会議後に行われた山本内閣府特命担当大臣の記者会見要旨を抜粋してご紹介します。
本日、17時35分から第119回総合科学技術会議の本会議を開催致しました。
研究不正の関係については下村文部科学大臣の方から、STAP細胞論文の経緯について、理化学研究所は3月31日に研究論文の疑義に関する調査委員会が報告書をとりまとめて、4月1日に記者会見を行ったと。STAP論文の問題に対して一定の結論は出したという御報告がありました。
理研(理化学研究所)では、本件を踏まえて研究不正防止等の着実な実施を図るために、4月4日に、もう皆さんよく御存じですが、野依理事長を本部長とする研究不正再発防止改革推進本部を設置したと。さらに外部有識者6名の改革委員会のお話もありました。4月10日に立ち上がったと。研究不正や過失の防止に係る規定、運用の改善、若手研究者が最大限に能力を発揮できる体制の整備などの論点を含め、研究不正を防止するための研究所の体制とか規定、運用等の課題、改善策について議論を開始しましたということで、文部科学省としては今後の若手研究者の活躍にも配慮しつつ、理研において可能な限り早期かつ厳正に、再発防止のための必要な対策がとられるよう引き続き求めていきたいという話がありました。
さらに文部科学大臣の方から、総合科学技術会議の有識者議員の意見書について、研究不正の疑いのある事案が頻発している現状は看過しがたい、憂うべき事態だと。現在、研究活動の不正行為への対応ガイドラインの見直しに係る検討をやっていますと。ガイドラインの見直しに当たっては、対応が個々の研究者の自己責任のみに委ねられている面が強かったことから、今後は、大学等の研究機関が責任を持ってこの問題に取り組むように求めたいと。特に、研究倫理教育の強化、不正行為を事前に防止する取組を推進していきたいという話がありました。
今般のSTAP細胞の事案から見出される課題等を踏まえるとともに、総合科学技術会議の有識者の皆様からのご意見も真摯に受けとめて、今後の検討に生かしていきたいというお話がありました。
最後に総理から、研究不正については、もう一回繰り返します、これカメラの前でそう言っていましたが、国家戦略として科学技術イノベーションの推進に取り組んでいる中で、近年の研究不正事案の頻発は、我が国の研究開発力の基盤を蝕むものだと。これは大変遺憾だということで。ここからがポイントですけれども、こうした研究不正に対して、個別事案ごとの対応だけでは不十分だと。この問題にどのように臨めばいいのか、研究現場の実態を踏まえて、総合科学技術会議で個別事案を超えた大きな視点から検討してほしいと、このようなお話がございました。
私からは以上です。原山議員の方からご説明をお願いします。
(原山議員)総合科学技術会議の議員の原山でございます。よろしくお願いいたします。
本日、先ほど大臣おっしゃったように、その他の事項で研究不正に関する我々の意見書というものを提出させていただきました。この懸案をなぜこの時点でということが多分ご質問になるかと思いますけれども。科学技術イノベーション総合戦略の改定も踏まえた形で、イノベーションの環境整備というペーパーを先に出しました。その中でやはりリスク管理、不正をいかになくすかということも同時に推進しなければいけないという視点から、有識者議員の中で議論を重ね、その上で意見書としてまとめたものでございます。
そもそも我々のスタンスというのは科学・技術を推進するという立場からスタートしており、科学そのものの本質というものに立ち返った形でこの研究不正というものを見直さなくてはいけないという考えでございます。基本にあるのはやはり研究者の倫理でございまして、やはり研究者であることの自覚、責任、誇りというものを胸に持って行動することを要請するというスタンスです。
その中にありながら、今後の対応ということでどういうことを考えなければいけないかというと、やはり三つのレベルで対応に臨むこととしております。一つ目は研究者レベルでございます。やはり各研究者の胸に研究者であるということを認識するとともに、研究倫理の修得涵養・遵守というところでございます。と同時に、研究者のホストである研究組織、研究機関においても二つの次元で対応することが必要と考えております。まず予防ということです。なるべくこういうことが起こらないことが望ましいわけで、と言いつつも、やはり科学といえども人間の営みでございますから、完全にリスクゼロということはあり得ないわけです。ですので、できる限りの努力をして予防するということでございます。その中ではチェック体制、人材マネジメント、研究倫理教育制度、また明確な責任の所在など、起こりにくい状況をいかにつくり込んでいくかというのが一番の課題だと思います。
と同時に、何か起こったときの対応のやり方というものを常々準備しておかなければいけないところでございます。そういう意味で事後に関しましては万が一研究不正が発生した場合には適切な対応がとれる仕組み・体制の整備というのがマストであるということでございます。
この三つのレベルでこれから具体的なところまで落とし込んでいって議論するということでございます。
ここで、先ほど申し上げましたようにイノベーション総合戦略、何かと言いますと、これからは日本の国のためにイノベーションをプロモートしていくというスタンスは変わらないということで、その中で研究者の重要性を再認識するとともに、特にイノベーションにかかわりますチャレンジングなこと、新たな発想の担い手となる若手の研究者に対してはこれまで以上にサポートしながら、積極的に彼らが活躍できる場というものを、環境づくりに徹していくつもりでございます。その中でやはり今申し上げました三つのレベルの対応というものを同時に整備しながら取り組むということでございます。
ですので、これからはさらに詰めたものを総理指示を受けて我々としても議論しながら進めていくというところでございます。
以上で今日の発表の内容とさせていただきます。
(山本大臣)何かご質問があればお受けします。どうぞ。
(問)NHKの高野です。
この意見書の不正の問題が、研究不正という大前提ですが、具体的にはどういうものを想定されているのでしょうか。この背景にあるものは。どんな事例を言ったらいいでしょうか。
(答)(原山議員)個別の事例は複数、不幸にして日本でも起こっているわけですが、それに対して個々の対応というのは、我々としてはマイクロマネジメントするのが我々のミッションではないという認識でございます。ですので、その中で包括的に考えるべき視点というものをこれからまとめていくということです。
(山本大臣)今、原山議員がおっしゃったように、総合科学技術会議は一応全体を俯瞰するという立場ですから、例えば個々のケースについてコメントするというよりは、今、全体の流れとしてこういう研究開発についてのいろいろな疑義がある事案があるので、これの全体をとらえてどういう方向性でやっていくべきかということを議論するということだと思います。
(問)ただ、国民にきちっと知らせるためには、例えば三つぐらいとか挙げざるを得ないというか挙げるべきだと思いますので。例えばSTAP細胞の問題は含まれていると考えていいのか、あとはノバルティスファーマのデータの操作問題も含まれていると考えていいのか、その辺はどうでしょうか。
(答)それは先ほど申し上げたとおり、個別の事案についてコメントをするというよりは、先ほど原山議員の方からも説明がありましたけれども、研究者レベル、あるいは組織のガバナンス、予防と対応、こういう流れの中でコメントしていくというのが総合科学技術会議の機能だと思うのですね。個別の事案についてこれはああだこうだということは私の方も有識者議員の提案の中ではそれは想定をしていないというか、期待をしていません。それはノバルティスファーマの方は、これはまた厚生労働省がやり、あるいは理研のことについてはもちろん文部科学省がやり、その全体を俯瞰してどういう方向性を我々は持っていかなくてはいけないかと、そういうことをきちんと総合科学技術会議で議論していくと、こういうことだと思います。
(問)何をもって相次いでいるのかというのは、どういうものが相次いでいる。皆さんにとっては当然のことかもしれませんが、世の中的にはSTAP細胞ぐらいしか余り知られていないので、どれを何個かやはり挙げざるを得なくて、どういうことがあるというふうに例えて言うと。個別的に名前挙げないまでもどういう事例があるというふうにお考えですか。
(答)(原山議員)研究不正に関しましてはさまざまな軸の不正というものがあり得るわけで、研究のやり方、プロセスに関するこれから議論しなくてはいけない点のケースもありますし、研究資金の問題などもございます。ですので、個別のことというのではなく、研究不正全体を見回した形で、いかにこれのリスクというものを低減していくことが可能かということを我々は議論していきたいと思います。
先ほども大臣がおっしゃったように、個別の案件に関しましては個別のケース、その中での取組み方というのがございます。それは遵法という形で淡々と進めていくというところでございます。それに対して横やりを入れるのが我々の仕事ではないと認識しております。
ですので、いろいろな個別のケースから何を学ぶかという、その学ぶところを主にした形で今後の日本のイノベーションシステムの中でこの研究不正が起こらない状況をいかにつくり込んでいくかということをこれから議論してまとめていきたいと思っております。
(問)朝日新聞の西川です。
総理から対応を求められた点についてなのですけれども、今文部科学省のほうでもガイドラインの見直しをしていて、研究費の不正使用のほうもガイドラインがこの間改定されたばかりです。総合科学技術会議ではこの首相の対応指示を受けて具体的に何をされるというのでしょうか。
(答)それはこれから、今日、総理から指示をいただいたので、これからどういう形で対応するかということは考えたいと思います。
今おっしゃったように、個々の省庁でいろいろな取組は行われていますけれども、何度も申し上げているとおり、総合科学技術会議は全体を俯瞰するのが役目ですから、今のいろいろな状況を考えると総合科学技術会議としてもきちんと何らかの議論をしなければいけないというのが総理の問題意識だと思います。
個々の省庁のガイドライン等々が例えば対応しているということを超えて、全体を見て総合科学技術会議としても議論をし、いろいろなメッセージを出していかなければいけないということで。いつ、これからどういう形で議論していくかというのは、今日、総理指示を受けましたので、私のところで検討させていただきたいと思っています。
(問)それは今後の流れとしては総合科学技術会議で議論をして、その議論したものを何らかのメッセージが発信されて、それが例えば文部科学省のガイドラインの方に反映されるとかそういうイメージなのでしょうか。
(答)それはまだ現時点ではわかりません。その形も含めて、総理の方から総合科学技術会議でも、ここに書いてあるように個別事案ごとの対応では不十分だと、どういう問題に臨めばいいのか、個別事案を超えた大きな観点から検討して欲しいと、この指示を受けてどういう形で、これを受け取って進めていくのかというのはこれから検討したいと思います。いろいろなやり方があると思いますけれども、これはこれからの検討だと思います。
(問)読売新聞の山田といいます。
今のに関連してなのですけれども。では、今日総理の指示というのが本当にスタートで、今後どれぐらいの期間で何をやるというのはこれから詳しく検討と、そういうことでよろしいでしょうか。
(答)そうです。これからどうするかということを早急に検討したいと思います。
(問)東京新聞、榊原といいます。
研究不正の意見のことでちょっとお伺いしたいのですが。これからの議論は大きな観点から議論する、個別の案件に踏み込まないとおっしゃっていましたが、このペーパーの中ではSTAP細胞について具体的に言及されているので、そこの理由をもう少し詳しくご説明いただけますか。
(答)(原山議員)先ほど御質問があったように、現実何が起こっているかという認識としてSTAP細胞が挙げられております。その中で複数の点が1から5まで書かれておりますが、初めの3点というのはまさに研究のサイエンスの側面の問題とか、研究組織そのもののガバナンスの問題などで、個別に対応して今進められているわけなのですね。それの中で総合科学技術会議として取り組むべき点というのは残りの2点でございまして、まさに大臣がおっしゃったような大所から、個別案件ではなく、日本のシステムとしてどうするかという視点からこの問題に対して議論するという二つの点をこれから議論詰めなければならないと思っております。
(問)でも、やはり議論が錯綜しているというふうにお感じになられているでしょうか、混在して、論点が。
(答)(原山議員)今社会一般の話を見ますと、さまざまな議論がなされているところでございます。いろいろな視点から、いろいろな切り口から議論されていて、その中で我々として取り組む視点と、またそれから個別に理研にしろ組織として対応する点、また研究者に問われる倫理の側面などなどさまざまな点があるわけで。その中で整理をした形でもって我々が引き取るところはSTAP細胞の事例にとどまるわけではなくて、全体像として研究不正に対してどう取り組むかという2点でございます。
(問)わかりました。大臣の御見解があれば、STAP細胞論文の現状について。
(答)何度も言っているように、そういう個別の案件についてコメントするというよりは、総理の指示が個別事案ごとの対応ではなくてこの問題全体としてどう対応していけばいいのかということを検討しようということなので。もう一回言いますけれども、個別の事案についてこれはこうすべき、ああすべきという話ではないと思うのですね。このSTAP細胞の話が出てきたというのは今の状況の中でいろいろと問題が起きているという中で、言及しないということ自体ものすごく不自然ですから、こういう流れがあるという事実として出したということだと思っています。ただ、今おっしゃったように、民間議員のペーパーを見れば、今の議論は総合科学技術会議として議論していく上では整理をする、なるべくいろいろな問題がいっぱい、重複という言い方はおかしいのですけれども、いろいろなところでいろいろな切り口の議論になっているので、そこはきちんと本もとのところを整理して対応していくのがいいのではないかと、整理して議論したほうがいいのではないかと、こういうことだと思います。
(問)科学新聞の中村です。
一つは、今のことの関連して、今日総理指示があったといってもなるべく早く検討したほうがいいわけで、イノベーション総合戦略の改定に間に合うように検討するのか、それよりももうちょっとのんびりというか長いレンジで検討していくのか、そこら辺のお考えはどうでしょう。
(答)それもこれからちょっと検討させていただきたいと思うのですね。イノベーション改定戦略の中にこういうものを盛り込むのか盛り込まないのか、どういう形で反映させるのかということもまだ決まってないので。今日、本当に指示を受けたところなので、これからそこも含めて検討したいと思います。
(問)あともう一つは、イノベーション総合戦略の改定についてなのですけれども、全体俯瞰による政策運営。今まで全体俯瞰は重要だ重要だといろいろな場でおっしゃられてきたのですけれども、でも具体的にどうしたらちゃんと全体俯瞰ができるのか。原山先生が以前悪魔は細部に宿ると言ったように、個別具体的な細かい話が実は全体の最適化の邪魔になったりするわけですよね。そういう時に全体を見ながら、マイクロマネジメントを見ながら、そこら辺を例えば具体的にはどういうふうな見方をすればできるのでしょうか。どうもイメージがつかめない。
(答)全体俯瞰という意味で言うと、それは今、中村さんの言ったことは総合科学技術会議の司令塔機能の強化、そういうものだと思うのですけれども。そういう全体俯瞰をして、例えば科学技術政策についての予算に一貫性を持たせるとか、そういう目的のために司令塔機能強化はやってきたのであって、その結果が予算戦略会議であり、アクションプランの進化であり、SIP、それからImPACTの創設ということなのだと思います。それは、ですから全体を俯瞰するためにどうしたらいいかという問題意識の中でこの幾つかの新しいイニシアティブが生まれてきたということですが、そこをしっかりこれから進化させていくということ以外ないと思います。
(問)NHKの小暮です。
研究不正のことなのですけれども、今こちらでも3本柱で研究者レベル、組織の予防と事後という三つの柱があると思うのですが。これ文部科学省が今改正を進めているガイドラインでも同じように組織の予防と事後のそれぞれの対策今打とうとしていると思うのですが。改めてもうちょっと今文部科学省が改正しようとしているガイドラインと今回総合科学技術会議がやろうとしていることのどういう棲み分けというか違いをどういうところに出していこうというのかお聞かせください。
(答)(原山議員)基本的には研究不正に対して一つの解というのは存在しないわけです。最終的には個別解になると思うのですけれども。でも基本的な考え方、これは必ずチェックすべきだというチェックリスト、さまざまな項目は抽出することが可能だと思っています。
一つのレファランスなのですが、2007年にOECDのグローバルサイエンスフォーラムにおきまして研究不正に関するペーパーというのを出してあります。そこは、OECDのメンバー国プラスアルファ幾つかの国の間でもってそれぞれの課題として持っている、どの国もこの研究不正の問題を抱えているわけなのですが、その中でベストプラクティスというのはなかなかないので、グッドプラクティスは何かということでもってまとめております。
その中でもうたっているのが、すべてに対応できる解はないと。であれば、国の役割というのはリスクを低くするための手の打ち方、その中では押さえる点というのが幾つかあるだろうということなのですね。しかもそれはやはり共通認識等を持ちながらも、個別の国の環境によって状況が違ってくるので、個別対応というものは国によって定める必要があるというふうにうたっております。まさにそのスタンスで取り組むことが望ましいかなと私は個人的には思っております。
(山本大臣)今の答えを言うと、文部科学省のガイドライン等々ありますけれども、中身、どうやって総合科学技術会議としての対応をしていくかというのは、これからよく勉強したいと思います。よく検討したいと思います。
(原山議員)相反するものではなく、整合性を持った形でもって総合科学技術会議からの大きなメッセージがあり、それを受けた形で、もちろん現場を抱えてらっしゃる文部科学省はより切実な問題なわけですね。それに対する現場の状況を踏まえた形でもって具体的に可能なもの、難しいものも出てくると思われます。それとすり合わせしながら方向性というものを定めていくものだと思っております。
よろしいですか。 ありがとうございました。
(参考)総合科学技術会議(第119回)
資料3 研究不正問題への対応に向けて(意見)(有識者議員提出資料)
(研究倫理の遵守)
1 近年、我が国の科学技術の研究開発の現場において、研究不正事案が少なからず発生していることは、極めて遺憾である。
科学技術研究は、人類の長い歴史の中で脈々と積み上げてきた叡智を受け継ぎ、発展させる営みである。その営みは、人間の能力の限界と社会の可能性を広げることで、より豊かで安定的な経済社会の発展を支え、より安全・安心で幸福な国民生活の向上を実現し、人類の平和と進歩を追求する、特別の存在である。誰もが少年少女時代に一度は科学の進歩に感動し科学者になる夢を抱くように、社会全体が抱く科学技術の可能性への期待は大きく、研究者はその未来を切り拓く重責を任されている。研究不正は、社会が科学に託した、そうした夢と希望と信頼を裏切る重大な背任行為であり、決して容認されることはない。改めて研究者は、自らに課されたこの期待と責任を認識し、研究者として当然に然るべき研究倫理を遵守すべきである。
科学といえども人間の営みであり、不正な行いを根絶し切ることが難しいのは、現実には否めない。特に近年では、科学技術の研究レベルが日進月歩で高度化するのみならず、研究開発の世界でもグローバル化によって、そのスピードも加速しており、研究者が激しい国際競争に晒され、成果が強く求められる傾向にあるのも、事実である。しかし、いかなる事情を挙げようとも、研究不正行為が許されないことは論を俟たない。研究者各々が、もう一度原点に立ち返って、研究者であることの自覚と責任と誇りを胸に行動することを要請する。
2 本来的に、研究者は他の職業と比べて、高度な学術的知識や専門的能力を背景に、研究活動内容・範囲の決定や時間・設備・資金の利用等を自らの判断に任されるなど、自由で独立した活動環境が確保されている。また、研究者がその自由な発想を追求し情報発信することは、尊重されねばならない。
しかしながら、そうであるが故に、その研究活動や研究成果に関しては、個々の研究者が自ら責任を当然問われるべきであることを、強く認識せねばならない。勿論、研究者が企業に所属するのか、大学等に所属するのかといった所属機関の性格の違いや、その中での研究者の立場いかんによって、その責任の所在や軽重のあり方が異なることは、あり得る。しかし、研究活動環境としてより自由や独立性が認められていればいる程、研究倫理の遵守や研究内容への説明責任について、より重い責任が研究者個人に問われて、しかるべきである。
また、その一方で、研究活動を担う組織についても、自らが社会的存在として果たすべき責任を改めて認識せねばならない。研究者の所属機関においては、組織としての研究不正を予防するための仕組みづくりや絶え間なき啓発活動、万一研究不正が実際に発生した場合に適切な対応が実行できる体制整備に、責任を持って取り組むべきである。
また、その一方で、研究活動を担う組織についても、自らが社会的存在として果たすべき責任を改めて認識せねばならない。研究者の所属機関においては、組織としての研究不正を予防するための仕組みづくりや絶え間なき啓発活動、万一研究不正が実際に発生した場合に適切な対応が実行できる体制整備に、責任を持って取り組むべきである。
さらに、研究不正に向き合うためには、研究者や研究機関のみならず政府や研究コミュニティ等も、自らがそれぞれの役割を担っていることを再認識すべきである。
(研究不正の抑止に向けて)
3 研究不正の抑止に向けては、科学技術の研究現場の実態をよく見極めた上で、3つのレベルで対応のための仕組みづくりに取り組むべきである。すなわち、
1)研究者レベル:各研究者による研究倫理の修得涵養・遵守
2)組織レベル(予防):研究不正が起こりにくい仕組みづくり(チェック体制、人材マネジメント、研究倫理教育制度、明確な責任の所在等)
3)組織レベル(事後):研究不正発生時に適切な対応が取れる仕組み・体制の整備
の各レベルで取り組むべきである。
この問題は、単なる個別の問題ではなく、国全体の問題として捉え、企業や大学、研究コミュニティ、公的研究機関、政府等で、科学技術の研究開発のあり方を考える必要がある。
(科学技術イノベーション推進への決意)
4 研究不正事案の頻発は、断じて許すことはできないが、しかし、これを理由に科学技術推進の足取りを聊かも緩めることがあってはならない。安倍内閣は、イノベーションに我が国の未来への活路を求めて、科学技術イノベーション政策を強力に推進している。この決意と努力を決して無駄にしてはいけない。
また、研究不正への対応が、正鵠を射ぬ内容であったり研究活動に度を超えた管理や制約を課すことにより、研究者の自由で独立した研究環境を破壊したり、チャレンジングな研究活動を委縮させるたりするような、「角を矯めて牛を殺す」ものであってはならない。特に、若手研究者が果敢に挑戦を行う機会を奪ってはならない。
むしろ、若手研究者が活躍できる環境づくりに、引き続き積極的に取り組むべきである。イノベーションの揺り籠を踏み潰すことは、我が国の未来を切り拓く道を自ら塞ぐことに他ならないことを、肝に銘ずるべきである。
(より良き研究開発環境の整備に向けて)
5 なお、今般の STAP細胞論文の研究不正疑義をめぐっては、国民の科学技術への期待や関心が大きいが故、巷間議論が白熱しているが、様々な論点が錯綜したまま議論されている面が一部にあることを懸念する。すなわち、①研究論文の不正行為の有無の問題、②STAP 細胞の存在に係るサイエンスとしての問題、③理化学研究所のガバナンスや対応の問題、④研究開発活動のあり方や責任所在の問題、⑤科学技術イノベーション政策の問題、の論点が混在したまま、議論や批判が行われているように思われる。
今回の事案を契機に、国民がもう一度科学技術に対する信頼と期待を取り戻せるよう、これまで述べてきた基本的な考え方に即して、冷静で建設的な検討を行うことにより、研究不正の防止及びより良い活力に溢れた研究開発環境の整備を図り、我が国の研究開発力の強化につなげていくことが必要である。
平 成 2 6 年 4 月 1 4 日
総合科学技術会議議員
内山田 竹 志
大 西 隆
久 間 和 生
小 谷 元 子
中 西 宏 明
橋 本 和 仁
原 山 優 子
平 野 俊 夫