2014年4月9日水曜日

悪魔は細部に宿る

国立大学改革プラン ガバナンスの強化要求 今後の対応が研究力に直結」(2014年3月7日付け科学新聞)をご紹介します。


文部科学省が昨年公表した国立大学改革プランでは、ガバナンスの強化を求めており、各大学の今後の対応が研究力に直結する問題になりそうだ。例えば、3月に論文がアクセプトされ、その別刷りを注文すると納品は5月になるが、科研費からその支出ができるかどうかとなると大学によって対応が異なる。A大学では認められる研究費の使用がB大学では認められない。科研費をはじめとする競争的資金の使い勝手は、この数年の改革で大きく向上したが、各大学の内部規定や運用ルールの改善が追いついていない状況が窺える。

研究費運用ルール改善不充分

総務省は昨年11月、科学研究費補助金等の適正な使用を確保する観点から、研究費の不正使用防止に向けた体制の構築状況、研究費使用ルールの運用状況等を調査し、その結果を取りまとめ、必要な改善措置について、文部科学省に勧告した。

全物品を研究者限りで発注していることや事務局の検収未実施、非常勤職員の勤務状況未確認、換金性の高いパソコンを消耗品扱いし、多数のパソコンが所在不明になっていることなどが指摘されている。

しかし、一番大きな問題は、総務省が61大学における基金化された種目の物品購入に関する経費使用可能期間(支出の際の発注期限、納入期限等)の設定状況を調べた結果だ。基金化された種目の経費の使用について、依然として、原則として補助金と同様に年度単位で期限等が設定されており(研究期間最終年度を除く)、物品購入が通年可能となっている研究機関に比べて、基金制度の効果を十分に生かしにくいものが6大学あった。

科研費の一部が基金化されたにもかかわらず、そのメリットを活かすための取り組みがなされていない大学が、61大学中6大学もあったというごとだ。その結果、年度を超えて使用できるようになっているにもかかわらず、年度末に高額機器や多数のパソコンを購入するといったことが4大学で行われていた。

このことは、各大学の内部規定がバラバラであることを証明している一例だ。一部の研究者は、国でルールを統一すべきだと主張するが、実際に文科省が規定を作った場合、国の規則に則って規定類を作らなくてはならないため、最も使い勝手の悪いルールになる。現在、各大学で運用されているルールよりさらに厳しいものになるだろう。

一方、国立大学の法人化など、大きな大学改革の流れの中では、各大学は自主性・自律性を確保し、その中で独自の教育・研究・社会貢献を行っていくことになっている。つまり、もし一律のルールを適用するようなことになれば、大学改革の精神そのものが失われることになりかねない。

中央教育審議会大学分科会組織運営部会では「各大学は、教育・研究・社会貢献機能の最大化のため、本部・部局全体のガバナンス体制を総点検・見直し、責任の所在を再確認するとともに、権限の重複排除、審議手続きの簡素化、学長までの意思決定過程の確立を図る」としており、国立大学改革プランでも国がそれを後押しするとなっている。

「悪魔は細部に宿る」という言葉があるように、政策議論などではなかなか表面化しない細かな規定類が大学の研究力を低下させている懸念がある。その改革には大学自らが取り組むしかない。そのためには、各大学・部局がどのような規定を定め、どのように運用しているのかを公開・共有すべきである。