国立4大学 土地有効利用せず (2010年9月29日 NHKテレビニュース)
東京学芸大学など4つの国立大学が、評価額で100億円を超える土地を保有しながら有効に利用していないことがわかり、会計検査院は土地の売却などの改善を求める方針です。・・・
4国立大:芸大など未活用地100億円 会計検査院が指摘 (2010年9月29日 毎日新聞)
東京芸術大、東京学芸大、東北大、琉球大の4国立大に有効活用されていない 土地が計100億円余相当あることが会計検査院の調査で分かった。国立大の資産を売却すれば、売却益の一部が全国の国立大の施設整備費に充てられる一方、 財政難を受けて国立大の施設整備費の予算は激減している。このため文部科学省は「老朽化した施設の補強や建て替えに使うためにも各大学は不要資産があるな ら売却してほしい」と呼び掛けている。・・・
記事を整理するとポイントは次のようになります。
- 会計検査院は、全国の国立大学の資産状況を調べ、東京学芸大学など4つの国立大学が、評価額で100億円を超える土地を保有しながら有効に利用していないことがわかった。
- 東京学芸大学は、東久留米市に戦後、東京都から寄附された1万3000平方メートルの土地を保有しているが、土地には学生用の宿舎が建てられているだけで80%に当たるおよそ1万平方メートルは雑木林のままとなっている。
- 東京芸術大学は、昭和60年から61年にかけてキャンパスの一部の移転先として茨城県取手市におよそ16万平方メートルの土地を購入したが、84%に当たる土地を有効利用していない。
- 会計検査院は「具体的な利用計画を作っていない」などとして、それぞれの大学に土地を売却するなどの改善を求める方針。
文部科学省から各大学に提供された情報によれば、事実関係等のポイントは以下のとおりです。
- 会計検査院は、国立大学法人の土地・建物の利用状況について、27大学の実地検査を実施し、このうち4大学の未利用・低利用の土地・建物について指摘する予定。今後早ければ10月4日の週に検査官会議にかける予定(検査官会議と同日又は翌日に、関係大学に対し処置要求に係る通知発出。)。11月上旬、検査報告において公表。
- 具体的には、未利用・低利用の土地・建物について、保有する合理的理由の有無を検討して、合理的理由がない場合には不要資産として処分、合理的理由がある場合には具体的な利用計画を策定して当該資産の有効活用を図る必要があることを指摘する予定。
- 指摘を受けた土地・建物については、各大学において、既に処分の手続き中のものや、処分や有効活用の計画を策定済み又は策定中と聞いている。
- なお、国立大学といえども土地等の資産の有効活用に努めるべきことは当然であるが、他方で、思索の場である大学のキャンパスは、雑木林などの豊かな自然環境に恵まれることも大変重要であり、大学のキャンパスを「有効利用」の観点のみから論じることは疑問である。
国立大学法人の保有する資産の有効活用については、これまで、行政刷新会議、財務省等からも何度も指摘されてきました。「国立大学法人の組織及び業務全般の見直しについて」(平成21年6月5日文部科学大臣決定)おいても、効果的・効率的な法人運営を推進するため、「保有資産の不断の見直し及び不要とされた資産の処分に努めること、さらに、既存施設の有効活用、施設の計画的な維持管理の着実な実施等に努めること」とされています。
しかしながら一部の国立大学法人では、法人化に伴い国から承継した土地及び建物の中に、「未利用となっている土地」、「低利用となっている建物及びこれに係る土地」があり、資産の有効活用の面から適切ではなく改善の要があるとの指摘を受けています。
このような状況に至った理由としては、
- 法人化後は以前にも増して保有する資産を効率的に運用することが求められているにもかかわらず、資産を有効に活用しなければならないという認識が十分ではなかったこと
- 資産の有効利用を検討するに当たり、当面利用の予定がないにもかかわらず、将来的には何らかの業務の用に供する可能性があるものとして、土地及び建物の具体的かつ適切な利用計画の策定を行ってこなかったこと
- 資産を有効かつ計画的に利用する姿勢が十分でなかったこと
国立大学法人が保有する資産(国から承継した土地及び建物)の取得原資は国民の皆様からいただいた税金であり、また、毎年度多額の運営費交付金(これも原資は税金)の交付を受けて、これらの資産を維持管理しています。このことからも、未利用又は低利用となっている資産については、早急に具体的かつ適切な利用計画を策定するなどして有効活用を図るべきと考えます。
関連過去記事 国民の資産は有効に活用されているか(2008年2月7日)