法人化後、国立大学に求められた社会的責任の一つに、「社会への大学情報の公表」があります。公表すべきものとされているもののうち、次の3つは国の時代にはなかった新たな試みではないかと思います。
- 文部科学大臣が大学ごとに示した6年にわたる中期目標を達成するために、各大学が自ら定めたマニュフェストともいえる中期計画と、その中期計画の達成のために取り組んだ毎年度の「業務実績報告書」の公表
- 法人化により新たに導入された企業会計原則に準じた会計制度である「国立大学法人会計基準」に基づいた「財務諸表をはじめとする決算報告書」の公表
- 閣議決定及び総務省が定めたガイドラインに基づいて作成することとされた各大学の「役員・教職員の給与水準」の公表
これらは、毎年度6月末までに文部科学大臣に提出するとともに、社会に公表することになっていますが、今日はこのうち「給与水準の公表」についてご紹介しましょう。
国立大学の役職員の給与等については、国立大学法人法において、国家公務員や民間企業の給与、法人の業務の実績等を考慮しつつ、社会一般の情勢に適合したものとなるよう、各大学がそれぞれ支給基準を定め公表することになっています。
また、給与等の水準の内容についても、「公務員の給与改定に関する取扱いについて」(平成19年10月30日閣議決定)により、毎年度、総務大臣が定めるガイドラインに基づき公表することとされています。
このたび、全ての国立大学法人の平成19年度に係る給与等の水準が文部科学省のホームページを通じ公表されました。
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大学人件費:05年度比6.8%減 目標超える削減ペース (2008年7月28日 毎日新聞)
国立大学法人と4つの大学共同利用機関法人の常勤職員の07年度人件費は9361億8000万円で、05年度人件費の予算額(9967億9000万円)を6.8%(606億1000万円)下回ったことが、文部科学省のまとめでわかった。国立大学法人などの人件費は行政改革推進法で「06年度から5年間で5%(05年度予算を基準)」の削減目標が定められているが、既に目標を超えるペースで削減が進んでいる。
人件費は退職金などを除いた給与や賞与の合計額。06年度比では1.3%減だった。非常勤職員などの人件費は2145億60000万円で、06年度比16.8%(308億9000万円)の大幅増。文科省は「寄付金や競争的資金を利用し、プロジェクトごとに短期で非常勤職員を雇うなど工夫している」と分析している。
また、政府は09年度予算で国立大運営費交付金の削減幅を年3%に拡大しようとしているが、文科省は「削減目標を超過しているから『もっと削ってよい』とみるのは妥当でない」としている。
一方、法人の長(学長など)の07年度報酬額が最も高かったのは京都大の2466万8000円で、▽東京大2380万7000円▽大阪大2374万4000円▽九州大2301万2000円--が続いた。
公表された内容のうち主なポイントをご紹介しておきましょう。
■給与等の年間支給総額(退職手当、非常勤給与等、福利厚生費を除く)→936,181百万円(対前年度▲12,517百万円)
■総人件費改革*1の取組状況→基準額*2に比し▲60,611百万円(▲6.8%)
■学長の年間報酬(全国平均)→18,537千円(対前年度▲493千円、▲2.6%)
(参考)最高:京都大学長 24,688千円、最低:静岡大学長 15,808千円
■理事(常勤)の年間報酬(全国平均)→14,509千円(対前年度▲86千円、▲0.6%)
■監事(常勤)の年間報酬(全国平均)→12,342千円(対前年度311千円、2.6%)
■事務・技術職員の年間給与(全国平均)→5,889千円(対国家公務員指数*386.7)
■医療職員(病院看護師)の年間給与(全国平均)→4,979千円(対国家公務員指数96.3)
■教育職員(大学教員)の年間給与(全国平均)→9,117千円
皆さんは、どのようにお感じになりますか・・・。