2010年3月24日水曜日

大学における”就業力”の育成

現在の厳しい雇用情勢において、学生の資質能力に対する社会からの要請や、学生の多様化に伴う卒業後の職業生活等への移行支援の必要性等が高まっています。

このため、文部科学省は、「大学は、生涯を通じた持続的な就業力の育成を目指し、教育課程の内外を通じて社会的・職業的自立に向けた指導等に取り組むこと、そのための体制を整えることが必要」とし、その制度化を図るため、去る2月25日に大学設置基準及び短期大学設置基準(文部科学省令)を改正しました。施行は、平成23年4月1日となっています。

今後、平成23年4月開設分に係る大学等の設置認可審査においては、このたびの改正内容を踏まえて審査が行われるようですので、各大学は組織としての適切な対応を講じる必要があります。


この省令の改正の概要及び留意すべき事項について書かれた文書が、先日文部科学省から届きましたのでご紹介します。

1 改正の内容(次の規定を大学設置基準第42条の2として新設)

大学は、当該大学及び学部等の教育上の目的に応じ、学生が卒業後自らの資質を向上させ、社会的及び職業的自立を図るために必要な能力を、教育課程の実施及び厚生補導を通じて培うことができるよう、大学内の組織間の有機的な連携を図り、適切な体制を整えるものとする。

2 改正の概要

(1)大学は、当該大学及び学部等の教育上の目的に応じ、学生が卒業後自らの資質を向上させ、社会的及び職業的自立を図るために必要な能力を、教育課程の実施及び厚生補導を通じて培うことができるよう、大学内の組織間の有機的な連携を図り、適切な体制を整えるものとすること。(大学設置基準第42条の2関係)

(2)短期大学は、当該短期大学及び学科又は専攻課程の教育上の目的に応じ、学生が卒業後自らの資質を向上させ、社会的及び職業的自立を図るために必要な能力を、教育課程の実施及び厚生補導を通じて培うことができるよう、短期大学内の組織間の有機的な連携を図り、適切な体制を整えるものとすること。(短期大学設置基準第35条の2関係)

3 留意事項

(1)各大学及び短期大学における社会的・職業的自立に関する指導等の在り方

大学及び短期大学(以下「大学等」という。)は、その自主性・自律性や多様性を前提としつつ、教育課程の内外を通じて、社会的・職業的自立に向けた指導等に取り組む必要があること。その際、各大学等がどのような取組を行うかについては、それぞれの教育研究目的、設置する学部・学科の種類、学生数等の規模、学生や教職員の状況により多様なものが考えられ、特定の教育内容・方法が大学等に課されるものではないこと。

(2)教育課程の編成における取扱い

各大学等では、教育課程の内容と実施方法に関する方針を定める中で、個別の授業科目のシラバスや、体系的な教育課程の編成を通じて、社会的職業的自立に関する指導等の在り方を明らかにし、学生に対し、その内容の理解を図ることが求められること。また、教育課程の編成と実施に当たっては、大学等として保証すべき教育の内容・水準に十分留意すること。

(3)学内における実施体制の確保

各大学等において、社会的・職業的自立に関する指導等の実施に当たり、大学等の判断に基づいて設けられている各種の組織の緊密な連携や、そうした組織の活用を通じて体制を整える必要があること。その際、学内に専任の教職員を配置する、または独立した組織を設けるなど、組織の設置を画一的に課すものではないこと。

(4)大学等の取組状況の公表

各大学等において、社会的・職業的自立に関する指導等の取組について、広く社会に説明していくことが求められること。

(5)産業界や各種団体をはじめとする社会との連携と協力

社会的・職業的自立に関する指導等の実施に当たっては、学生の就職活動の早期化の現状等を踏まえつつ、産業界や地域の各種団体、関係行政機関等との連携・協力に努める必要があること。

(6)大学院における取組

大学院における社会的・職業的自立に関する指導等についても、大学設置基準に基づく実施体制を活用した取組が期待されること。

(7)施行について

平成23年4月1日施行とすること。なお、平成23年4月開設分に係る大学等の設置認可審査においては、今般の改正内容を踏まえて審査を行うこととすること。

(関連記事)

「職業指導」義務化 模索する大学 専門教育との融合課題(2010年3月14日 産経新聞)

大卒予定者の内定率が「就職氷河期」を下回る水準にまで悪化した就職難。就職しても3割が3年以内に離職するという現実もあることから、文部科学省は2月末、大学や短大での「職業指導」(キャリアガイダンス)を平成23年度から義務化するよう大学設置基準を改正した。単に「キャリア教育」などの科目を設けるだけでなく、従来の専門教育に職業指導の要素を融合させる動きもあり、教育現場の模索が始まっている。・・・
http://sankei.jp.msn.com/life/education/100314/edc1003141835001-n1.htm

大学生に「就業力」 文科省など育成委員会立ち上げへ(2010年3月24日 朝日新聞)

厳しい雇用情勢のなか、学生が自分にあった仕事を見つける能力を身につけ、卒業後の自立につながる「就業力」育成に取り組む大学や短大を支援するため、文部科学省が近く、「事業委員会」を立ち上げる。職業教育やキャリア支援の専門家のほか、企業の採用担当者らが委員となり、各大学から募集した企画を審査して財政面での支援を行っていく。文科省は、2010年度予算案に新規で「大学生の就業力育成支援事業」の30億円を盛り込んだ。予算が国会を通れば、大学や短大からアイデアや企画を募って130件程度を選んで支援する予定だ。各大学約2千万円になる計算で、採択されれば5年間継続する方針という。・・・
http://www.asahi.com/national/update/0324/TKY201003240230.html?ref=rss