文部科学省が各国立大学に示した「分野ごとの振興の観点」(平成26年3月31日文部科学省高等教育局・研究振興局)に沿って整理しましたのでご紹介します。
今後各国立大学は、このミッションに基づき、諸改革に取り組むことになります。画餅にならぬよう、教職員の意識改革・ガバナンス改革を含めた実効性のある足元からの改革を進めていくことが社会から求められています。
(「ミッションの再定義」に関連する主な過去記事)
- 国立大学のミッションの再定義(2012年10月17日水曜日)
- 始動 「大学改革実行プラン」(2012年7月2日月曜日)
- 今後の国立大学の機能強化に向けての考え方(2013年6月27日木曜日)
- 「大学改革実行プラン」について考える(2012年6月11日月曜日)
- 社会の変革エンジンになるということ(2012年11月3日土曜日)
- 官僚目線の大学改革(2012年7月10日火曜日)
- 国立大学改革プラン(2013年12月12日木曜日)
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「ミッションの再定義」を踏まえた各大学ごとの強みや特色を伸長し、社会的な役割を一層果たすための振興の観点は以下のとおりである。
【教員養成大学・学部】
今後の人口動態・教員採用需要等を踏まえ量的縮小を図りつつ、初等中等教育を担う教員の質の向上のため機能強化を図る。具体的には、学校現場での指導経験のある大学教員の採用増、実践型のカリキュラムへの転換(学校現場での実習等の実践的な学修の強化等)、組織編成の抜本的見直し・強化(小学校教員養成課程や教職大学院への重点化、いわゆる「新課程」の廃止等)を推進する。
【医療・保健分野(医学、歯学、薬学、看護・医療技術分野)】
今後の超高齢社会における医療人としての使命感・倫理観、専門的な能力や研究マインド・課題発見解決能力等の必要な資質を備えた人材の育成はもとより、それぞれの大学が持つ知的資源やネットワークを活用し、教育、研究、診療・実践、地域貢献・国際化といった方向について、特色ある取組を推進する観点から機能強化を図る。特に、高度な医療機能を持つ附属病院と、それを軸とした地域の医療機関とのネットワークを最大限活用して学部教育、大学院教育、現職者の生涯にわたる研修を通じた人材育成を強化する。
その際、特に大学院で養成する人材のイメージをより明確化する。
加えて、学内の理工系や人社系の学部・研究科、研究所等はもとより、他の大学、研究機関、医療機関、地方公共団体、企業等とのネットワークを強化し、学際的・実践的な研究、チーム医療を担うために必要となる高いレベルでの多職種連携教育等において特色ある取組を推進する。
(医学・歯学系分野)
超高齢化やグローバル化に対応した医療人の育成や医療イノベーションの創出により、健康長寿社会の実現に寄与する観点から機能強化を図る。具体的には、診療参加型臨床実習の充実等国際標準を上回る医学・歯学教育の構築、総合的な診療能力の育成、卒前・卒後を通じた研究医育成を推進する。
また、独創的かつ多様な基礎研究を推進するとともに、分野横断・産学連携を進め、治験・臨床研究推進の中核となり、基礎研究の成果を元に我が国発の新治療法や革新的医薬品・医療機器等を創出する。地方公共団体と連携し、キャリア形成支援等を通じた地域医療人材の養成・確保、高度・先進医療や社会的要請の高い医療を推進する。
(薬学分野)
基礎から臨床までを通じた世界水準の創薬研究の推進と、薬学教育6年制化の目的である医療人としての使命感・倫理観と研究マインド・課題発見解決能力を備えた、薬学教育研究を担う人材や医療の現場で先導的役割を果たす薬剤師の育成を進める観点から機能強化を図る。
(看護学・医療技術学分野)
医療・保健系大学の設置が進展する中、地域社会の課題解決に貢献する実践力の高い地域のリーダー養成はもとより、看護学及び医療技術学の学術的追求を通じ次世代のリーダーとなる教育者・研究者養成を推進するとともに、大学病院をはじめとした知的資源を活用した学際性・国際性を重視した研究を推進する。
【工学分野】
我が国の産業を牽引し、成長の原動力となる人材の育成や産業構造の変化に対応した研究開発の推進という要請に応えていくため、「理工系人材育成戦略」(仮称)も踏まえつつ、大学院を中心に教育研究組織の再編・整備や機能強化を図る。具体的には、エンジニアとしての汎用的能力の獲得を支援する国際水準の教育の推進など、工学教育の質的改善を推進し、グローバル化に対応した人材を育成するとともに、最新の高度専門技術に対応すべく社会人の学び直しを推進する。また、社会経済の構造的変化や学術研究・科学技術の進展に伴い、各大学の強みや特色をいかしながら先進的な研究や学際的な研究を推進するとともに、研究成果を産業につなげる観点から地域の地場産業も含め広く産業界との連携を推進する。
【理学分野】
自然界に潜む原理や法則という普遍的真理を探究する学問であり、科学技術創造立国を目指す我が国にとって新しいイノベーションの基盤的要素を生み出す重要な役割を担っている。
これまで、先進的かつ国際的な研究が行われてきており、今後とも世界をリードする研究を推進する。また、法則に立ち返って真理の探究に取り組むといった理学的な思考能力・実験技術の方法論などの能力をいかした高度専門職業人や幅広い視野を有する研究者の養成に向けた教育を推進する。このため、「理工系人材育成戦略」(仮称)を踏まえつつ、企業と連携した実践的な専門教育のプログラムや、教育界や教育学分野と連携した高等学校等の理数系教員を志望する学生向けのプログラムの構築など、社会での活躍を意識した教育や、組織的なコースワークと研究指導による大学院教育など、大学院を中心に教育研究組織の再編・整備や機能強化を推進する。
【農学分野】
環境調和型生物生産、生物機能の開発・利用、食料の安定的な享受、自然生態系の保全・修復等に関する科学の促進と技術開発といった社会的役割を担っている。
これまで、地域の立地特性をいかした生物資材の生産や利用に関する教育研究等、特色ある取組が進展しており、今後とも地域の農林水産業や関連産業の振興を牽引する役割を果たしていく。また、人口増加に伴う世界的な食料や環境等の諸課題の解決への貢献の観点から、必要に応じて医学、工学、社会科学といった他の学問分野と連携した教育研究をより一層展開する。さらに、産業界をはじめとする社会の要請に応えた高度な専門職業人や研究能力を有する人材育成の役割を一層果たしていくため、「理工系人材育成戦略」(仮称)を踏まえつつ、大学院を中心に教育研究組織の再編・整備や機能強化を図る。
【人文・社会科学、学際・特定分野】
人間の営みや様々な社会事象の省察、人間の精神生活の基盤の構築や質の向上、社会の価値観に対する省察や社会事象の正確な分析など重要な役割を担っている。また、学際・特定分野は、その学際性・個別分野の個性等に鑑み、社会構造の変化や時代の動向に対応した融合領域や新たな学問分野の進展等の役割が期待されている。
特に、成熟社会の到来、グローバル化の急激な進展等の社会構造の変化を踏まえ、教養教育を含めた教育の質的転換の先導、理工系も含めた総合性・融合性をいかした教育研究の推進、社会人の学修需要への対応、当該分野の国際交流・発信の推進等、各分野の特徴を十分に踏まえた機能強化を図る。
具体的には、養成する人材像のより一層の明確化、身に付ける能力の可視化に取り組む。また、既存組織における入学並びに進学・就職状況や長期的に減少する傾向にある18歳人口動態も踏まえつつ、全学的な機能強化の観点から、定員規模・組織の在り方の見直しを積極的に推進し、強み・特色を基にした教育・研究の質的充実、競争力強化を図る。
- 人文科学分野のミッションの再定義結果(大学別)
- 社会科学分野のミッションの再定義結果(大学別)
- 学際分野のミッションの再定義結果(大学別)
- 特定分野のミッションの再定義結果(大学別)
- 特定分野(理系)のミッションの再定義結果(大学別)