連携を思い切って促進する


これまで文部科学省は、国公私立大学間の競争的環境を醸成することにより各大学の教育改革を推進するため、「国公私立大学を通じた大学教育改革の支援事業」(いわゆるGP)に多額の予算を投じてきましたが、ここにきて、「地方私立大学の経営破綻」という危機に直面し、「競わせる」だけでなく、「連携」という手法により当面の難局を乗り切る政策に転換したようです。(もちろんねらいは一つではなく、「大学の統合」を促進することができれば・・・という文部科学省の思惑も含まれているのでしょうが。)

現に、先日このブログ*1でもご紹介したように、文部科学省の高等教育局長は、年頭の挨拶として3つの重点目標を示し、そのうちの一つとして「少子化等の中で、地方の、特に私立大学等がおかれている小規模化、経営困難等の厳しい状況を踏まえ、限られた資源の最大限の活用を図るため、大学院や学部、研究所での活動の共同・連携を思い切って促進する。」としています。

そのための具体的な施策の一つが、平成20年度の新規事業として30億円という多額の予算の確保が見込まれる「戦略的大学連携支援事業」です。
文部科学省が作成した資料を基に事業概要をご紹介します。


戦略的大学連携支援事業


国公私を超えた大学間の戦略的な連携の取組を支援し、地方の大学教育を一層充実するために、平成20年度予定額30億円(概算要求時は50億円)を新規に措置するものであること。

■背景

国公私立大学の連携による地方の大学教育の充実 (「経済財政改革の基本方針2007」(平成19年6月19日閣議決定))
  • 国公私を通じた地方の「大学地域コンソーシアム」の形成を支援するための措置を平成20年度から講ずる。

  • 国公私を通じ、複数の大学が大学院研究科等を共同で設置できる仕組みを平成20年度中に創設することを目指す。

■事業目的
  • 各大学の資源の有効活用による地域における国公私立大学の教育研究環境等の充実

  • 大学間の連携強化による個性化・特色化の加速、教育研究水準の更なる高度化

■現状・課題
  • 地方の大学、特に地方の私立大学が地域活性化等に果たす役割は大きい

  • 現存する大学コンソーシアムの機能は限定的であり、多様なニーズに対応することは困難

  • 地方小規模大学単独の人的・物的資源では地域の知の拠点としての対応に限界

  • 地域における各大学の資源の有効活用、教育研究環境の整備が不十分

  • 大学の機能別分化を推進するため、個性・特色ある複数大学間の連携強化が必要

■事業内容
  • 戦略的な連携により事業目的を達成するため、将来目標を含む具体的な「大学間連携戦略」を策定

  • IT等を活用した教育研究設備のネットワーク構築(教育研究設備の新規整備と共用促進)

  • 大学連携による共通・専門教育の先進的なプログラム開発(複数大学の共同による学位授与、連合大学院等)

  • 地域の教育研究資源の結集による知の拠点としての機能を強化(産学官連携、豊富な生涯学習教育の提供、国際交流など)

  • 大学間の連携による効率的かつ効果的な大学運営(事務局機能の強化)

■支援内容

全国の各地域において、「広域型」、「地元密着型」、「教育研究高度化型」など、多様で特色ある大学間の戦略的な連携の取組を促進するため、今後3年間継続して支援(概算要求時には、今後5年間で200件程度の取組を3年間継続して支援)


*1:「高等教育政策の動向」:http://daisala.blogspot.jp/2008/01/blog-post_7416.html