2010年10月31日日曜日

大学図書館の課題

今週、公共図書館が直面する課題に触れた記事を読みました。


【社説】国民読書年 貧しき図書館を憂う(2010年10月29日 東京新聞)


図書館の本購入費が年々、減っているのは嘆かわしい。今年は国民読書年で、27日から読書週間も始まった。知の楽しみを味わう場は人や文化を育て、ビジネスを開花させる拠点でもありたい。

世界初の電子コピー機が誕生したのは、米国の弁護士で発明家がニューヨーク公共図書館で、物理学の論文の一節を見つけたことがきっかけだった。

ある国際航空会社の創業者は、世界大恐慌時代に同図書館に通い、鉄道や船舶などの資料を集めるうちに、「空の時代」を確信したという。

デジタル情報時代の現代も、米国では高価なデータベースを無料で提供したり、ビジネスや起業家へのサポートに尽力しているそうだ。「未来をつくる図書館」(菅谷明子著、岩波新書)で紹介されているエピソードの数々だ。

「アイデアを育(はぐく)む『孵化(ふか)器』」とは米国の図書館の姿を表現した菅谷氏の言葉だが、静かな空間で本を読んだり、受験勉強に励む日本の図書館の日常とはやや異質で、先進性を感じさせる。

むしろ日本では公共図書館が図書を購入する資料費が減少を続けている。日本図書館協会によると、決算ベースで資料費は1998年度には約362億円あったが、2008年度には約307億円まで収縮しているのだ。

個人が本を買わない「本離れ」が進んでいるが、図書館まで「本離れ」してどうするのか。利用者の数は逆に増加してもいるのだ。厳しい財政難の中で、手をつけやすい予算から削っていると批判されてもやむを得まい。

公共図書館の設置率にも問題が潜む。都道府県立の図書館はむろん100%で、市区立も約98%あるが、町村立になると約53%にまで落ち込む。つまり日本の町や村では半数しか図書館がない。これは「文化格差」と呼んでいい。国民が等しく文化を享受する視点に立てば、対策は必要だろう。

人的側面でも問題がある。専任職員数が09年には約12700人と、10年前に比べて約2800も減っていることだ。開架の本棚から選ぶのは利用者だという発想は古い。司書らは、有用な情報にたどりつくための身近な“案内人”であってほしい。

調査研究型の図書館と地域密着型の図書館とが互いに補完し合い、必要な文献やデータなどを利用者と一緒に探し出す役割を果たしてくれたら、新しい発見や発明を生む「孵化器」となろう。


同様の課題は、大学図書館にも山積しています。
いくつかの海外の大学図書館を回った経験しかありませんが、訪問した大学の図書館は、文化的価値の高い歴史的建築物で、その大学の最も中心に配置されてあり、図書館を見れば、その大学の有り様がわかるといっても過言ではないのではと感じました。

「学術情報基盤の今後の在り方について(報告)」(2006年3月23日 科学技術・学術審議会 学術分科会 研究環境基盤部会・学術情報基盤作業部会)の抜粋を過去記事に整理してありましたのでご紹介します。我が国の大学図書館の現状と課題が整理されてあります。


大学図書館のいま・これから(2008年2月24日)

詳しくは、文部科学省のホームページをご覧ください。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu4/toushin/06041015.htm